「こちらを先に検分するとしよう。炎よりは剣と楯のほうがまだ安全そうですから」
「では私はこちらを」
スズランが楯を掲げ剣を構えた蛇人間の像――それは人の身体に太い蛇の尾、そしてコブラのような頭を持った、まさに蛇人間と呼ぶのが相応しい像だった――に歩み寄るのをちらりと見ると、今度はファイアスパーが炎の玉を今にも投げつけんばかりに構えた像のほうにつかつかと歩み寄った。
誰もが危惧していた通り、応えるように像が動き出した。楯と剣の像が1体、炎の玉の像が1体。他の6体が相変わらず固まったままで、ぞろぞろと剣を抜き連れるようなことはなかったのがまだしも重畳といえば重畳だった。ちょっと待て、これはどういう怪物なのだとビエントが叫びながら部屋に飛び込み、ファイアスパーの隣に走り寄る。後ろでアーニャが呪文をつむぎ始める。
「アーニャ、待つんだ!」
蛇人間の尾がうなったかと思うとビエントは足をすくわれ、地面にはいつくばっていた。倒れながらビエントは叫んだ。
「今確かに見た、こいつらは生き物じゃない、もとはただの彫像で、それに魔法の掛かったものだ! 彫像は魅了されず、眠らず、毒も効かない、呪文を使うなら使うものを選べ、無駄弾を撃つな!!」
叫びながら叩きつけられる尾を危ないところでかわす。
「ビエントちゃんわかった、落ち着くんじゃ、今おてんとさまの明かりでそいつの居所がはっきりわかるようにしてやるからの!」
エミアスの伸ばした手から光条が飛んで石像を撃つ。と同時にエミアスは呆れ声を上げた。
「ロウィーナちゃん、あんたどこ行くんじゃ!?」
「彫像に呪いが効かないと困るから、直接尻尾をひっぱってやったほうがいいかと思って」
部屋の入り口を固めるアーニャとエミアスの間を抜けて、ロウィーナがつかつかと部屋の中に入っていく。立ち並ぶ石像の影に隠れるようにしてぐねぐねと暴れまわる尾に近づいていくところを見ると、どうやら本気らしい。
――が、結局ロウィーナの手が蛇人間の尾を捉えることもなく(そいつは結局スズランに切り伏せられた。彼の面差しに宿る神の怒りは、魅了されぬはずの石像さえも打ち砕いたのだった)、石像は片付いた。もう一方の、炎の玉を掲げた像もビエントとファイアスパーの手で粉々にされた。砕かれた像の額には、それぞれ見事な翡翠の宝玉が嵌っていた。おそらくはこれが魔法をこの像に媒介し、像を動かしていたものだろう、とアーニャは言った。他の6体の像には宝玉の嵌っているふうはなかったから、おそらくはこの部屋はもう安全なのだった。
「やはり戦いの術は実践して覚えるものだな。ようやく俺もこの身体で剣を振るうやり方がわかってきた」
ビエントは周囲を見回しながら言った。
彼は数度にわたって蛇人間の尾に打ち倒されたが、どうやらこの戦いで魔法とともに剣を操るやり方を覚えたらしかった。いわく、近い敵に剣を振るうときは力場を作り出さねばならぬ、遠い敵であれば剣先から稲妻を打ち出して刺し貫けばよい。が、近い敵を稲妻で打とうとしていては狙いを定める間に隙が出来てしまう……
「それよりも気になるものがありますわ」
剣の扱いについて語っているビエントをさえぎるように、アーニャが言った。
「像の後ろに、文様に隠すようにして文字が刻まれていますの。ざっと読んだところ、この部屋には“星の兵士の心臓”があったようですわ。“心臓”を、左右半分ずつに分け、二つの部屋の魔方陣でそれぞれを守っていた、と」
「じゃあ、この遺跡から持ち去られた“何やら大きなもの”ってのがたぶんその心臓だね」
ロウィーナが言った。
「魔方陣の中を良く見て、一抱え分ぐらいの床が妙に白っぽい。あそこに何かがおいてあったから、塵や埃が積もっていないんじゃないのかしら」
「それじゃあ、その星の心臓とやらを持ち出した後、あっちの部屋には毒の罠をしかけたんじゃな」
「おそらくそうだろう。単純な罠だが、少なくとも仕掛けを調べると、まだ新しいことは確実だ」
エミアスとファイアスパーが口々に言った。毒霧の収まった場所に踏み込んでスズランが拾ってきたその“仕掛け”は、素焼きの壷に毒を詰めて栓をし、誰かが栓につながった蔓草に足を引っ掛けると壷から毒が噴出すという、ここ数日のうちに仕掛けられたのでなければ意味をなさないようなシロモノだったのだ。
ともあれもうひとつの魔方陣も放っておくわけには行くまい、と、一行は、罠の仕掛けられていた部屋に(今度はずいぶんと注意して)乗り込み、そして息を呑んだ。
