2008年09月16日

シリーズ第13回『森に住む日々』その8:キメラの寝床

 キメラは普通の剣で斬れるかどうかということをまず確認した後、今度はキースが城跡を探りに行った。

 扉の落ちた門を抜けると、奥のほうから寝息の二重唱が聞こえる。足音を忍ばせてさらに進むと、寝息は突き当たりの壁の向こうから聞こえてくる。壁の向こうが見通せそうな場所まで回りこんでも姿は見えないが……うん、だいたいは見当がついた。

 というところで城門まで戻り、ウィチカとアルテアに“静かに来い”と合図を送る。
 まず城の中に入って、壁の向こうに錬金術師の火なり足止め袋なりを投げ込む。動けなくなってくれればもうけもの、滅多打ちにして片付けよう、というのはあらかじめ話し合ってある。

 キースとアルテアが城の壁に近寄り、ウィチカが呪文を唱え始めたところで寝息が止まった。

 「寝てればいいものを!」キースが錬金術師の火を壁越しに投げ込むと、ぎゃっという悲鳴の三重唱が聞こえた。すかさず声のしたほうにアルテアが足止め袋を投げ込む。
 が、それは外れたようで、数瞬後、壁の向こうに三つ首を生やした巨体が迫り上がってきた。その巨大な喉首めがけてマジック・ミサイルが飛ぶ。返礼のように黒い酸の雨。

 壁を回り込むように走り出したキースを横目に見ながらアルテアは2個目の足止め袋を投げつけた。袋が翼に絡んだキメラはたまらず壁の後ろに姿を消す。キースが――今回は呪いのかかっていない曲刀を構えて走りこんで行くのにバーチを援護に向かわせて、アルテアはアルテアで雷を呼ぶ。青天井から気持ちよく雷がキメラめがけて落ちてゆく。ウィチカも壁の影に隠れるようにしながらマジック・ミサイルを撃つ。

 というわけで(一度はキースが死に掛けたものの)、廃墟に巣食っていたキメラをどうにか退治してのけた。
 「これはちょっと皮をはがしてなめすのは難しいわねえ……」とアルテアが首を傾げる傍で、キースが呆れたようにキメラの寝床をひっくり返す。

 竜モドキのいる場所なんだからもうちょっとわかりやすい活用方法があると思うぜ?

 その言葉通り、銀貨ばかりが6000枚、そして巻物に霊薬瓶が転がりだしてくる。巻物はなにやら闇市場に売り払うよりしようのないような代物だったが(どう頑張っても人道にもとらない使い道のできそうもない死霊術の呪文がべったり記されていたのだ)、霊薬のほうは肌を堅くするもので、ずいぶんと役に立つ。

 そしてキメラの寝床の下には地下へと通じる階段もあった。
 どうやら“次元の裂け目”とやらへの手がかりはこの下にありそうだった。

このシーンの裏側
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シリーズ第13回『森に住む日々』その7:歪みへの道

 調べ物もあったし買い物もあったので、近くの街に寄った。
 小さいとはいえきちんとした図書館もあり、「ちゃんと知識が紙に書いてあるよー!!」とウィチカはうきうきと図書館に入っていった。
 世の理を文字とやらに書き付けてわかった気になっている不遜な奴ら、とかあのノールに言われたのがよっぽど癪にさわってたのかなぁ、と、アルテアは独り言のように言った。

 ともあれ、紙に書いた知識の力は絶大で、財布から出した金貨五枚および相応の時間と引き換えに、ウィチカはこれから向かう場所で遭遇するであろう脅威の色々についてすっかり調べ上げてきたのだった。

 あの黒い禍々しいものはフィーンド種で、この世界にいる生き物が悪の力に染まったものであり、呪文が効きにくかったり魔法の武器でないと傷つかなかったりすること。
 また、悪の次元界といってもいろいろあって、例えば秩序にして悪の存在はデヴィル、混沌にして悪の存在はデーモンといい、それぞれ特定の元素に対して耐性や抵抗性を持っていること、そして連中を切り払うには“善なる武器”が必要であること。そういえば中立にして悪の存在はユーゴロスあるいはダイモーンと呼ばれ、これはこれで他の二つとはちょっと違うのだけれど……ええと、確か魔物学講義でユーゴロスの回の時は黒き氷を取りに出掛けてて、公休扱いになってたはいいものの補講取り逃しちゃったのかも……

 ともかく、その悪の次元界とやらから出てくるものをどうにかするには、武器を善属性にしなきゃならない、と。が、そんな金はないし自前でそんな魔法も持ってない。……手持ちの金で人を雇えるか?
 キースが言い、全員で手持ちを持ち寄った。
 金貨1000枚を越すか越さないか。
 これから何が起きるかわからないことを考えると、これではとても、それなりの魔法を使える人間は動かせるわけがない。
 困り果てたが、魔法屋にいけば何とかなるものである。刃に塗れば武器に善の力を付与する油があるというので、それを買えるだけ買い込んで、城跡に向かった。

 途中、ウィチカがちょっとばかり毒キノコに中ったり、アルテアが道を踏み外して崖から滑り落ちたりということもあったが、ほどなく城跡に着いた。

 城は丘の上にぽつりと立っていた。
 屋根は落ち、壁は崩れ、見るからに廃墟である。そして、どうやら何かの動物がそこを巣にしているらしい。

 「壁の外に糞が落ちてる。わりときれい好きな動物だね。あと、出入り口の辺りに身体をこすり付けた跡がある……遠目じゃわからないから、ちょっと小鳥にでもなって様子を見てくるよ」

 アルテアはそういうと、見る見るうちに……人ほどの大きさの大蛇になった。

 「ちょっとアルテア、あんた小鳥になるんじゃなかったの!!」

 ウィチカが飛び退いて叫ぶ。が、小鳥だとたちの悪いのが棲んでたときに丸呑みされちゃいそうだし、と身振りで言い残すと、蛇のアルテアはするすると草地を這っていった。

 丘の上の廃墟に棲んでいる――あるいは棲んで“いた”かもしれない。足跡の古さはアルテアにはわからなかった――のは1体。にしても奇妙な動物で、確かに四足なのだが、前足には肉球があり巨大な猫のよう、後足には蹄、そして黒いうろこが落ちている。身体をこすり付けた跡を良く見ると、砂色の短い毛(かつて一緒にいた“猫さん”こと豹のベラのものと良く似ていた)と黒いもつれた毛(これは山羊の毛のように見えた)も落ちている。抜け毛をよくよく観察した跡、落ちていた黒いうろこを一枚くわえて、アルテアはまたするすると丘の下に這い戻った。途中長い胴体で、落ちていた枯れ枝を1本うっかり折ってしまってひやりとしたが、まぁ特に何かに気付かれた様子はない。

 丘の下に戻って(そして「気色悪いし蛇のままで攻め込むとかありえないから人型に戻れ」と言われて元の姿に戻って)見てきたものを説明すると、ウィチカがなんとも言えない顔をした。

 ああそれキメラだわ。獅子の身体に山羊の後足、蛇の尻尾。あと獅子と山羊と竜の首がついてるわ。竜はブラックドラゴンね。酸を吹き付けてくるわよ。

このシーンの裏側
posted by たきのはら at 14:28| Comment(4) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第13回『森に住む日々』その6:旅路ふたたび

 それから暫く、石舞台の上で過ごした。
 見張りがつくのは仕方ないとして、髑髏齧りが何かのついでを見つけるたびにやってきて、秘術に魂を売った者にはどのような報いがふさわしいかというような演説をぶつのはたいそう心の平安によくなかった。

 とはいえ、謎の黒狼に襲われたりドルイドたちにつるし上げられたりと散々だった一行は、ここでどうやらほっと一息つけたというのも事実。少なからず負った怪我を治してしまうと、今度はウィチカが黒狼の尻尾をいろいろと調べ始める。そうして……

 「……あ、思い出した、こいつ、フィーンド種のイキモノよ」

 フィーンド種というか、悪の次元界の影響を受けてるの。悪にもいろいろあるからどこから来たのかはちょっと特定できないけど、とにかく別次元の力がこちらに漏れ出して、ダイアウルフがその影響を受けたってところだと思うわ。でなければ本来は悪の次元界に生息している生き物が、次元の裂け目を通ってこちらにやってきて、こっちのダイアウルフとつがいになって家族をつくってたとかだけど、それにしては普通のダイアウルフの特徴が強いから、世界の裂け目から漏れ出した別次元の力に影響を受けたというほうが正しいと思う。……で、とすると、今回は学園の先生方は関係ないと思うのよね。少なくとも前のウーズ騒ぎのときに開いた次元間の裂け目とは別。

 「確かにね。下水道にもぐったときも違和感はあったりなかったりしたけど、今回あの狼を見たときみたいな“禍々しい”感じはなかったわ」

 でたらめを言うな、とちょうど居合わせた髑髏齧りが唸ったが、これはさすがに見張りのドルイドに石舞台から追い出された。我々にはこの娘のような秘術の知識はない、一方でこの娘がわれらをたばかるつもりかどうかぐらいはわかる。お前の耳にこころよくないものを全て偽りとみなしていたらかえって真実を見失うだけだ。
 そうね、とウィチカは小さくうなずいて続けた。

 「だいたい、今回のことは教授陣がしでかしたとしたら説明のつかないことがいくつかあるのよ。まず、ここにゲートを開いたところであの人たちにとって何の利益もない。管理するにもわざわざここまで来なきゃいけないしね。あの人たちがやりたいのは結局研究なんだから、ゲートを開けるなら管理も研究もしやすい街の地下に開けるわよ。で、街の地下に開けたら、ここでわけのわからない異次元のイキモノが出没するようなザルなこともしないわ。前の時だって地上では何も知らずに生活できるくらいの――まぁ、下水があふれたことはあったけど――ほとんどの人は何も気付かずに生活できるくらいの管理はできてたもの」

 それに、ゲートってあなたたちが考えているよりも面倒なのよ。ぽこぽこ開けられるものでもないし、だいたい街の地下で開いたゲートがここまで無責任な影響を及ぼすような、そんなずぼらなことをしているようじゃ、あなたたちの手を煩わすまでもなく、あの街は沈むわよ。

 そこへトレントのもとへ使いに出ていたドライアドも戻ってきて、アルテアの言ったことは正しいこと、ウィチカは確かに秘術の徒だがトレントは彼女のことを大変よく言い、またユニコーンを見つけて助け出してくれたのはまさしく例の街の自警団の人たちであったと請合ってくれたこと……を、証言した。
 そこでようやくウィチカの疑いは晴れ、学園都市殲滅作戦も取り消された。

 とはいってもそのまま住処の森に帰っていいとはさすがに言わない。そう、学園の教授陣のしたことかどうかはひとまずさておき、秘術の使用によって無理やり引き裂かれた世界の裂け目を閉じるには秘術の知識は必須。というわけで問題解決に協力してほしい。まずは世界の裂け目について知っていることを教えてほしい。
 それじゃ、知ってることを話すわ、と小さく息をついて、ウィチカは話し始めた。

