2009年03月02日

『関守峠始末記』その1:根の国から来た男

 石の壁に何とか身体を預けながら、アーバインはたいそう不機嫌だった。持ち物をあらかた取り上げられた挙句ぐるぐる巻きに縛り上げられて冷たい石の床に転がされ、しかも御丁寧に周囲にゾンビが5体もうろついているのでは上機嫌になりようがなかった。

 まず剣だ。あの業物を取り戻さなきゃならん。そうしたらあのコボルドどもを一匹残らず膾切りにしてくれる。その前にこのいかにも雑魚といったゾンビを切り刻まなきゃならんが素手じゃどうもならん。縄はすぐにでも抜けられるだろうが、ブーツに隠した小刀に手が伸びるまで、こいつらを黙らせておくのは……うん、ちょっと難しいな。とりあえずは様子を見るか。

 縄を緩めようとして手首を少しばかりすりむき、アーバインはさらに不機嫌になった。襲い掛かってきた6匹のコボルドを膾切りにした後、この不景気な塔――彼が転がされているのは峠の上の見張り塔の中の小部屋の片隅だった――に火を放たなきゃならん。うん、きれいさっぱり燃やし尽くすに限る。下手にこいつらの身内など残しておくと後々の禍根になる。

 そう、彼がここにこうしているのも、元の元を辿れば、彼が政敵の屋敷に放った火が消し炭にした量が中途半端だったからに違いないのだった。
 
 アーバインはドラウの中でもそこそこの有力者の家に生まれた。ドラウは別名を“根のエルフ”とも言う地下住まいの一族である。アーバインはドラウとしては模範的にすぎるほどの精神構造をしており、「舐められたら百倍返しにするんだよ」という幼いころからの母の言に従って、彼の一族に対して舐めたまねをしでかした政敵の屋敷に火を放った。火はそのあたりを舐め尽し消し炭にしたが、やはりこれはやりすぎと受け取られたらしい。敵方のみならず、「下手人の身柄をそちらに差し出すからそれで勘弁してくれ」という裏取引をした身内のはずの一族にまで追われる身となり、アーバインは故郷の地下――根の国――を後にせざるを得なかった。

 追っ手を撒いて地上に飛び出した途端陽光に目を灼かれ、やはりここでは生きていけぬと引き返そうとしたが、かなわなかった。地下から追いすがってきたリザードフォークどもを一刀のもとに切り捨てた後、しばらく血の飛沫いた岩穴に潜んで夕暮れを待った。

 地上に出ても彼の生活はさほど変わらなかった。
 ドラウは地上では忌み嫌われる存在であり、陽光の下を大手を振って歩けば袋叩きに遭いかねなかった。宵闇から宵闇を伝いながらアーバインが知ったのは、彼がちょうど飛び出したところにあった開拓地のようなところには、彼が安心して生きられる場所はないのだろうということだった。雑多な港町がいい。そこなら誰も人のことなど気にしはしない。ドラウが珍しくないとはいわないまでも、種々雑多な風体の連中が入り乱れているには違いなく、そこに行き着きさえすれば、ちょっと顔を隠すだけであとは楽にやっていけるだろう。

 だからアーバインは、ハラ=ジュゴルという港町を目指した。
 その道中のある明け方、峠に立つ見張り塔に行き当たったのである。

 昼の陽光を遮る宿がほしいところだったが、なにやら塔の入り口には足跡が入り乱れており、剣呑だった。うっかり入って切り刻まれるのもつまらんが、とりあえず何がどれだけいるのか様子を見ておこう。
 そう思ったのがけちのつきはじめだった。

 塔に住み着いていたのはコボルドの大群だった。どこを襲って取ってきたものやら、ぐるぐるまきにしたオークを担いで、隠れているアーバインの目の前を通り過ぎていった。これはいかん、明るくなってきたらこの塔からとっとと離れたほうがいいかと思ったとき、足元で鳥もち袋が弾けた。見つかったらしい。巣穴の傍だけあって、コボルドどもはいくらでも沸いてきた。多勢に無勢でアーバインはつかまり、荷物のようにくくりあげられ、塔の中に運び込まれた。

 とりあえず陽光を遮る宿の中には招待されたわけである。しかも御丁寧なことに、ゾンビの下っ端を身の回りに5体も侍らせてくれている。

 やれやれ。

 首にかかった縄をこっそり外すと、アーバインは軽く首を鳴らした。

 こいつら全員生かしちゃおかねえ。

ええと、このシーンの裏側……というよりは、この世界のエルフについて、です。

 D16氏の世界では、エルフは植物性の人型生物です。4thだと(植物)などという起源がきちんと別に存在してちょっと面倒なんですが、それとはまた別次元、ということでとりあえずは置いておくとして。

