「や、やっと帰ってきてくれたか!」
村長ムーンストラックが息せき切ってすっ飛んでくる。
「夕方、南の魔神の沼地のあたりで怪しい光の柱が立ち上がったんだ。何ごとかと思って見ていたが消えもせず、それどころかこちらにやってくる……」
「村長、落ち着いてください」
スズランがにこりと笑みをこぼした。
「知っています。私たちはそれを迎え撃つためにこうやって急いで戻ってきたのです。詳しい話をしましょう。村の顔役、そしてケナフを呼んできて下さい」
呼ばれてやってきた一同を前に、スズランは今日の出来事をかいつまんで話した。
「蜥蜴人どもはこの村を目指しています。彼らの集落で戦うのはあまりにも不利でした。村に危険を近づけるのは本意ではありませんでしたが……」
「それは仕方がない。誰だって足場のある土地のほうが有利に働けるんだ。……村は、守りきれるんだろうな?」
「守ります。が、保障はできません。それが戦の常ですから」
スズランはかすかに口元を曲げた。
「ですから、女性や子供たちは避難させてください。戦える人は何人いますか?」
「10人かそこら……」
「充分だ」
すばやくファイアスパーが言った。
「彼らは私が指揮しよう。村の柵越しに投槍を投げつけ、一瞬奴等に隙を作らせる。それで充分だ。後は我らがかたをつける。迎え撃つのは村の門の前。川があるのが幸い。私が見た怪物はなりはおそろしいがいかにも鈍重だった。流れを押し渡るのは奴には一苦労だろう。橋を落としておけ。
……では、私は休む。戦えるものは明日明け方、投槍を持って門前に集まるように」
「橋は……落とさなきゃならないのか?」
「村を圧し拉がれたくなければ」
きっぱりと言うと、ファイアスパーはその場を後にした。
やれやれ、と苦笑いのようなため息をつくと、スズランは村長に向き直った。
「すみませんが、戦えない人たちを呼び集めてください。なるべく蜥蜴人たちを村の中には入れないようにしますが、万が一ということもあります。持てるものは持って、ひとまず安全なところに退避するよう、私が説明します。明け方すぐに村を出てもらうことになりますが……」
「俺が先導する。安心しろ」
ケナフの声にスズランは微笑んでうなずいた。
「ならば心強い。街道沿いに少し行ったところに、キャラバンが休憩するのによく使う水場があるのを知っているでしょう。あそこなら安全です」
南の沼地から近づいてくる怪しい光に怯え騒いでいた村人達も、スズランの穏やかな笑みを見るとようやく落ち着き、そうして今度はあわただしく避難の準備を始めた。神の恩寵とも言うべき微笑の力だった。それを見届けるとスズランもケナフに後を託して床に着いた。
そして翌朝。
一同が集会所に集まって準備をしていると、転がるような勢いで村長が飛び込んできた。
「あ、あれを、あれを……!!」
開け放った窓から村長の指し示すほうを見た瞬間、ビエントとファイアスパーの顔色が変わった。
「しまった。沼で見たものより頑丈になっている、奴は成長している……!!」
「沼地で討っておくべきだったかッ」
雲つくような巨大な木偶人形が、周囲に数名の竜首人や蜥蜴人を従えて、川の向こうにやってきていた。
ずん、と伸びた背中の上に短い首。不恰好ながらも蜥蜴人のものとすぐわかる顔。右手には剣を模した石柱をむんずと掴み、頭上には王冠のごとく、柵つきの台座をいただいている。台座の上に1体の祈祷師風の衣をまとった蜥蜴人が得意満面で仁王立ちになっているのは、つまりあの蜥蜴人こそが夢に星の兵士の作り方を見たという、あの集落の爬虫王なのだろう。
そして巨大な木偶人形の胸の中央には、塗りこめた泥を透かして青と緑の禍々しい光に脈打つものが――巨大な心臓が埋まっているのが、遠くからでもはっきりとわかるのだった。
「門の左右に5名ずつ投槍を持って並べ。私が“射て”といったら槍を投げつけた後、逃げろ」
