2007年05月27日

『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』その8:目玉の小暴君

ネタバレ注意!!
以下の文章は、月刊ゲームギャザ2005年7月号掲載の 「音速の強盗」を遊んだもののレポートです。とりあえず、そのあたりをこれから遊ぶかも、と言う方は、お読みになりませんように。














 階段を下りきった場所はホールになっていた。ホールの端には「勇者の台座」と刻まれた台座があり、反対側の端には扉。
 この台座が何かの鍵ではないか、と、台座を調べ、果てはセルディース卿やジムが台座に上っても見たのだが、なにごとも起きない。上の階にあった三聖人の像をここに据えねばならないのではないかとケリィが言ったが、そもそも像は動かせる様子もなかったのである。
 しばらく台座にかかずらわっていたのだが、どうにも埒があかない。やはり扉を開けるしかないようだ。恐らくは、そこに、「目玉」がいる。
 
 いつもどおりフレアが中の様子を伺う。
 何の音もしない。おそらく鳴りを潜めてこちらを待ち構えているに違いない。

 武器を構えて扉を開けた。
 いくつものアルコーブが穿たれた薄暗い室内の中央に柱が一本、柱の表には輝かしい戦士の像が描かれている。が、アルコーブの陰には武器を構えた剣呑な影が、右に二つ、左に二つの都合四つ。そして柱の脇に、ゆらり、と、人一人分の大きさほどもある巨大な目玉が浮かぶ。目玉の上からはゆらゆらと6本の眼柄が伸び、その先にひとつずつ小眼が揺れる。ガウスだ、レッサー・ビホルダーともいう、目玉の暴君とも称される化け物の、小型のものだな、と、誰かの声が言った。小眼からは恐るべき魔法の力線が打ち出され、また巨大な眼は朦朧化の効果を有する。その声にこたえるように、目玉の下に同じく巨大な口が開いた。目玉の幅いっぱいに裂けた口の中に、ぎっしりと鋸状の牙が並ぶ。

 見られなければいいんだろ、と、マークスが呟いた。うん、じゃ、やることはわかってる。
 そうして部屋の中に踏み込むと、呪文を唱えた。マークスを中心に濃い霧が部屋の手前半分に立ち込めた。二足離れればもう何も見えない。その後ろではレクサスがワンドを振って邪悪からの守護の呪を施している。

 そのまま手探りの戦闘となった。
 アルコーブに隠れているのは盲目の種族だ、霧は障害になるまいから、元いた場所から一歩でも動かしてしまえば厄介なことになる。目玉が動けずにいるうちに、まずは、グリムロックを倒せ。
 
 それでも霧を見通してきた視線に射抜かれてロボが急にぐったりと身を折る。同時にイーリアもかすかに呻く。まずいな、と呟くと、マークスはロボを下げておいて霧を抜ける。続いてジムもグリムロックを一匹叩っ斬りざま、霧の向こうがわへ。一方セルディース卿とケリィはガウスの視線に体力を奪われておきながら無謀にも前に出たイーリアに駆け寄って傷を癒した。すみません、とつぶやいておいてイーリアは振り向きもせず目の前のグリムロックに殴りかかる。その後ろからフレアの長槍が繰り出され、過たず、グリムロックの胸板をえぐる。

 と、そのとき、霧が晴れた。
 この場に霧を満たした小うるさいドルイドの小僧を執拗に狙うよりは、魔法の霧ならば解呪して無効化すればよいことに、目玉はやっと気づいたらしかった。

 が、冷たい鉄を無効化できなかったのが目玉の限界だった。ジムとセルディース卿の剣に切り裂かれ、目玉はつぶれて床に落ちた。あとに残ったグリムロックが片付くのは時間の問題だった。

 そうして、三聖人の祠からはようやく邪悪な侵入者どもは放逐されたのだった。

 部屋の中には檻がひとつあって、その中にイセリアル・フィルチャーがとらわれていた。エーテル界と物質界を自由に行き来する生き物を捕らえておくとはどういう檻だ、と、調べたところ、どうやら檻ではなく、部屋全体に相応の呪文がかかっていたようだった。

 檻を壊して部屋からイセリアル・フィルチャーを出してやると(例によってレクサスはなんとかイセリアル・フィルチャーと会話をしようとしたのだが、言葉を持たない相手にはどうしようもなく、そしてボディ・ランゲージでどうにかしようにも、一本足の上に袋のような体、腹に顔があって腕が四本、という生物とはそもそもボディ・ランゲージの形態からして違うのでどうにもならないのだった)、どこからかもう一体、イセリアル・フィルチャーが現れた。
 状況から判断するに、どうやらこのイセリアル・フィルチャーはカップルで、一方が囚われの身になり、もう一方がガウスの邪悪な計画のために働かされていたものらしい。
 一組のイセリアル・」フィルチャーは、一行に恭しく一礼すると、ハーフリングが煮込めそうなほどの大きさの鍋を差し出し、そして虚空に消え去ったのだった。おい、壷は、と誰かが叫んだ声だけがむなしく宙に浮いた。

 結局、どこを探しても壷はみつからなかった。
 このまま帰るわけにはいかないから、もう少しこの祠の中を改めていこう、という話になった。一度街に引き上げようという声もあった。

 どちらにしろさ、と、レクサスがいった。
 僕たちは何もしなかったわけじゃない。少なくともトログロダイトの神殿になりかけていた三聖人の祠を取り戻したじゃないか。その証拠だけはちゃんと持って帰らないとね。

 証拠といっても、と誰かがいいかけたが、それにはレクサスが「うん、そのへんはちゃんと心得ているから」と返した。その一方でマークスとなにやら目配せをしあっていたのだが。
 
 ともあれ、トログロダイトの一派と目玉の小暴君は倒し、急を要する話はひとまず片付いた。
 このまま探索を続けるか、まずは街に戻って聖堂にしかるべき報告を行い、体勢を立て直して臨むか。

 それはまた別の話ということになるのだった。





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『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』その7:蛇神の信徒

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以下の文章は、月刊ゲームギャザ2005年7月号掲載の 「音速の強盗」を遊んだもののレポートです。とりあえず、そのあたりをこれから遊ぶかも、と言う方は、お読みになりませんように。













 わざわざ祭壇を清めただけのことはあった。

 マークスが8ガロンの水できれいさっぱり洗い流した聖カスバートの祭壇の下からは、りっぱな造りの棍棒が出てきたし、ケリィがアローナの祭壇の陰を覗くと木製の聖印が落ちていた。レクサスがもう一度祭壇跡を良く調べると、崩れた祭壇には銀輪山を挟んで戦う銀竜と黒竜の姿が描かれており、銀竜の傍らには戦装束に身をかためた三聖人の姿もあった(……が、銀竜が戦ったのは赤竜ではなかったっけ? と、レクサスは不審げに首をひねった)。イーリアだけは何も見つけきれずに、それでもここだけ何もないはずがない、と(そう真っ正直に言ったものだから、周囲には随分呆れられた)フレアに祭壇周りを調べてもらった。ペイロアの祭壇の下にはかすかに光を帯びた真珠がひとつ落ちていた。レクサスが調べたところ、見つかった三つの品はいずれも強い魔力を帯びていた。

 他にも、フレアとジムが掘り出したチェストからは金貨銀貨銅貨が取り混ぜて千数百枚出てきたし(もちろん千数百枚は銅貨で200枚と少しが銀貨で、金貨は25枚だった)、チェストの傍からは、柄に雷雲と稲光をかたどった黄金作りの櫛も見つかった。雷といえばハイローニアス神の紋章にも描かれている。これもきっと何か来歴のある品に違いないと思えた。
 さらにふと思い立って、さきほど倒したトログロダイトの死体を改めると、皆相応に金貨を隠し持っていた。ではさっき、外であった連中もそれなりに小金持ちだったのではないかと思い至りはしたのだが、このご時勢、仕事を終えてここから引き返す頃には、いかにトログロダイトの死体とはいえ、外に倒れているものが身包みはがれていないわけはないのだった。

  そうこうしているうちに、瓦礫の間からムカデがぞろぞろと這い出してきて一行を囲んだ。やはり捨てられた建物の中はなんにせよ剣呑、ということのようだったが、放っておくわけにもいかないので一匹残らず片付けた。その後は、この階はほぼ改め終わったと思われたので、ハイローニアス神の内陣から、地下へと降りた。トログロダイトが階段下で待ち受けていはしないかと警戒したが、そういうこともなく、あたりは静まり返っている。階段下には左右に伸びる廊下、そして目の前に扉。おおかた扉の向こうで待ち構えているのだろう。

 で、ケリィとイーリアがそれぞれ脇の廊下から新手が来ないかどうか見張り、ジムとセルディース卿が先頭に立って部屋に踏み込んだ。狭い部屋の中はやはりトログロダイトとオオトカゲが待ちうけていたうえに左右の扉からもなだれ込んできたが、これもことごとく切り伏せた。どうやら先ほど聖カスバートの祭壇下から出てきた棍棒が、えらく使い勝手が良くて不思議なほど敵を殴りやすいとかで、マークスは嬉しそうだった。

 そこを片付けてしまうと、ひとまず新手はいないようだったので、先に脇の廊下の様子を見ることにした。左右に伸びる廊下は鍵の手に折れており、その先にはデュークの像とマルグリートの像がそれぞれ祀られていた。廊下を探索する途中でずいぶん深い落とし穴が口を開け、あやうくフレアが飲み込まれかけた。穴の底を照らしつけてみると、アンケグが叩きつけられて折り重なるように死んでいるのが見えた。そのあとは随分注意深く調べて回った。落とし穴の先にも廊下は続き、さらに鍵の手に折れていた。その先に祀られているのはパイロス卿の像であった。

 フレアとケリィが二人して像を散々改めたが、特に何か隠されているふうでもない。
 仕方ないので神殿の内陣をさらに改めることにした。

 わずかに開いた扉からフレアが様子を伺うと、奥の部屋には何やらカエルとトカゲのあいのこのような形をかたどった聖印を腰に下げたトログロダイト。これが恐らくトログロダイトの一団を率いるハラグだろう。オオトカゲもいる。聞きだした話からすればそろそろオオトカゲは打ち止めのはずだったのだが。
 部屋の外にもトログロダイトどもが隠れている。が、先ほどからの戦いで連中の力の程はまあ知れている、狭い部屋で入り乱れて戦うよりは廊下と室内でそれぞれに相手取ったほうがよいだろう。幸い、敵方はこちらがここまで来ているのに気付いていないようだ。

 というわけで、こちらから戦端を切った。
 廊下が片付かないうちに、部屋の中ではセルディース卿とジムがハラグとその親衛隊を叩っ斬っていた。

 そのほかに廊下にいた分が片付くのも時間の問題で、あとはトログロダイトどもの懐と、それからすっかり静まり返ったこの階を改める。
 嫌になるほど何もなかったが――ということは、内陣に進む途中にあった螺旋階段を降りてゆかねば埒があかぬということなのだろうが――ひとつだけ、奇妙な石像を見つけた。両手両膝をついた男の像で、腰に巻かれたベルトには「力を求めし者イヴェレフ」と銘らしきものが刻まれていた。
 レクサスが、そういえばそんな名を聞いたことがあるような気がしなくもない、と呟きはしたのだが、この像に何の意味があるのかはいくら溜めつ眇めつしてもわからないのだった。

 ということは、もうひとつ階段を下りねばやはり埒はあくまい。
 そして、この下にはこの祠の仮の主、ナップとやらいう「目玉」がいるにちがいないのだった。





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『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』その6:汚された祠

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 哀れなトログロダイトの書いた地図はおおむね正しく、目の前に続く道の向こうには古びて崩れ落ちかけた祠、そして祠の前には道の両側に3組、つまり6本の石柱が立っている。あの6本の柱から祠の聖域が始まるということのはずだ。
 祠の前の石柱には、遠目にも激しい刀傷がいく筋も刻まれており、かつてはここで激しい戦闘があったことを忍ばせた。一番祠に近い柱の組には、いかめしい顔つきの彫像が門番よろしく刻まれていた。

 が。
 「ふむ、あれは本物の門番だな」
 ケリィが呟いて矢をつがえる。狙い過たず矢が奥の石柱に突き立つと、両方の柱から、これはたまらんとばかりに二匹のガーゴイルが飛び立ち、逃げていった。柱の飾りと見せかけてこちらを待ち受けていたものらしい。

 ガーゴイルに門番を任せて安心しきっているものか、他には特に見張りのようなものもみあたらず、一行は崩れかけた祠に足を踏み入れた。天井はすっかり落ち、壁の一部も崩れている。そういえばあのトログロダイトは親切にも「祠は崩れやすいから気をつけろ」と言っていたのだったが。

