2011年07月18日

隙間時間オンセの会『巨人族の逆襲』第4回:目次

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はリンク先にはいらっしゃらないほうがよいと思います。


7月9日(土)22:00〜26:00ぐらいまで
第2章・第1場……になるのかな?
物語はオリジナルっぽいけど、マップがあったのでたぶんシナリオ準拠の遭遇だとは思う。
それにしても今回は、リアルで遊んでいたら思わずダイス袋の中身をぶちまけ、新しいダイスを捜したくなるくらいダイスボットの目が偏っていました。
ダイスボットのお祓い機能とかってないのかしら。

前口上
その1
その2
その3

posted by たきのはら at 01:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ・目次 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第4回:その3

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 というわけで“栞”の騎士アラムの案内でエイヴォンの塔に向かった。塔に近づくにつれ、戦時下でそれなりにすさんではいるもののどこか学究的な雰囲気の残っていた街路が、どうしようもなく荒れ果ててきた。具体的にはむごたらしく引き裂かれた死体がそこここに散らばってカラスについばまれ、その間に骨だの腐った死体の残骸だのが散乱しているのである。
 「いつまたエイヴォンが出てくるかと恐れて、誰もこのあたりに近寄らないものですから」
 アラムがひとりごとのように呟いた。

 そうして、その先に、その黒い塔はあった。
 12階建てです、6階と12階に研究室があり、エイヴォンは最上階にいると思います。中の様子はこれ以上は私は知りません。どうぞご武運を。

 というわけで踏み込んだ。
 魔法に詳しい上、いざとなったら扉を蹴破ることもできるアシュレイが先頭に立った。

 魔法の罠を外して難なく2階に上った。
 気をよくして3階に入ろうとしたら、扉から66本の黒い矢が飛び出してきた。どうやらからくりの仕組みを間違ったらしかった。
 なので4階の扉は蹴破った。もちろんアシュレイが、である。

 そうしたら中にスフィンクスがいた。
 スフィンクスが何か言う前にアシュレイは「にんげん」と呟いた。それをじろりと見たスフィンクスは、そなたたちの求めるものとその理由について説明してみせよと不機嫌そうに言った。そこで滔々と演説をした。恐れ入ってスフィンクスは私を通した。次はザンギエフが筋肉を誇示し、恐ろしい顔をしながら俺たちを通さないと恐ろしいことが起きるぞと脅しつけた。スフィンクスはまた鼻をならしてそっぽを向いた。
 そこへすかさずパラディグーム卿が踏み込み
 「答えは少しも知り申さぬ。だがわれらは前に進まねばならぬのです」
 そう言ってにっこりと微笑んだ。スフィンクスはその笑顔を見た瞬間、顔を赤らめ、背後の扉を開け放った。
 蓼食う虫も好き好きとはよく言ったものだと思った。しかしザンギエフは、儂のところの村長そっくりなふうを見てもびくともしないあのスフィンクスの胆力は大したものだと、妙なところに感心していた。村長がいかに恐ろしいといってもザンギエフが真似られる程度なのかと問うと、とんでもない儂が真似られるのは村長の一番機嫌の良いときの顔で、しかも一瞬だけだが、村長はあれがずっと続くのだと当然のようにザンギエフは答えた。まったくとんでもない話だった。
 そうやって5階に上り、5階から6階への階段も苦もなく通り抜けた。
 
 6階の扉を開けるとそこは小さな部屋になっていて、そこに女死霊術師エイヴォンがいた。今回は黒い分厚いローブをきちんと着込んでいる。が、見てすぐわかる、幻影だ。何しろローブのほうではなく身体が半ば透けているのだから。

 「よそ者が。私の研究室を荒らすなら命はないと思いなさい」
 台詞には意外性はなかったが、見た目は特筆に値した。真っ白な肌、そして丈なす白髪。こちらをひたと見据える真紅の瞳。精魂篭めて造られた人形のように整った顔立ちともあいまって、その白子の女はこの世のものとも思われぬぞっとするような気配を漂わせていた。そうして身じろぐたびにちらちらとローブの袖から見え隠れする白い腕にきざまれたのは……無数の傷痕?
 
 エイヴォンの姿を見たとたんがたがたと震えだしてアシュレイの後ろに隠れようとするザンギエフと、私は美少年か美青年、それも人間のそれにしか興味はないので勘弁してくれといかにも自尊心を傷つけられたように叫ぶエイヴォンの幻影を興味深く観察していると、
 「あーお嬢さん。それがし思うに人の身体というのは父母からさずかったもので傷つけてはいけない」
 パラディグーム卿が突然、いかにも場違いなことを言い出した。が、途端。
 「父のことは言うな!」
 かっと目を見開き、口いっぱいに叫んで幻影は掻き消えた。人の家庭の事情に口を挟むのはそもそも礼儀にもとるし、さらにダンピールの家庭が複雑でないわけはないから、ずいぶんと悪いことを言ってしまったのかもしれなかった。それはそれとして件の幻影は通り一遍の警告のためだけにでてきたのだろうか。

 そして、塔に入る前に聞いたことが正しければ、この階はエイヴォンの研究室になっているはずだった。おそらく幻影が背にしていた扉の向こうが研究室になっているのだろう。そう思っているとザンギエフがいち早く扉の前へと歩を進めた。アシュレイが声を上げかけたが止める間もなかった。部屋の隅の何かの仕掛けが作動して、部屋中を炎の嵐が吹き荒れ、ザンギエフは盛大に火傷を負った。とりあえず剣呑なのは間違いなかった。最初は火だったがあの女の得意技は死霊使いだ、踏み込む前に死霊避けの霊薬を飲んでおいたものかと誰かが言ったが、扉に耳を当てて向こうの様子を伺っていたパラディグーム卿が「うむ。飲む必要はあるまい。この扉のむこうに敵のおり申さぬは明白」と断言したのでそのまま行くことにした。なにしろ霊薬の数は限られているのだ。

 ザンギエフとパラディグーム卿が扉に取り付き揺さぶると、蝶番ごと扉は取れた。
 そしてその向こうには、やたら爪の長い巨大な骸骨が2体、ひっそりとうずくまっており、扉が取れるとむくりと首をもたげてこちらをひたと見据えた。うっかり忘れていたが、死体は動きさえしなければ静かなのは道理なのだった。
 「ボーンクローだ。死にぞこないの一種なのはたしかだが、でかくて爪が長くてすばしこい。つまり厄介だ」
 アシュレイが吐き捨てるように言って、剣を構えた。