 「まず、世界の裂け目――ゲートと私たちは呼んでますけど、これはそうそう開けるものじゃありません。伝説に残るほどの魔道師なら一人でゲートを開くだけの魔法を紡ぐこともできますが、学園の教授陣にもそんなのはいません。前に街の地下にゲートをあけたときは、下水道を封鎖し、そこに魔方陣を描いて学科あげての魔法儀式を何日も続けて、それでようやく開いたんです。
 恐ろしく強力な悪い魔道師がうろついているというんじゃ手の施しようがないですが、まぁそんなことはそうそうないと思うので、何らかの理由でゲートを開けようとしている“集団”がいるんでしょう。
 ――そんな連中を森で見かけたことは?」

 いや、それはない。我らが知っているのは世界の裂け目が存在することによって生じる“結果としての事象”だけだ。

 「じゃあ、そんな集団が人知れず魔法儀式を執り行えるような場所はありますか? そこが怪しい場所です」

 そこでドルイドたちは暫く話し合っていたが――さまざまな奇怪な事象の現出した場所のいずれもに遠くない場所で、そのような人知れず勝手が行えるような場所は――やがてウィチカたちにこう告げた。

 確かにお前の言うような場所がある。そこを探索してきてほしい。
 わかりました、とウィチカはうなずいた。

 「父の友であるホーソーン師やここにはいないサイリエンの為なら、私はあなたの力になります。
 森の中で過ごしてきたあなたがたには、私の秘術の力は異なものに映るでしょう。しかし、異なる力に触れるから解決できることもあると思います。私はこの二人と出会ってそれを学びました」
 
 ホーソーン師がかすかな笑みを浮かべて長老を見やる。長老は答えてウィチカにうなずいて見せた。
 よかろう、そなたの言うことは理にかなっている。そなたへの悪意は今は我らにはない。そなたの持てる力を我らに貸してほしい。

 ドルイドたちからの依頼というのはこうだった。
 ――ここから3日ばかりいったところに、崩れた古城跡がある。それは大変古いもので、訪れる人とてないが、そこには地下の階層があることは知られている。次元の歪みの元凶はそこにあるのではないかという話になった。だから、行って何があるのか調べてきてもらいたい。
 古城というのなら何か来歴があるのではないかと詳しいところを尋ねたが、ここにいるもっとも年嵩のものが物心ついたときに、既に屋根の落ちた廃墟となっていたというばかり。

 仕方ないので、ここで整えられる限りの装備を整え、あとは少し回り道をすれば街があるというのでそこで調べ物だの買い物だのをすることにして、出掛けることにした。
 装備を整えるといっても、傷を癒す魔法の力を混めた棒杖と保存食ぐらいしかすぐに手に入れられるものはない。一行は例の下水道掃討のときに有り金をだいぶはたいてしまっていたのだが、それは実は余り問題にならない。ドルイドたちの間では貨幣など意味をなさないのだ。このままでは何も手に入れられない。

 ほら、だからさっきの狼の毛皮と、あと当分は使う予定のない耐臭剤やなんかと交換すればいいんじゃない。物どうしの交換になるから、街にいるときみたいにお金が目減りしたりもしないわよ。
 荷物の中を漁って手放しても問題なさそうなものをかきあつめ、棒杖と、それから3人と1頭が10日間やっていくだけの食糧をどうやら手に入れた後、アルテアは得々として言った。
 が、後の二人は一応頷きながらもたいそう胡散臭げな顔をしていたのだった。

このシーンの裏側
posted by たきのはら at 11:36| Comment(8) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第13回『森に住む日々』その5:暴走と弁明

 「うわぁ、危ない、ウィチカこっちに来て! バーチ、ウィチカ連れてこっちに来なさい!!」

 髑髏齧りの手下がキースの手をつかまえ、ウィチカのほうに行ったのは髑髏齧り本人なのを見た瞬間、アルテアが叫んだ。あの血気にはやりすぎたノール、秘術の娘をただここまで引っ張ってくるだけにはとどめてくれない可能性もある。それでも間に合わず、ウィチカは森の際までずるずると引っ張ってこられたのだが、それを見たキースがノールの手下の手を振り払って髑髏齧りに怒鳴りつける。

 「ふん、このわからずやが。“違い牙”のほうがまだしもものがわかっていたな」

 違い牙……かつてこのあたりで“剣の王”ラーザールの住む洞窟を自分らの神の住む社として祀っていた黒斑一族の戦士長である。戦いで捕まり、どうせ死ぬとわかって散々にキースとタムリスを愚弄していたところを、キースに一喝されて思わず情報を洗いざらい吐いたのだったが――あの戦士長の名と死に方を知っていればこの短絡思考のノールも少しはおとなしくなるだろう。

 「は、小僧、いつまでもそれが通じると思うな。“違い牙”は戦士だ、俺は奴とは位階そのものが違う」

 髑髏齧りが鼻で笑う。その隙にバーチはウィチカの服のすそを加えて引っ張り、1人と1頭はドルイドたちの輪の傍、ホーソーン師の隣に小さくなる。

 「ふむ、違うか。つまりお前のほうがひどいわからずやってことか」

 キースがにやりと笑うのに答えて、ノールはフレイルを振り上げた。やめてください、ここで殴り合いしても仕方ないでしょう、と叫ぶアルテアに、子犬は悪さをしたその場所でしつけないとなぁ、と凶悪な笑い声で答えながらノールはフレイルを振り下ろす。
 ちくしょう、ずいぶん手荒な野郎だ、と砕かれた肩を押さえ、キースは苦笑いする。ノールは“躾は終了”とばかりにのしのしと輪に戻ってくる。

 キースには申し訳ないことをしたけれど、何だかんだ言っても彼はレンジャーでもあるのだし、最終的にはそんなに酷い扱いは受けないだろう。それにここにいるのは魔法学院の教授陣よりはよほど思考の回路が短い人ばかりなのだもの、仕方ないわ。
 そう小さくつぶやくと、アルテアはウィチカとキースを輪の中に招きいれ、そして二人――特にウィチカをホーソーン師のすぐ傍に寄せるようにして立つと、自分たちが街を出てくるきっかけになった“あの事件”について語り始めた。

 ――最初は学院の教授たちのごく穏やかな実験だったみたいなのです。だけど力がほしくて暴走した人がいて、街の地下で変なウーズを逃がしたり別次元のイキモノを飼ったりしはじめたのです。
 私たちはちょっと別の用事があってシュノープレーに会いました。そしてそのとき、下水道がおかしなことになっているので何とかしてほしいと頼まれたんです。そこで調べていくうちにさっき言ったようなことがわかりました。
 これはあまりにも危なっかしい、って、私たちは思いました。何が起きるかわからない、と。そこで、下水道で行なわれている最中の実験を――まぁ、実験に必要なものをいろいろ壊したりして――やめさせました。シュノープレーにはそのときに助けてもらいました。
 結局そのことで、私たちは街にいないほうがいいんじゃないかということになりました。学院の先生たちのやり方も気に食わなかったし、それで街を出て、今住んでいる森に来たのです。シュノープレーもこんな感じの悪い下水道には住んでいられないから別のところに行くって言ってました。最後に会った時はシュノープレーは元気でしたし、別のところに行くって言ってたのも確かです。でもその先はわかりません。

 アルテアが口ごもるとウィチカやキースが口添えして話を終える。

 ふむ、と、長老らしきドルイドが言った。この娘たちの様子は特に嘘を言っているようにも見えない。話は額面どおりに受け取って構わなかろう。で、話の内容から考えるに――あの街の連中はやはり許しがたい。ここはひとつ、地図からあの街を消すのがよいのではないか。

 「ちょ、ちょっと待ってください! 確かにあの街はけしからぬことでいっぱいです。前には心術使いがトレントを見世物にしていたりもしましたし」
 「なんと、では、トレントも被害者なのですか!? これはますます……」
 「ええトレントも被害者です、でもそのトレントを助けたのも、あの街の人たちなんですよ!!」

 それは、と、ドライアドの厳しい表情が少し緩んだ。一概に滅ぼしていいとも言えませんね。そのトレントから話を聞いてきましょう。名前はわかりますか。

 「名前はわかりません。でも、西の、デルス・ドル・イーの国境近くでユニコーンの子の親代わりをしているトレントです」
 
 それならわかる、誰か話を聞いて来て、その結果でこの3人の処遇と例の街の扱いを決めよう。

 「だからいちいちと手のかかる、まずはこの秘術の小娘を柳籠に編みこんで……」

 飽きもせずに髑髏齧りが言い出した瞬間、ウィチカがずいと進み出た。

 「よほどそれがお好みらしいけど、私一人柳籠に入れたところで、あなたの胸がすくだけで何にもならないわよ」

 ふざけるな小娘、といううなり声とともに、ウィチカの身体が持ち上がった。襟首でつるし上げた小生意気な娘に一声吼えると、髑髏齧りはそれを思い切り放り投げる。きゃあなんてことを、と叫びながらアルテアが何とか身体でウィチカを受け止め、何か言おうとし、黙った。
 ――3人が3人とも騒いだら、余計まずい。

 まぁ待て、ここで生贄の儀式をしても裂け目が閉じるかどうかなど我らは知らぬのだ。ことを進めるのはトリエントからの言葉を待ってからがよかろう。
 長老がそう言い、答えてドライアドが森の中に姿を消した。
 そして、ウィチカを筆頭に3人と1頭は“いかにもノールが好みそうな、古い血のこびりついた石舞台”に追い上げられ、話が決まるまでそこに留め置かれることになったのだった。

このシーンの裏側
posted by たきのはら at 08:21| Comment(4) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月15日

シリーズ第13回『森に住む日々』その4:森の理屈

 狼一家の皮をすっかり剥いでしまうと残った肉は土に埋め、戦いで受けた酷い傷もとりあえず治すと、また先へ進む。
 ドルイドたちの集会所はすぐそこだった。

 「師父、たった今到着いたしました。こちらが仲間の……」

 ウィチカをホーソーンに引き合わせようとアルテアが駆け寄ると、ホーソーンは相好を崩すどころか却って眉をひそめ

 「今回はお前一人だけで来るべきだったのだが」
 「え、でもそんなことはどこにも」
 「確かにそれはこちらが知らせてやるべきだった。とにかく今は秘術の輩が顔を見せるのはまずい。とにかく彼女は森の中に隠しておけ」

 見れば集会所のストーン・サークルに集まっているドルイドたち――人やエルフだけでなく、サテュロスやドライアドもいる――は、誰もが険しい眉根を寄せておそろしく剣呑な空気が漂っている。たしかにまずい。

 ウィチカを森の中の居心地の良さそうな木の下に休ませ、ひとりじゃ怖いと言うのでバーチを守りに残し、アルテアはホーソーンについてストーン・サークルへと向かう。一応レンジャーのキースは強くはとがめられないので、それをいいことに少し遠巻きにして様子を伺う。