 祠の中には祭壇が三つ、祭壇のあとがひとつ、そして小部屋がふたつ仕切られている。原始的な万神殿といったところ……ヒルガ聖堂の原型となった、というのも頷ける。
 入ってすぐ見える壁際には聖カスバートの像が半分打ち砕かれているのが見えた。そして入口と向かい合わせには台座以外はきれいさっぱり叩き壊された祭壇があって、これは確かにペイロアのもの。入口のすぐ脇の壁には森の女神アローナの像が、これは壊されずに立っていたが、どうやらトログロダイトどもはここをゴミ捨て場兼便所に使っていたようで、近づくとすさまじい悪臭が鼻をついた。部屋の真ん中にも瓦礫がひとやまあって、これもやはり祭壇の跡ではないかと思われた。

 一同はしばらく神殿内を見回した。
 トログロダイトどもが潜んでいる気配はない。

 では、と、踏み込み、各々自分に近しい神の祭壇へと散る。
 ケリィはアローナの祭壇に、イーリアはペイロアの祭壇に。あまりのことにケリィはここが敵の住処であることをさておいても祭壇の掃除をはじめ、イーリアもまずはそちらを手伝う(ペイロアの祭壇も酷いことになってはいたのだが、お姿が全きまま汚されているアローナ神像はあまりにも痛ましかったので)。祭壇周りと神像をすっかり清めてしまうと、仕上げとばかりにケリィは聖水を注いで祭壇を洗い流した。そのときにはイーリアはもうせっせとペイロア神の祭壇の掃除にかかっている。
 セルディース卿はというと、しばらく神殿内を見回していたが、急に顔色を変えて奥の小部屋に入っていった。どうやら神殿の構造上、あの小部屋は内陣にあたり、そこにこそハイローニアス神がおわすらしい。

 神ごとにそう熱心なわけではないフレアとジムは、入口近くの小部屋を調べに入っていった。すると倒れて崩れかかったチェストがあって、その中には何かが詰まっているもののようだ。石と土くれと言うわけではないらしい。というわけで、こちらは掘り起こし作業にかかっている。
 レクサスは中央の祭壇跡に歩み寄った。崩れきってはいるが、残された瓦礫から、これはひょっとしたら魔法の神ボカブを祀ったものではないかと推察されたのだ。瓦礫の間にまっぷたつに割れた石版が埋もれていて、「今月の黒竜 死者 負傷者」という字が読めたのだが、それが何を意味するものだかレクサスには考えもつかなかった。

と、急に、セルディース卿が入っていった小部屋の中から卿の怒号が聞こえた。聖カスバートの祭壇周りをうろうろしていたマークスがそちらへかけていく。

 見ると、ハイローニアス神像は祭壇の下に倒れ、そのうえにはカエルとトカゲのあいのこのような醜い粘土の像がべちゃりと据えられている。で、怒り狂った卿がその粘土像を叩き潰したところ。粘土の残骸を卿がこそげ落としていると、ハイローニアスの像から急に光があふれ出し、セルディース卿を包み込む。邪神の像が除かれたことを喜んだ神の恩寵であろう。

 ところが。
 おお、すばらしい、と言う間もなく、祭壇の奥から急に騒がしい声が聴こえた。トログロダイトとモニター・リザードが祭壇の後ろから顔を出した。そういえば、地図によれば確かにこの小部屋には地下に通じる螺旋階段があったはずなのだった。

 「敵襲ー!!」
 マークスの叫びで祠じゅうに散っていた一行はわらわらと小部屋に駆け込んできた。矢が飛び剣と拳がうなり、トログロダイト一行が片付くまでものの数十秒。

 そこが片付いてしまうと、一行はまた祠じゅうに散って、作業を続けた。地下への階段はとりあえずセルディース卿が見張っていてくれるはずだったし、それに、放っておくには、善の神々はあまりにもないがしろにされすぎているのだった。





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2007年05月26日

『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』その5:蛇の輩

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 ともあれ、祠に行ってみればわかることなのであろう、とばかり、夜明けを待って村を後にした。トログロダイトが出るというので(最初の冒険で、その酷い悪臭に懲りていた)マークスが、鼻栓代わりにと人数分の洗濯ばさみを村から借りてきていて、道の途中でそれぞれに配ったりしながら行く。
 祠まではもう数時間の距離のはず。
 
 と、村が見えなくなった頃のこと、ばさばさと翼の音がしたかと思うと上空からガーゴイルが一匹、馬上のセルディース卿につかみかかってきた。そして前方にはモニター・リザードを引き連れたトログロダイトが四匹。せっかくの準備の洗濯ばさみを使うまもなく戦いになる。

 が、呆れるほどの長弓から撃ちだすケリィの矢に――恐ろしいことにここ数週間の薪割り稽古が奏功したものらしい――ジムの剣がことのほか冴え渡り、あっという間にガーゴイルもオオトカゲも切り伏せられ、じきに敵はトログロダイト2体がようやっと立っているのみとなる。

 「一人は残しとけ、中の情報が知りたい!!」
 ガーゴイルを片付け終わったところからフレアが叫び、同時にレクサスにちらりと視線を投げる。奴は共通語は話さないだろうがお前ならなんとかなるだろう。通訳を頼む。
 レクサスが唇をかすかに引いて答えるのと、フレアの声が届いたか届かなかったか、セルディース卿の剣がトログロダイトの一体を斬り飛ばすのが同時、残るはイーリアの前の一体のみ。
 生かしておくだけなら叩き伏せれば用は済むが、気絶させてしまっては後々面倒だ、そしてこちらは先を急ぐ。相手がトログロダイトとあってさすがに一瞬逡巡したが、イーリアはいきなり間合いに踏み込むと目の前の敵に組み付いた。しばらくもみ合った揚句、どうにか暴れる相手をイーリアが取り押さえてしまうと、ケリィが鮮やかな手つきでトログロダイトを縛り上げた。

 何でも話すから命だけは助けてくれ、と、竜語できぃきぃ叫ぶトログロダイトの言葉がわかるのはやはりレクサスのみ。助けてくれ、というのに、うん、じゃあ仲間にそう話すよ、だから聞くことに答えてね、と、頷く。

 で、トログロダイトの言ったことによると、祠の中にはあと二十体ほどのトログロダイトが巣食っているらしい。それにモニター・リザードが三匹、ガーゴイルがさらに3−4体。この一団を統括しているのが「ラオグゼドの神(トカゲとカエルを足して二で割ったような見掛けをした邪神で、トログロダイトどもの神だ、と、ケリィが言った)に仕えるハラグ」という「強いトログロダイト」らしい。
 さらに問うと、このハラグはナップという名の「目の怪物」と交流があるらしい。ナップの力を借りているとかいないとか、ナップは強い魔法の力を持つとても危険な存在であるとか、さらにナップは四本腕の奇妙な生物を使役しているとか、他にも盲目の獰猛な戦士を親衛隊として抱えているとか。

 なにしろとらえたトログロダイトはどうやら下っ端らしく、ナップにあったこともなければナップの親衛隊が何者であるかも知らないようなので、どうも要領を得ない。それでも話を継ぎ合わせてみると、ナップが何者であるかはともかくとして、盲目の親衛隊のほうはおそらくグリムロックであろうとか、トログロダイトどもはイセリアル・フィルチャーやグリムロックと特に親しいわけではなく、ともにそのナップに仕えるなりナップと交流があるなりするためにひとつところにいるのであろうということは推察できた。

 さらに、トログロダイトどもは3−4人組の哨戒部隊を仕立てて祠周りを見張っているらしいのだが、今回出会った一団は、冒険者一行の襲撃を予見したハラグによって迎撃部隊として出されたものだとか。

 ――ますますもって剣呑極まりない。

 命の代償に、とさらに言って祠の地図も書かせる。
 その後、助けてやるようなことを言ったのを、嘘を好まぬ聖騎士殿がわからないのを幸いに(竜語がわかるのはレクサスだけだったのだ)、レクサスはトログロダイトをそのあたりの立ち木に縛り付けさせてしまった――確かに命を取ってはいないのだから嘘ではないのだが、正しい扱いともあまり言えまい――。

 そして、祠から戻ってきたら解いてやるということにすると、一行は少し先にもう見え始めてきた目的地を目指したのだった。





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『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』その4:村を通るもの

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 目に気をつけよ、といわれても、何をどうしたものやら。

 ともあれ、剣呑には違いあるまい、さらにアルベルティーネも今日明日起きられるというものでもない、というので、まずは心して準備を整えることにした。巻物にワンド、さらには「使った分だけ買い取るから」というので、聖堂から聖水の瓶をありったけ(と言っても余分は3本しかないとのことではあったが)借り出し、そのうえにセルディース卿も聖堂から銀の長剣を借り受け、購える以上の準備を整えて、一行は出発したのだった。

 3日間の行程を何事もなくこなすと、小さな村に行き着いた。この村で一泊すれば明日朝早いうちに「三聖人のほこら」へ入れるだろう、そう思いながら近づくと、なにやら様子がおかしい。
 村の柵は引き歪んだり壊されたりしており、人の気配がない。警戒しながら近づくと、村の入口ではいかにも慣れない風の村人がありあわせの武装をしてへっぴり腰で構えている。

 「何かあったな、痛ましいことだ」
 呟くと、セルディース卿は、君達はしばらく待っているようにと一行の残りに言い渡し、即席の番人のほうへと近づく。
 「物々しい様子だが、何かあったのかね」

 効果は覿面で、村人は持ちつけない槍をとっとと放り出し、助かった、騎士様が来てくださったと殆どすがりつくようにしてセルディース卿を村の中へと案内する。そこで卿が残りの一行を手招きすると、それ騎士様のお仲間だというので残りもまとめて村へと招きいれられたのだった。

 状況を聞くに、どうやら村はトログロダイトの一群に襲われたものらしい。襲撃は5日前、奪われたものは金品に食料。襲ってきたのはトログロダイトが5匹、それに巨大なトカゲもいたという。トカゲ、と聞いてなにやら背中の寒い気分に一瞬なったのだが――まさかそのトカゲ氏は羽が生えていて火や氷や酸や、その他剣呑なものを吐き出すトカゲじゃなかろうな――ケリィがすぐに「それはモニター・リザードだろう。トログロダイトはよくあのオオトカゲをペットにしているから」と言ったので、少しばかりほっとし、だからといって事態が好転したわけでもないことに気づいてまた顔を引き締めたのだった。

 さて、この村を救うのが先か、それともヒルガ聖堂の依頼を先に片付けるか。聖堂の依頼は重要だが、まさか村の惨状を見過ごすわけにも行かぬ。困っていたのだが、まずは、と訳を話すと、事態はあっさりと解決した。どうやらこの村を襲ったトログロダイトどもは、まさに「三聖人の祠」に住み着いているらしい。では、三聖人の祠に行って、祠を汚す不逞の輩を切り伏せたあと壷を持ち帰れば、そのまま村人を救うことにもなる。
 ならば話は早い、明日我々はさっそく三聖人の祠を清めに行く、とセルディース卿が言うと、村長は泣かんばかりに喜んで、少ないが報酬を支払いたいと小さな金袋を押し付けてきた。
 が、さすがにそれは受け取れない。村の復旧のために使ってくれ、と卿が言えば、レクサスも「お金はいいよ、ただ、僕達を今晩ひとばん泊めてくれれば」と言い、マークスも「成功報酬だ!! だから今は要らない」と言う。
 何が何だかわからない騒ぎになる前に、イーリアがすいと金袋を取り上げ、村長の手に乗せて返した。
 「ともあれ、このお金は受け取らないことになりました。私たちは既に教会からの報酬を受けることになっていますので、お気遣いは無用です」

 ということで、そのようになった。

 さて、では状況を把握せねばなるまい。 
 「ほかに盗まれたものは」
 とセルディース卿が問うと、そういえば珍妙なものが盗まれたというよ、と誰かが答えた。イリばあさんのところで鍋が盗まれたらしい。それも随分おぞましいシロモノに。

 鍋はともかく、おぞましいシロモノ、というのが気になったのでばあさんのところに行って詳しく聞くと、やはり鍋をさらっていったのはイセリアル・フィルチャーであるらしい。ではこちらも例の壷と同様、何か来歴のある鍋かというと、それはさすがにそうでない。が、(ケリィの言い方を借りると)ハーフリングが煮込めそうなほど馬鹿馬鹿しく大きな鍋であるという。トログロダイトどもの住処に雨漏りでもし始めたのかと誰かが言った。が、おかしなことがあって、盗まれたのはトログロダイトの襲撃よりも後で、ちょうど2日前だというのだ。あの一本足のシロモノが人間の一行と同じ速度で道を行くものなら、神殿の壷をさらって逃げて、そしてこの村まで来てさらに行きがけの駄賃を掠めたとするとちょうど計算が合うという仕組み。さらに、鍋をさらっていったシロモノは、そういえば4本ある腕の一本に壷を抱えていたようにも思う、との話。

 ……おかしい、では、あの一本足とトログロダイトは別口なのか?