 確かに厄介だった。
 なにしろ遠くにうずくまったまま、爪だけを凄まじい勢いで繰り出してくる。こちらの剣先は届かぬのに、その爪のほうは易々とこちらに届いてしまうのだ。が、
 「妖法先読−−ははは、そう来ることはわかっていた!」
 2体めの爪が伸びてきた瞬間、それを払い除けてパラディグーム卿は叫んだ。この卿は騎士なのか、それとも術使いなのか時々わからなくなる。なぜと言うに、卿が槍を構えながら“妖法○○……”と声高に唱えると、相手の剣先はふらふらと揺れ、或いは空に弾かれてあらぬところを薙ぎ、そうしてできたおあつらえ向きの隙に乗じてザンギエフやアシュレイが飛び込むのだ。
 が、狭苦しい部屋の中だと勝手が違うのか、飛び込んだザンギエフの斧もあらぬところを薙いだ。そういうこともあり申す、と卿は励ますように声をかけた。

 これは近づいてどうこうできる敵ではない、私の出番かと身を乗り出しかけたとき、壁の向こうを走るなにやら不気味な乾いた足音を聞いた。視線をそちらに投げた瞬間、私は凍りついた。全員がこっちを見ていたから、きっと間抜けな悲鳴でも上げたのだろう。そこにいたのはスケルタル・アーケイン・ガーディアン……別名“魔術師殺し”。4本生えた腕のそれぞれに武器を握った骸骨というだけでもおぞましいのに、こいつは秘術のわざが発動した瞬間、術師のもとに滑り込んできて手に持った武器で滅多打ちにしてくるのだ。もちろん勝ちようはある――状況次第だが。術の気配を嗅ぎ付けて走りよって来ると言っても限りがある。充分離れたところから魔法のありったけをたたきつければいい。だが、この狭苦しい部屋の中では――

 私は息を殺して棒立ちになったまま震えていた。
 「ああ、なんとかいたし申す。それまではどうかそのまま」
 パラディグーム卿の声が耳に落ちた。
 「妖法血煙り街道−−さあッ! 行くがよい! 道はあいておるぞ!」
 ずるり、と爪の化け物が引きずられるように動く。引きずり回されるそれに吸い寄せられるように、アシュレイの剣、ザンギエフの斧が唸る――のを、私は夢の中の映像のように見ている。ちょっとでも動いたらあの恐ろしい4本腕の骸骨が私の隣に滑り寄ってくるのではないかと思えてならないのだ。が、次いで
 「妖法誘蛾光−−うぬらはこの槍の光から目をそらせぬ。さあ来るがいい」

 急に目の前の霧が晴れた。卿の槍が眩い光を放ったかに見えた。そうしてその光に吸い寄せられるように、骸骨どもがずるりと間合いを詰める。そのぶん皆の剣先が連中に届くようになる。そうして、おお――今ならばもう私は恐れることはない。4本腕の化け物は卿の槍の穂先の光に惑わされるように、頼りない足取りでふらついているのだ。もちろん許された時間は限られている。大急ぎで火球を叩き込み、ついでに惑わしの術をかけて、ボーンクローに4本腕の怪物の背中を思い切り抉らせた。やるだけのことはやったので、後はまた彫像のマネゴトをしていた。いつ4本腕の怪物が私に気付かないとも限らない。

 戦いは長引いた。
 恐ろしいことに、ザンギエフの斧がまったくと言っていいほど――いや、まったく敵に掠りもしないのだ。自ら切りかかっても駄目、パラディグーム卿が敵の隙を誘っても役に立たぬ。せせこましい塔の部屋の中では足を封じられたも同じこと、縦横無尽に戦場を駆け回るのが持ち味のザンギエフには辛かったのかとも思えたが、それどころの話ではない。思い切り斧が空振りした脇でアシュレイの剣がどうやら骨の化け物を1体倒す――「この塔は悪い場所だ」そう、ザンギエフは呻いた「しかもさっきから身体が重い。ひょっとしたらあの女が儂を見ているのではないか」
 そんなこともあるかもしれない、いや、あるのだろう、と私も背骨の冷える思いをしながら小さく頷いた。ただ、ザンギエフに注がれている視線の種類にはいろいろと議論の余地がある気はしないでもなかったが。

 結局パラディグーム卿とアシュレイのほぼ二人だけで、散々苦労しながら3体の骨の化け物を片付けた。私も例の化け物が卿の槍に気をとられている隙にいくつか術を飛ばしはしたが、まぁ、たかがしれている。そうしてザンギエフの斧はとうとう最後まで空だけを斬り続けた。
 ともあれ、化け物どもが片付いたので先に進む前に研究室を調べた。エイヴォンの手記でも見つからないかと思ったが、あの女、記録はすべて自分のすぐ手の届く範囲に置く主義らしい。代わりに相当量のレシディウム――魔力の結晶体が見つかった。行きがけの駄賃というと聞こえは悪いが、ともあれあの女とは敵対しているのだ。見つけたものをこちらのために使わせてもらうのも道理というものだと口の中で呟くと、見つけたものはすっかりこちらの荷物の中にしまいこんだ。


(第4回はこんなところでした)


このシーンの裏側。
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2011年07月17日

『巨人族の逆襲』第4回:その2

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 パラディグーム卿が巨人の間合いの懐に飛び込み、今にも乱戦にもつれ込もうという一瞬、私は軽く指を鳴らした。もっと混乱すればいい。
 向かってきたパラディグーム卿に対して身構えていたはずの巨人が目にも留まらぬ速さで振り返りざま、振り抜いた棍棒は隣の巨人のこめかみをきれいにぶん殴った。殴られた巨人は呆然としていたがやおらさっきまでの友人につかみかかる……ということはなく、こちらを見て唸り声を上げた。ふうん、つまんない。

 その後はどうということもなく殴りあいになった。ザンギエフの大斧が巨人を滅多打ちにし、そこにパラディグーム卿の槍が唸りをあげる。破れかぶれになった巨人が棍棒を振り回す。今度こそ小うるさいちっぽけな連中――具体的にはパラディグーム卿の胴体を捕らえたと思った一撃は、アシュレイの剣先が小さな円を描いた瞬間、捩れた軌跡を描いて思い切り仲間の背骨に食い込んでいる。瞬く間に一匹が倒れた。泡を喰って逃げ出したもう一匹は見逃しても良かったが、状況からしてこの世に巨人は一匹でも少ないほうがいいので、凄まじい勢いでザンギエフが後を追った。脚を二本とも斬り飛ばされて巨人は死んだ。