 「これで、揃ったか」
 「いや、“髑髏齧り”がまだだ」
 「……最近は剣呑だからな」

 まさか、とアルテアは荷物の中からさっきの黒狼のしっぽを引っ張り出す。

 「確かに、さっきここに来る時にも、なにやら常ならぬ邪悪な空気をまとった狼が」
 「……やはりな、何かがおかしいのだ」
 「何かが狂っているのだ」
 「自然ならぬ何かが悪事を働いているのだ」

 ひそひそ、とささやきが波のように広がる。剣呑な空気がいっそう剣呑になる。と、そのとき、ドルイドたちの輪の一箇所だけ空いた場所に、1頭のノールがのしのしと入ってきた。お付きのものらしきノールやおそらく彼の“相棒”であろう狼もすぐ隣に控える。

 「さて、全員が揃ったな。では、ここ最近この地を騒がす不穏な事象について話し合おうではないか」

 長老が口を開いて話し始めると、それを遮るようにノールが唸った。

 「秘術の連中だ。そしてここにもいるぞ。羊皮紙とインクのにおいがする。やい、神聖な集まりに誰がそんな奴らを連れ込んだ」

 アルテア、思わず口を開きかけたが、さすがに自分がここで騒ぎを起こすのは上手くない。ホーソーンに目配せすると

 「まぁ待て。確かに秘術の人間は、居る。だが、私の知人の娘でもあり、私の弟子の仲間でもある。構うな」
 「構うなったって秘術の人間、最近の“歪み”の元凶は奴らに決まってるじゃないか。仮にも俺たちが世界をゆがめるなんてするはずがない。神とやらを信じる連中なら、神に会いたきゃ自分でそっちに行くだろう。だから悪いのは秘術の連中だ。集会の始まりにそいつの生き血を石舞台に注ぐか、柳籠に編みこんで生きたまま燃やせば、ちったぁ集会の実りも増えようってもんだぜ」
 「ちょ、ちょっと待ってください、そんな乱暴な」

 アルテアが思わず進み出ると、ノールはようやっと言葉とわかるほどな唸り声で生意気な小娘を一喝した。

 「黙れ小娘、お前と俺では位階が違う。お前の師匠は俺と対等だがお前は師匠の弟子に過ぎない。過ぎた口をたたくな。分をわきまえるのはお前が連れている……」

 そこでノールは口ごもった。
 狼のにおいがしたので小娘の相棒はてっきり狼だろうと思ったのだが、肝心のその相棒はどこにも居ない。もうひとつ何か言おうとしたとき、ホーソーンが宥めるように言った。

 「まぁ待て。その娘はついこの間まで猫と一緒に居たのだ」

 猫か、猫じゃしょうがねえ、と髑髏齧りはぶつぶつ言ったが、さすがに猫の悪口を言ってここにいる“猫が相棒”の誰かの機嫌を損ねたら徹頭徹尾まずいという判断はついたのだろう、口をつぐんだ。そうして、とにかくこのままでは埒が明かない、話を進めよう、と誰かが言って、どうやら集会が始まった。

 「では、昨今の奇妙な事件のことについて話し合おう――それぞれ、持ち場で変わったことはないか?」

 ドルイドたちは順繰りに、自分の“持ち場”で起きた事件や怪異について報告する。が、アルテアはというと最近森に戻ってきて“持ち場”についたはいいものの、報告する何事もない、穏やかな日々を送ってきている。

 「つい最近“持ち場”につきました。ここに来る途中で禍々しい狼と戦ったほかは、何もありません」
 「そうか……が、安心はできない。そもそも連絡の取れない連中もいるしな、街の下水道に住むシュノープレーも消息がしれない」

 え、とアルテアは思わず声を上げた。
 シュノープレー、あれ以来何かあったのですか。

 険しい顔のドルイドたちが、いっせいにアルテアのほうを見た。

 「アルテア、輪の中央へ。詳しく話してもらおうか」
 「ほーら来た、やっぱり秘術の連中が仲間にいるだけのことはある、んじゃあ森の中に逃げ隠れしてるのにも出てきてもらおうか。さっきからそこでこそこそしてる小僧にもな」

 髑髏齧りが勝ち誇ったようなうなり声をあげる。そうして駆け寄るアルテアの手を邪険に払いのけると、手下にひとつ顎をしゃくって見せ、のしのしと森へと歩き始めた。


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posted by たきのはら at 10:37| Comment(6) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第13回『森に住む日々』その3:不自然な狼

 次の日からはまた旅の生活だった。
 が、ウィチカとキースにとっては奇妙な旅だった。普段なら街に出て食料や装備を買い込むのに、アルテアは「そんなの要らない」という。急ぐ旅でもないし、街に出なければならなくなったらお金はそのときに使えばいいし、森からもらえるものは貰えばいいのよ。そうして1日の半分は旅程を稼ぐのではなく、狩をしたり木の実を拾ったり水を汲んだりに使う。保存食もあることはあるが、これはお腹を空かした動物に会ったときにごたごたせずに通り抜けるために使うのだからなるべく取っておいて、ということらしい。

 だから、旅の10日目、あと少しで目的地につくというところで不穏なうなり声をかすかに耳にしたときにも、まぁ、交渉手段は残っていたのだった。

 声は、三叉路の向こうから聞こえた。向かって右側からは禍々しい重低音、向かって左側からはコーラス。聞きまちがいでなければ狼である。
 
 「森の際に寄ってて。危なくなったら森に入ったほうがまだマシだから」
 ウィチカに言うと、アルテアは燻製肉の塊を抱え、辻へと向かう。キースも一緒に進み出る。

 左側の道の先には、子供を2頭連れたダイア・ウルフ。右側の道の先には、ひときわ黒々としたダイア・ウルフ。……おそらく家族、右側のほうが群の長。それにしても――薄気味の悪い。
 黒々としたダイア・ウルフに何となし禍々しさを感じながらアルテアは肉を辻に置いた。

 ――狩の途中なのはわかるわ。でも、こちらの肉でいいということにしてくれたなら、お互いに痛い目をみずに済むわ

 そう身振り手振りをしながら反応をうかがう、が……ダメだ。話にならない。黒い狼は肉に興味を示した振りをしながら、狼にはありえないぎらぎらと赤い目で「二足歩行するいきのいい肉塊」のほうをねめつけている。狼に見えやすいようにと肉を押し出しているキースの肩越しに左側の道の先をちらりと横目で見ると、こちらはこちらで目の前の肉よりも黒狼の指示を待っている様子。

 「全然ダメ。特にあいつ」

 こそり、と呟く。わかった、まかせろ。アルテアが森に飛び込むと同時にキースが走り出す。狂気の曲刀に手を添えて。一方アルテアは空中に雷の文様を描く。喉の奥で雷の遠鳴りのような音が鳴り終わると、黒狼の背にどこからともなく雷が落ちる。

 酷い戦いだった。黒狼をキースが足止めしている間にも、親子狼がアルテアに飛び掛る。バーチが吠え掛かるが相手にもならない。身動きもままならぬ森の中、あんなものに飛び掛られては話にならないとウィチカは呪文を唱え、するすると木によじ登る。正しい。ここからなら弓だろうとマジック・ミサイルだろうと狙い放題だ。

 ああ、だから話し合おうと言ったのに。
 呟くとアルテアは森の奥に手招きをした。同時にぞろぞろと妙な気配が木から地面から立ち上がる。無数の蔦が親子連れの狼の足を絡め取ろうと伸びてくる。そのあたり一帯を覆いつくしてそよそよと揺れる蔦は、母狼の動きを鈍らせ、子狼を絡めとり、倒れているバーチの鼻先で、ぴたりと止まった。これでよし、後は、と、キースのほうを振り向きかけたアルテアの喉首を、母狼の牙が思いきり薙いだ。

 よろよろと森の中を逃げるアルテアを母狼が追う。その背をウィチカのマジック・ミサイルが追う。それを横目に黒狼の喉首を斬り飛ばしたキースは雄たけびを上げながら、絡みつかれてじたばたしている子狼を切り払う。剣の狂気は「まず近くにいるもの」を切り伏せろと命じるのだ。
 ともかく、母狼が倒れた後に全員が立っていたのだから問題はあるまい。

 問題がない以上、することはひとつだった。
 首の皮一枚で命が繋がった状態のアルテアは、世にも禍々しい黒狼の毛皮に自分のナイフの刃が立たないのがわかると、“颪”を抜剣したまま肩で息をしているキースに言ったものである。

 「その剣しまう前に、そのやたら怖い狼の皮をはいでおいて。狼の肉は食べられないから、せめて皮はきちんと貰わないと」
 「あと、しっぽはちょっと外しておいて。なんだかその狼、変だわ。すごく気持ち悪い。普通の狼じゃない気がする。尻尾があれば後で調べられそうだから……」

 おい、何だよ、だいたい剣は……と言いかけたキースは、ものも言わずに親子狼の皮剥ぎにかかったアルテアを見て、肩をすくめた。

 ……こいつ、普通じゃない。が、森の中でドルイドに逆らうもんじゃないし、な。

このシーンの裏側
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シリーズ第13回『森に住む日々』その2:召集

 イノシシの肉はウィチカやキースにはたぶんにおいがきついから、香りのいい木で燻してハムとベーコンを作るわね、ああ、なんだったら薬草の収穫はキースお願い、と、半ば呆れ気味の二人にはお構いなしにアルテアが忙しくしていると、

 「お、なんか豪勢じゃないか」

 タムリスがやってきた。キースは余計居心地悪げな顔になるが――なにしろ「街でやっていく」と言って昔の仲間のもとを去ったものの、“街にいられなくなって”今ここにいるのだから、普通の感覚でいえば随分みっともないのだ――これまた一向にキースの渋面にはお構いなしに加工しかけのイノシシ肉に手を伸ばす。

 「まだ加工中。意地汚い」

 ぱちん、とその手を払いのけておいてアルテアは顔を上げた。

 「このハムに畑を掘り返されるところだったわ。ここ、普段からこんなのが出たりするの?」
 「ああ、珍しい話じゃないね」
 「そう、ならいいの。今度から気をつけるわ」

 じゃ、すまないけどちょっと薬草の収穫を手伝ってって、夕食はご馳走するから、と言っているところに、ルリカケスが1羽飛び込んできてアルテアの肩に止まる。その小さな足には手紙が結び付けてある。

 「あら、師匠から呼び出し状だ。ドルイド・サークルの集会ですって」

 この森から一週間ほど行ったところで、この地域一帯のドルイドが秋の集会をするらしい。集合の日限は10日後。

 「うん、またでかけるのか?」

 キースの顔がぱっと明るくなる。どこでも、なんでもいい、この森の生活をちょっとでも離れられるのなら……

 「ん、私だけね。ベーコン仕上げたらちょっと行ってくる」
 「行ってくるってアルテア、ひとりで、そんな、危険よ。さっきみたいなのがまた出たら……」
 「大丈夫よ、鳥になって飛んでいくから」

 ああ、とウィチカが納得したような呆れたような顔をする。アルテアはその気になれば、日の出から次の日の出までの間の約半分を動物の姿ですごすこともできるのだ。エルフの姿に戻ったところで黒い肌に毛皮を藤弦で巻きつけている状態で木にでも登っていた日には、これまた森の獣とあまり見分けがつかない。確かにアルテアひとりのほうが危険は少なかろう。