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『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』その3:剣呑な神託

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 というわけで翌日になった。

 イライジャ師より冒険者一行に語られた話では、神託によると、壷はトーチ・ポートから川沿いに3日ほど北上した場所にある「三聖人の祠」なる廃墟にあるということであった。

 「三聖人とはいかなる御方でしょうか」とケリィが問うと、師の応えて曰く、遠い昔にこの地域一帯を邪悪の勢力より守り抜いた三人の英雄を指しているとのことであった。いずれもハイローニアス神を篤く信仰し、不滅の軍団と称された軍を指揮してスカル・ウォー――このあたり一帯を戦場として銀竜と赤竜、そしてそれぞれを取り巻く軍勢がぶつかり合った熾烈な戦であったという――を戦い抜いたものたちだという。盗まれた壷にもその三聖人が描かれていたのだとか。

 ひとりは柔和な顔立ちに描かれ、輝かしい鎧をまとった戦士で、パイロス・ハーランド・ブレンダンという。これはアバ・オーズに住む銀竜と接触し、かの竜が邪悪なる赤竜を撃つ助けとなったのであるという。

 ひとりは袖なしのローブをまとった美しい女ウィザードで、名をマルグリート・マインデフェルと称する。戦の先頭に立って雷を操るといわれ、最も激しい戦闘のときでもその身に傷ひとつ負うことはなかったという。

 最後の一人はハイローニアス神の司祭で名をデューク・マンフェング・ゴルドヘルグ。上半身裸のハーフオークで、剣を振り上げ雄叫びを上げる勇ましい姿で描かれていたという。この司祭は神の意志を己が力によって示すことを好み、そのようなものとして敵にも恐れられていたという。

 この三聖人がいかにして神に召されたかは語り継がれてはいないのだが、少なくとも三人ともスカル・ウォーを戦い抜いており、「不滅の軍団」の指揮者であり、死後その功績をたたえられ、正義の守り手として祠に祀られるようになったということだけは確かなのだという。

 が、その祠もやがて長い年月のうちに朽ち、250年前、トーチ・ポートがこの地に原型をなしたころには既に廃墟と化していたのだとか。

 「が、その『祠』が、今のヒルガ聖堂の原型ともいえるのだ。その祠が三聖人とともに多くの善なる神を祀る聖所であったのは確かで、それがこのあたり一帯の伝統的な信仰のあり方でもあったということなのだろうな」

 イライジャ師はそのように祠の来歴について話を結んだ。さらに今度は盗まれた壷の来歴について問うと、これはまったく不明とのこと。が、壷に描かれているのは「三聖人のさいごの戦い」の図であることはわかっているのだった。とはいえそれはかのスカル・ウォーとは別の戦いであるということ以外、史実上のどの戦いであるかは明らかではなく、さらにその戦いの結果三聖人がどうなったかも不明であるというのだった。そして、壷には強い死霊術の魔法がかかっていたという。

 こちらはまったくもって冗談ではない話だった。

 ともあれ、目的地、そしてするべきことがわかったのだから、あとは行動に移すのみである。
 まず、祠までの道程を乗り切らねばならないというので、出くわしそうな怪物どもについて問うと、「ひととおり出そうなものは出る」とのこと。ゴブリン、ホブゴブリンから始まってオーガまでがひとわたり。たまにはアバ・オーズの奥からトロルが迷って出てくることもあるという。
 また、川沿いの湿地帯ということで、リザードフォークとトログロダイトもうろついている。ついでに大イタチにアンケグ、剣呑なところではアウルベアにミノタウロスにヒポグリフ。

 「つまりは何が出てもおかしくはあるまい、ということだ」
 そう言ってから、おお、とイライジャ師は言い足した。
 「もうひとつ神託があったのだ。『目に気をつけろ』とな」




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『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』その2:素晴らしき仲間

ネタバレ注意!!
以下の文章は、月刊ゲームギャザ2005年7月号掲載の 「音速の強盗」を遊んだもののレポートです。とりあえず、そのあたりをこれから遊ぶかも、と言う方は、お読みになりませんように。











 僧院に赴いたセルディース卿が、イーリアという娘に会いたいと告げると、出てきたのは思いもかけずひっそりとした娘だった。僧院の修行者だけあって鍛えた身体をしてはいるが、なんというか、いまみっつほど、影が薄い。この娘でほんとうに大丈夫なのかと思いながら用件を告げると、娘は頷いて、わかりました、では、西街の港湾地区の『勇敢な船乗り』亭という酒場兼宿屋にいらしてください、そこにジム・コナーズという戦士とレクサスというエルフのウィザードがいます、それにこの時間ならヒルガ聖堂に匿われているローグのフレアもそこにいるはずでしょう、私は街の外の宿屋にいるドルイドのマークスを呼んできます、それにアルベルティーネにも仔細は手紙にでも書いて知らせておきますからご心配なく、と、よどみなく答えたので、まあ役に立たなくはないのだろうとは思えた。そこで卿はこの場はイーリアに任せることにして『勇敢な船乗り』亭に向かったのだった。

 卿を『勇敢な船乗り』亭に送った後、イーリアはトーチ・ポート門外の『オークの木陰』亭に向かった。オオカミのロボは街中には連れて行けないからというので、マークスはここを常宿にしている。

 マークスは『オークの木陰』亭にいて、そしてどうやら新しい遊びに夢中らしかった。

 食堂の隅に男がひとり座っている。
 着込んだチェインシャツにスパイクを取り付け、身の丈ほどもある長弓を傍らに立てかけている。俯いたまま、時折強い酒を煽るほかはじっと視線を落とし、なにやら考え事に夢中のよう。
 そしてマークスは、男がまるで構わないのをいいことに、その男の鎧から生えた長い棘にリンゴを投げつけて遊んでいるのだった。

 イーリアが呆れて眺めていると、リンゴを投げつけ終わったマークスは、今度はミカンを投げ始めた。上手いもので男の鎧の棘にすっかり赤か黄色の飾りがついてしまうと、マークスは今度はスイカに手を伸ばした。
 さすがにこれはただでは済むまいと思ったので、イーリアは踏み込んでマークスの手からスイカを取り上げた。
 「やめなさいマークス。話があるので『勇敢な船乗り』亭まで来てください。……それから、この方は?」
 「……しらないひと」
 「知らない人にあなたはリンゴやミカンを投げつけたりするのですか」
 「イーリアだって知らない人を殴ったりするじゃないか」
 スイカを取り上げられたマークスは思い切り不機嫌な顔をしていたが、ひょいと、(リンゴとミカンだらけの)男のほうを向いて
 「あんた何しに来たんだ?」
 と言った。
 「俺か。俺は、とある巨人を探している。片足の親指のない巨人だ」
 男は顔をかすかに上げると唸るように言った。子どもの相手をする気はない、とも言外に言っていたが、それを聞くとマークスの顔が、ふ、と引き締まった。
 「巨人、か。わかった、よし、行こう」
 なに、と男の目が光を帯びた。上げた視界に、まるでいままで道化を装っていただけだ、とでもいうような、きりりとした少年の顔が映った。
 「知っているのか?」
 「うむ!!」
 そこで男はごとりと立ち上がり、マークスと一緒に歩き出した。慌ててイーリアはマークスにスイカを押し付けたのだが、どうやらそのスイカはというとマークスがそのへんの露天商から勝手に持ってきてしまっていたもののようだった。スイカを露天商に返しに行ったイーリアは、結局マークスがこれまた勝手に持ってきていたリンゴとミカンの代を払うことになった。

 そのころ。
 セルディース卿は微妙にほほを引きつらせながら、目の前の有象無象(……卿にはそう見えた)に状況を説明していた。

 ええと、とりあえず可笑しくないのはフレアとかいう青年だけか。ウィザードのレクサスは、どうやら高貴なるグレイエルフのようではあるのだが、ええとまぁ、人を血筋や何かで差別するのがよくないのと同様に(セルディース卿には人の血とエルフの血が半分ずつ流れており、それで随分面白くない思いもしてはきているのだった)血筋では評価はできないということだろう。
 戦士のジムもとりあえず善人だが……だがその、修行と銘打って剣で薪を200本叩き割った揚句宿屋のオヤジにいい加減にしろとかいわれているのはやっぱり何かまともではないのではあるまいか。

 かてて加えてさっきのイーリアが、服の全面にひらひらと色とりどりの布を色彩感覚に何か難がある感じでぎっしりと縫いつけたものを着込んだ少年と、トゲトゲの鎧を着こんで長弓を担いだ男(さすがにリンゴとミカンは取り外されていた)――身のこなしからして恐らくレンジャーであろうかと思われたが――を連れて来たあたりで卿は少しくうんざりし始め、さらにそのトゲトゲの男はマークスが宿から連れて来てしまったまったく初対面の人間であるということが判明するにあたって、外れそうになった顎を押さえる破目になった。さらにマークスとレクサスが話をほったらかして騒ぎ始めるにいたっては、とうとう我慢ならなくなってイーリアに「あの二人はどうにかならんのかね」と聞いたのだが「子どものいうこと、どうか大目に見てやってください」と恐縮されるに及んではいろいろと諦めざるを得なかった。

 ちなみに初対面だというその男はというと、名はケリィ、アーンスト伯国領のとある村出身で、若い頃は斥候兵として軍務に服していたが、先だって休暇で故郷に帰ると村は壊滅、そして足の親指のない巨人の足跡だけが残っていたことから、巨人探しの旅に出たところだったのだという。
 
 一行はしばしセルディース卿をほったらかして男の身の上を聞き、自分達はちょうど今仕事を引き受けかけているのだが斥候ができるものが少ない、よければ同行してくれないかと頼み始めた。男は男で、なにしろ親指のない巨人といっても雲を掴むような話、そもそも故郷の村を壊滅させたのが本当にその巨人であるのかすら実は定かではない、ひとりで情報を探るのは何やらおぼつかない話、君達が私に協力してくれるのであれば私も君達に協力しよう、と言い始める。

 どうやら話がまとまり、6人になった一行は改めてセルディース卿のほうに目を向けた。

 いささかどころでなくげんなりしながら、しかしそれを表には出さず、卿は神殿から受け取った金貨500枚に加えて自分からも金貨100枚を支度金として冒険者達に渡した。そして、エーテル界と物質界を自由に行き来する盗人に盗まれたものを探すといっても雲を掴むような話というので、明朝神殿のほうで神に伺いを立て、その後出発することになるからそのつもりで、と言い置き、宿を後にした。

 その後一時間ほど、卿は何で俺は着任早々あんな連中ととわめきたてながら郊外を狂ったように馬を駆けさせたのだが、まぁそれは人の知るところではない。





このシーンの裏側
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『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』その1:黄昏時の怪

ネタバレ注意!!
以下の文章は、月刊ゲームギャザ2005年7月号掲載の 「音速の強盗」を遊んだもののレポートです。とりあえず、そのあたりをこれから遊ぶかも、と言う方は、お読みになりませんように。











 591年6月。第2星曜日。
 
 トーチ・ポートへ向かう街道を、一人の聖騎士が馬を急がせていた。騎士の名はセルディース卿。ハイローニアス神の教会に仕えるものであったが、このほど中央から命じられて南方の港町トーチ・ポートへ赴任するところである。騎士長閣下の曰く、南のほうでアイウーズの間諜が暗躍している。さらには緋色団の活動も活発化しているという。その地の守りの拠点となるべき街にはヒルガ聖堂という万神殿があり、相応に騎士団も抱えてはいるが、本当に神格からの召命を受けた聖騎士は6名に過ぎぬ。そなたは七人目の聖騎士としてトーチ・ポートに赴き、正義の拠点を守らねばならぬ。そこでセルディース卿は愛馬アーク号を駆ってその港町を目指しているのであった。

 日はもう暮れかけて、夜の気配がゆっくりと濃くなってきていた。
 と、卿は道の先でなにやら珍妙なものがひょこりと跳ねたのに気がついた。怪しい奴、邪悪なものなら捨て置けぬと馬を急がせたが、届かない。一方でその珍妙なもの――まさにそうとしか言いようがない。一本足の上に歪んだ袋のようなものが乗っかり、そこから四本の腕が生え、その袋の中ほど、見ようによっては生物の腹部にあたるかにも思える部分に切れ込みのような口と二対の目がついたそれ――も卿の姿に気づいたようで、一瞬立ち止まって卿をまじまじと見る風であったが、卿がさらに馬を駆けさせようとすると、卿に向かってうやうやしく一礼したかとと思うと、虚空に溶け込むように消えてなくなった。
 その腕にはなにやら壷の様なものがかかえられていたようだ、と、珍妙なものが消えてしまってから、卿はようやく思った。