 そうして状況からして少しでも資金は多いほうがいいので、巨人の持ち物を探った。
 が、攫ってきた牛を焼いて食べる程度には文明化されているにもかかわらず、巨人もオーガもびた一文持ってはいなかった。それはもうあきれるほどだった。銅貨いちまい、くず宝石ひとつないのだった。代わりに巨人の袋の中に入っていたのは死体と、そして死体に押しつぶされかかっている生きた男だった。
 「なんとまあ、巨人の喰い残しか」
 ザンギエフが呆れたように叫ぶと、男は命を助けてくれたことに礼をいい、今度からそのように名乗ると言った。それから命の恩人に礼がしたい、なんでもするといった。職業を聞くと牛飼い兼農夫だという。少し考えてからアージェントに行って炊事を手伝ってほしいと頼んだ。これであの街に戻っても、自分で料理をせずとも温かい食事にありつける。



 そこから転移門まではすぐだった。なので、すぐにマルドゥーング近くの転移門まで飛んだ。
 マルドゥーングまでは何ごともなく着いたが、そこからが厄介だった。学院はおろか街に入れない。門は堅く閉ざされ、話のわからなさそうな門番が頑張っている。4人がかりで押しかけたら、私以外の3人とその門番の間で、押し問答どころでは済まないことが持ち上がりそうだったので、3人には口をつぐんでいるように言い渡して門番のところに行った。大変不躾な目つきでじろじろとこちらを見ながら誰何してくるので、西域の堅砦からそなたたちのしでかした不始末の始末をつける手伝いに来たのだと答えた。たちまち険悪な空気になったが、アージェントの水鏡で見た事件の見たままを言ってやり、お前では埒があかないから話のできるものを連れてくるようにというのをもっと丁寧な言い方で言うと、門番は薄気味悪そうに私を見たあと、走っていった。

 やがて、ローブの下に鎧を着込んだ男たちがぞろぞろとやってきて、もう少し礼儀正しく誰何して寄越したので、同じことをもう少し丁寧に繰り返した。西域の堅砦より参りました。アージェントはもとより、この世界に住むものはみな、巨人族と精霊の連合軍の襲撃を受けています。しかしそれを
知った時、水鏡がより恐ろしい光景を映したのが、ここ、マルドゥーングでのことでした。巨人族を迎え撃つ前に手を打たねばならぬ内憂を除きに、我々はアージェントより参りました。

 「それはかたじけない、が……」
 我らは絶対図書館を守る“表紙”の騎士団、そして我はその中央なる“栞”の騎士アラム――そう名乗った男は、訝しげに私たちに視線を投げた。
 「銀のクロークがないことを訝しんでおいでですか」
 可能な限りの穏やかな笑みというやつを浮かべて私は言った。
 「そう、ないのです。アージェントは時の流れの中でいったんその力を失い、ただひとりの守護者とその近習のみが砦を守っていました。そこに私たちが招請されたのです。しかし、一度その力を失ったアージェントには、もはや私たちを砦の騎士と証だてるための武具を鍛え、白銀のクロークを織り出すだけの材料は残っていなかったのです。
 私たちも、ただあなた方を救うことのみを目的として参上したのではございません。あの死霊術師を封じ得た暁には、私たちを証だてるためのスカイメタルをお分けいただきたく存じます。そして敵うならば図書館の本の閲覧許可も……でもこれはあなたがたの損にばかりなる話ではないと存じます。なにしろ私たちはみな巨人族の襲撃に苦しんでおり、そのためには……」

 「承知いたしました」
 さすがに図々しいことを言い過ぎたかと少し言いよどんだところを、アラムは引き継ぐように答え、軽く会釈してよこした。さすが、偏屈な魔術師の集団と付き合い慣れているだけあって如才ない。
 「たしかにスカイメタルは我等が学舎の宝物庫に納められております。あの死霊術師エイヴォンを取り押さえ、封じるのに力を貸して下さったなら、要り用なだけお分けしましょう。また調べ物も。ご自身でお調べがつかなくとも、図書館にはその道に通じた者たちが数多くおります。きっとお力となれましょう
 さて、そこで死霊術師エイヴォンですが……」

 アラムが言うには、件のエイヴォンという女はヴァンパイアと人間の間に生れたダンピールで、死者の血を宿すが故か死霊術に並々ならぬ才を発揮したが、次第次第に人道の範囲を踏み外すようになてきたので塔に封じられていた、それがうっかりと解き放たれてしまったものだから、これまで幽閉されていた憤懣をさんざんにぶちまけた挙句、今は塔に立てこもり、むしろ今となっては巨人族よりもエイヴォンのほうが学院の憂いとなっているのである――ということであった。
 何か気をつけねばならぬことはあるかというと、
 「決して止めを刺さないでください」
 そう、アラムは言った。

 何でも、エイヴォンはリッチとなるための経箱を既に完成させているのだという。そしてそれをどこかに隠しているのだ、と。
 「あの女が経箱を作り上げたのまでは調べがつきました。が、どこに隠しているかはとうとうわかりませなんだ。ですから、あの女は決して殺さないで下さい。殺したらすぐさまリッチになって、余計手におえなくなるだけなのです。生身のまま縛り上げ、私どもを呼んでください。そうすれば、まだ封じることがかないます」

 「しかし、それでは、我々が止めを刺さずとも、その女は自らリッチとなることができるのではないか?」
 アシュレイがいかにも解せないというふうに声を上げた。
 「そうです、が、あの女はそうはしないでしょう。いずれは死ぬ、ならばそのときにリッチとなればよい、それがあの女の考えです。この世には――生身でこそ享受できる楽しみも数多くありますから。そうしてあの女はそのような楽しみごとをことのほか愛していますから……例えば、見目良い殿御とか」
 アラムは随分と品のいい言い方をしたが
 「では、村一番の美しい筋肉を持つといわれた儂の危機ではないか!」
 ザンギエフが悲鳴を上げると、さらに品よく目を伏せた。偏屈極まりない術者たちとの付き合いで培った礼儀はここでもこの上なく発揮されていた。




このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 20:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月13日