 かつて、この世界の中心には、世界の屋根と地盤の間を支える巨大な樹――星界樹――が存在しました。この樹は世界の本質にとても近いものであったがゆえに、この樹の精髄の欠片はそれぞれに人の姿を取る事が可能でした。そうして人の姿を取ったものがエルフと呼ばれる存在になったのです。

 その樹の地上部に起源を持つものは、自分たちこそがこの樹の正しい精髄であると称していました。自分たちはそのまま星界樹が人の似姿となったものであり、自分たちはそのまま星界樹であるのだと。彼らは後にエラドリンと呼ばれるようになります。また、星界樹は巨大な銀の柳であったため、銀柳種との別名も持ちます。

えーと、そこらへんにまつわる話はここ

 樹はまた、自らの子孫をさまざまな環境で栄えさせるため、数多くの配偶子を世界中に送り出しました。彼らはエルフと呼ばれるものたちであり、自分たちはエラドリンのごとき手折られた枝ではなく、星界樹自身の正しい営みによって生み出された真正の存在であると主張するのでした。

 一方、樹が地下深くに伸ばした根から生まれた一族もいました。彼らドラウは、自分たちはエラドリンのごとき手折られた枝でもなければエルフのごとき不完全な存在でもない、星界樹の身そのものでありながらひこばえとして分かたれた最も尊い存在なのであると公言してはばかりませんでした。

 そんなわけで、この3つの種族は同じ起源を持ちながらも、互いに決して譲らないのでした。

 が、この3種族が協働したことが一度だけあります。星界樹が世界中を巻き込んだ大戦によって倒れた後、失われた親樹を復活させるべく彼らは集まりました。が、あと少しで儀式が完成し、樹が復活するというときになって、エラドリンのやりかたは間違っているとドラウが言ったのがきっかけで互いの不満が爆発し、ドラウはエラドリンやエルフのもとから自らの故郷たる地下――すなわち根の国へと永久に去りました。以来、ドラウは地上に暮らすものからは高慢で独善的な裏切り者と指弾されるようになりました。

 もちろん、ドラウはドラウで、真正に星界樹であるものに逆らう奴らが間違っているのだと言い張ったのです。

     *****☆*****

 ……えーと、まぁ、こんな感じでエルフ樹木説というのがD16氏の世界にはあるわけでして、で、ドラウがPCとして登場した時点で、彼らは根の種族ということになりました。
 これまで書いたイメージボードとはまた設定が多少ずれてきていますが、世界の捉え方はいろいろあるということで……

 ちなみにこの設定もアーバイン登場時にセッションしながら一気にこさえたので、以後多少変更されるかもしれません。が、たかだか一ワールドセッターやその周辺の人間に、世界の全貌などそうやすやすと見えるわけがないのだということで、変更が加わったところは順次設定を足していくことになります^^;;;
posted by たきのはら at 01:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 猛き大陸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
エルフの成り立ちについて、このようなバックボーンがあるからには
生かしてRPしたいものです。余りやりすぎると設定で動けなくなっ
ちゃうのでアレですが。エミアスはこの考えだと種っこになるのね。

今後のこともあるのでドラウ一般とアーバイン個人についてどのように
思ってるのか書いておきますね。
ドラウ一般について:
根の国の人についてはエルフ社会で生きてきた訳ではないので、(日天使の
信仰設定の際、8〜9才頃人里で暮らしていたようなことを書いたので
その方向で。どっちかというとハーフエルフの出生に近い?)星界樹の話を
物語的にしか理解してない可能性が高い。
全面的に友好的な種族でないと思っているが、それってどの種族でもそうだし
人次第だよねというスタンス。

星界樹の話は個人的に、根っこも葉っぱもそれ自身じゃ生きていけないのに
変なこというなあと思っている。

アーバインについて:
根の国の人だけど外に出ている以上かなり変わり者だと思っている。
変わっている=根の国の人一般とは少し違うかも? という好奇心は
あるけどちょっと遠巻き。根の国の人を実際見たのは今回が初めて。

とりあえず知ってる人々に危害を加えない限りは共存OKなスタンス
確かアーバインは名乗ってなかったと思うので、暫定的に「根っこちゃん」
と呼ぶことにします<今決めた!
Posted by なおなみ at 2009年03月02日 22:57
設定は、使えそうな部分だけ上手いこと拾って、
RPに生かしていけばよいと思いますよー。
こっちは出た設定はなるべくあれもこれも記載するようにするので、
好みに合わせて取捨選択をー^^

エラドリンはきっと「枝のエルフ」「葉のエルフ」で、
普通のエルフは「種のエルフ」なんですね♪(←今思いついた)

んで、エミアスのスタンスは了解しました。
よくわからないことに起因する偏見と遠巻きはあるけど、
基本的に伝説は伝説、個人は個人だしーって感じかしらん。

それにしても「根っこちゃん」はいいなぁ♪
Posted by たきのはら at 2009年03月03日 00:54
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