 その少し前、ヒルガ聖堂。
 緋色団に命を狙われているから、というのでせっかく購入した自宅に住めずに聖堂に保護される羽目になったフレアの耳に、とんでもない大騒ぎの喧騒が飛び込んでくる。曰く、レリックが盗まれた。
 待て、そりゃこの間あまりにも危険だからって俺らがわざわざ持ち帰って聖堂に納めたアレがもう盗まれたってのかと青ざめて与えられた部屋を飛び出すと、宝物庫のまわりはすっかりてんやわんや。泡を食ってただただ駆け回る侍祭たちの言い草はさっぱり要領を得ないが――ああ、とりあえず盗まれたのは壷で、「あの」ゴブレットじゃないらしい。おや、何だか、みるからにご立派な騎士様がいらしてあっという間に事態を収拾していくじゃないか。レリックったって「アレ」でもないみたいだし、俺の出る幕じゃないか。

 「みるからにご立派な騎士様」は当然セルディース卿。
 事態の何事かもわからないまま騒ぎまわる人々からいかなる手段をもってしてかなだめ倒して的確に情報を収集し、コトの第一発見者だという宝物庫係が問いただされている部屋に乗り込む。宝物庫係は、怪しい奴が出た、一本足に四本腕、目が四つに口がひとつ、袋のような腹にぽかりと空いていて、と、盗人についてウワゴトのような説明を必死でまくし立てているのだが、どうやら周囲はかけらも信用していないらしい。
 それも仕方あるまい、件の生物を見ていなければ私も信じられぬやもしれぬ。
 そう心の中だけで一人ごちてから、卿は静かに口を開いた。
 「お待ちなさい、その人は嘘を言ってはおられぬようだ」

 結局のところ、ヒルガ聖堂の上級司祭であるイライジャ師もその場へ乗り込んできて、確かに聖堂の宝物はそのみるからに怪しい生物――それはイセリアル・フィルチャーであろう、と師は言った――にさらわれたのであり、宝物庫係は嘘をいってはおらず、また相手が相手である以上、ひどく非があったわけでもないであろうということになった。また、騒ぎの解決――つまりは壷の回収を卿に預けるということでその場は落着したのである。なにしろ、卿が、神妙にうなずいて
 「かの宝物庫番はしんじつそのような化け物を見たのでしょう。実は私もこの街へ入る前に、野中の道でそのような珍妙なものが虚空に消えるのを目撃した。怪しい奴、と追うたのだが私の馬の足では追いつけず、取り逃がしてしまった。今思えば、かの化け物は来歴のありそうな壷を抱えていたようにも思う。きっとこの聖堂で盗みを働いてからの帰りだったのでしょう。
 であれば、彼奴めをとりにがした私にも責任の一端はある」
 などと言ったものであるから。

 事態がそう収まったその上で、イライジャ師の曰く。
 おお、七人目の騎士殿よ。あなたをお待ちしていたのだ。なにしろここしばらく、この街には怪異が頻発しており、聖堂にも騎士団はあるとはいえどうにも手が足りぬ。そもそもが最近は街の外の怪物どもが活発化しておって、騎士団はそれら大規模な脅威に対応するので手一杯、市井の怪異の解決には見習い聖騎士やこの神殿の司祭の中でも若い者が当たってはいるのだが、どうにも手が足りぬ(と、司祭殿は繰り返した)。
 そこで卿、着任したばかりで申し訳ないが、今度のレリック――魂の壷というのだが、とても古いもので、使い方も既に知る者はないが、とにかく聖なるもので強い魔力を帯びていたことは確かだ――の奪還をまずはお願いできないだろうか。

 そのための戦力として、現在卿にご紹介できるのは、聖堂の司祭で聖カスバートに仕えるアルベルティーネという女司祭がいるのだが(といってイライジャ師は一瞬口ごもった)、彼女はいま流行り病で寝込んでいる。が、これまで彼女と一緒に事件を解決してきた(と、そこまで言って、師は、もう少し長く沈黙した)冒険者の一味、いや、一団がいる。一人はこの神殿付きの僧院で修行中のモンク、一人は訳あってこの神殿で保護しているローグで、あとはええと戦士とドルイドとウィザードとまぁそんな感じだ(と、師は急に早口になった)。うむ、もちろん腕は悪くない連中だ。そして彼らは冒険者だ、金の話をしないと動かないだろう、報酬は2500gp、前金は500。それだけ、神殿から出そう。この件は是非、卿にお願いしたい。

 500gpの入った袋を受け取ってその場を辞そうとするセルディース卿を、ああそれと、と思い出したようにイライジャ師が呼び止めた。
 「先ほど言ったモンク、イーリアと言うのだが、この娘が聖堂に借金を負っている。以前連中が手がけた事件を、この街の衛兵隊長が手伝っていたのだが、何やら下手を打ったようで死んでしまってな。で、神殿長様にお願いして生き返らせていただくことになったのだが、そのときの費用の借用書を件の娘が肩代わりして署名した。そのことも合わせて言ってやれば、まぁ、冒険者達も断りはすまいよ」

 それを聞いて、どうしたものか、とは思ったのだが、セルディース卿はとりあえずそのモンク娘に話を通しに行くことにした。本来ならその一団を取りまとめているという女司祭のもとに行くべきなのだろうが、流行り病のため会えないというのでは仕方がない。ならば、一番身元がはっきりしているのは僧院で修行しているという娘だろう。





このシーンの裏側
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シリーズ第8回『助けを得た冒険者と謎の盗人の話』前口上

……うわぁ、なんかもう、触るのも怖いぐらい間が空いちゃいましたよ。
なんかもうね、久方ぶりにSeeSaaに書き込みしようと思ってログインしたら、見え方が凄い勢いで違ってて、私これ本当に使いこなせるんだろうかとか怖くなるぐらいで。

ま、そのへんはさておくとして、前口上と言い訳とここまでのいきさつです。

とりあえずシリーズ第8回(キャンペーンとしては第9回)は、2007年6月19日に遊んできました。いつの間にかメンバーもちょっとずつ入れ替わって、

DM:ふぇるでぃんさん

PC/PL
レギュラー
ジム・コナーズ:腐爺さん
フレア:あくあさん
マークス:えでぃさん
レクサス:sakiさん
イーリア:たきのはら

新規レギュラー
ケリィ:ユージさん

ゲスト
セルディース卿:ハイランスさん

の7名。Yu-RIEさんのアルベルティーネは今回お休み。

で、今まで何があったかというと……あ、ネタバレになるからまずいのか。シリーズ第5回で『銀輪山の覇者』の後半を、シリーズ第6回と第7回で『ドルイド麦事件』を遊んでました。とりあえず記録とか仮レポートとかは残っているので、今後こちらにもレポートは上げていく所存。

というか、何とか「よいレポート」を書こうと試行錯誤した挙句、一時期はmixiで仮レポートを書くとかやってたんですが、ダイジェスト書いちゃうとその後更に本レポート書くとかできやしないことに気がつきまして。で、今回は下書きをmixiで書いて直しをもらって、こちらに清書をアップとかにしよう、と。

……まぁ、そんな感じで。
次からはばりばりアップしていく所存ー。
posted by たきのはら at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月17日

『祝福された冒険者と死霊の山の話』その4:二人の司祭

ネタバレ注意!!
本レポートは月刊ゲームぎゃざ 2005年5月号収録の「銀輪山の覇者」をプレイしたものです。
ので、今後上記のシナリオを遊ぶ可能性のある方はお読みにならないで下さい。










 その頃、アルベルティーネとイーリアはヒルガ大聖堂に戻り、聖堂司祭の二番手にしてハイローニアス司祭のイライジャ・フェルミ師の前に立っていた。
 このモンゴーレの話ですが、教会の上司にはお話したほうがよいのではないですかとイーリアが問い、アルベルティーネもそれには同意したのだった。とはいえ、聖カスバートの司祭を束ねるカートマン司祭は聖堂きっての「武闘派」であり、このような話の相談相手としてはふさわしくなさそうに思えた。
 「では、イライジャ司祭はどうでしょう。聖堂付の修行者を束ねている方でもありますから、私から面会を求めても問題はないはずですし」
 「そうですね、それにイライジャ師はラーザ大司教様のすぐ下で補佐をされている方でもありますから」
 
というわけで、イーリアはイライジャ師に面会を求めて許され、二人は司祭の部屋の前までやってきたのだった。
ところが、不思議なことに、とりあえず相談があってまかり越した旨の口上を述べると、イーリアはすぐに
「詳しくは、アルベルティーネ司祭より申し上げます」
と告げて引き下がってしまったのだった。一方、イライジャ師もそれが当然のように頷いてアルベルティーネのほうを向くと、後はイーリアにはもう見向きもしない。なんとなく落ち着かない空気を感じつつ、アルベルティーネは言葉をつむいだ。
――かつて解決した『橋の下からゾンビが湧き出した事件』や『西街連続誘拐事件および東街殺人事件』につながるとある筋から、これらの事件の黒幕はヴォル=チャックなる、おそらくは死霊術師で、そして死にぞこないの大群を引き連れ、オークの部族と手を結んでトーチ・ポートを今にも攻め落とさんとしていることが知れた……
「……やはり、そういうことか」
アルベルティーネの話を聞き終わると、意外にも、イライジャ師は深く頷いた。
「実は、つい2日前、アバ・オーズの東の縁を抜ける街道を通行中の隊商が、オークの大群に襲われたのだ。生き残りの護衛の話を聞いてみれば、なんでも奴らは隊商を全滅させたあと、お決まりの積荷や馬を奪うだけでなく、倒れた死体をも運び去っていったという。薄気味の悪い話とは思っていたが、今の話で平仄が合った」
そして、これは捨て置けぬということで、ジェン=メッツァー騎士長を先頭に、ヒルガ大聖堂の聖堂騎士団が街道を守りつつオークどもを殲滅すべく街を出ているとも告げた。
「聖堂騎士団はすっかり出払ってしまっている。残っているのは見習い騎士だけだ。今度のオークどもの強さはただ事ではなかった。おそらくはそのヴォル=チャックなる男が後ろでなにやら糸を引いているものだろうと思うがな。ともあれ、そこへまだ半人前の騎士見習いを出してやるわけにも行かぬ。それはただの自殺行為になってしまうからな」
「……理解しております」
「しかも、騎士たちはまだヴォル=チャックの存在を知らぬ。いずれは戦場で知るのやもしれぬが、今は彼らの目に敵として映っているのはオークどもだけだろう」
だから、アルベルティーネ、お前がそのビルナスの研究所に赴き、ヴォル=チャックを滅ぼしてきてはくれぬだろうか。
イライジャ師はそう言うと、微かに苦笑のようなものを浮かべて唇を曲げた。
「無茶は承知で申しておる。だが……お前には心強い仲間達もいるようだし、それに」
そう言ってイライジャ師がなにやら合図をすると、部屋の奥の扉が開き、二人のペイロア司祭が入ってきた。
――ああ、そういえばこの二人は、イライジャ師のご子息・ご息女なのだったわ。

入ってきたのは、エンリコ・フェルミとノキ・フェルミ。アルベルティーネは彼らとは信仰を異にするため、親しく言葉を交わしたことはないが、神殿内で顔は見知っている。ハイローニアス司祭を父としながら、何故か兄妹してペイロア信仰に身をささげているという。が、こうやってここにいるということは、それは父イライジャ師も承知の上の行為だったのだろう。
そして、もうひとつ、アルベルティーネが思い出したのは、彼らがここ一週間か十日の間に次々と難事件を解決しているということだった。まず、ボカブを信仰するとある書生が邪神タリズダンの一派に攫われていたのを救出したのを皮切りに、東街の高級住宅の立ち並ぶスワン通りでの凄惨な連続殺人事件の犯人を挙げ、そしてつい2−3日前にはトーチ・ポートの北方の『蚊沼(ナット・マーシュ)』で邪悪な力が活性化し始めたというので調査に赴き、その元凶であったと考えられるアンデッド・ドラゴンに真の死を与えたという。