『巨人族の逆襲』第4回:その1

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。


























 一晩休んで、これからの荒事に備えた。
 すぐにマルドゥーング魔法学院直近の、学院を訪れるものがよく使う移動用魔法円に飛ぶつもりだったが、そうもいかなかった。第一に手元不如意で儀式のために必要な品々が不十分、第二に外患(巨人族の軍勢である)内憂(調子に乗った死霊術師である)に痛めつけられた魔法学院は、おいそれとよそ者が入り込めないように近隣の魔法円を片っ端から封じたらしく、秘術で繋ぐべき経路をいくら辿っても、魔法学院からやや離れた、ちっぽけな魔法円にしか出られないようなのである。しかもその魔法円に出られる“入り口”も、アージェントからしばらく歩くような場所にしかないときた。こちらの手持ちが潤沢であれば相応に儀式を構築し、とっとと学院に乗りこむこともできようが……

 首をひねった挙句、どうにも仕方ないので、一応頭脳労働ができそうなものはアージェントに残して書庫で調べ物をする役を任せ、魔法学院で気の触れた死霊術師とその取り巻きを相手するのに向きそうなものが3人、そして私という小勢で乗り込むことになった。ところが人選を済ませてみると癒し手がいないのだった。小さい魔法円しか使えないので人数の上限は限られる。荒事の得意をひとり残して司祭が誰か同行するべきという話になりかけたが、しかし神の恩寵が繋ぐ魂の緒は、金と秘術で縒り合せることも可能なのである。不如意な手元のありったけをはたいて、私たちは霊薬の小瓶を買い込んだ。傷薬に死霊よけ、果ては感覚を研ぎ澄まし手元を確かにする水薬まで。軽くなった財布の中身をどう補充するかと一瞬考えたが、ままよ、何とかなるだろう。

 というわけでアージェントを出たのは4人。
 ドワーフの闘士ザンギエフ。
 雷撃を纏う兵士アシュレイ。
 次元遍歴の騎士パラディグーム。
 そうして私。

 あの橋を渡れば目指す魔法円、というところで、橋の向こうになんとも古式ゆかしいものを見た――多少大き過ぎたが。
 いかにも山賊然としたオーガが5匹、頭目らしき丘巨人2匹を取り巻くようにして牛を炙り焼き、ばりばりと貪り食っていたのである。丘巨人どもはもう十分に食事を済ませたものらしく、折った骨を楊枝代わりに歯をせせっている。見れば巨人の片方が腰に下げた袋の口からは人の手がにゅっと飛び出している……しばらく観察するがぴくりとも動かないのは、これは手遅れと言うことか。
 「ここで私たちが戦ったところでできることはありません、あの連中は身体が大きい分鈍いのです、こっそりと抜けましょう」
 言いかけた時には時すでに遅く、騎士パラディグームが大声を張り上げ名乗りを上げていた。これでは丘巨人といえども聞き逃すはずもない。山賊どもは一斉にこちらを振り向き、そうして声をそろえてこう言ったものである。
 「この橋を渡りたくばひとり置いていけ」
 「おお、わしらは先を急ぐのだ。わしひとりいなくとも残り3人が居れば用は足りよう、わしがあんたらの昼飯になってやろう、さあ他のものは通してやってくれい」
 打てば響くようにザンギエフが答えた。ああそういうことは3つ数えてから悲壮な表情を浮かべて言うものだ、そんなに口元に嬉しそうな笑みを浮かべるものではないと腹の中で思ったが、案の定。

 「騙されるものか。お頭、気をつけなきゃいけません。ちっちゃくてすばしっこい奴はわしらの踵を切り裂くし、ちっちゃいくせにむさくるしい連中はわしらの膝の皿をかち割るんだ」
 オーガの1匹がやけにこざかしい口をきいた。それで結局殴り合う羽目になった。

 オーガどもの爪は鋭く重い。3匹のオーガに押し包まれたアシュレイがあっという間に血まみれになる。が、私が見ていたのはパラディグームの槍の穂先ががかすめた瞬間にあっけなく倒れた化け物の姿だった。
 「見かけ倒しの、雑魚のくせに」
 その場から一歩も動かずに私は指先から魔法の矢を飛ばした。狙いを外さぬその矢が触れたオーガはしゃぼん玉のようにはじけて飛んだ。
 「ならば貴様らはこれでも喰らえ」
 整った頬に滴る血を拭いもせずアシュレイが囁いた。雷光の剣が無造作に目の前のオーガの胸を突く。骸からさらに稲妻が弾け、両隣のオーガを撃った。アシュレイの前に壁となって立ちふさがっていた3匹のオーガは、その陣形が災いして一瞬のうちに3つの死体と化した。

 丘巨人どもは目を白黒させていたが、急に棍棒をひっつかんで立ちあがった。
 が、もう遅い。橋の向こうにいたはずの“ちっちゃくてむさくるしい奴”の斧がうなりを上げて巨人の膝にめり込んでいた。ついでパラディグーム卿が、アシュレイが、またたきひとつの間に死体と化したオーガを踏み越えて迫ってくる。




 このシーンの裏側
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『巨人族の逆襲』第4回:前口上、ならびに時候のいいわけ

 ええ、そりゃもちろんわかってるんですよ、こういうこといちいち言うの見苦しいって。
 でも、帰宅した途端に寝つぶれてるのはどうしようもない。
 ……というわけで、『巨人族の逆襲』第4回、遊んだのは先日の週末なのですが、レポのほうがずるずると遅れております。

 ちなみに2週間前はDMが夏風邪で寝込んだため『巨人族』オンセはお休み、代わりにオーケストラのPLがDMでデルヴが走っていろいろと阿鼻叫喚な光景が展開されていたとかなんとか。

 それにしても暑い。
 セッションは夜なので節電の時間帯からは外れているとはいうものの、ひとりの部屋を冷やすのにエアコンのスイッチを入れるのもなんだか申し訳なく、こちらは氷枕を抱えながらPC前に。ちなみに数か月前は同じ水枕に熱湯入れて湯たんぽにして抱えてましたが今となっては湯という字を見るさえ暑苦しい。別の誰かは、マイクがやたらバタバタいう音を拾うと思ったら、「俺の部屋にはエアコンがないので、そのへんに落ちていた恋姫無双の団扇で扇いでいる」とかなんとか。

 音声チャットができるようになったんだから、あとはウェブカメラを各自が導入して、ついでに誰かがとんでもないこと口走ったらスイッチひとつでそいつの身体に電撃を飛ばせる装置をつけたら完璧だよね、などと言っていたのですが、やっぱりカメラは軽々しく導入すべきではないような……

 
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2011年06月14日

隙間時間オンセの会『巨人族の逆襲』第3回:目次

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6月11日(土)22:30〜26:00ぐらいまで
第1章・第3場

今回はロールプレイ中心の情報整理パート。
今回から目次には第○章・第○場、というのをつけることにしました。
『巨人族の逆襲』は遊んでいるけれども先行している、という方が読んでくださってるみたいなので……