 「いや、せっかくだから三人で挨拶に行ってくればいいじゃないか」

 タムリスが横から口を挟んだ。

 「キースはともかくウィチカは秘術の徒だし、このあたりには血の気が多かったり虫の居所が常に悪かったりする連中だっているし、なんかの弾みでごたつく前に、あんたの連れだってことで面通ししておいたほうがよくないか」

 集会の始めのうちはドルイド以外の連中もわりと出入りしてたはずだしな、と言う。
 ああ、それもそうね、それじゃ明日の朝すぐ3人がかりで立つことにするわ、トトとセセと薬草園をお願い、お礼にイノシシの腿肉まるまる1本ぶんあげるから。

 やった、旅だ、とにんまりするキースに、タムリスは苦笑いしながら言った。

 何勘違いしてるんだ、ずっと森だけ通って行くんだぜ。

このシーンの裏側
posted by たきのはら at 06:32| Comment(6) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月14日

シリーズ第13回『森に住む日々』その1:森の日々

 あれから数週間。
 懐かしい人々に別れを告げ、ウィチカ、キース、アルテアの3人は学園都市の南、レンデの村近くの森の奥に抱かれた「ウィチカの薬草園」のそばに居を移していた。
 「普段からここで寝泊りできるように準備はしておいたからね、不自由はしないわよ」
 というアルテアが他の二人を連れて行ったのは、薬草園から木立をひとつ隔てたところにある大きな洞窟。入り口から上手い具合に折れたり上ったり下ったりをした場所が大きく広がっており、雨風が入ることはない。気持ちよく乾いた洞窟の中に、アルテアは山ほどの干草を運び込んであった。

 「ベッドはいくらでも作れるよ。あ、キースはカーテンの向こう側で寝泊りしてね。シーツは川で洗濯して薬草の上に広げて干したから、いいにおいがするよ。あの川には水浴びにちょうどいい淵もあるから」
 洞窟の入り口のところはトトとセセの厩にしよう、馬車はあのひさしみたいに張り出した岩棚の下に置けばいいね、ウィチカの書き物机が要るからあとで平たい岩を入れておくね、明かりは魔法で何とかなるよね……

 森は確かにアルテアの“故郷”だった。
 てきぱきと棲家を整え、薬草園の整備をする傍ら木の実を集めたり魚を取ったりしては日々の食事を準備し、残りを片っ端から保存食にする。どこかからガッシリとした体つきのハイイロオオカミもつれてきて、新しい相棒よ、白樺(バーチ)のところで出会ったからバーチって呼ぶことにしたわ、と、こともなげに言う。確かに頼もしい。が、川の石をひっくり返して虫を集め、それを撒き餌にしては素手で――熊の姿になって――魚を取るアルテアを見ていると、ウィチカとキースの二人は何か言い知れぬ違和感というか不安を感じるのだった。

 自分たちはこんなところにいていいのだろうか。

 が、まぁ、ほとぼりは冷まさねばならず、それにだいたいどこかの街に行って生活するには手持ちの現金が心もとない。だから、ここで資本の要らない生活をしつつ薬草を育て、それを金に変えてから考えよう……ということになってしまうのだった。

 そんなある日のこと。
 アルテアを先頭に、薬草取りに出かけた3人は恐るべきものを見た。

 小山のようなイノシシが2頭、薬草園の囲いの柵をせっせと掘り返しているのだ。冬に備えて動物たちはとにかく意地汚くなっている。放っておけば薬草はすっかり掘り返されて食い尽くされるか使い物にならなくなってしまう。
 「こらこら、あっちに行きなさい」
 言ったアルテアの顔を、イノシシたちは馬鹿にしたように見て鼻を鳴らした。
 「あっちに行きなさいというのに! ほら、これあげるから」
 アルテアがポケットから取り出して放り投げたのは……鮭の燻製。

 イノシシは曰く言いがたい音で鼻を鳴らし、突っ込んできた。しまった、干しりんごでもやればよかったんだけど、とつぶやいたアルテアはイノシシの体当たりをもろに食らってよろめく。

 ウィチカが目くらましの魔法を叩き込み、1頭は怯えて結局逃げ失せた。残る1頭は、何者にもひるまなかったのが災いして、荒れ狂うキースに叩き斬られた。
 地面にどっと倒れたイノシシを見て、アルテアは言ったものである。

 「あら、これでハムの材料ができたわ。1か月分の食料にはなるわね」

このシーンの裏側
posted by たきのはら at 23:39| Comment(6) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第13回『森に住む日々』前口上

 実に1年半(いや、もっとだよ。前回は2007年1月だから)ぶりくらいに『渡竜』再開です。
 セッションの支度して家を出ようとカバンを持ち上げたときに、思わず肩が抜けそうになりました。……昔はルールブックが5−6冊入ってても平気で持ち歩いてたのに。今回はPHB、MM、“通販生活”こと『武器・装備ガイド』の3冊しか入ってないのに……ああ、これしきを重く感じるなんて、ゲーム、ほんっとにしてなかったんだなぁ><

 ゲーム内時間は街を出てからしばらく、時は秋の終わりごろ。たぶんウィチカとアルテアが出会ってから1年と少しが経過した感じでしょうか。
 前回は、なんとなくバーバリアン癖の抜けないドルイド5レベルだったアルテアも、森で暮らすうちにドルイドとしての自分を思い出したり、いつの間にか6レベルになっていたり(1回セッションを休んだせいでレベルアップが遅れていたのですが、再開に当たってレベルを他の2人に揃えました)、勢いで妙にロハス(笑)な人になってウィチカとキースに嫌がられてみたり、新しい相棒がいたり。

 つーわけで、今回は都会の常識の通じない場所で新しい生活を始めた3人(と1匹)の新たな冒険の幕開け。
 時間がちょっと空いたために、それぞれ自分を見直す余裕がちょっと出てきたのか、キースが「意識的に」バーサークするようになったり、アルテアがわりと素直に火力型ドルイドになってたり。そしてうちらはやっぱり見敵即斬とかやられるまえにやれとかだったり。

 ……でも、一番困った奴はともかくとして、一番むかついた奴は「ここは私たちのゆっくりプレイスよ!」とか抜かすダイアボアだったなぁ^^;;;

 
posted by たきのはら at 22:59| Comment(4) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月04日

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その7:さらば懐かしき街

 悪賢いんだかまぬけなんだかよくわからない魔法使いを捕まえたスルカス、いかにも通りがかりのケイヴァーが不審者を捕まえた、てなふうを装って、魔法使いをすっかり武装解除し、責任者のもとに案内させる。やりとりを見るに、この魔法使い明らかに間抜けだし、目も見えてないので安全っちゃ安全なのだが、まぁ、ウィチカたち三人は面も割れてるしということで、スルカス一人が学園のほうへ行き、後の面々はいったん(もうすぐ空き家になるはずの)「ロバと天秤」屋に引き上げることに。

 スルカスとにわか盲目の魔術師が出たのは学園の中庭。いきなり現れた珍妙な二人連れにざわつく学生に、魔術師が言う。急用あって教授にお会いしたい。案内してくれ。

 で、スルカスが連れて行かれた先はオルドロン教授の研究室(ウーズ担当だからね)。
 ほう、つまり君は下水道を見回っていて偶然にこの実験現場に出たというわけかね、と、まるで信じていない目でスルカスを睨むオルドロン教授。その通りですときっぱり答えたスルカス、クラークから貰った委任状をつきつける。

 偶然と言うのは正しくない。このところ下水道で怪しいことがおきすぎ、土木課としては放ってもおけない状態であるとして正式に調査の許可を取った。
 教授は頷いて答える。
 確かに我々も先走りすぎた。だが、君たちも我々に近づきすぎた。
 ああこいつ、だいぶ完成に近づいていた実験が頓挫して当分動けなくなったということもある以上、自分に厄介が及ばないように事件そのものをもみ消す気満々だな、とスルカスは見て取る。

 「あんたがたが研究をするというのは、すなわち力を求めるということだ、否定はできんのもわかる。だが、覚えておけ、過ぎた力は身を滅ぼすぞ」
 言い捨てて立ち去る背中に教授の声。
 「忠告感謝する。だが、研究は時に我らの人生をも要求するのだ」

 落ち合う約束の「ロバと天秤」屋へ来かかったスルカスの目に映ったのは、門柱に止まったカラスとそれを取り巻いてしんみりしている一同。すかさずそのあたりの塀に隠れ、様子を伺うスルカス。その耳に届いたのはこんな会話。

 「……教授からのご伝言である。『俺はできなかったが、お前はもっとうまくやれ』」

 カラスはハンス教授の使い魔であるところのカーだった。
 「安心するがいい、私が生きているということはご主人もご無事なのだ」
 「……どこにいらっしゃるの?」
 「それは、きっとおっしゃりたくないだろうと思う」
 「……」
 「私はあのお方の一番繊細な部分を集めて作られた生き物だから、あのお方のお気持ちを汲み取って言うのだが……強く、賢くなって戻って来い、とあの方はおっしゃりたかったのだと思うぞ」
 「……」
 「では、私に角砂糖を寄越すがいい」
 アルテアが無言で部屋に最後に残しておいた「馬車と合流するまでの当座の荷物」の中から角砂糖の包みをウィチカに渡す。ウィチカはカラスに運べそうな最大限の量をハンケチにくるむと、それをカーの首に結び付けてやった。
 「よろしい、そなたはあのお方の学生の中で、もっとも角砂糖に関して見識の高い学生であった」
 そういい残すとカーは舞い上がり、青い空の中の黒い点になり、やがて見えなくなった。

 ウィチカがまた涙をぬぐい始めるのを見て取ると、スルカスは口元にかすかに笑みを浮かべ、意気揚々とした風を装って門をくぐった。
 「よう、どうした。こっちの首尾は上々だ。教授先生は事件をすっかりもみ消すつもりらしいから、嬢ちゃんさえその気ならまだこの街に居たって悪いことはなさそうだが……」
 「いいえ」
 ウィチカは首を振った。
 「もう、行きます。……キース、アルテア、一緒に来てくれるよね?」
 ああ、とキースが答え、続けてアルテアが逆よ、と答える。街の外は私の故郷。ようこそウィチカ、歓迎するわ。
 そういうアルテアの声がわずかにうわずっているのは……彼女の背の、白い大きな包みのためだろう。ベラは戦いで死んだの、それだけよ。でなければ私が間抜けだったから死んだの。でも……街に葬るのは嫌だから連れて行くことにするわ。大丈夫、馬車と合流するまで私が背負って連れて行くから。
 キースが苦しそうにアルテアを見……そしてすまなそうにルーネスを見る。

 「まぁ、ほら、荒事になれば、それもあることですよ。お行きなさい。わが神の恩寵があなたたちの上に常にありますように」
 ルーネスの苦笑いは、すぐに穏やかな笑みに解ける。
 「嬢ちゃんたち、達者でな。兄さん、剣に使われるんじゃない、剣を使いこなせる剣士になるんじゃぞ」
 スルカスの苦く、そして温かい声。