 「この二人を援護につけよう。エンリコとノキ、ペイロア神の司祭だ。きっと助けになろう。また、見事事件を解決した暁には、神殿から金貨2000枚の報奨金も与える。……大変な仕事であるとは理解しているが、頼むぞ」
 そこまで言うと、イライジャ師は新たに入ってきた二人のほうに向き直った。
 「エンリコ、ノキ、というわけで、こちらは聖カスバートの司祭アルベルティーネ。彼女を助けて働いてほしい」
 「おお、これは初めまして」
 エンリコがものやわらかな笑みを浮かべた。
 「ところで……お名前はなんと?」
 「アルベルティーネと申します。このたびはご協力いただけるとのこと、感謝いたします」
 「いえいえ、感謝には及びません。それで……どういう話だったかな、ノキ?」
 「アバ・オーズの荒野に残るビルナスの研究所の廃墟に赴き、そこに住まう死霊術師を倒してこなければならないとのこと」
 「おお、そうだったね。アバ・オーズですね。では、参りましょう」
 「……?」
 アルベルティーネは自分の目と耳を疑った。目の前のエンリコ司祭は既に足元に置かれている荷物を手にし、今にも荒野に駆け出していってしまいそうな様子なのだった。
 「あ、いいえ、その、まずは同行者にもご紹介しないとなりませんし……」
 「おお、そうでしたか。で、その方々の名前はなんとおっしゃいましたか、たしか……ノキ、なんというお名前だったね?」
 「……ええと。まだ申し上げておりませんが……」
 「おお、そうでしたか。で……」
 「ええいエンリコ、しばらく黙れ。まったく不肖の息子が……」
 思わずアルベルティーネが後ずさりかけたところで、イライジャ師は呆れたように声を挙げた。たちまちエンリコがきっとした顔になる。
 「何を仰います父上、心外です。私が一度でも父上の期待を裏切ったことがありましたか。少なくとも私の記憶にはありません」
 「……それは、そうだろう」
 イライジャ師は呟き「何しろ何も覚えちゃいないのだから」とぼそぼそと口の中で付け足した。
 「ああその、アルベルティーネ。少なくともまぁ、いないよりは役に立とう。いやエンリコ、口答えはよい。行け」
 
 イライジャ師が席を立ちかけたところで、アルベルティーネは不意に師がエンリコとノキにイーリアを紹介するそぶりすら見せていないことに気がついた。
 「イライジャ様、お心遣い感謝いたします、ところで……」
 話の行き掛かり上紹介のきっかけを失ったのだろうと、アルベルティーネがイーリアのほうを指し示そうとすると、イーリアは微かに首を振ってそれを押し留めた――退出してからにいたしましょう。
 「師は、まだ私のような未熟者は数に数えていらっしゃらないのです」
 退出してから、少し悲しげな調子でイーリアはそう言った。
 「仕方ないことです、けれど。私が未熟なのは事実ですから」
 「ああそれは親父が悪いのです、まったくもって差別主義者で。許してやってください。ところでお名前は……ノキ、こちらはなんというお名前だっただろう?」
 おっとりとした調子でしゃべり出したエンリコを、苦笑交じりでイーリアはさえぎった。
 「いえ、お気遣いなく。ところで私はイーリアと申します。まだ名乗っておりませんでしたので……」
 「おお、そうでしたか、で……」

 さすがにいたたまれなくなったアルベルティーネは、それ以上エンリコにしゃべらせずに、『勇敢な船乗り』亭への道をたどり始めたのだった。




このシーンの裏側
posted by たきのはら at 11:56| Comment(1) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月05日

『祝福された冒険者と死霊の山の話』その3:ビルナスの遺産

ネタバレ注意!!
本レポートは月刊ゲームぎゃざ 2005年5月号収録の「銀輪山の覇者」をプレイしたものです。
ので、今後上記のシナリオを遊ぶ可能性のある方はお読みにならないで下さい。






 「確かに……トーチ・ポートにもしものことがあれば大変だ。ヴォル=チャックを捨て置くわけにはいかんな」
 ジムが言った。
 「それに、弟さんのことも」
 イーリアが言葉を続ける。
 「頼まれてくれるか。……君達は?」
 そう言ってモンゴーレはまだ答えていない面々の顔を見る。
 「別に、助けに行くのはかまわないけど」
 レクサスが無邪気な調子で言う。
 「どうやって弟さんに、僕らが君に言われて助けに来たんだって知らせるのさ?」
 「それは……これを」
 そう言ってモンゴーレは、首からロケットを外した。
 「これが俺のだということはあいつも知っている。俺が進んで君らに渡したとわかるように書付を入れておくから」
 そうしてモンゴーレは、ロケットを、レクサスではなくなぜかアルベルティーネに渡した。その目はもう一度何か意味ありげな色を帯びていたのだが……それに気付かなかったか、気付かぬ振りをしたのか、聖カスバートの娘司祭はただ静かにそれを受け取っただけだった。
 「……頼りにしていいんだな」
 ややあって、苦笑いのわずかに残った声で、重ねてモンゴーレは言った。
 「……まぁ、トーチ・ポートの危機となれば、知った以上はただぼうっとしているわけにもいかないがな。西の荒地からゾンビとスケルトンとオークの大群……本当ならおおごとだ」
 ジムが答える。そう、弟のことは気の毒だし助けてやるのもやぶさかではないが、まずはトーチ・ポートだ。
 「西、って言ったら、前につかまえた『盗賊のおじさん』も西から来たんだったね」
 唐突にマークスが言った。
 「あの、アイウーズ帝国と緋色団の間でにらみ合ってるとか言う……」
 レクサスが言いかけ、そして一同、ぞっとして顔を見合わせた。
 「ちょっと待て、そのヴォル=チャックはアイウーズだとか緋色団だとかのどっちかとかかわりがあるのか!?」
 もしそうなればただごとではないどころの話ではない。
 噛み付きそうに叫んだフレアに、モンゴーレは軽く首を振って見せた。話題が弟のことを外れたからか、モンゴーレの端正な顔にはまたあまり人のよくない笑みが戻ってきている。
 「いや、奴は……何やら死そのものの力をどうこうするとかいう教団の一員だったか何かだ。もちろんアイウーズや緋色団だって死とは親しくないわけじゃないだろうから、そのどちらとかかわりがあってもおかしくはないわけだが、少なくとも奴がアイウーズの魔物や緋色団の修行者どもと親しく語っているのを見た覚えはない。
 それと……奴が居着いているビルナスの研究所だが、これはもともとドワーフの手になる建物だ。この研究所を建てたビルナスってのは貴族の三男坊か何かで、責任はなく暇と金だけあって、魔道の研究に好きなだけ力を注げたらしい。で、そういう連中にお決まりの行く末って奴で人嫌いの偏屈に成り果て、それでも偏屈同士で何故かドワーフとは気が合ったようで、ドワーフの一族の助けを得て、あのアバ・オーズに立派な研究所を建てたのだとか……
 俺は入り口までしか入ったことがないから、詳しいことは教えてやれないが、あの建物の1階部分は持ち主の気質を移したような、たちの悪い冗談に満ちた根性曲がりの酷い罠が満載でろくでもなく危険らしい。2階の入り口には罠はないが、護衛がいる。……俺が知っていること、調べきれたことはここまでだ」
 「……調べられた、か。調べてくれる人間がいるんだな」
 フレアが微かに苦笑いを浮かべて言った。
 「禁固の身とはいえ、ずいぶん便利に暮らしてるじゃないか」
 「馬鹿言え、不自由の身でなければ弟を助けに行っているところだ……が、まあ、そうだな。役人の扱い方は心得ていないでもないからな」
 「で、このこぎれいな室内も、か」
 「まあそういったところだ。もとからの設えでは辛気臭くて一週間も居られそうもなかったからな」
 「役人の扱いを心得ているのなら」
 急にイーリアが口を挟んだ。
 「貴方が今私たちに告げたことをそのまま役人に告げて、情報と引き換えに許しを乞えばよいではないですか。仮にも町の一大事……」
 「一大事だから、駄目なんだよ」
 モンゴーレの唇が微かに歪んだ。
 「小さなことなら役人は動く。便宜も図ってくれる。が、本当におおごとに対しては、奴ら、頭が固すぎてぴくりとも動きゃしねえ。……まあいい、俺は刑も決まっていることだ、ここであんた達からのよい知らせを待っている。代わりに何もしてやれないのが心苦しいが……俺がここを出られたら、何でもあんた達の力になることを約束してやるよ」
 「じゃあ、今すぐ調べてほしいことがあるんだ」
 これまた唐突にレクサスが言った。モンゴーレもほかの一行も怪訝な顔をしているのをまったく意に介さずに言葉を継ぐ。
 「サンダスターがね、居なくなっちゃってるんだ。ほら、あの派手な吟遊詩人。どこにいるか知らない?」
 モンゴーレはさすがに苦笑した。
 「なんだ、知らないのか。奴は期日までにミシェールを差し出せなかったっていうんで、娼館――ビッグサンダーマウンテンの追っ手を差し向けられて逃げ出したって話だぜ。なんでも北の公爵領にうまいこと逃げ延びたらしいが」
 「あれ、そうなんだ。ならいいや。僕のところにもいかにも娼館の門衛ってふうの柄の悪い兄さんが来て、サンダスターの行方を聞いていったよ。知りたいのはこちらだって言ったら帰っちゃったけど」

 モンゴーレとの面会を終えた翌朝、一行は早速行動を開始した。街に死人とオークの大群が本当に攻め寄せてくるのであればまったくもってただ事ではない。
それに、レクサスに関して言えば、彼は死人やオークよりもビルナスの研究所のほうが大いに気になるらしかった。早速図書館に駆け込み、手当たり次第に本を引っ張り出しては関係のありそうなところを読み漁る。数時間本漬けになっただけのことはあり、意気揚々と図書館から出てきたレクサスは、ビルナスの研究所と、それからヴォル=チャックが属しているであろう組織のことまで調べ上げてきていた。

 曰く。

 ビルナスの研究所を立てたのはヴィルグレット・ビルナス。変成術を極めようとした魔道の輩であったという。誰にも邪魔されずに魔道を極めることを望んだビルナスは、アバ・オーズの丘陵地帯に魔力が集中していることを見出し、ドワーフの一族の力を借りてそこに研究所を作り上げた。そこで彼は望みどおり自分の道を究め、ついには自分の身を「変成」させてどこかへ立ち去ったという。
 廃墟として残されたビルナスの研究所はトーチ・ポートから約三日の距離。ビルナスの研究の成果であるところの物品もまだまだ残っているはずだという。
 一方、ヴォル=チャックであるが、これは「ダンス・オヴ・デス」なる死霊術師の一団に加わっているものであろうと考えられた。これは、死霊術の魔道教団であるところの「レルム・オヴ・デス」から過激な死霊術原理主義者たちが分離独立したもので、死こそが総てを超越する力であると信じ、その力を我が物とするためにはいかなるものの命であろうとも奪うのに一瞬もためらわないという大層やっかいな存在であるという。彼らの教義はともかく、死を恐れかつ畏れる世間一般にしてみれば、「ダンス・オヴ・デス」とはつまり、死の力を悪用する恐ろしく邪悪な組織ということになるのだった。

 まったく酷い話だよ。
 そういうレクサスの瞳の奥には――酷く危険なことに――確かに好奇心の色が輝いていたのだが、それにはっきりと気付いたものはいなかったのは、幸であったか不幸であったか。


このシーンの裏側
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『祝福された冒険者と死霊の山の話』その2:暗殺者の願い

ネタバレ注意!!
本レポートは月刊ゲームぎゃざ 2005年5月号収録の「銀輪山の覇者」をプレイしたものです。
ので、今後上記のシナリオを遊ぶ可能性のある方はお読みにならないで下さい。





 『勇敢な船乗り亭』は、客が押しかけ始める少し前、奇跡的に暇な時間。
二人が店の扉を開けると、その顔をちらりと見たバークが「お前に客だぞ、お嬢さんたちだ」とカウンターの奥に叫んだ。すると、レクサスがさもかいがいしげにグラスを磨きながら出てくる。
「ああ、ちょっと待って、いま忙しいから」
「なぁにが『忙しい』だよ、このエルフの小僧っ子め、いらんときだけ出てきやがって、本当に忙しいときは屋根裏に篭りっきりで出てきやしねえ。いいかげんにしねえと『虹の贈り物』に叩っ込んじまうぞ」
傍でバークがぶつくさ言うが、もちろんレクサスは気に止める風もない。ちなみに『虹の贈り物』は、最近西町の繁華街にできた――一応高級バーなのだが、余りおだやかならぬ評判が早速まとわりつき始めているしろものである。
「……何かあったのか?」
店の隅から声がして、どうやらそこで一休みしていたらしいフレアが立ち上がる。
「話は、アルベルティーネから聞いてください。ジムは?」
答えるように店の裏から長剣で薪割りをするジムの気合声が聞こえてくる。

 というわけで、『オークの木陰亭』で大きなオオカミにまたがって遊んでいた(本人の言に拠れば騎乗戦闘の稽古をしていた)マークスも呼んできて、最近さっぱり姿をみかけなくなったサンダスター以外の顔が揃った。アルベルティーネは本日十数回目の溜息をつくと、話を始めようとし、口ごもり、もうひとつ溜息をつき、そうして心底うんざりしたような顔色のまま、例の手紙をいきなりテーブルの上に広げた。
 「こんなものが届いていたのです」

 手紙に曰く。

 「聡明なる冒険者諸君へ
 私はヴォル=チャックについて幾つか知っていることがあり、それはまだ誰にも話していない。ヤツは町の近くに拠点を構えており、今もトーチ・ポートに攻め入るすきを伺っている。
 そうだ、諸君、これは町の危機なのだ。危機となれば君達“勇者様ご一行”の出番ではないかね?
 蛇足ながら勇者には富と名誉がつきものだということを付け加えておく。
 もうひとつ―――――非常に個人的な問題ではあるが、―――――私の頼みごともある。
 私の格子入りの仮住まいを尋ね、面会してくれないか?
 血沸き肉踊る冒険が三度の食事より大好きな君達にとっては朗報だと思うのだが。
 君の決断を待つ。