その姿にもう足がすくみかけている村の男たちに、ファイアスパーの声が飛んだ。
「勝機は見えている。私を疑うな。そしてビールを要求する!」
このシーンの裏側。
というわけで、ここで以前出ていた主要クエスト「オベリスクの謎を解く」が副次クエストに格下げ、改めて「村に迫った危険を取り除く」という主要クエストが示されました。
迫ってくる怪光にパニックを起こしかけた村人たちの扱いは聖騎士様の独壇場。伊達に“破壊的なまでの魅力”を誇っちゃあ、いません。また、今回不参加のケナフは村を離れる女子供の取りまとめと先導に活躍していたということに。
そらそうと、朝になって村長が息せき切って飛び込んできました、というシーン。真面目に驚きました。
昨夜沼地で「こんなんが歩いてきます」といってマップ上に置かれたのは超巨大サイズの青くて猫背で腕が長くて顎が飛び出してて巨大な丸い目とやたら綺麗に並んだ歯を剥いてる、なんかすげえクリーチャーっぽいフィギュア(ブルースポーン・ゴッドスレイヤー、と台座には書いてあった……)だったのですが。
朝になって「では、窓から見えるものは……」と言ってマスターがマップ上に置いたのは、ブレストプレートをきっちりと着込み、長髪を風になびかせ、抜き身の長剣を構えたものごっつい巨人。
「うわぁ、成長してる!!」
「これはつまり夜のうちに、いろんなものがパイルダー・オン?」
「しまったぁ、沼地でやっとけってことだったのか!?」
「つーかマスター、1レベルのシナリオにこれあんまりじゃないですか」
「いや、あの巨人を良く見るとかかとのところにコルクの栓があったりとかは……」
まぁ、あのフィギュアは夜のうちに完成度が高まったってことを示すだけで、あのとおりのものがあるわけじゃないですといわれても。ねえ。
心臓に悪い><
あと、ゲーム中も気をつけていたのは、この星の戦士はクリーチャーではなく、戦闘の対象にならないと言うのはわかってもらわないといけませんでした。そうでないとみんな逃げるよねえ。
頭の中にあったのは、指示を出す頭頂のリザードマンを引きずり下ろすため、巨像を登ったり、足止めをするという活劇だったんですが(そのための技能チャレンジも用意してました)……。
某“巨大ロボ”は戦闘の対象になるクリーチャーだと思ってましたです……このコメント読むまで。
少なくともリザードフォークの村で見たときは間違いなく“足元がおぼつかなくてまともに動けないor足の腱か何かに重大な弱点のある、でも自律式のクリーチャー”だと私は思っていました。他のPLはどうだったんだろう?
まぁ、そらそうとこのシーンで最もショックだったのは、超巨大フィギュアが取り替えられたことだったのですが^^;;;
DMの思惑では、星の兵士の身体を戦闘場所に使っての、
沼地での戦いで決着がつくはず……だったのね。
それで、主要クエストだったものを副次クエストに格下げ、
新たに主要クエストを設定、とかいうことになったのでしょうか?
そっか、技能チャレンジってそういうことができるんだ。自分ところで真似しようー(ぇ
ちなみに、裏側表記に『主要クエスト』や『福次クエスト』という表記があり、
DMの提示するミッションをプレイヤーに伝えるのにとてもいい手法だなぁと思ったのですが、
これは4版固有のルール用語でしょうか? それとも、たきのはらさんが文章表記の上で選択した単語ですか?
というか、途中でワンダと巨像のムービーシーンを
「イメージはこれねー」と、見せてもらいました。
……と言われても盤面にいる巨人フィギュアはやっぱり怖かったんですが^^;;;
『主要クエスト』や『副次クエスト』は術語ですよー。
DMGに出てきますので(『主クエスト』『副クエスト』になってるかも)
是非読んでみて下さいな☆