2012年08月06日

『巨人族の逆襲』第19回:その1

ネタバレ注意!
このレポートは「シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲」を遊んだものです。
まだ遊んでない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。

























 次元の狭間を越えた衝撃で、意識が戻った。
 この世のものならぬ寒さが薄れると共に、感覚も戻ってきた。
 私たちは蒼い肌の魔神カーシムの操る船で、氷の次元界を後に、“この世”の北端の村フロットサムへと帰還するところだった。

 「ふむ、魂なら間違いなく自由にしてやるとも。なんだったらその肉の檻からもな」
 聞きようによらなくても物騒な物言いを耳にして寝台の上に起き直ると、オーケストラがにこりとも笑わぬ顔で、居心地悪そうに身をすくめる氷巨人を、おそらくはからかっていた。私たちは氷巨人と戦っていたはずだ。なぜそれがここに同道しているのだ。
 考えても思い出せなかったのでオーケストラに尋ねると、オーケストラは私には答えず氷巨人にむかって
 「やはりお前はこの船にいるべきものではないようだ」
 と言い放った。巨人はただでさえ青ざめた顔からさらに血の気の引いた、紙のように白い顔をして、「ここには義の心を持った男はおらんのか」と喚いた。あいにくその部屋にいる男性は氷巨人のほかにはパラディグーム卿ばかりで、あとは私とオーケストラ、それに“この世のすべてのお宝を開放して回っている”という盗賊娘マイア――氷の次元界で出会ってともに行くことにしたのだ――だけだったので、3人で口をそろえて私たちが男に見えるのかと問い返した。巨人は慌てふためき、パラディグーム卿はというと私たちをたしなめるでもなく大変に気の毒そうな顔で巨人を眺めていた。

 それにしても記憶がはっきりしない。
 氷の次元界への船旅は、本来学究の徒たる私の繊細な身体には荷が勝ちすぎたらしい。寒さと船酔いですっかり体調を崩した私は、一日の殆どを船室の寝台で過ごし、仲間たちが出撃するというときにだけ起き出して、寒さ避けのまじないをかけたり魔法の馬を呼び出してやったりし、たまに足元のふらつかぬときがあれば共に出かけて巨人を討つという、至極みっともない体たらくをさらしていたのだ。

 氷の次元界から吹き付ける、身を切るどころか魂まで砕くような風が間遠になるにつれ、ようやく私の意識も定かになってきた。である以上は思い出せる限りのことを記しておこう。



 
posted by たきのはら at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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