 三人の前に続く道。
 幾度となく通った道。
 「帰ってくるわ……また。いつもと同じように。今度は長い旅になるけど」
 ぽつりとウィチカが言った。声として答える言葉はなかったが、きっぱりと引き結んだ二つの唇は、確かにそれに答えていた。

 そうして三人は歩き出した。
 やがて帰ってくるための新しい冒険へ。

 【渡る世間は竜ばかり・第一部・完】
posted by たきのはら at 16:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その6:地底の決戦

 翌朝。
 オランの持ってきてくれたスープと最後のパンで食事を済ませると、トトとセセを厩から出す。私たちは仕事を済ませたら後から行くから、先に馬車を引いて薬草園に向かっていて。もし私たちが追いつかなくてもそのまま薬草園に行って。きっとタムリスがちゃんと取り計らってくれるから。涙をこらえながらウィチカが言う。
 「ええ、早く追いついてくださいよ、待ってますから」
 トトとセセを送って冒険者小路の端まで来ると、いつもぴくりとも動かないはずの老犬が、のっそりと立ち上がり、わふ、と吼えて道を譲り、一行が通り過ぎるとまたごろりと寝そべった。
 たまらず駆け寄るウィチカ。
 「……またね」
 答えてウィチカの手をぺろりと舐める老犬。

 もう一度振り返ると、ウィチカはにじんだ涙をぬぐい、行く手にしっかりと視線を投げた。
 仕事の仕上げが待っているのだった。

 ことは順調に進んだ。
 哀れなケイヴァーたちがよろよろと立ち向かってくるのはシュノープレーに阻ませておいて、疲れ果てて眠っているランドシャークについては魔法で押さえ込み、何も出来ないうちにその上を跳び越す。
 昨日のものかどうかはわからないが、やはりフォーミアンが一体広場に出ていた。
 
 弓弦の音が響いた。
 何もなかったはずの空間から飛び出してきた矢に喉元を射切られ、フォーミアンはぐらりと傾いだ。そこにはいつの間にか弓を構えたドワーフが出現している。驚愕からようやく立ち直ろうとする矢先に、今度は魔法の矢が飛来した。ウィチカの唇がかすかに震える。力を帯びた矢は呪文抵抗を弾き飛ばし、この次元界におけるフォーミアンの生命力をきれいさっぱり奪い去った。声もなく、蟻人間は元いた次元界へ送り返されていた。広場にそれ以上の敵はいなかった。

 広場の奥にはさらに深い場所へと続く大階段があり、その下からは巨大な金属の円筒が聳え立っていた。円筒には霜がびっしりと降りていて、そのところどころに茶色い染みのようなものが付着していた(この時点でとりあえずアルテア――というかたきのはらはほっとしました。あ、ブラウンモールドは向こうで準備してくれてるんだったら、こっちはとりあえず真面目に魔法陣破壊だけやればあとは何とかなるな、と。やらなきゃならないことは「計画」からそう多くはとっぱずれないね、と。……何をこだわってたんだろうなぁ。てか、条件よくわかってない実験を外部から人為的に壊す、ってことに、PL本人が恐怖感じてたんだろうなぁ。どうも……こういう感覚は持ち込まないように注意しないと、と思うんですが)。そして、円筒の周りには三つの頂点のうち二つにフォーミアンを配した正三角形の魔法陣が描かれていた。

 嬢ちゃん、おちついて、注意して、よく見るんじゃ。あの魔法陣の構造を。誤って封印の魔法陣を欠いてしまって魔王が暴れだしたら目も当てられない。召喚の魔法陣のみを、確実に壊さねばならん。スルカスに言われ、ウィチカが立ち止まって状況を確認している間に、階段の下は酷い騒ぎになっていった。

 大事な実験のこと、守り手がいないわけはない。フォーミアンの一体が倒されたのと同時に奥から魔法使いが一人と護衛たちがばらばらと駆け出してきた。キース、ルーネスが応じるように飛び出す。あろう事かアルテアも相棒のベラに「来なさい!!」と一言声をかけただけで飛び出していってしまう。
 悲劇はその直後起きた。
 魔法使いが飛ばしてきた魔法のせいで、アルテアの飛行呪文だけが解けたのだ。瞬時に護衛たちに四方を囲まれて切りかかられるアルテア。背に腹は変えられない。
 「アルテア、逃げろ、俺が血路を開く」
 叫びざま、キースは「颪」を抜いた。

 目の前の敵が一人消し飛んだ。
 敵の隣にいたのは、アルテアの傷を癒しに来たルーネスだった。
 キースの剣に斬られながらルーネスはアルテアを癒す。アルテアはなんとか囲みを抜けようと、目の前の敵に魔法の炎を浴びせ続ける。そうしているうちに今度は防御も何もなしに剣を振るっていたキースが倒れている。
 このままではキースの命が危ない。ルーネスは敵二人の目の前に飛び出し、そのままお構いなしにキースに手を伸べる。隙あり、とばかりに繰り出された敵の剣は申し合わせたようにルーネスの傍の空を薙ぎ、ルーネスの掌の下でキースの血が止まり、目が――血で真っ赤にけぶった目が開く。そして再び立ち上がったキースが斬ったのは、目の前にいたルーネスだった。

 その時、魔法使いの悲鳴が上がった。
 「大変だ、もうダメだ!!」
 ウィチカのマジックミサイルが円筒の表面をわずかに削っていた。緻密な召喚魔法陣は、そう、円筒の表面にびっしりと掘り込まれていたのだ。
 その瞬間、円筒の中のウーズは体内に宿していた魔王からの制御を失い、ゆるゆると動き始めた。魔法陣のために封じられており、それゆえに「彼」の身体をも動かさずにいた魔王がいなくなった以上、ただのウーズである「彼」には魔法陣は何の意味もなさない。「彼」は自由になろうとしていた。

 巨大な質量を持つ触手が円筒を内側からたたく音を耳にし、ウィチカは一瞬逡巡した。……どうすれば……
 と思う前に、だが、目の前の魔術師をどうにかせねばならない。とっさにグリッターダストを叩き込んで視界を奪う。ぎゃあ、と魔法使いが悲鳴を上げ、利なしと見て取った護衛たちがバラバラと逃げ出す。

 その瞬間、荒れ狂うキースの目の前から、「彼が斬るべきもの」はいなくなったはずだった。だから彼は斬るべきでないものを斬った。ベラは一瞬で事切れて足元に転がった。次の一撃はアルテアの身体をぎりぎりでかすめ……そして、止まった。

 「大変だ、もうダメだ!!」
 魔術師はもう一度叫んだ。
 「危険だ、奴が暴走する!!」
 「どうすればいいの!?」
 さすがにウィチカの声もうわずった。
 「火だ、円筒についているブラウン・モールドに火を与えてくれ。そうすればモールドが一気に育って円筒の中を凍りつかせる」
 わかった、と答えざまウィチカは錬金術師の火を円筒に投げつける。茶色の染みは一気に広がり、そして円筒の中から響いていた不規則な音は止まった。
 「やったか!?」
 「やったわ!!」
 「そこだな!!」

 ウィチカの足元から岩のカケラが吹き上がった。……が、飛行呪文のかかっているウィチカには届かない。

 と、その時、いつのまにかスルカスが魔術師の後ろに歩み寄っていた。手まねでウィチカに静かに、と合図をしておいて、スルカスは魔術師の腕を捕まえた。

 「こんなところで何をしているんだ、これは何だ」
posted by たきのはら at 16:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その5:最後の夜

 あの連中に対しては腹は決めてある、私はどうなっても仕方ないと思ってるわ、というウィチカにアルテアが言う。
 「ねぇ、ウィチカ、街を出たほうがいいんじゃないかな」
 「……え? そりゃ、出てもかまわないんだけど」
 「事を終えたら街を出なさいよ。ここに居たらウィチカはずっと『駆け出しの小娘』のままよ」
 アルテア、なんてことを、失礼じゃないか、だいたいこの街でウィチカは育ったんだし、そんな軽々しく、とキースが詰め寄るが、
 「出るべきよ。目をつけられてまでこんなところにいることないわ」
 そりゃ目をつけられてはいるんだけど……としばし口ごもり、やがてウィチカは頷く。
 「わかった。この一件が片付いたら街を出ることにする。……でも、アルテア、キース、あなたたちは、いいの? 私のせいで店も閉めて、街を出ることになっちゃうけど……」
 俺は構わないよ、ええ、むしろそうすべきだわ、と口々に答える二人。スルカスも答えて言う。わしゃこの一件が片付いたら国に帰る。そして一族のものにこの街との契約を切るように言う。わしの一族はこの街と保守工事の契約を結んでいるのだが、こんな人を人とも思わない連中の街に一族のものを置くわけにはいかん。

 そこへ、こつこつとノック。ウィチカがため息をついてうつむいているのでアルテアが出ようとすると、ウィチカ、急に立ち上がる。いいえ、私が出るわ。ドアを開けるとゴミ投げ小僧、もといゴミ投げ小娘ことオランが鍋いっぱいのスープを持って立っている。
 「かあちゃんがさ、作りすぎちゃったから持ってけって」
 その背後に、いつも道の真ん中に寝そべっている姿しか見たことのない、小路入り口の老犬が立っている。
 「そんじゃな、お休みっ」
 鍋を渡してかけ去るオラン。老犬も一緒に立ち去って行きながら、わふ、と小さく吼える。たまらずしゃくりあげるウィチカ。

 「このスープは明日の朝いただくことにするから」
 つかつかと歩み寄ってきたアルテア、ウィチカの手から鍋を取って台所に置くと、後ろも見ずに出て行きながら重ねて言う。
 「トトとセセの世話をして、出られるように準備をしなきゃ。ちゃんといいもの食べさせて」
 とっとと厩に行く。後から来たウィチカが涙をこらえながら二頭のロバの世話をしだすと、無言でその場を離れ、馬車の手入れを始める。その間にキースは持っていくべきものを馬車の中に運び込む。

 夜中前に、出かける準備は整った。
 この街での最後の仕事のために、横になって休むことだけが残された仕事だった。


このシーンの……裏側?
posted by たきのはら at 16:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その4:市民の言い分

 というわけで全員それぞれの仕事を終えて「ロバと天秤」屋に集合。情報を総合すると、なんとも嫌な図が浮かび上がるわけで。

 つまり学院の教授陣はスペルプールを作るために公共の下水道に無許可で実験場を作り、通常の生活を送る一般人にとって危険な状況を作り出していながら(現にケイヴァーの少なくとも一名がフォーミアンにドミネイトされて死に掛けている。さらに言うならデーモンロードと融合したウーズが街の地下に存在するということ自体とんでもない)、それを「必要悪」どころかむしろ当然の権利と思っている。
 救いは、事は一見大げさだが、実のところまだ実用化の見通しは立つような立たないような、な「完成しかかった実験」の段階であり、これで上手くいけば実用化とかそういう段階だろうから規模は「巨大実験室レベル」で「工業レベル」じゃなかろうってこと。

 ……げー。
 アレだよなー。核処理施設が「私たちにとって必要だから」とかいって秘密裏に街中にいつの間にか建てられて、しかも失敗の可能性のある実験普通にしてて、それで実は被害者普通に出てましたー、みたいな。

 とりあえずこの実験は潰そう。いくらなんでもダメだ。気に入らない。で、どうやって? その後どうする?