 心の友 モンゴーレ」

 「……『心の友』、なのか?」
 フレアが呟いてアルベルティーネのほうを向きかけ、氷のような表情にぶつかって慌てて視線をそらした。
 「マークス、きっと貴方宛でしょう。モンゴーレとは一番理解しあっていたようだから」
 「モンゴーレって、誰だ?」
 アルベルティーネから差し出された――というよりは突き出された手紙を受け取りもせずに、真顔でマークスが言う。
 「例の墓守だ、覚えてないのか?」
 「墓守? 誰だそれ」
 「あなたが正体を見破った人です、マークス。先月の誘拐事件の犯人で、女性に化けたり墓守に化けたりしていた人で、あなたが『お前が犯人だ!!』と指差した人」
 「……ああ」
 マークス、わかったような判らないような顔をしている。
 「とにかく、だ」
 ジムが言った。
 「ヴォル=チャックといえばここ数ヶ月のゾンビがらみの事件で何だかだと名前だけ聞いていた奴だろう。少なくとも放っておいていい話じゃないんじゃないかな。ここであれこれ言っていても仕方ない。面会に来いと言っているのだから行かなければ何もわからないだろう」
 「……出向いて、大丈夫なのでしょうか。この手紙、随分と奇妙な届き方をしていたという話なのですけれど……」
 「だったらイーリアが気をつけておけばいいじゃないか。早く行ったほうがいいよ」
 レクサスはというと、さっさとエプロンを外して出かける支度をしている。もちろんバークが凄い目つきで睨みつけているのだが、一向に気にしたふうもないのは――おそらく本当に気にもとめていないのだろう。

 モンゴーレの牢は東街市庁舎の敷地内にあった。
 連続誘拐に殺人と、本来なら重罪のところだが、弟を人質に取られていたということもあり、情状酌量の余地ありとして、しばらくの禁固ということに刑は確定したとのことだった。
 一行がモンゴーレへの面会を求めると、なんなく許され、牢まで通された。で、当のモンゴーレは牢内ですっかりくつろいでいた。
 詰め物をした寝台に、白い清潔な敷布。その上にゆったりと寝そべった細身の男の手の中には、香り高い紅茶のカップ。
 「……やあ、冒険者諸君」
 格子の前に立った一行の顔を認めると、そう言ってモンゴーレはにっと笑った。
 「手紙は読んでいただけたかな」
 「拝見はしましたが」
 すぐさまイーリアが答える。
 「いったいどのようにして牢の中の貴方のもとから、いきなりアルベルティーネの私室の机にあの手紙が出現したのですか」
 「ああ、それはまぁ、言うだけ野暮という奴だ」
 答えながらモンゴーレの視線はちらちらとアルベルティーネのほうに向いているのだが、どうやら秋波を送られた当の本人はまったく気付く気配もなく。一方でイーリアが何か言い出しそうなのをフレアがさえぎり、
 「まぁ、だったら野暮は言うまい。で、ヴォル=チャックについて知っているということは何だ。それから、頼みごとは」
 「……弟を助けてほしい」
 頼みごと、の語を聞いた瞬間、モンゴーレの顔から笑いがすっと消えた。
 「事が成ろうとしている。ヴォル=チャックは用済みになった弟を消すかもしれない。その前に弟を助けてほしい。以前、俺を官憲に引き渡す前に、あんた達は弟を助けてくれると言ったが、あの時は、俺は断った。……が、今更になるが、もう一度頼ませてくれ。弟を助けてほしい」
 「……なぜ、今更。それに……」
 「待ってくれ。今きちんと説明する。
 ヴォル=チャックはゾンビやスケルトンの大軍団を作り、それでもってトーチ・ポートを陥とそうとしている。奴の計画は完成に近づいている。
 この街の西側に広がる荒地を知っているだろう。その東側――トーチ・ポートに程近い部分がアバ=オーズの丘陵地帯だ。そこに奴は巣食っている。オークの大部族、大斧族と手を結んで、トーチ・ポートを狙っている。奴の住居は丘陵地帯の中ほどにあるビルナスの研究所、昔の錬金術師の住処が廃墟化した場所だ。そこで奴は古代の物品の解析をしながら事を構えようとしていた。弟は――生まれながらにして魔法を使う能力を持っていたから、奴の助手を務めさせられていた。あいつほどの腕があれば、俺が捕らえられた程度ではヴォル=チャックに消されることはないだろう、いかにヴォル=チャックといえども、使える助手を殺して新しい助手を探すのは面倒だろうから――そう思ったから、あの時俺は君らの申し出を断った。が、事が成ろうとしているのであれば……弟は、用済みだ」
 「だから……助けてほしいと」
 「そうだ」
 微塵の冗談もない顔で、モンゴーレは頷いた。



このシーンの裏側。
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2006年10月02日

『祝福された冒険者と死霊の山の話』その1:発端或いは不幸の始まり

ネタバレ注意!!
本レポートは月刊ゲームぎゃざ 2005年5月号収録の「銀輪山の覇者」をプレイしたものです。
ので、今後上記のシナリオを遊ぶ可能性のある方はお読みにならないで下さい。




 春、四月。
 海の町の春の盛り、潮風に色とりどりの花と一層にぎやかになった人々の声が揺れる季節。

 が、聖カスバートの神官の日々に変化はない。暗いうちに起き、祈りを捧げ、日々の鍛錬をこなし、また祈りを捧げる繰り返しのうちに信仰を積み上げる日々。
 今にも折れそうな華奢な身体で、決して楽ではないはずの鍛錬を黙々とこなし、アルベルティーネはその日も部屋に戻ってきた。いつもの夕べの祈りを唱えるために跪こうとし……ふと、彼女の目は机の上に置かれた白い――封筒。そう、それは一通の手紙だった――の上に落ちた。

 私室に、手紙?
 家族から? それとも?

 首をかしげながら手紙を開き、目を通し、それからアルベルティーネは小さく首を振り、言葉もないまま深い深いため息をついた。
 軽く唇を曲げると手紙を困ったように眺め、一瞬くずかごに目をやり、それからもうひとつ首を振ると手紙をそっと机の上に戻し、跪き、いつもの倍の時間をかけて夕べの祈りを唱えた。
 それからもう一度手紙を手にとって開いた。

 祈りの力は、すくなくともこの件に関しては彼女に平安をもたらしはしなかったようである。アルベルティーネはほとんど天を仰ぐようにしてため息をつくと、急ぎ足で部屋を出、ヒルガ大聖堂の敷地のはずれのほうにある、修行僧たちの房に向かった。

 「イーリア、少し、お話が」
 なんでしょう、と問うようにイーリアはアルベルティーネの顔を見た。
 「困ったことになりました。……皆に相談しなければならないのでしょうね」
 もって回った言い方は、彼女が面倒ごとを喜んでいない、そして『仲間たち』との行動よりは穏やかとは言いがたいけれども無茶なことの起こりはしない信仰の日々を望んでいることの証拠だろう。
 イーリアは小さく頷いた。
 「この時間なら、『勇敢な船乗り』亭にみんな揃っているでしょう。
 ……ところで、何があったのですか? 差し支えなければ……」
 アルベルティーネは困ったような顔をして少し考えるふうだったが、さきほどの手紙を取り出すと端を開いてイーリアに差し出した。

 『心の友 モンゴーレ』

 一行だけ見えた――署名だろうか――それは、そのように記されていた。イーリアはなんともいえない顔で手紙とアルベルティーネを等分に見ると、それでも肩をすくめるような失礼な真似はせず、ただ尋ねた。
 「それは、いつ、どのように受け取られたのですか? アルベルティーネ」
 「わかりません。部屋に戻ったら、机の上に届いていました」
 かすかにイーリアの顔が厳しくなった。
 「わかりました、アルベルティーネ。すぐに『勇敢な船乗り』亭に参りましょう」
 手紙がいつの間にかヒルガ大聖堂の聖職者の私室に届いていたということに何か容易ならぬものを感じたものか、『勇敢な船乗り』亭につくまでの間、イーリアはアルベルティーネの身辺に何か怪しいものが寄って来はしないかと、ずっと気を張り続けていたのだった。


このシーンの裏側。
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『祝福された冒険者と死霊の山の話』前口上

 てなわけで。
 最近「前口上」ばっかり並んでて、そろそろ自分の怠慢具合が自分で恐ろしくなってきてるんですが、「まったりキャンペーンA第5回」にして「不揃いな冒険者たち」第4回、遊んできました。

 いや、こっちにはきちんとレポートアップしてないんで、いきなり時間がスキップした感じになっちゃいますけど、ダイジェスト版は既にあるので、第2回・第3回もおいおいアップしてゆきます。

 というわけでここ数ヶ月でめきめきと力を現してきたアルベルティーネ一行(苦笑<なんでここで笑うのかはいずれわかるかと)、前回関わった相手から恐るべき情報を得て、トーチ・ポートの危機に立ち向かうことに。あまりにもその脅威が大きいというので、今回はヒルガ聖堂からペイロア司祭兄妹の助っ人も来てくれて、向かった先に展開されるのは……

 その一方で、今回は「まったりキャンペーンA」としては第一部終了ということになりまして、反省会で全員、これまでのプレイを通して見えたことを述べ合う、なんて場面もありました。で、まぁ、いろんなプレイスタイルを混在させた卓って、自分のプレイを振り返ってみるにはいい環境かも、と改めて思わされたり。
 ……ええ、自分のできてなさ加減にいろいろと思い当たる節が。
 でも凹んだって意味ないので、わかったことを糧に、もっと面白いセッションを目指しますよ☆

 あと、今まではずっとコア3冊でやってきたのですが、今回から次回までの間に、大全系も導入して組み換えOKということになりました。とりあえず10Lvまでは遊ぶらしいので……そのあたりも考えてどうするか考えていきたいなと。……うん、まだまだ先にいける。楽しみは尽きないわ♪
posted by たきのはら at 01:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月24日

シリーズ第3回『巻き込まれた冒険者と街の秘密の話』前口上

 ……最近題名に「秘密」って付けるの多いな。
 渡竜のシリーズ第10回のほうはそのうち変えるか。

 ……ってのはさておき。
 えーと、ふぇるでぃんさんDMの「まったりキャンペーンSIDE A」(第4回)こと『不揃いな冒険者たち』第3回、遊んでまいりました。
 や、一部NPCのロールプレイをPLが乗っ取るとか、なんか偉いことになってましたよ。ってか、娼館のマダムを演じたえでぃさん、No.2(ていうかマダムがNo.1なわけはないのであのレディは実質No.1だったのかしら?)を演じたsakiさん、素敵すぎでした。……やっぱりきちんと演技ができる人は羨ましいなぁ。いつも「引っ掻き回し役」的発言しかできないので(こ、今回は一応「話を先に進める発言」はできたと思うんですが……)、精進しなきゃ、と思いました。
 (ついでに、走りまくる『PLによるNPCプレイ』RPをうまいことハンドルしつつ話を進めてったDMもすごいーと思ったのでした)

 ま、そらそうと、自分的には、「しゃべらなきゃならないときにはろくに話せないくせに、いらんところでいらんことを生真面目にしゃべるせいでせっかくの美人さんが【魅】8までおっこちる」モンク娘をちゃんと演じられたので、かなり満足です。あの常識のなさ加減からなんか災難を引き寄せられるぐらいになったらいい感じだと思うんだけど<違

 今回はPLさぼりっこさんのご都合で、ステキにエキセントリックなバード、「流離の」サンダスターの参加は最後ということでした。ということで、ちょっと盛り上げよう……という話だったらしいのですが、なんだかあらぬ方向で盛り上がって暴走した挙句(いや、それ自体はものすごく楽しかったのですが)、このキャンペーンセッションの開催間隔自体がゆっくりなせいもあって、次回もなんだかサンダスターは普通にこの仲間の中にいるような気がしてなりません。

 あとは、「日本語化強化キャンペーン」てことで、英語用語を口走ったらカカオ99%チョコひとかけ、というのをやったんですが……地雷になったのはエイドとかターンアンデッドとかスペルとか、あ、5(ファイブ)フィートステップとかっ……学習しますねぇ、ええ。
 でも、チョコがなくなったらアメリカンパイ一切れ、は、真面目に身体に悪いからやめましょうよ。ね。

 ところでふと思ったんだが。
 最近、娼館プレイが多いなぁ(笑
 このまま続くとピンクなプレイレポーターになってしまいそうだ。いや、遊んだものは書くけど♪
posted by たきのはら at 08:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月09日

