2011年07月28日

『巨人族の逆襲』第5回:その1

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 エイヴォンの第一の研究室をもうひとわたり見回すと、崩れ落ちたボーンクローが背にしていた壁にもうひとつ扉が見えた。開けると廊下が左右に続いていて、廊下を挟んだ正面に仰々しい両開きの扉が見えた。エイヴォンの頭文字Eを意匠化した飾り彫りがあるところをみると、ここはあの女の居室かと思ったが、扉には鍵も罠もなかった。アシュレイが蹴飛ばすと扉は開いた。

 そこは図書室だった。天井までの作り付けの本棚には書物がぎっしりと詰め込まれ、並んだ長机の上には広げられた羊皮紙、そしてなにやら大仰な模型。
 アシュレイとザンギエフはずかずかと室内に踏み込んだ。そうして机の上を見て肩をすくめた。羊皮紙に記されていたのは、死者の大軍勢の指揮系統図、そうして模型はというとどうやらこの塔のものらしい。
 「あの女、塔に閉じこめられて出られないものだから、自由の身になったらこれだけのことをしてやるぞとせっせと計画を立てていたのだな。だとしたらこの模型はきっと……」
 調べれば敵や罠の配置がすっかりわかるに違いない、と、アシュレイがかすかに唇を引き上げながら模型に手を伸ばそうとした……が、一瞬遅い。
 「魔法の禍々しいものではないようだな……? なら、よし!」
 ザンギエフが長机を蹴飛ばした勢いで精巧な模型は床に雪崩落ち、バラバラになって飛び散った。

 ああ、調べようと思ったのに……まあいい、どうせ罠があって死人帰りが出ることだけは調べずともわかっている。そうアシュレイがつぶやいたとき、私はふと異様な音に気づいた。奥の長机の下から、からからに乾いた骨を軽く打ち合わせるような連続音がかすかに漏れてくるような……

 「あれを!」
 覗き込むと同時に私は叫んでいた。ボーン・ナーガ――骨の蛇。知の番人たる賢き蛇ナーガの命を身体ごと昏き死の影に汚したもの。その乾いた骨が揺れ、触れ合って発するカラカラというかすかな音は、周囲に死の気配を振りまき、生命の躍動を鈍らせる。
 まだ怪しいものはいないか――そう思ってもう一度見れば、書架の間に据えられた悪趣味な燭台とばかり思っていた髑髏も、偽りの命を与えられた悪魔のしゃれこうべ、死の炎を無限に吹き出す化け物ではないか。そういうとアシュレイがかすかに唇をゆがめ、笑った。
 「図書室に炎使いとはな、舐めたまねを。では、望みどおり書物ごとすっかり焼き払ってくれる」

 いや、その前に私たちが火傷をしないように守りの呪を紡いでおいたほうが、と言いかけたときには、既に戦端は切られていた。喉も破れよとばかりの雄叫びをあげながら、ザンギエフが骨の蛇めがけて突っ込んだのだ。
 カラカラと心乱す骨の旋律を、大戦斧の唸りがかき消す。刃の軌跡は鋭い弧を描き、規則正しく並んだ蛇の肋骨に斜めから斬り込んだ。うねりくねる背骨から次々と骨が弾け飛ぶ。身体の右半分を削がれ、振り抜いた勢いでほっそりとした尾までを一気に斬り飛ばされ、さしもの骨の蛇もがらりとその場に身を横たえ、ばたばたとのたうった。
 「ほう、蛇でも倒れるのか」
 しばらくぶりの確かな手応えに、ほとんど歯を剥きださんばかりにしてにやりと笑いながらザンギエフは言った。そこにすかさずパラディグーム卿の声。
 「妖法切所(せっしょ)――無上光の加護あり申す! 今こそ打たれよ、強く!」
 その声にはじかれたようにザンギエフ、再び斧をふるう。さらに蛇の骨が砕け散る。
 「まだ終わらん、妖法狂い風! わははは!」
 卿が声高らかに叫び笑い、そうすると卿のかざした槍から吹き出す風がびょうびょうと荒れ狂って敵の牙の前に身をさらしたままのザンギエフをついとその場から運び去る。

 もちろん蛇だの悪趣味な燭台だのも黙ってはいない。半身になった骨の蛇からは墓場の毒気が吹き出し、悪魔の髑髏が大口を開いた瞬間、その場には地獄の業火が荒れ狂う。そこまで来てからようやっと私は守りの呪を紡ぎあげ――一瞬ためらったが、思い切って図書室の中に踏み込むと呪文の最後の音節を口にした。これで全員、なまじっかな炎には火ぶくれひとつできないどころか、熱いとすら思わなくなる。さて、後は安全そうな場所に退却すればいい。なにしろ魔法の使い手は他の連中と違って繊細なのだ。こんなやかましく危なっかしい部屋に長居は無用。