一番面白いのは妄言の部分なんだけど、その場にいないとなかなか伝わらないというか伝えきれないのが我ながら悔しかったりもったいなかったり。

というわけで目次。

前口上
その1
その2
その3
その4

これでようやく第1章がホントに終了。大休憩を取って、次回から第2章です。
posted by たきのはら at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ・目次 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第3回:その4

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。


























 オバナーを案内に立て、霊園に踏み込んだ。ここが細工師クオールの霊廟ですと指し示すところに来かかると、すぐにぞっとするような冷たい風が流れ、明らかに幽霊であるとわかる男の姿が墓の上に浮かび上がった。ああ、彼も死んでしまって今やこんな姿かと、アシュレイがぽつりと呟いた。
 「私だクオール――覚えているか」
 「おお、アシュレイ、此度は無事に作動したか」
 造り手と被造物の邂逅、となる前に、突然二人の間に黒い影が割り込んできた。顔の半分が骨と化した幽霊戦士であるが――その肩には、おお、アージェントの勇者の証であるという銀のクロークが翻っている。
 「わしらの眠りを覚ますのは貴様らか」
 およそ勇者らしくない言葉を、その幽霊は発した。人間、死んで長く経つと性格が悪くなるものだなと思った。
 「勇者への挨拶もなしか、礼儀知らずめ」

 まったく呆れた幽霊であった。オーケストラが形の良い眉を顰め、なるほどあなたにそのような大きな口を叩かせているのはその銀のクロークかと呟いた。ザンギエフは一歩下がると冑の角を突き出すように前傾姿勢を取った。よし殴ろうと嬉しそうにウルリクが言った。パラディグーム卿は静かに剣の柄に手をかけた。古き戦士の幽霊は少し怯んだように見えた。ザンギエフが組打ちの構えを取ってずいと一歩前に進み出た。古き戦士の幽霊は数歩後ずさった。
 「よしたほうがよいのではないか? 私の記憶にある勇士たちに彼らは劣らぬぞ?」
 無表情にアシュレイが言った。古き戦士の幽霊は消え失せた。

 そこでようやくクオールと話ができた。
 しかしスカイメタルはこの街にはもう存在しないとクオールは言い切った。オバナーの身体の中に勇者の証たる武具を作り上げるための種は存在する、しかし武具を形作る金属はここにはない。ただ、一箇所、ある場所を知っている、と。

 マルドゥーングという、秘められた知識をたたえた図書館がある。そこに一つの塔があり、塔の主はエイヴォンという名の力を持った吸血鬼の死霊術師。その者がスカイメタルを所持していた――そのものが未だ存在するかは知らぬ、しかし何ものかに倒されておったとしても、あの塔がそう易々と陥ちるとも思えぬ。スカイメタルはそこにあるだろう。

 「マルドゥーング……魔法学院のことですか?」
 私が問うと、クオールは呆れたように笑った。
 「確かにマルドゥーングは偉大な図書館だ。しかし図書館は単に書物を集めただけのもの、とても学院などというものではない」
 「では、その図書館で研究するものたちが集い、そこに学院が育ったのです。あなたはこの世を去って久しい。貴方が眠る間に命あるものは様々なことをしたのです」
 それなら筋が通る、とクオールが言うのを聞きながら、そういえばマルドゥーングの奉じる知識の神の名は絶対図書館という、図書館の概念が神格化されたものではなかったかと私は考えていた。

 「待ってください、ひょっとしたらその学院も今や襲われているのではありませんか」
 突然、オバナーの叫びが耳を打った。ありうる話だ。
 「泉へ参りましょう、クオールどの、感謝いたします」
 泉に着くと、オバナーは手にした杖を打ち振った。するとたちまち水面には、巨人と炎精の連合軍に襲われる魔法学院の有様が浮かび上がった。居並ぶ魔法使いたちが一斉に火球を放つと、巨人が数体、火達磨になって転がった。しかし巨人族の投石が始まると、今度は魔法使いたちが防戦一方、またたくまに大岩の下敷きになってゆく。怒号と悲鳴が聞こえぬのがありがたいと思えるほど、水面の映像は酸鼻を極めていた。

 ついに魔法使いの一人が戦列を離れた。走っていく先には黒い塔。
 魔法使いは黒い塔の門扉のかんぬきを外し、そこに自分の指を食いきって溢れる血を注ぎかけた。と、塔が脈打った。水面の揺れがそう見せたのではないと断言できるほど、禍々しい脈動だった。そのまま門が倒れ、哀れな魔法使いを押しつぶした。そうして開いた黒い塔の中からあふれ出たのは無数の骸骨ども。骸骨たちは巨人どもにつぎつぎと飛び掛ってゆく。叩き潰されようが踏み潰されようが向かってゆく。偽りの命を得た死者たちは無数に塔の口から吐き出されてくるのだ。そうして骸骨たちに混じって風のように駆けだしてきたひとりの娘。素裸にクローク一枚だけを纏い、手近にいる命あるものを、当たるを幸い食い殺してゆく。嬉しげに喉を反らせ、笑いながら手を述べ、無造作に犠牲者の喉首を長い爪で掻き切っては血飛沫を心地よさげに浴びるのだ。犠牲者は巨人だけに限らない。手近にいれば魔法使いでもよい。

 「ああ、これはどちらが敵なのだろうな」
 アシュレイが呟いた。何の表情もない声だった。
 「あー……見捨てて置くわけに行き申さん。今すぐ救いに行き申そう」パラディグーム卿が言った「マルドゥーングに行って巨人どもを成敗するは腕を磨くによかろう。人を救えればさらによかろう」
 「順番が逆です」
 呆れたようにオーケストラが言った。やはりこの娘が一番まっとうなのであろうと私は思った。それは口に出さずに、代わりにこう言った。 
 「そうと決まれば、皆様どうぞ身支度を。儀式の準備が整い次第、マルドゥーングへ飛びます」

 まずはマルドゥーングに行く。調子に乗り過ぎた死霊術師を懲らしめ、魔法の使い手たちを救い、そうしてスカイメタルを手に入れる。ついでにアルブレヒトのところでうっかり聞き忘れた、神の鎖に関する情報も手に入るだろう。何しろ相手は絶対図書館を奉じる場所だ。調べ物には不自由しまい。
 それから爪の一族を探しに行く。マルドゥーングで充分な調べが付かなければ、アージェントに戻ってからでも巨人の軍勢の全容について調べねばなるまい。