 えー、このあたりの議論がどう進んだかってのはちょっと記録聞きなおさないと再現できないので(てか、ちょっと私が熱くなっちゃっててきちんと記憶できてないんです)、ここだけアルテア(というよりはたきのはら本人)の視点を起点にして書きますね。本レポでは直しますけど。 (結局そのままなのです><)

・まさか下手打って実験失敗させたはいいもののデーモンロード付きウーズ暴走させましたー、街壊滅しましたー、とかなったらシャレんなんない
・どうやって穏便に(つまり周囲に影響を出さずに)実験をぶち壊すか
・万が一ウーズが暴走した場合、どうやって止めるか

 てところでDMから助け舟。ロー教授が「凍結保存」と言っていたでしょ。これでウィチカはジュイブレックスには宿敵、菌類の女王ズグトモイがいることを思い出していいですよ――ここではっと思い出す。「黒き氷の……」の回に、黒き氷の塔から「これも何か売れるかもー」と採取してきたブラウン・モールドだ!! あれは松明の火を近づけたら瞬時にその熱を吸い取って育ったじゃないか。その時あたりの気温は急激に低下し、燃え盛っていた炎は消えた。あれさえあれば粘体の活動は押さえられる。

 まともな研究者なら自分の実験が失敗したときの対策はちゃんと立ててある。爆発や薬品によるやけどの可能性がある実験室では、必ず部屋の外に緊急シャワーが備えてある、って感じで。ましてやいい加減な学生実験とかじゃなくて学園挙げてのプロジェクトなら、万が一の際の暴走を止めるための手段はちゃんと講じてあるはず、実験をぶち壊した結果、件の危険なウーズが暴走してもたぶん「その場にあるもの」で対策は可能だろう。

 いや、それ楽観的すぎる、と突っ込まれたんで、じゃ、旧職場に忍び込んでブラウン・モールドのストックをさらっと持ってきてしまおうかと思ったんだけど、それはリスクを増やしすぎるというので止められる。

 結局、デーモンロードを一部とはいえこちらの世界に持ってくるにはきちんとした召喚の魔方陣を書く必要がある、ウーズ本体ではなくその魔方陣を一隅でも消せばデーモンロードは消えるのだから、本体をどうこうするのではなく魔方陣を壊せばいいのだ(少なくとも「デーモンロード付きの」ウーズの暴走、ということにはならない)、ということに話はまとまる。

 ……あー、ここ見ると、明らかに私が素に戻ったせいでRPがおかしくなってるのがまるわかりですな。最悪。すみません。これはファンタジーであって、研究室でディスカッションしてるんじゃないっつの(涙
 てか、ぶち壊す方法よりも暴走させない方法が先に来るあたり、真面目にどうにかしてたと思います。ごめんなさい。

 ともあれ……やることは決まった。
 では、やった後、どうするか。
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シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その3:学究の徒の言い分

 というわけで得た情報を元に行動方針を立て、各々行動開始。
 まず、下水道の探索に関しては、とりあえず探索するだけはしたし、状況はわかったのでシュノープレーを呼び出して結果報告しよう、ということに。とにかく状況がコレでは自分らだけでどうなるもんでもないし、上手くいけばシュノープレーを先に立てて魔法使い連中のたくらみをどうにかしちまおう、と(最初ナイト・ハグだと思っていたのでSRめちゃ高いはず、とか思ってたのだ。実はグリーン・ハグだったそうでちょっとしょんぼり)。てなわけで街中には特に有力な知り合いのいないアルテアがこちら担当。手紙を書いてチーズに緑のリボンで結んでついでにネヅミを捕まえて伝言して……と、必ず今夜「ロバと天秤」屋に来てもらえるように手配。

 スルカスはケイヴァー溜りへ行ってクラークに報告。
 「ああ、下水道だけどな」
 「……何が居たんだ?」
 「鮫と蟻だよ」
 「はぁ?」
 とかステキ会話の挙句、クラークの胃炎と顔色はもう一段階悪化し、そらそれとしていくら街の最有力圧力団体というか市政にもっともかかわりの深い団体だといっても公共の下水道であやかしい実験など、学園のやりようはあんまりだ、きちんと調査が可能なように正式な委任状を出させるよ、ということに。

 ルーネスも元締めのいるキャラバンへ戻って報告ついでに状況確認。元締め曰く、ロー教授? ああ、ティラノサウルスの口に首突っ込んだりする奴だろ? あいつぁニコニコ笑ってるようでえらくがめつい男だ。それから、獣やら何やらがちっとも怖くないみたいなんだ。もっというと力を恐れているのかいないのかよくわからないってところか。ああ、学園? そういえば最近、なんかスペルプールを作るとかで妙な資材を色々買い込んでるな。で、それが出来た暁には、学園が配布したバッジを持ってるとそこから呪文が落っこってくるようになるんだそうだよ。てか、もうバッジの見本も納品されてるみたいだな。学園の紋章を彫り込んだちょっといい細工物で、それに学園側でしかるべき魔法処理を施すらしい。そっちの責任者はオルドロン教授って変成術学科長だ……

 うわぁ。

 そして真打のウィチカはキースと共に学園へ。
 まずはハンス教授の元に行くが教授は不在。その辺りにいた後輩に聞くと、教授は今いらっしゃいませんが伝言がありますよーとメモを渡してくれる。開くと一行「謹慎しろ」。

 うわぁ。

 といわれても何もわからないまま帰るわけにはいかないのだ。
 ウィチカ、今度は真っ直ぐ召喚術学科へ。顔なじみのこわもて助手、カール・セガール(ちなみにセガール助手には従兄弟がいて、某所でコックをやっているらしい)に案内されて行くとちょうど何やら巨大怪獣によじ登ってその耳を引っ張っているところ。

 「おお、君かね、占術学科長の横っ面をひっぱたいたらしいな」
 ヤなとこで有名になってるなぁ、とか思いつつ、ウィチカ、まっすぐ言い放つ。
 「教授、あの地下のフォーミアンは何ですか」
 教授、はははと笑い、
 「ああ、あれかね、ジュイブレックスが暴走しないようにあそこに置いている」
 ジュイブレックスっつったらアビスの222層にいるデーモンロードで粘体の王である。ウィチカの顎がかくんと落ちる。
 「いったいなんでそんなものを」

 教授、笑ってない目で笑い、ウィチカに――ウィチカのみに、言う。ちなみに教授の視界には確かにキースはいるのだが、その目にはキースは明らかにまったく映っていない。話すべき相手として認識していないらしい。
 「これを聞いた以上君は我々の仲間だ。では説明しよう」

 我々はスペルプールを作ることにした。今までなかったから。大量の呪文をコントロールするハブとして強力な魔力が必要であることは自明、そしてそのハブの素体としてウーズに魔王の一部を融合させることに成功した。それが、あそこにある。
 「そんな……あそこの上には街があるんですよ!! 失敗したらどうするんですか」
 「失敗したら? 次はもっと上手くやるさ」
 「試験体Xの脱走とかだってあったじゃないですか!!」
 「ああ、あれで粘体封じ込めカプセルの弱点がわかった。おかげで完全なカプセルが完成したよ」
 「でも、あなた方が実験をしているのは公共の下水道……!!」
 「君は……この街は何のためにあるかわかっているのかね? マルドゥーング魔法学院があるために、この街はできたのだよ? この街の存在価値の本質は言わずともわかると思うが」
 「……なんてことを!! 万が一のことがあったらどうするんですか」
 「そのときは凍結保存すればいい。
 ……さて、これを聞いた以上、君も我々の仲間だ」
 「仲間、ですか。
 ……では参考までにひとつ伺っておきますが、今の実験はもうじき実用段階に入るとかそういうものなのですか」
 「いや? 入ればいいなとは思っているが」
 ふむ。つまり例のフォーミアンが言ってた「あと10日ここにいる」ってのはあと10日で自分たちは契約が切れるってことで、あと10日で恐るべき実験が完成してとかそういうわけじゃないのね。てか、つまり、これは「壮大な実験段階」なのね。
 ウィチカが眉根をひそめながら考えをめぐらす(実際には外野も一緒に明かされる情報を総合しつつやいのやいの言ってる)間に、教授、思い出したようにひとこと。
 「……ああ、君はハンスの弟子だったな。では、言うことはひとつだ。『好きにしろ』」
 「……」
 「あの男、『しろ』といわれたことをするときの効率の悪さはそれこそ酷いもんだが、自分から事を起こしたときの効率の良さは目を見張らせるものがある。君も同じ人種だろう」
 「……わかりました。あなたがたのやり方は気に入りません。好きにさせていただきます」

 言い放ってウィチカ、退場。なお、キースは「ああ俺下民代表かよ!!」とか言いつつ何度か反論を試みていたのですが、一言たりとも相手にはしてもらえませんでした。
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シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その2:呼び出された支配者

 坑道の本道はいったん深い裂け目に阻まれ、そしてその裂け目の中から青光りする巨大な鉤爪が現れた。続いてずりずりと這い上がってきたのは背中に鞍をつけた見覚えのあるランドシャーク。因縁浅からぬチビハゲエロオヤジことヴィッキー・フランの乗騎である。しかしその鞍に主人の姿はなく、そして件のランドシャーク自身やせこけ憔悴しきった姿になっている。変わり果てた巨獣は攻撃を仕掛けようとするが、狭い坑道に阻まれて鼻面を突っ込むことしか出来ない。先頭のキースがその顎の下に干し肉をばら撒く。一瞬肉に気をとられそうになるが、だが何かが無理やりにその意識を攻撃に向けさせている……

 ああお前こんなところで生きていたんだな、操られているのか、俺たちがわからないのか、とか、微妙にステキシーンが展開してるんだけど、そらそれとして何とかしないといけないわけで。で、夜目持ち以上ならわかるんだけれど、裂け目の向こうには石畳の広場が広がり、その手前部分には黒いオベリスク、そしてその奥には同じく黒い水盤。やばすぎる。そしてオベリスクの脇には赤銅色に鈍く光る肌を持つ、巨大なアリのような生き物が立っている。
 「ジャイアント・アントじゃなさそうね」
 「……フォーミアンだわ、あれ。でも、普通のじゃない。タスクマスターだわ。他の生き物を操る能力があって……」
 「つまり、あれがあの可哀相なランドシャークを操ってるって訳ね。……なんとかならないもんかしら」

 てなわけでウィチカはちょうど手近にいたアルテアにフライの呪文をかけ、アルテアは通路に詰まっているランドシャークの上を跳び越してタスクマスターを攻撃の範囲内に入れる。が、これが間違いの元で、きれいさっぱりドミネイトされる。くっそぉ、エルフの素ドルイドだからWillST高いし大丈夫ーとか思ってたのに、出た目が腐り果ててたからなあ。「支配された!!」と悲鳴上げるのがやっと。