 と思った瞬間、部屋の外で高笑いがこだました。エイヴォンが勝ち誇って笑った――のではない、もっと凶悪な響きを帯びたそれは、なんとアージェントに残ったはずのオーケストラのもの。どうやって転移門を使いこなしたか、それからあの面倒そうな門番や表紙の騎士団をどう納得させたのか、一瞬考えかけたが途中でやめた。そんなことでいちいち気を回さなくとも、味方は多いほうがいいに決まっている。それに今この時点での彼女の登場は非常にありがたかった。何しろ高笑いの直後、私の背後の空間が歪み、書物の詰まった書架ごと壁をすり抜けるようにして、半ば透き通った剣を構えた亡霊が出現したのだから。

 オーケストラが来た以上は司祭のそばにいるのが安全というものだろう、と、部屋の奥に走り込んでしまってから私はずいぶん後悔した。なにしろ悪趣味な燭台も剣持つ亡霊も、傍に誰がいようとお構いなしに私をつけねらうのだ。骨の蛇だけは魔法でその場に釘付けにしておいたので私を追いかけてくることもなく、長机の陰でのたうち回りながらザンギエフの斧できれいに三枚に下ろされた挙げ句アシュレイの大剣で止めを刺されたのでまだよかったが、とにかくこのままでは亡霊に取り殺されて私まで亡霊になってしまう。死人の手にさえかからなければ死んでも私がなんとかしますとオーケストラが心強いことを言うので、私は思いきって悪魔の髑髏の目の前に飛び出した。ここなら死人も追って来まい。奴だって地獄の炎に巻き込まれるのは嫌に違いない。

 もちろん待っていたとばかりに二つ並んだ髑髏はがばりと口を開け、炎を吹き出した。断末魔の声をあげたのは私ではなく、巻き込まれたザンギエフだった。骨の蛇との戦いで相応に傷を負っていたのだ。その声に重なるようにオーケストラが高らかに蘇りの祈祷を唱えた。崩れ落ちかけた膝が床に着かないうちに、ザンギエフはその喉から雄叫びをほとばしらせながら大戦斧を握り直し、床を蹴っていた。脇を突進する肉弾の勢いに私が思わずぐらついた瞬間、その私の背中を大剣が掠めていった。アシュレイが剣を投げたのだ。雷の剣をまともに喰らって半ば崩れかけた髑髏の前に、飛来する剣に追いついたかのようにアシュレイが出現、髑髏の左目に突き立った剣の柄を握り締めた途端、蒼白い雷撃が刃を走る。たまらず髑髏は爆裂四散し、その勢いでザンギエフの斧に半ば砕かれかけていたもうひとつの髑髏も完全に砕け散った――その場ではただ次々と焦げて砕け散る髑髏を呆然と見ていただけだったが、後で問うとアシュレイはこともなげにこんなことを言った。
 「ああ、あれか。
 私に埋め込まれた“雷素の心臓”を起動し、剣を雷に変えて投げつけた。それから空間を捻じ曲げて剣を追い、剣を媒体として周囲に電撃を放った。それでもまだあの気違い髑髏の機能は喪失していなさそうだったからもう一度雷撃を叩きこんで黒焦げにした……一瞬でこれだけやるのはいかに私でも堪える、こればっかりは1度つかったらその日のうちに2度はできない」
 その場で敵を片付けるのはこの連中に任せて、私は図書室に引きこもって儀式書だのなんだのの準備に専念するほうがよさそうだ、魔術師というのは繊細な存在なのだから、戦場に出る前にその仕事の半分以上は済ませておくべきに違いない。そう、つくづく思った。思ってしまってから、これがかの安楽椅子冒険者アルブレヒトの好む言い回しで、そして私はことあるごとにそれを鼻で笑っていたことを思い出して少しばかりうんざりした。
 が、まあ、役割というのはあるものなのだ。事実は仕方あるまい。

 ともあれ、その場はそんなふうにして、骨の蛇は動かぬ骨の山になり、悪魔の髑髏は黒焦げになって崩れ去って燭台の役にも立たなくなった。そして、
 「あとは私が片づけます。我が神の愛によって」
 片づけるという言葉と愛という言葉を結びつけてよいものか思わず問いたくなったが、とにかく亡霊に背後をうろつかれるのも困る。オーケストラの宣言をありがたく拝聴して、私は亡霊の目の届かなそうなところに引っ込んだ。

 その後、私たち以外に動くもののなくなった図書室を丹念に調べた。書物はちゃんとした魔術師ならこれぐらいは持っていて当然というものばかりで、つまりわざわざ持ち出す価値もないものがほとんどだったが、1冊だけ、『帝国史』なる稀覯本が見つかった。ひょっとしたらここの図書館のものかもしれないから、読み終えたら表紙の騎士たちにどうすべきか尋ねようと思いながら荷物の中にしまい込んだ。また、机の引き出しには儀式の巻物が3本ばかりあったのでこれも預かることにした。なんとなくこそ泥をしている気分になったが、まぁあの女は学院の魔術師たちをずいぶんと殺したのだしその罪でこれから封印されるのだから、ここにある資源は世界の守りの足しになるように私たちが使うほうが品物も活きるというものであると自分に言い聞かせて荷物をまとめ直し、立ち上がった。