 数え上げながら小さくため息をついた。
 やはり私では知恵が上手く回らぬ。アルブレヒトに特製のマスクをこさえてやる算段も、本気で考えねばならぬだろうか。


(第3回はここまででした)


このシーンの裏側。
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『巨人族の逆襲』第3回:その3

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 というわけで、妖精界はアルブレヒトの塔の1階の転移門に出た。いつもならこのような行き来は後詰の魔法使いの誰かにさせるのだが、今回はこの手の儀式を使えるのが私だけなのだから仕方がない。転移の儀式の執行に必要な貴石類については手持ちがなかったが、オーケストラから借りてどうやら間に合わせた。アージェントに戻るための儀式はオバナーから教えてもらった。儀式に必要な材料も借りた。どうにもみっともよよろしくない。

 アルブレヒトの塔の転移門の間は、凄まじい烈風が常に吹き荒れている。遠来の客人の身体や衣服にはどんなゴミや汚れが付いているとも知れぬ。万が一それが塔の主の命を危険にさらすような代物であってはならぬというわけで、塔の居住区に入るためには身に付けた塵をすっかり吹き飛ばしてしまわねばならぬのだ。
 その後私はようやく塔の最上階に招き入れられ、“西域の堅砦”アージェントの来歴と現状を事細かにアルブレヒトに報告した。

 いちいち頷きながら私の言葉を書き留めるアルブレヒトに、私は逆に質問した。そんなわけで“神の鎖”の欠片は奪われてしまった。なんとか取り戻すなりほかの欠片を手に入れるなりせねばならぬが、手掛かりがない。せめて盗人の正体なりともわからぬものかと思うのだが。すると一瞬考え込み、そしてアルブレヒトは答えた。

 「それは……フォスではないだろうか。元素操術師ブレヴェン・フォス、マルドゥーング魔法学院の俊英だった。しかし力を手に入れるのに逸りすぎたか、実験の失敗で盛大な人死に事故を起こし、学院に幽閉された。その後、何ものかの手助けを得て脱獄、以後、行方知れず」
 力を切望すること激しく、無茶な研究を重ねた揚句魔法学院の建物一棟を丸ごと氷漬けにする事故を起こしたのだと言う。そのとき運悪くその建物の中にいたものは一人残らず死んだのだそうだ。危険人物として幽閉されたが脱獄、元素の研究に血道をあげていたから、巨人族と精霊たちのもとに走ったとしてもおかしくはない。

 わかった、ではそいつに弱点はないのか。そう尋ねるとアルブレヒトは薄く笑み「ヒューマン以外のものになったという話は聞きませんよ」と言った。つまり首を刎ねれば死ぬ、心臓を突き刺せば死ぬ、そういうことだ。もう少し情報はないのかと食い下がった瞬間、にわかに外が騒がしくなった。見れば、人間たちの世界にあったはずのエラドリンの宮殿が、さんざんに打ち壊され、ところどころ炎上しながら妖精界に転移してきたところ。そしてその打ち壊され方にはなにやら思い当るところがあった。

 「まさか、あの城も巨人族の襲撃にあったのでは」
 これにはさすがにアルブレヒトも顔色を変え、水晶球を取り出すと、私が旅していた大陸の主だった都市を次々と映し出した。巨人族の襲撃にあっていない場所はひとつとしてなかった。
 「なんと、アージェントを守るだけではどうにもならないではないか」私は叫んだ「すぐに巨人族の軍勢の全容を調べ上げなくては」

 「だったらアージェントに戻るのが一番よいでしょう。これまで次元の破れ目をつくろい守り続けてきた場所です、情報はそこにこそあるはず」
 「おお、確かにその通りだ。ああ、私だけでは知恵が回らぬ、どうか一緒に来てはくれないだろうか」
 言った途端アルブレヒトは顔をしかめ、私を危険極まりない空気から守るマスクでも拵えてくれるというのならと言った。どうやら琴線に触れてしまったらしい。なんとかそのようなマスクを拵える算段も考えてみるからと言い置いて、早々に退出した。



 アージェントに戻り、盗人の正体を告げるのもそこそこに、大陸中が巨人族の襲撃を受けているということを話した。となればますますこの地を守ることが重要になるとオバナーは言った。次元の裂け目は世界の方々に出来ているかもしれないが、世界同士を隔てる壁が最も薄いのはアージェントのあるこの場所なのだから、と。そもそも巨人族はこの世界に元から住みなすものであるからどこに現れてもおかしくない。しかし次元の裂け目を通って悪しき元素が自在に出入りするようになってしまっては、各地の戦況はより悲惨なものとなるだろう。

 というわけで、腰を据えてこの砦を守ることにした。

 では、我々に何ができるだろう。
 もう一度数え上げた。

 まず爪の一族を探し出して呼び寄せ、この地の守りを強めること。
 それから巨人族の軍勢の全容を調べるあげること。

 「ああ、それにしても」と、オバナーは嘆息した「こうして英雄たちがこの砦のために立ちあがってくれているというのに、既にこの地にはあなた方に差し上げるべき英雄の証がないのです」
 
 もので証だてなくともわしは自分の技で自身を証だてられるぞ、と、やや鼻白んだふうにザンギエフが言った。なにしろわしの師匠の言うには、我が魂の宿るのは、ほかでもないいくさの技の中にこそ、というほどのものらしいからな。
 確かにそれはそうですが、その英雄の証は特別な鉱石を鍛えて拵えた特別な武具や装具で、特別な力をもつものなのですとオバナーはさらに言葉を継いだ。私はその作り方を知っている、しかしもう材料がない。それがいかにも残念だ。

 どのような材料なのだとザンギエフが問うた。特別な材料と言われ、ドワーフの血が騒いだらしかった。
 「スカイメタルと呼ばれるものです。天空から飛来する天の鉱石です」
 おお、それなら知っているとザンギエフは即答した。わしの村の真ん中に、大昔に天から降ってきたとかいう何やら奇怪な岩が突き刺さっている。しかしそれは村長が後生大事にしているものなのでここで使うわけにはいかん。それに手を触れようものなら、わしの兄弟子と兄弟子と兄弟子と師匠が地平の彼方から突撃してくるからのう。

 突撃される前に説得すればいいだけの話ではないかと思ったが、しかしザンギエフをさらに極端にした生物の複数名を前にしてどのような言葉を連ねればいいのかとんと思いつかなかったので、やはり品よく黙っておくことにした。それにスカイメタルの所在を知る者がこのアージェントの中にいるとオバナーが言葉を継いだのが聞こえたのだ。この街の住人に尋ねるほうが穏当に決まっている。