『期待された冒険者と水の中の話』前口上

 ええと、はい。
 またもや前口上の挿入です。はやいところ「書きかけ達」を、なんとかしなければ(汗
 まぁ、たきのはらの転職・引越し後1ヶ月を経て、ネット環境もようやく旧に復したことだし、これから2週間ちょっと遊ぶ予定は入ってないし、ええ、なんとかなるでしょう、なんとか。

 いや、そんなことはどうでもよくって。

 『不揃いな冒険者たち』第2回、遊んできました。キャンペーン自体は3回目なのですが、とりあえずシリーズ名がついてからは2回目ということで、今後はシリーズ名がついてからのカウントで通す予定。

 今回もネタバレありです。ゲームぎゃざ2005年3月号掲載の「ゾンビは2度死ぬ」なんですが、何、前口上にはネタバレは書きませんので。

 というか、今回はPCたちの不揃いっぷりがだいぶ表に出てきました。
 不揃いというか、なんでしょうね、アレ。まぁ、全員生還したし、ミッションもきれいにクリアしたし、収入もあったし、何もおかしなところはないはずなのに、「……ひっでぇ」感たっぷりな一日でしたよ。いや、シナリオも充分にひどかったんですが。てかあれで1Lv対応だなんてあんまりだ。私ら全員2Lvだったのに、随分と無茶な目に合わされました。シナリオ書いた人は本当にひどい人だ(……と、DMが言っていた)。
 そらそうと、シナリオのひどさに対応してるわけじゃないでしょうがPCたちのひどさもなんというかアレで(アレで、としかいいようがないぐらいにね)。

 小太り白タイツはともかくとして、さらにフリルブラウス紫ジャケット胸毛ちょい出し金鎖ネックレスは既に犯罪だろうサンダスターとか。
 子供っぽい無邪気な口調だったらストレートにひどいことを口走っても許されてていいんだろうかなレクサスとか(でも本人は本当に無邪気なだけらしい。凶悪)。
 サンダスターとレクサスがあまりにあまりだったせいで、充分アレな行動を取っていたのに今回はちょっと常識に欠けるだけの元気いっぱいの毛玉少年なだけに見えてしまったマークスとか。ところで常識に欠けた毛玉少年って普通なのか。
 決めるとこはきりっと決めていたはずなのに、誰かが悪いフィールドを持ち込んでしまったためにダイス目がいろいろと腐ってたフレアとか。
 ……そして、うっかりするとこのままお色気担当になりかねないことをしでかしたイーリアとか(<違

 良識の総元締めにして不幸フラグ立ちまくり、というか多分今回のPTについては、「一緒に冒険をしたことはしたけれど知り合い以上仲間未満」としか思いたくないであろうアルベルティーネや、本当に頼りになる善人なおにーさん戦士のジム・コナーズとかのおかげで、旅芸人一座と間違われなくて済んでるような気がしてきました……(滝汗

 それはそうとサンダスターの寒いギャグをやや忘れかけているので、思い出した方はコメントのほうに記入して行ってくださると助かります♪
posted by たきのはら at 13:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月14日

『駆け出し冒険者と穴倉の話』その9:黒竜の間

ネタバレ注意!!
以下はベーシックセットを遊んだもののようです。ので、これから遊ぶ可能性のある方はお読みにならないで下さい。



 足音を忍ばせながら、一行は準備を整えた。
 一番恐ろしいのは酸を吹きつけられることなので、二人の術者――アルベルティーネとレクサスは壁を回り込んだ位置に立つ。ランタンはサンダスターが替わりに部屋に持ち込み、適当な場所で床に置くことに取り決めた。
 「それじゃイーリア、頼むよ」
 レクサスが「鎧の呪」を紡ぎ、イーリアの腕に触れる。と、淡い光がイーリアの全身を覆った。「並みの鎧を着込むより、役に立つ」
 「私はここにいます。危ないと思ったらすぐにここまで来てください。……いいですね、私が助けに行くことは……」
 「アルは来ちゃだめだ。アルが死んだら誰も助からないから」
 口ごもるアルベルティーネの台詞をマークスが攫う。その手に握られるのは淡い光を帯びた六尺棒。
 「扉が開いたら……歌い始めるからね、僕」
 サンダスターが言って、にっと笑った。
 「マークス、ロボに無茶させるなよ。……開けてくれ、イーリア」

 扉の向こうには、首を翼の下に突っ込んで眠る黒竜。その後ろには何千枚という金貨の山。呼吸をおかず、ジムが走りこむ。剣がひらめく。イーリアも松明を片手に走りこみざま一撃を叩き込む。続いてフレア、マークス、ロボ。いつの間にかサンダスターの歌が部屋中に響いている。が、竜はよほど深く眠っているのか、目覚めない。今のうちに、と刃と矢と牙と拳が浴びせられる。それぞれ四、五回も得物を打ち込んで、もしやこれは眠ったままに倒せるかと思った瞬間、竜が目を見開いた。
 「こっちだ、こっちに来い!!」
 とっさにジムとイーリアが叫ぶ。竜はぐるりと首を巡らすと、ジムに酸の炎を浴びせかけた。が、油薬のために毛筋ほどの傷もジムには与えられない。
 もう一声唸ると、竜は上半身を振り上げ、振り下ろした。二本の爪がイーリアの全身をざっくりと裂く。
 「イーリア、イーリア、戻りなさい!!」
 アルベルティーネの悲鳴。イーリアの肩が一瞬、揺らぐ。が、その向こうからレクサスが走りこんで何か唱えたとたんに竜の足元が油びたしになり、そしてマークスの棒とロボの牙が竜の翼を折り肉を裂いた瞬間、退けた肩がぐいと入った。そのまま踏みとどまり、渾身の力で拳と蹴りを叩き込み続ける。無茶です、何をしているのイーリア、とアルベルティーネの声だけがむなしく響く。
 結局誰一人引き下がらぬまま、そして誰一人として犠牲者を出すこともなく、戦いは終わった。もう何度目かにジムの剣が振り下ろされたとき、黒竜は一声叫ぶと、どっと倒れて動かなくなったのだった。

 「イーリア、何をしているのです!! 修行というのは命を粗末にすることではなく……」
 アルベルティーネが叫ぶように言うのも道理、竜の攻撃をまともに受けたイーリアはどこが傷かわからないほどの血だるまになっており、もう一度どこかで転びでもしたらそのまま息絶えてしまいそうな状態だった。が、
 「粗末になどしていません。あの戦いは勝てる戦いでした、アルベルティーネ。貴女がわたしを呼んだときには、竜の命運は尽きていました。わたしが倒れる前に竜が倒れるだろう、そう思ったからわたしはあそこにいました」
 「だからと言って……」
 「現に、そうだったではありませんか」
 イーリアも一歩もひかない。
 ……では、今後も決して読み違えのないようになさい。そこまで言うのなら。アルベルティーネは冷ややかに告げると次にジムの怪我を調べようと向き直り――小さく悲鳴を上げた。

 視線の先ではマークスがサンダスターから借りた短剣で、倒れた竜を解体し、爪と牙、それに皮を剥ぎ取っているところだった。一心に作業をしながら、皮から外した肉は部屋の片隅にあった深い穴――おそらくは、部屋の扉は到底通らない大きさになっている竜がねぐらへの出入りに使っていたと思われた――に投げ込んでいく。
 「マークス、何を……」
 言いかけたアルベルティーネの声は、だが、かすれきって言葉にならない。
 「ああ、竜の皮はいい鎧になるんだよ。マークスはドルイドの誓いに縛られてるから、金属の鎧は着られないだろ、だから」
 サンダスターが言う。その向こうではレクサスが、肉、捨てちゃうの? もったいないよ、などと言っている。
 「ああでもね、こいつたぶん酷い臭いがするから食べられないよ。動物の肉には餌にしてるものの臭いと味がどうしてもつくから。
 だからね、一番美味しいのは桜の木につく毛虫なんだって」
 「ふぅん、食べられないのか、じゃあ、仕方ないよね」

 仕方ないよねではないでしょう、とそちらへ行きかけるアルベルティーネを引き止めたのは、今度は逆にイーリアだった。
 「アルベルティーネ、あれは、マークスのしていることは、正しいのです」
 「でも死体を」
 「いいえ、私達が生き延びるために、戦って倒した獲物です。命をひとつ、こちらにいただいたのです。ですから……いただいた命の器を無駄にしないことこそが正しいのです」
 アルベルティーネは静かにため息をつき、そうかもしれませんね、と呟いた。私は今までそのように考えたことはありませんでした。でも、あなたの言うことは筋は通っています。……私も、まだ考えねばならないことがあるということですね。

 ともあれ、そういう経緯で、ひとりの犠牲者も出すことなく、7人の冒険者は穴倉から生還したのだった。

 帰り道、鏡の部屋を通ると、当然のようにエプロンドレスの娘が出てきた。しかし、一行が洞窟の奥まで行ったこと、そしてベンザー様に会えなかったことを聞くと、悲しいため息をひとつついて、幻のように消えてしまったのだった。
 「あ、ちょっと待っ……」
 ジムが言いかけても、もう鏡の中にも姿は見えない。それどころか鏡は急速に曇り、一行の目の前で砕け、枠は朽ち果ててしまったのだった。

 なんだか可哀想なことをしたなぁ、もうちょっと話を聞いてくれたら新しいご主人様を紹介してやろうと思っていたのに、とは帰り道、野原を歩きながらのジムの言。なんでもトーチ・ポートの『勇敢な船乗り亭』の常客であるところの一流の冒険者のひとりが「メイドさん」を探しているのだとかいないのだとか……

 その件の冒険者について、サンダスターが長広舌を披露し始めないうちに、『オークの木陰亭』が見えてきた。
 どうやら、初めての冒険は無事にやりとげたということらしかった。


このシーンの裏側
posted by たきのはら at 17:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『駆け出し冒険者と穴倉の話』その8:穴の底で

ネタバレ注意!!
以下はベーシックセットを遊んでいるようです。これから遊ぶ可能性のある方はお読みにならないで下さい。


 ミーポを見送った後、隠し扉の奥を調べると、小さな空間に隠された壷がひとつ。どうやら前の住人が財産の隠し場所にしていたということなのか、壷の中には銀貨がぎっしり詰まっている。罠ではないか、なにか他に隠れているのではないかとおそるおそる調べたが、本当に銀貨の壷があるだけだった。無事帰ってこれたら持って行こう、ということでとりあえず隠し扉を元通り閉め、先へ進む。

 ミーポたちが隠れていた部屋も、やはり廊下を切ったもののようで細長く、そのとっつきには扉が一枚。
 ドラゴンに仰せつかってあそこで番をしていた、ということは、そろそろご本尊が近いということだろう、そう考えて一行は「酸を防ぐ油薬」を使うことにした。とはいえ、頭数は7人と一匹、薬瓶は4本。
 荒事慣れしたのが使うということだな、とジムがいい、まずジムとイーリア、それにマークスが瓶を受け取る。あと一本は身の軽いフレアが受け取り、それぞれに薬を塗った。
 「さて、ここから先は急ぐぞ。薬の効果が切れてしまえば誰も助からなくなる」

 静まり返った扉を開く。
 いわくありげな禍々しい石像の並んだ回廊。
 ジムとイーリアが一気に走りぬける、何事も起こらない。何かが起こる前に残りの全員もそこを走りぬけた。

 次に控える扉を開く。
 冷たく湿ったにおいのする大広間。
 壁の両側には石棺が並び、部屋の前方にはこれまたいかにも禍々しい祭壇。ふと見ると、祭壇の上には一本の短剣。ようやっと届いた淡い光でははっきりとは解らないが、どうやら相当意匠が凝らされているらしい。アルベルティーネが顔を顰めてそちらを見るが、
 「時間がない、生きていれば帰りに調べればいいことだ」
 ジムが言う。
 息を詰めて石棺の間を走り抜けようとしたとき、石棺の影と見えていたものが、ごそりと動いた。
 武器を構えたオークだった。

 戦いはそう長くかからなかった。オークの胴を真っ二つに薙いだジムの剣は、また勢いよく何も居ない空間を薙いだ。
 「竜とコボルトが一緒に暮らしてるならわかるけど……なんでオークがこんなところに。間違ってる」
 マークスがぶつくさ言ったが
 「ベンザー様とやらの悪夢が残ってるんだよ。きっと。ほら、もうジムが行っちゃうよ」
 レクサスにせかされ、納得していない顔で歩き始めた。

 石棺の部屋を抜けると、長い廊下。
 廊下のどこかで、ききなれない声が何やらざわざわと、知らぬ言葉で喋っているのが聴こえた。見回すと、それは一枚の扉の向こうから聞こえてくるらしかった。
 「竜が居る様子は?」
 ジムが訊ねる。
 「いや、人声だけだ。……あけてみるか?」
 フレアが答えると、無言で首を横に振り、先を急ぐ。