 そのときになってやっとスルカスが操られた男たちを片付け終わってやってくる。で、状況を見て取り、裂け目の向こうにいるのがどういうイキモノかウィチカから説明をうけると、ため息ひとつついてタスクマスターと交渉開始。

 かみ合ってるんだかかみ合ってないんだかよくわからない会話をしばらく続けた後、
・さっき倒してその結果タスクマスターのドミネイトが解けた男たちをまたタスクマスターの支配下に戻してやるからアルテアを返せ
・その男たちは飢えて死に掛けているから食べ物を与えてやってくれ(といって自分たちの保存食を分けてやった)
・男一人につきこちらの質問二つ、つまり計六つの質問に答えてくれ
という要求を飲ませることに成功。

 交渉の前後から知り得た情報もあわせて整理すると、状況はこんな感じ。

・フォーミアンは学園の召喚術学科の学科長、ムッツ・クォン・ロー教授との契約によりここにいる
・彼らの仕事はこの奥にあるものを守り、「局地的な法と混沌のバランスをとる」ことである
・この奥には彼のほかに彼の同族があと2体いる
・彼らはあと10日ここにいることになっている

 うわーまじめに学院の教授かよ、とウィチカ、キース、アルテアは超げんなり、そしていぶかしがるスルカスとルーネスに状況説明し(……てか、このあたりはPCとPLの反応が見事に重なった)、ともあれまずはいったん撤退、ということに。


このシーンの裏側。
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シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その1:下水道の不審者

 で、依頼を受けたとなったらあとはまぁ、どぶさらいだろうがなんだろうがやることやるしかあんめぇ、と、光源とか錬金術アイテムとか相応に買い物をし、依頼主のハグには「じゃあ様子確かめてくるから、手下のネズミ君たちには私らを齧らないように伝えといて下さいな」とお願いし、隊列整えて地下下水道へ。

 スルカスはDFOではなく、実はとても高性能のローグで、というわけで下水道の中を先行探索。
 と、わき道のほうからぱたん、ぱたんという尻尾を床に打ち付ける音が。そっと覗くと通路の奥でオオトカゲっぽいものが通路のレンガの目地にびっっっっっしり生えたキノコを絶賛お食事中。うわぁ、とばかりそのわき道の前をひっそり通過し、先を確認するがその先は行き止まり。つまり進むべき道の先にはトカゲ氏がいるということを戻って報告。ってか通達。

 スルカスの話からアルテアが判断するに、それはどうもモニター・リザードらしい。でもあの連中、キノコもまぁ食べないことはないけど肉食なんだよねぇ、てか、下水道にそこまでびっっっっっしり生えるキノコなんかあったっけ、とか思いながら先に進む。
 で、通路の先に居るのは確かにモニター・リザードであること、目地に生えているのは普通のキノコなんだけど異常増殖してることを確認。ともあれトカゲ氏にはどいてもらわないといけないので、キースが干し肉を手に先行、交渉を試みるも、最近キノコばっかりで肉を食べてなかったトカゲ氏にとっては干し肉よりもキース自身のほうが魅力的に見えちゃったみたいで。
 戦闘開始。でも、いくつか鼻面を殴られるとトカゲ氏はこりゃたまらんとばかり逃げていく。そして逃げていった先のほうからちりんと鈴の音。うわ、魔法の警報が仕掛けられてる、とウィチカ。

 とにかく警報が鳴っちゃったのはどうにも剣呑だ。ちょっと気をつけて進まないと。トカゲのいた道の中ほどに扉があったので開けると、どうやらそこは下水道整備用の資材置き場らしい。このあたりの下水道を使用している貴族達の雇われ人のものらしき下水道作業用のお仕着せとかもあったので、適宜それを着こんで(何かあって見咎められたときに、や、我々ここの整備担当員とそのボディガードでございと主張する気だったのです)、その上でスルカスが先行。
 そして、トカゲ氏がアラームを作動させたと思しきあたりのちょっと手前に、うかつに開けると鳴子が鳴るように仕掛けられた(ドワーフ的には)大層つくりの粗い隠し扉を発見。鳴子の仕掛けを回避して扉を開け、そこまでは仲間を呼んでおいて、さらに扉の中へと進む。扉の外に残された一行は、警報鳴っちゃったしまずいんじゃないかとか、いやでもアレ鳴らしたのトカゲだし、トカゲはこの中に普通に居るんだからあの警報は普通にしょっちゅう鳴ってるんじゃないかとか、そんな狼少年みたいな警報だったら誰も反応しないんじゃないか、いったいどういう意味があるんだろうとか、あれこれ首を捻っていたり。

 隠し扉の中は土を掘りぬいた空洞をを補強したような形になっている。補強の木材は古いものもあり新しいものもあり、どうも一度は使われなくなった坑道を新たに補強したものらしい。で、スルカスが進んでいくと人声が聞こえる。

 「鈴が鳴ったから見て来い、って、アリが言ってるぜ」
 「鳴子は鳴らなかった。どうせまたトカゲだろう」
 「だが見てこなかったらまたアリにどやされるぜ」
 「しょうがねえ、誰か見に行くしかねえな」
 「ああくたびれた、アリの奴らめ、俺達が死ぬまでこうやってこきつかうつもりなのかなぁ」
 ……アリ?
 ともあれ、声は三人分。どの声も憔悴しきっている。

 やがて誰か一人が行くことに決まったようで、弱い蝋燭の明りを掲げてふらふらと近づいて来た姿をみてスルカス仰天。なんと近づいてくる男はケイヴァーの制服を着込んでいる。すばやくわき道に隠れ、男が通り過ぎようとするところを捕まえて引きずり込む。お前ケイヴァーだろう、どうしてこんなところに居る、何をしているんだ。男曰く、そうだ、俺はケイヴァーだ、アリに捕まって従わされているんだ。そこまで何とか言ったところで顔色を変える。しまった、奴に気付かれた。逃げろ!! 同時に男の口は「侵入者だ!!」と叫んでいる。

 扉の外で様子を伺っていた面々にもその声は届く。すわ、と、坑道内に駆け込むが、そこはそれこそ一面にカビやキノコが繁茂しており、足元が悪い。森渡りはカビ・キノコ渡りではない、ということでアルテアも条件は同じ。残念。

 そのまま細くてわき道の多い坑道内で展開。「ナニモノかに操られていると思しき」三人の憔悴しきった男たちとの先頭になる。こちらは人数が多いので、手が空いているものはわき道からの新手を警戒しつつ戦闘終了を待っていると、突然坑道じゅうにキースの素っ頓狂な声が響く。

 「うわぁ、あのチビハゲエロオヤジの乗騎が!!」


このシーンの裏側。
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シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その0:緑の魔女

ええと。
実は第11回の記録がホントにメモ程度しか残っていませんで……
というわけで、第11回のレポートは「12−0」としてまとめることといたしますm(_ _)m

なお、第11回および第12回には、ゲスト・キャラとして

スルカス(ドワーフ・ローグ):上下水道並びにエンドゥー・ガルダの都市機構の地下部を維持する技師集団(ある程度の警備も行なう)ケイヴァー(穴倉屋)の熟練工。PLふぇるでぃんさん。

ルーネス(人間のクレリック):道と通商の神の司祭。若くて美形。PLてつさん。

のお二方が参加されてました。

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

 魔法市のときに高級化粧品を景気よく売りさばき「お気に召した方には今後もお届けいたしますよー」とやらかしたはよいものの、最初の一日はうっかりして「お届けは大陸内にお住まいの方に限らせていただきます」と付け加えるのを忘れてしまっていた。
 ミスすると悪いことはきちんと起こるもので、「夜泣き島」とかいう、一般に使われている地図のはるか外側にあるような島に住む魔女から「ちょっと、続きが届かないんだけどどういうことよ」とクレームがつく。クレームは、直接は旅と通商の神殿の元締めのとこに届き、そこから若い神官(美形)のルーネス(PLてつさん)がクレームを伝えに「ロバと天秤」屋にやってくる。ちなみにクレームの内容は「届けるというのに次の品が来ないのはどういうことだ、きちんと対処するように。この件についてはエンドゥー・ガルダに住む妹のシュノープレーに中継ぎを頼むこと。それから妹に一か月分の化粧品を私からの贈り物として渡してください。あ、最後のに関してはお代は払います」とかなんとか。

 一方、ケイヴァー(『穴倉屋』、街の下水道の管理をしている面々の総称)の中の一匹狼、ドワーフのスルカス(PLふぇるでぃんさん)のもとに、上司のクラークが泣きを入れてくる。最近下水道の中を地下の深いとこから上がってくる剣呑な連中が徘徊してて大変なんだ、担当違いなのはわかるが手を貸してくれ。

 で、スルカスが下水道に出向くと出たのはフック・ホラー。あっという間に買ったばっかりの高品質のバトルアックスが一度もヒットしないまま粉砕され、こりゃいかんということになったのがちょうど「ロバと天秤」屋の地下室〜下水道への出入り口の脇。で、こちらもちょうどルーネスが訪ねてきていて話をしていたところに地下から凄い音が響いてきて一大事を知ったウィチカ、キース、アルテアそしてちょうどいいあんたも一緒に来いとか言われてまきこまれたルーネスが飛び込んできて(このときはベラは学園に預けているので不在)加勢、どうやらフック・ホラーを片付ける。

 という、なんか凄くアレな出会い方をした一行。危機を助けてもらった恩があるから何か困ったことがあったら協力するが、とスルカスが言って、とりあえずゲストお二人を迎えたパーティーが結成される。で、困ったことといえば現状なんとなく困っているわけだけど、まさか地図のはるか彼方の夜泣き島まで行くというわけではないし、連絡すべき相手と打つべき手ははわかっているから、今度何かあったらよろしくお願いしますということに。ちなみにシュノープレーはこの街の下水道に住んでいる緑衣の貴婦人で、そしてネズミたちを操るのだという。

 まぁ、このシュノープレーを呼び出してなんとか姉上様にとりなしてもらわなければならない、と、「シュノープレーを呼び出す儀式」であるところの「緑の布切れと手紙を結びつけたチーズを下水道に置く」ということをやってみると、夜半、澄んだ笛の音と共にネズミたちを足元にまつわりつかせ、左右をワーラットに守らせた美女がやってくる。

 が、この美女、キースを見るやとたんに様子が変わり、凄い勢いでセクハラをしかける。で、尻を撫でられたキースは感づいてしまうのだが、この緑衣の麗人はハグがポリモルフした姿であった!!
 なんとか言いつくろってハグをつれたまま部屋の中に戻り、体勢を立て直そうとするキース、が、状況を素敵な感じに誤解したアルテアがハグ(の化けた美女)に詰め寄ってしまい、事態は一触即発。ハグは逃げ失せ、「姉上様にとりなしていただく」どころの話ではなくなってしまう。