空っぽの魔方陣が残るその部屋の壁には、一面に壁画が描かれていた。
蛇人間たちの戦絵である。
無数の蛇人間を従え、戦場の中心を占めるのは、その頭が雲に達さんばかりの巨大な蛇人間。これがおそらく“星の兵士”だろう。対する怪物――オベリスクの碑文に拠るならば、これがおそらくは“世の破滅”――は、彼らの知るどんな存在にも似てはいなかった。
「絵画の技法があまりにも拙いせいかもしれないが」
ビエントが小さくつぶやいた。が、その分を補っても、彼の知識を持ってしても“それ”が何であるのかは想像もつかなかった。
それは甲羅を持ち、口いっぱいに尖った牙を生やし、恐るべき尾で並み居る蛇人間たちをなぎ倒しているのだった。
「未開の部族の絵にいちいち考え込んでも仕方あるまい。彼らは心の目に映ったものをそのまま絵画に残すのだ。まあ、少なくとも、“星の兵士”殿の大きさはこんなものではなかろうよ」
しばらくの沈黙の後、ファイアスパーがぽつりと言った。
このシーンの裏側。
蛇人間の石像は
ロウィーナは「せっかくティーフリングなんだしー」と、ちょっと殴られてからインファーナル・ラスを使ってみようと戦場に突入したのですが、幸か不幸か相手はスズランの相手するのに精一杯だったため、使わずじまい。ただ、インファーナル・ラスが[遭遇毎]パワーであることも考えると、筋力がなくてお粗末な近接基礎攻撃しかないウォーロックがわざわざ乱戦の中に入っていって、機会攻撃を誘発しながら遠隔攻撃を行なうとかする必要はなさそうです。怪我してリソース無駄にするのも嫌だし。むしろ、せっかく「だるそうなキャラ」にもしてあることだし、重傷状態になった敵を後から“手負い狩り”で沈めることを考えたほうが確実かなー。あ、ちょっと性格悪そうでステキ♪
後はビエントの剣は、近接攻撃だと力場、遠隔攻撃だと稲妻を打ち出すってのを整理したり、倒した石像2体のみの額に翡翠が嵌っているのを確認して、PCはほっとしたけどPLはがっかりしたり(だって、収入が1/4になるんですよ!?)。
あと、壁画に描かれた“世の破滅”ですが、なんというか「ぼくのかんがえたつよいかいじゅう」って感じだそうです。わかるのは甲羅と尖った歯と尻尾ぐらい。後でどんなひでえシロモノが出てくることやら。
対する“星の兵士”のほうは「普通の蛇人間がみんなのフィギュアぐらいだとしたら、そこにあるワインボトルぐらい」だそう。
ワインボトルの底が3マス×3マスを占めるのは確かなので、おそらくはそれでいいんだけど……と言っていたら、ファイアスパーPLが
「うむ、これは古代エラドリン語で“大豪院邪鬼効果”と言うのだ」
……“エラドリン=絶叫する北欧エルフ”まではポール・アンダースンの書く通り“あり得るヴァリエーション”でいいと思うが、大豪院邪鬼の名が平気で語られてるフェイワイルドは……まぁいいか。
相手を転ばせる打撃と、ターン終了時に的が倒れていたら追い打ちをする能力をもっていまして、転ばされたらぼこぼこにされます。
カウンターで足払いというのは、起き上がり妨害の攻撃と転ばし攻撃がごっちゃになっているものと思われ>たきのはら
実は、モンスターの知識判定は相手を見たところで手番に関係なくやってしまって良かったかも知れず。ちょっと要確認。
あいやー、勘違いしてた。というか指摘されるまでごっちゃになってたよ!!
というわけで、直しましたです>攻撃のやり方
モンスターの知識判定と手番については、ひょっとしたら巻き戻しがかかってたかも、という気がするので、こちらもちょっと録音を聞きなおしてみます。
……ちょっとうろ覚えなんですけど。
ともあれ、ナマモノ相手じゃないとスリープが効かないのはイタイんですよね〜。でも効果を考えるとやっぱり強力で、制御型ウィザードとしてはダメージ系よりもこっちを重視したいところです。
この辺悩むのもウィザードの楽しみの一つ、かしらん。
あうう、やっぱり巻き戻しがかかっていたですね^^;;;
というかこの後沼地でもスリープ使ってるので、
(ここで、オープンエアの戦場をきっちり囲い込んだのはやっぱり協力だったと思います)
スリープ消費はナシになってますね。……というわけで、直しておきますー。
同じ秘術でもこちらは砲台なんで、ちょうどウィザードとは逆ですね。
“叩く相手を的確に選ぶ”あたりが悩みどころなのかしら。