 「それは細工師クオールと言って、私を作った人です。大昔に亡くなって、今はこの街の霊園に眠っています。が、心残りがあるのか、霊園に詣でるたびに幽霊となって現れるのです」

 私はちらりとオーケストラとガーリンを見やった。幽霊なら僧侶の担当だろう。
 「なに、幽霊とて心はあろう。我が神の愛によって説き伏せればなんということもない」
 もちろんオーケストラはこともなげに言い放った。しかし私が思う僧侶の口調とは酷く違っていた。

 が、仕方あるまい。これから先は危険な仕事が待ち受けているのだ。隣の墓場まで行って幽霊と話すだけで特別な道具が手に入るのなら、そうしない理由はない。
 私たちはぞろぞろと霊園目指して歩き出した。


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 18:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第3回:その2

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 では、トリアンは、とオーケストラが訊いた。その娘も長い時をオバナーとともにこの砦で過ごしてきたのか。

 「いいえ」
 そうトリアンは言った。この砦の勇者に仕え、ともに砦を守ってきた爪の一族――人虎、人羆、そして人鷲の、爪をその主な武器とするものたちをそう呼ぶのだと言う――の娘、それが彼女なのだ。彼女の一族もまたかつてこの砦に仕え、そして砦を去った。それが40年ほど昔のこと。しかし砦の物語は一族の中に言い伝えられてきた。それを聞いて育ったトリアンは長じると親兄弟を離れ、伝説のアージェントを目指し、辿りついた。以来、ここにいる。確かに長い時をここで過ごしてきたとはいえ、オバナーほどではない。

 「しかし感心なものだな。わざわざ戻ってきたのか」
 アシュレイが言うと、トリアンはわずかにうつむいた。
 「ええ、白銀の都アージェントには白馬に乗った騎士様たちがいらっしゃる……と……そう物語には……」
 そして、恥ずかしそうに伏せた睫毛の下から、目の前にずらり並んだパラディグーム卿、ウルリク、ザンギエフ、ガーリンを順々に見つめたものである。

 「残念ながらトリアンどの、白馬は喰って旨いものではないぞ?」
 数瞬の沈黙の後、ザンギエフが口を開いた。普通なら足を蹴飛ばすべき台詞だが、何も言わないよりはましに決まっているので放っておいた。トリアンが悲しそうな顔になったところに、パラディグーム卿が真顔になって、あいやお娘御、騎士の騎士たるは馬を有しておるかおらぬかに拠るものではござらぬ、騎士が勤めといたす騎士道の掟を心に持って居るかに拠るのでござると訥々とした口調で諭したので救われた気になった。トリアンの目の色を見ればその言葉に感銘を受けているのは明らかだったが、しかし40がらみの卿は、トリアンの婿君としてはやや歳が行き過ぎているようにも思われた。
 かくなるうえはウルリクを売り込むしかないとオーケストラが不穏なことを言っていた。そうして、ああみえても実は人間であるだの、血がすべて猛毒ということもないだのと口走っていた。私もそこそこ長く生きているほうだが、そのような台詞が婿の売り込みの口上になるのは初めて聞いた。そもそも当のウルリクはというと、ザンギエフが切り捨ててあったバシリスクの死体を目ざとく見つけ、その解体にとりかかりながらいわく言い難い視線をときどきトリアンに投げているのである。エラドリンのウィザードとしての知識を隅から隅までひっくり返しても、娘御に思いを寄せるというよりは、ありていにいえば気違いを見る視線だった。白馬の騎士などと本気で口にできる娘は、アシュレイが男装して寄り添ってやっても大いに嬉しがるのではないかと思ったのだが、皆まで言う前に横腹に電撃を叩きこまれたので口を閉じた。まったく、一番まっとうな提案をしたのは私だというのに。

 ともあれ、無駄口ばかり叩いているわけにもゆかぬ。善後策について話し合うことにした。
 まず、勢いでここに乗りこんできてしまった私たちではあるが、本当にこの砦を守るのに力を貸すのか。アシュレイはそもそもこの砦の防衛のために造られた兵士である。パラディグーム卿とオーケストラは、それは騎士の務めとして、あるいは神の戦士として当然のことであると言い、私は自分の都合で招請状に乗ったのだからそれは契約がなされたのと同じであるということを、もう少し遠まわしに言った。ガーリンは口の中でもごもごと何ごとか言い、ザンギエフはそれをきいて感に堪えないといった表情をし、わしはどこまでもガーリン様についていきますじゃあと叫んだ。なんでもガーリンは興奮のあまり、「変えるかえる世界を変える変えねばならぬ」と連呼していたのだとか。そうして最後にウルリクが「十分に強い敵が用意されているのなら俺に不満はない」といってにやりと笑った。とりあえず、全員に否やはないということだった。

 さて、では、私たちにできることは何か。
 まず、この地を立ち去った爪の一族のもとに行き、現状を説明して砦に戻るよう説得するというのがある、とオバナーは言った。旧帝国が潰え、勇者たちが送られてくることはなくなってしまったとしても、その従者たちなりとも戻ってくればずいぶんと心強い。それにトリアンを案内に立てれば人虎たちが住む場所にはすぐに行きつけよう。できない話ではない。

 もうひとつ、奪われた“神の鎖”を取り戻し、また集めるというものがある。この“神の鎖”は、“暁の戦争”の際にプライモーディアルの王たちのひとりピラノスを捕えて封印する際に、その封印の儀式の焦点具として使われたものだという。それは五つの輪から成る短い鎖であったが、儀式が完成された後、封を解くための解除の儀式に用いられることのないよう、ひとつづつの鉄輪に分解され、そうしてそのひとつがこの“西域の堅砦”に収められた。
 巨人たちはピラノスを解き放ち、それを王として人間の世を攻め滅ぼすつもりだろうとオバナーは行った。鎖は五つの輪がそろわなければ焦点具として機能することはない。巨人どもがすべての鉄輪を集めてしまう前に、ひとつでも“神の鎖”を確保しなければ。