 そして。
 廊下の向こうに、黒い扉が一枚。
 「……寝息が」
 フレアが、低く言う。
 「先手が取れる」
 


 このシーンの裏側
posted by たきのはら at 16:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『駆け出し冒険者と穴倉の話』その7:地底へ通ずる場所

ネタバレ注意!!
以下はどうやらベーシックセットを遊んでいた物っぽいですので、これから遊ぶ可能性のある方はお読みにならないで下さい。


 さて。
 三日目がすぎてすっかり元気になったロボを連れ、一行のほとんどは3回目、イーリアは二度目の洞窟の前。
 鏡の部屋を通り過ぎ、エプロンドレスの娘(前回は説明しなかったけど、あれが「メイドさん」だからね、とサンダスターはイーリアに言った)にベンザー様にはまだ会えていないということを告げ、竜の居た部屋へ入る。
 部屋の中をもう一度よく調べると、ネズミ部屋へ続くのとは別の扉がみつかった。扉の向こうに音はなく、鍵も、罠もない。

 フレアが頷いてドアの前から離れると、ジムとイーリアが扉の前に立って構え、そしてイーリアの掌底が扉をそっと押しやる。
 つん、と、かび臭いにおいが鼻をついた。

 松明とランタンの明かりの中に浮かぶのは、奇妙にやわらかくうねった床と壁。眼を凝らすと、やがてその正体がびっしりと生えたキノコであるとわかる。
 「これは……」
 ジムがうめくように言った。
 「よくないね。入ると、死ぬよ。このキノコ、胞子を吹くから」
 さすがのマークスの声もいつもの調子とは言いがたい。
 「……戻って、別の部屋の扉を試すか」
 一度は開いた扉に手を伸ばし、部屋の空気を揺らさないようにそろそろと引き寄せる。扉が閉まると全員、いっせいにため息をついた。

 そそくさと竜の居た部屋を後にする。残るは、扉の前にトカゲ人間の死体を横たえた部屋だけだ。死んでから数日が経過したトカゲ人間の身体は抱えあげるのにはためらわれる状態であったので、しかたなく押しやるようにして扉の前から避けてやる。そうして、フレアが聞き耳を立て――ため息をついた。
 「何か、居る。からからに乾いた何かがぶつかる音がする。足音もする。……気付かれてるな。武器を構える音もする」

 今度も最初に扉を開けたのはイーリアだった。
 扉の向こうに待ち構えていたのは骸骨が二体。曲刀を構えて打ちかかってくる。
 「……迷える魂に、み、御許へ……」
 反射的にアルベルティーネは聖句を口にしたが、非死の存在までいるとは思っていなかったか、とっさに口がまわらない。レクサスやサンダスターの矢も乾いた骨の間を抜けてしまう。結局扉の前で混戦になり、ようやく二体の骸骨は粉々の骨片になった。
 骸骨が手にしていた武器は、換えの武器になるかもしれないから、とジムとマークスが拾い上げた。そうして歩き出しかけ……ふと、イーリアは足を止めた。
 指の骨が一本、転がっていた。
 骨にはまった小さな銀の指輪。手を伸ばしそうになって、小さく息を飲み、身体を起こして目をそらす。逸らした先には、フレアの視線。
 「……」
 フレアはつかつかと歩み寄り、その小さな骨を拾い上げた。薄い唇が、かすかに皮肉ともつかぬ笑みを浮かべる。そのままフレアはイーリアから視線を逸らし、無言で手にした骨をアルベルティーネに渡した。司祭の手の中で乾ききった骨はぽろりと砕け、指輪だけが残った。

 骸骨の居た部屋を調べると、他に巻物が一本置いてあった。ベンザー様の忘れ物かもしれないな、とレクサスが呟き、拾い上げた。中身を見たそうにしていたが、もう次の部屋へ続く扉の前で、フレアが耳をすませている。
 「まただ。また骨の歩く音がする」

 次の小さな部屋にいたのは、やはり動く骨だった。が、人間のものではない。マークスが無言で顔をしかめたところを見ると、もとはオオカミだったものか。ジムが踏み込もうとする前に、アルベルティーネが進み出た。凛とした声が聖句を告げ、魂の往くべき場所を示すと、全員の目の前で骨は音もなく崩れ落ちた。

 その、廊下を切ったような細長い小さな部屋には、両端にそれぞれ扉がひとつずつ。入ってきた扉の向かい側にも隠し扉があるとレクサスが言ったが、ひとまずそれは置いて左側の扉を調べる。
 「今度は……何も居なさそうだ」
 フレアの言葉にイーリアが扉を開けると、扉の奥からは急に、冷たい風がどっと吹き込んできた。明かりを差し入れると、これまでの石造りの壁とは違う、自然洞窟がただ延々と続いているのがうすぼんやりと見えた。
 誰もが急に背筋に寒気を感じた。ロボの毛が逆立っている。フレアが急いで扉を閉めた。

 では、次は隠し扉、と向き直った瞬間、急にもう一方の端の扉が開いた。出てきたのは武器を構えたコボルトが2匹。とっさにサンダスターが矢を射掛け、一方がばったりと倒れる。それを見てもう一方もさっさと武器を落として両手を挙げた。
 「うわあ、勘弁して勘弁して。ミーポ、ドラゴンに言われて入ってくる奴をやっつけようとしてただけ!!」
 そうして舌足らずの共通語できいきいと叫ぶ。
 「わかった、だがドラゴンは悪い奴だからそんな奴の言うこと聞くもんじゃない。替わりにこっちの聞くことを答えれば助けてやる」
 対してジムが言う。
 会話になっているのかいないのかいまひとつ解らないやり取りの結果、わかったのは、この洞窟は少なくとも二箇所でアンダーダーク――地底王国へ繋がっており、さっきうっかり開けてしまった扉はそのひとつだということ、黒竜は確かにこの洞窟の中にいるということ、だった。
 「全部答えた、ミーポ行っていい?」
 「今のことを告げ口せずに、真っ直ぐ外に出る、と約束すれば」
 「するする、ドラゴンのところなんか行かない!!」
 叫ぶと、ミーポと名乗ったコボルトは、すさまじいすばしっこさで地上へと続くはずの通路の向こうへ駆けていってしまった。
 

このシーンの裏側
posted by たきのはら at 15:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『駆け出し冒険者と穴倉の話』その6:鼠と狼

ネタバレ注意!!
以下はどうやらベーシックセットを遊んでいたもののようです。ので、これから遊ぶ予定のある方はお読みにならないで下さい。



 倒れたコボルトの後ろには、さらに奥へと続く扉があった。鍵はなく、フレアの耳にも扉の奥の気配は感じられない。
 「……扉は、先にわたしが開けます」
 隣に立つジムに言うと、イーリアはまた軽く扉を打った。かすかに軋みながら開いた隙間に、サンダスターの操る光球が流れ込む。

 明かりに照らされて見えたのは、酷い有様だった。
 ぼろぼろになった敷物の残骸がそこここでめくれ上がり、床の石も砕かれてそこらじゅうに転がっている。不用意に踏み込むとそこらじゅうで躓いてしまいそうな足場に加え、壁の一部も剥落して荒い土壁が見えている。明かりの届ききらない壁際には何かが積み上げられているようにも見える。

 「アルベルティーネ、レクサス、あんたらは危ないからちょっと待っててくれ。俺が先に様子を見てくる……ああ、でも戸口で明かりを掲げていてもらえると助かるかな」
 いいながら、フレアが部屋の中に踏み込む。
 ……何も起きない。
 「どうにも暗いな。誰か予備の松明を持ってたら、点して、イーリアに持たせてやってくれないか。……あんたなら片手がふさがっていても別に困らないだろう?」
 部屋の中を睨みながらジムが言う。
 「はい。片手と両足が自由ですから、何の差しさわりもありません」
 頷くイーリアに、誰かが火のついた松明を差し出す。視線は部屋の中に投げたままそれを受け取ったイーリアはかすかに体重を後足に移し、一呼吸おいて部屋に踏み込んだ。

 部屋の中ほどに、淡く光る4つの明かり。
 その後ろから燃える松明の明かり。
 そして戸口から投げかけられるランタンの明かり。

 「……天井に何か潜んでるってわけでもなさそうだ……」
 ジムが呟いたとき、マークスが鋭い叫びを上げた。同時にロボが部屋の奥へと飛び掛る。
 「大ネズミ!!」
 ごろごろと転がる剥がれた床石にまぎれて気付かなかったが、確かに部屋の四隅には大きな穴が開いており、そこからそれぞれ一匹ずつ……いや、その育ちすぎた猫ほどもあろうかという大きさからすると一頭と呼びたくなるようなネズミが這い出してきているのだった。
 「ロボ、行け!! あああ、気をつけろッたら!!」
 暗がりになった部屋の隅で、マークスが叫ぶ。後半が悲鳴になったのは、ロボかマークスか、どちらかが噛まれたのか。
 「イーリア、そこじゃない、殴るんならもっと奥でやってくれ!! あっちが真っ暗じゃないか!!」
 レクサスの叫び声、だが、明かりは動かない。目の前に顔を出した大ネズミにてこずっているらしい。ジムがドアを蹴りあけて飛び込んでいく。あっという間に大ネズミの一匹は真っ二つになって転がり、勢い余った剣が宙を薙ぐ。残りのネズミに向かってサンダスターとレクサスが矢を射込む。

 ようやくすべてのネズミが動かなくなると、一行は大急ぎで床の石を剥がしてネズミ穴に蓋をし、ほうほうのていでその部屋を逃げ出した。
 「……どうしようアル、ロボがネズミに噛まれた……」
 ぐったりと大儀そうに前足を折るロボを、半分引きずるようにして歩かせながらマークスがやってくる。
 「これは……」
 「汚わい病、だと思います」
 ぐったりしたロボの様子をざっと調べ、アルベルティーネとイーリアは互いに顔を見合わせた。
 「ロボの体力がネズミの病毒に勝てば……3日も休ませれば治るでしょうけれど」
 「とすると、今日はこの先に進むわけには行きませんね。戻りましょう」
 もしそうでなければ、とイーリアが言葉をつなぎそうになるのを押さえてアルベルティーネが宣言した。

 もちろん否やはなく、一行、ぞろぞろと引き返してまた「オークの木陰亭」に投宿する。誰一人として急ぐものはいないのだから、無理をするには及ばない。
 
 宿の主人、エリコフが薬の鑑定もできるということだったので、コボルトの持っていた油薬を調べてもらうと、なんでもこれを肌に塗っておけば酸から身を守ることができる薬だという。
 「……てことは、あの洞窟の奥、ホントに『居る』んじゃないのか」
 誰もが思っていたことを、ジムがぼそりと言った。何が、というのはさすがに口にしなかった。

 ところでネズミから汚わい病をうつされたロボだったが、結果的に言うとどうやらネズミの病毒には打ち勝った。マークスがロボにつききりでいたいというので、ロボが回復するまでの3日間、一行は「オークの木陰亭」でのんびり過ごした。トーチ・ポートに行って先だってかかりあいになった『魂の宝珠』のニセモノについて何か調べてみようかという話もなくはなかったのだが、やれボーンハートだ緋色兄弟団だと剣呑な話が絡んでいる以上、向こうから追ってこないが幸い、こちらから厄介ごとに首を突っ込むのは愚の骨頂ということに落ち着いた。

 それに、一行とてただに日を送っていたわけではない。
 宿の裏庭にいた、例の大きな狼がサンダスターの他愛ないおしゃべりをどうやら気に入ったようだったので、それをダシにレクサスが例の宝珠に関する情報を狼から聞き出そうとしていたのである。つまり、無邪気なサンダスターがいろいろなおしゃべりをしたがっており、自分はその通訳をしているという触れ込みで、狼の前にやってきたのだ。

 試みは最初、大変上手く行った。
 それによると、あの白い宝珠が「魂を吸い取って封印する魔法」のものであることは間違いがなく、そしてそこにかけられた魔法を解呪することで宝珠に閉じ込められた魂を身体に戻したということらしかった。そして、解呪できるくらいであるから、当然、例の男が託された宝珠は本物の遺物でなどあるはずがない……というのだった。
 「へぇ、解呪したんだぁ」
 サンダスターはあっさり納得したのだが、レクサスは当然引き下がらない。
 「解呪ってあなたがやったの? ……って、サンダスターは知りたがってるよ」
 さすがに二人の顔つきが明らかに違ったのは狼にもわかったらしい。
 「うそつきぼうや、彼はそんなこと聞いていないじゃないか。……もうお前とは口をきかないぞ」
 そういい残すと、狼は立ち上がり、真っ直ぐ山のほうへ駆けていってしまったのだった。
 で、結局、レクサスは「仲良しのすてきな狼を怒らせてしまった」といって、マークスにたいそう文句を言われるはめになったのだった。


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 11:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 不揃いな冒険者たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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