 その話を聞いたスルカス、呆れ果てて「まったく若い者は」とぶつくさ言いながら、大人力を最大限に発揮。まずきちんとした宴の用意を整えさせ、ネズミのためにもチーズを用意させ、キースには「尻ぐらい撫でられたって減るもんじゃなし」と言い聞かせ、で、改めてシュノープレーを呼び出す。

 礼を尽くした詫び言……というよりはキースに思う存分セクハラできて機嫌が直ったシュノープレーは姉へのとりなしを引き受け(3か月分の化粧品を無償にて差し上げるということで話はまとまった)、ついでに最近下水道が何かと物騒なのでどうにかして欲しいという。

 なんでも地下の深いところから剣呑な連中がちょくちょく上がってくるようになったし、妙なカビやきのこが生え始めた。さらにこのカビやきのこを餌にする生き物も増え始め、下水道内のバランスが崩れている。
 また、一方で丘の上の魔法学院の連中が下水道を仕切って何やら忙しげにしているが、そのあたりで何か良くないことが起こっているようだ。魔法学院が仕切ったエリアに近づいたネズミやワーラットがそのまま行方不明になったりもしている。さらに言うなら、あのあたりで今まで見たこともないウーズが出たという話もある。どうにもうっとおしいので、様子を確認し、何か悪いものがいるのならきれいさっぱり退治して欲しい……ということらしい。

 うわーどぶさらいかよ、とか、それにしても学園がらみで妙なウーズって……と、かつて『公衆衛生狂騒曲』事件で実験容器から逃げ出したっぽい謎ウーズのことを思い出したりとか、まぁいろいろ思いつつ(そしてキースはハグなんかにセクハラされたというのでおもいっきりげんなりしつつ)次回へ続く、となった……のがちょうど第11回の話。

 シリーズ第12回はそれを受けての話となります。

posted by たきのはら at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』前口上

 前口上もへったくれも!!
 2006年7−8月あたりに第10回を遊び。
 その1年後に第11回を遊び。
 第12回は2007年1月ごろだった様子。

 ……ええ、mixiの日記には一応記録が残ってるんです。
 当方一時期妙に殊勝らしい気持ちを起こしまして、「mixiで仮レポートを書き、ご一緒した人に読んでもらってチェック入れていただいてからblogに本レポートとしてアップする」とか言い出してですね。

 教訓:
 できることと出来ないことをわきまえましょう。


 時間に比して書く量が増えたり、それ以前に日常がバタバタだったりして――ええ、破綻いたしました。

 それからなんだかだと忙しくしていたのですが――あ、D&D関連でちょっぴり翻訳のお仕事なんかもさせていただいたりしてまして――いや、やっぱり落ち着いて遊んで、落ち着いてレポートも書こうよ、みたいな話をいたしまして。

 で、渡竜は第12回で「第1部・完」っぽくなっていたのですが、近日中に第2部をはじめましょうてなことになりました。
 となると、いままで穴だらけだったところを補って、物語をもう一度繰り広げなおして……

 というわけで、結局「仮レポート」をそのままblogに持ってきただけのような形ではありますが、第11回・第12回を整理してみるような次第ー。
posted by たきのはら at 16:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月02日

シリーズ第11回『地下の麗人』前口上

 ……いや、いかにDAC準備で忙しいからって。
 遊んできた前口上ぐらい書いておかないとちょっとどうかな、と。

 というわけで、1週間前に渡竜第11回を遊んできたのです。今回はふぇるでぃんさん(スルカス:ファイター3/ローグ3)とてつさん(ルーネス:クレリック6)がゲストで、ちょっと大掛かりな話を……と。

 大掛かりは大掛かりで、今回も1回では終わらず次回に持ち越しになったのですが、それにしても、ゲストさんたちに「渡竜は『まったり』だって聞いていたのに!!」「ぜんぜんガチじゃないですか!!」と言われたってのが(汗

 そうか、あれガチなのか。でも、あんまり私自身は「いわゆるガチPL」にはなってないんだよなぁ。むー……
 もうちょっといろいろと頭を使って遊んだほうがいいってことなんだろうか。それとも世のDMがガチだなんだと言われているのは、それはPLの受け取り方次第ってことなんだろうか。いやまぁ、たぶんそんなことどちらでもいいんだけど。

 さて。

 で、今回は。
 「ロバと天秤」屋に客に来ると、使えるものは親でも使え状態でいろんなことにまきこまれるらしいとか。あと、やっぱりキースは女難の相が出てるらしいです。でも、今回は本気で災難だったよなぁ……
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2006年08月23日

シリーズ第9回『夜の女王の秘密』その2:美姫の訪れ

 日々は穏やかに過ぎていく。

 ウィチカは昼間は魔法屋兼雑貨屋兼化粧品屋――つまりウィチカの書いた巻物とアルテアが練った虫除けろうそく、それにパッチーニ商会から卸してきた化粧品「魔女っ娘シリーズ」と「桃色真珠シリーズ」を販売する店――であるところの「ロバと天秤」屋の店主を勤め、夜は呪文書を読み込み、巻物を書いていた。
 本屋のボンバルに言わせると、ウィチカもだんだん店主っぷりが板についてきているらしい。それが客あしらいの面での話であるのか、店に置く商品の選択に関してであるのか、それとも単なるお世辞であるのか……ともあれ、「ロバと天秤」屋の店舗からの売り上げは、ありがたいことにじりじりと上昇していた。

 アルテアは、しばらくコンロの前に陣取って膨大な量の虫除けろうそくを練り上げると、ある朝出かけて行き、数日してから帰ってきた。新しい相棒を見つけたのとアルテアは言った。その腕の中には、少しばかり育ちすぎた感のある猫が抱えられていた。やわらかい毛皮は見事な豹柄で……ウィチカとキースが撫でてやろうとすると、その猫は気持ちよさそうに喉をごろごろ言わせたが、それはなにやら随分不穏当な唸り声に聞こえなくもなかった。
 ウィチカが怪訝な顔をすると、アルテアはにっこり笑って、これは《縮小》の魔法をかけた豹であり、日がな一日小さくしておくわけにも行かないし街中で豹を飼うわけにもいかないから、学院の動物舎のほうで預かってもらえないだろうかと言ったものだった。豹の名前はベラトリクス――戦姫――という大層なものだったが、とりあえず猫に見えるときは「猫さん」と一応呼ぶことになった。やれやれ、フェランがいなくなったらこの家は男は俺だけかよとキースはぼやいたが、それはそれとして「猫さん」に甘えられるのはまんざらでもないようだった。

 そして、キースは、「奇跡の庭」にケシュと一緒に住み、昼間は「ロバと天秤」屋の店員、そして夕刻にはすっかりなじみになった店に行き、剣舞を舞っては小銭を稼いでいた。小銭稼ぎと馬鹿にしたものでもない。キースの剣舞はいつのまにか随分評判になり、その店の定番の演し物ということになっていた。
 いつものように店に入り、時間通りに舞台に立って舞い始めたとき――

 キースはふと、誰かが自分を凝視しているのに気がついた。飲み食いし談笑しつつこちらに視線を投げる客ではない。誰かの視線が自分を射すくめている。振り向くと――真剣に、ほとんど睨みつけるようにキースの舞の手を見つめる美しい女性と視線がぶつかった。
 しばらくキースを見つめると、女性は急にきびすを返した。そうして大して間をおかずに店主が舞台の脇に来て
 「キース、あんたとどうしても今話したいという客が来てる」
 とキースに告げたのだった。

 案の定、あちらだと指し示されたテーブルには、先ほどの女性がついていた。そして彼女を守るように、黒ずくめの服に身を包んだ、なにやら剣呑な雰囲気の漂う男がそのすぐ脇に立っている。
 「どうぞ、おかけになって」
 キースが近づくと、女性はかすかに微笑んで言った。銀鈴を振るような声だった。その面差しに表れた特徴を見て、ああ、彼女も俺と同じハーフエルフなのだなと思うともなくキースは思った。それにしても美しい。妖精の血を引くどころか、妖精そのものといっても嘘にはなるまい。
 「舞台の邪魔立てをして申し訳ありません」
 女性は会釈のように首をかしげて言った。
 「いや、それはどうかお気になさらず。どうせ俺は毎晩ここで踊っているのですし」
 それに、店主からは一晩の稼ぎには十分すぎるほどの金額を既に受け取っている。つまりキースの時間はこの客人たちに買われたというわけだ。
 「伺いたいことがあるのです。
 先から貴方の舞を拝見していましたが……貴方の剣の師匠はどなたでしょう?」
 随分唐突な質問だった。
 「貴方の剣舞の流派はどちらにあたるのでしょう?」
 「……お恥ずかしいが、流派と言うほどのものでもありません。独学の自己流です」
 答えるキースの顔からは、当惑の色がぬぐえない。
 「いずれは剣舞士になりたいと思っています。ですから剣と共に舞う稽古を……」
 「独学で……いえ、見事でした、それでは」
 ハーフエルフの美姫はそういうと少し言葉を切り、そしてまた続けた。
 「『吹雪の剣』を知っていますか?」
 その瞬間、キースは思わず身構えた。背後で鞘走る音がしたのだ。肩越しに気配をうかがう。そうだ、彼女が連れていた黒ずくめの護衛だ。
 「……おだやかじゃないな……」
 静かにキースは言う。知らぬといったら斬られるのかな。だが、申し訳ないが知らない。
 「そうでしたか。セライオ、この人は私たちが探していた人ではなさそうです」
 キースの答えに、美姫はあっさりと頷いた。背後では剣が鞘に収められる音。キースの背中を冷や汗が伝う。冗談ではない。それに――吹雪の剣といったらまったく知らないわけではない。俺が今持っている剣呑な『颪』と同じ、四方の風の剣のひとつじゃなかったか?

 なおも表情がこわばったままのキースに、女性はにっこりと微笑みかける。
 「お邪魔をして申し訳ありませんでした。私はタチアナと言います。『吹雪の剣』のことについて調べているものです。……貴方ほどの剣の名手ともなれば、いずれは『吹雪の剣』について知ることもありましょう。そうしたら、私を訪ねてきて、あなたが知ったことを教えてください」
 「貴方を訪ねる? ……でも、どこに」
 「『妖精の臥所』という店に、私はおります。どなたにでも訊いていただければおわかりになります」
 「それよりは俺の店のほうがいいだろう」
 黒ずくめの護衛のほうが急に口を開いた。
 「俺は『香る木蓮』の差配をしているセライオだ。タチアナに会いたいときはまず俺に話を通せ。そのほうがやりやすいだろう」
 どうやら親切に言ってくれているようなのだが、その口調にどことなく馬鹿にしたような響きが混ざっているような気がして、キースはなにやら随分と嫌な気分になった。

 が、とにかく仕方あるまい。
 それに、キースは『風の剣』についてはこの剣呑極まりない二人連れに嘘をついている。早く帰ってウィチカたちと善後策を相談したほうがよさそうだ。
 そう思うと、キースは渡された金袋を懐に押し込み、店を出て「ロバと天秤」屋を目指したのだった。

このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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