このシーンの裏側。

 前回は所用のため参加できなかったオーケストラPL、今回もどうなるかわからないというので先に開始してしまっていたのですが、遭遇途中でログイン。というわけで、カッコいいところで音楽にわかに高まり、高笑いしながらの堂々たる登場……とか何とか。というわけで、どうやってオーケストラがアージェントからマルドゥーングに来たかというのは、きっと彼女の信じる神の愛の力とかそういうのだということになっています。

 それからここ、悪魔のしゃれこうべことデモニック・フレイムスカルがふたつ並んでヴァイル・コンセクレイションを無限回で打って来て、ザンギエフはいったんヒットポイントマイナスになるし、ミルタもあと一撃で確実に死ねるところまで追い込まれる(そしてソードレイスにつけまわされる)しで、そりゃもう大変なことになっちゃったのですが、セッション終了後、DMが

 「でもそらそうとこのヴァイル・コンセクレイション、ダメージ的にはほぼファイアーボールだし、無限回ってのはちょっと酷だよなあ」

 とか言い出して英語版を確認したところ、ヴァイル・コンセクレイションは[遭遇毎]だったことが発覚、と。
 でも遭遇時には[無限回]バージョンで戦闘したので、文中ではやっぱり「無限に炎を打ち込んでくる」としてあります。

posted by たきのはら at 20:10| Comment(6) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アシュレイの剣投げからのコンボはちょっとご本人の解説が欲しいですね。まるで格ゲーの3ゲージコンボを見るような連撃でした。
Posted by D16 at 2011年07月28日 21:54
あのラウンドに何が起きたかというと――

●マイナーアクション
【プロミス・オブ・ストーム】
「雷鳴」「電撃」属性の攻撃に対して、次の自ターンの終了まで、
 +2d8の追加ダメージを与える種族パワー。
 またこの時、特技「元素力共鳴」により、次の自ターンの終了まで、
 あらゆる[秘術]パワーに、命中+1,ダメージ+4の無名ボーナスを得る。

●標準アクション
【ブレードボルト】
 武器を雷に変えて投擲する9Lv一日毎攻撃パワー。
 命中すると、2d12+13ダメージを与える。
 加えて敵はマークされ、かつ減速状態となる。

●フリーアクション
 アクションポイントを使用
 「アナーク・オブ・シア」の「乱れ剣アクション」により
 追加アクションに加え、一回の近接基礎攻撃を得る。

●移動アクション
【アーマサーズ・ステップ】
 5マスの瞬間移動を行う6Lv汎用パワー。
 ここで敵隣接位置に出現した場合、
 隣接敵に対する命中に+2のパワーボーナスを得る。

●標準アクション(アクションポイントによる追加)
【エレクトリファイド・ラッシュ】
 近接爆発1に対して電撃を放出する7Lv遭遇毎パワー。
 命中すると、2d8+15のダメージを与える。

●近接基礎攻撃(乱れ剣アクションによる追加)
 命中すると1d12+15のダメージを与える。
 この時、アシュレイの近接攻撃は特技「電撃炎」により、
 2点の電撃ダメージを帯びていることから、今回のプレイでは
 プロミス・オブ・ストームの追加ダメージを適用している。
 (適用できない可能性あり)

 攻撃が集中した1体には
 3d12+8d8+55点のダメージが入ることになります。


Posted by 松谷 at 2011年07月28日 23:31
これを中二翻訳すると

【雷素の心臓】を発動するや、大剣を雷に換えて投擲、
 これを追いかけるように空間跳躍して敵の背後に出現、
 同時に全方位に電撃を放出、
 生き残った敵の喉首に大剣を突き刺して
 電流を黒焦げになるまで流し込んだ。

訳です。
このコンボは地球上では著しくエネルギーを消耗するので、一日に一回しか使えません。
でもブレードボルトを別のに入れ替えると、戦闘毎に撃ってきます。
Posted by 松谷 at 2011年07月28日 23:39
せっかくなので本文にも一部反映しました。
でも、真のとんでもなさを知るためには、やはりご本人の解説&中二翻訳を読んでいただきたいような……
Posted by たきのはら at 2011年07月29日 12:09
オーケストラの登場については、
一度は留守番に同意するも、前回一行が発った後に
A)とはいえ癒し手がいなくては辛かろうと矢も盾もたまらず一行の後を追った。
B)学院に屍山血河が築かれるかと思うと戦争気違い(ウォーモンガー)の血が騒ぎ
矢も盾もたまらず一行の後を追った。
のいずれかでよいかと思います。

ランダムエンカウンターは大した敵がでなかった、塔は真っ向回復値を減らして登ったということで
一つ。
Posted by 代価倒産 at 2011年08月02日 00:07
>代価倒産

……では、次回のセッション時にどちらがより「らしい」かということを
ちょっと話し合ってみましょう。
次回のレポートに反映しようと思いますー
Posted by たきのはら at 2011年08月04日 09:41
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