 しかしこれはこれで雲をつかむような話である。そもそも“神の鎖”を盗み取ったものはローブで顔も身体もすっぽりと隠し、正体のつかみようがなかったというではないか。

 「まったくだ。顔も見えぬ技も見えぬ。これだから魔法使いは好かぬのだ。だが、私の一撃、そしてザンギエフの一撃を喰らっても倒れなかったのは、これは珍しいのではないか」
 「黒いローブから血が絞れるほどにはぶんなぐってやったのじゃがなあ。逃げる一瞬だけ、掲げた手の指にはまった指輪が光っておった。にしても技が見えぬのは何とも腹立たしい。何しろわしらに殴りかかってきたのは、奴の手下の火精どもじゃったからなあ」
 「……今、なんとおっしゃいました」
 アシュレイとザンギエフの言葉に、私ははっと顔を挙げた。

 「あなたがたの斬撃に耐え、転移の指輪を使いこなし、そして元素の精を手足のごとく使いこなす……それはヒューマンでしたか?」
 「手ごたえからするとヒューマンだった」

 ならばわかるかもしれません、と私は言った。
 妖精界に、世界中から持ち込まれた知識を頭の中に詰め込んでいる稀有な友人がいます。私をここに寄越したのもその友人なのです。それだけの使い手の人間とあればそこそこに名の知れた者のはず。彼に訊いてみましょう。

posted by たきのはら at 14:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月13日

『巨人族の逆襲』第3回:その1

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。

























 広場に戻ると、オバナーは私たちの無事を喜び、被害が“神の鎖”一点のみに留まったことを不幸中の幸いと言い、そうして英雄らしい働きをしたのだからまずは一休みするようにと言って、私たちを(ひとっこひとりいない)街なかに案内し、一軒の家の扉を開けた。これこそアージェントに一軒だけ残った宿屋で、その名もシルヴァークローク・インというのだそうな。いつか英雄たちが訪れる日のためにオバナーは精魂こめて店を維持していたらしい。店内は居心地よく整えられ、棚には多くの酒瓶が並んでいたが、ざっと見たところどれもこれも呆れるほど強い酒ばかり。するとザンギエフがどこからかジョッキをひとつ取出し、これは魔法のジョッキだから中からいくらでもエールが出てくる、だから酒の呑めない向きはこれで喉の渇きを癒やすといいと言った。エールも一種の酒ではないかと思ったが、ドワーフ相手にそんなことを言おうものなら酷く面倒な破目になるに決まっているので、品よく口を閉じておくことにした。

 それよりも心配なのは、オバナーがどこからかエプロンを取り出してきてごそごそと首にひっかけると厨房に入り、火をおこして鍋を引っつかんだきり突然静止したことだった。どうしましたと言ったらもう気が遠くなるほど長い時間をトリアンと二人きりでいるものだから料理の仕方を忘れたのだと答えた。虎娘のほうを見たら、料理は練習しているのですけど、いつもこんなぬるいスープを客人に出せるかとオバナー様に叱られるのですと言い出した。虎娘だけにどうやら猫舌らしかった。仕方ないので私が食事を作った。

 食事をしながら、この街の来歴を初めてまともに聞いた。

 なんでもこのあたりは次元の壁が薄くなっており、世界の破れ目ができやすいのだという。次元の帳の裂け目からはさまざまなものが漏れ出してくる。良いもののときもあるが、だいたいろくでもないものが、この豊かで美しい世界を侵略しにやってくるのである。だからこの場所に砦を築き、世界の守りとした。砦の守りは帝国の各都市が約定を結び、それぞれの都市が我と我が身を守るためとして選出した勇者たちが務めてきたのだとオバナーは言った。

 「だが、なんということか、いつしか守られることに慣れきった都市は勇者たちを寄越さなくなり、我らは力を失っていったのです」
 「おお、それはなんと。この世界では騎士道が廃れて長いということか」
 「それは誤解でしょう」
 恨めしげに言うオバナー、そして憤るように言うパラディグームに私は告げた。帝国という呼び方に心覚えはあったが、それは史書に残る昔にあった国の呼称。

 「あなたの言う帝国はいったいいつのものでしょう。帝国はもうありません。滅びたのです。今では旧帝国の名が残るばかり。そして旧帝国は崩れだしたらあっという間、あまりにも瞬時に滅びたので、あなたがたのもとに使いを立てることもならなかったのでしょう」
 「ならば仕方あるまい」
 パラディグームは得心したように深々と頷いたものである。
 「身どもはこの世界のことは存じ居らぬが、まことの騎士というものは一つの時代に二人か三人あればよいものじゃ。さらに国が滅び制度が廃れれば、頭数が揃わなくなるのは無理からぬことじゃろう」

 この騎士殿、ものごとをわかっているようで余計面倒にしそうだったので、慌てて言葉を継いだ。
 「それからもう、長い時が流れてしまったのですよ。けれど、この砦のことはいくつかの書物や巻物に記され、私たちの手元にまで記された言葉は届きました。けれどそれは時の流れの中に磨耗し、曖昧模糊としたものと化していました。それがために私はここに来たのです。この西域の堅砦、アージェントの去来を調べるために」
 「おお、それなら帝国は滅びたといえどもあなたがたをこの地に使わしたのだ。ならば私もずいぶん丁寧に説明せねばなりますまい」
 オバナーは大きく頷き、それから宿屋の白壁をじっと見つめた。その目が明るく輝き始めたかと思うと、オバナーの目から映像が壁に投影され始めた。ぽんこつとばかり思っていたが、ずいぶん便利なからくりを仕込んでいるもののようだった。

 この世は決して堅牢なものではない。古い衣服の布地や縫い目がほつれるように、世界と世界を隔てる壁にほころびの生じやすい場所がいくつもある。西域の堅砦アージェントもそのような場所に据えられたもののひとつ。他には“東方の長城”だの“南海の竜城”だのがある。
 西域の堅砦は各都市から集まった勇者たち、そして彼らを助ける“牙の一族”によって守られていた。しかし新たな勇者は来なくなり、それまでに居た砦の勇者たちは戦いで欠け、あるいは年老いて死んで、一人二人と減っていった。アージェントを守る勇者が最後のひとりを残していなくなったとき――驚いたことに、目の前のぽんこつ氏、オバナーこそが最後の勇者だったという――牙の一族はもはやこの地に使えるべき理由なしと判断し、去ることを決定した。そうしてこの街はオバナーを除いては無人と化したのだという。

 私は金属の身体に魂を宿したもの。ならば身体から魂が引きはがされぬ限り、永遠にも近くこの世に存在することができます。ですから私はただ一人、このアージェントを守り続けたのです。

 そうオバナーは重々しく告げた。
 そう、彼の肩を覆うのは、アージェントの全盛期の風景の中、砦を闊歩していた勇者たちがまとっていたものと確かに同じ、白銀のクロークだったのである。
posted by たきのはら at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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