2011年07月28日

隙間時間オンセの会『巨人族の逆襲』第5回:目次

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はリンク先にはいらっしゃらないほうがよいと思います。


というわけで、第5回のプレイレポートです。
7月23日(土)22:00〜27:30
ちょうど区切りのいいところまで頑張ったので、今回はちょっと長めのセッションでした。

前口上の裏側にはエラッタ情報を掲載しています。
DM予定のある方は見ていただければと思います。

前口上(エラッタ情報あり)
その1
その2
その3

posted by たきのはら at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ・目次 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第5回:その3

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。




























 そうしてついに最上階に出た。
 最上階はなんと、天井のない雨ざらし、そして壁にもいくつも溝……というよりは、人ひとり簡単に放り出せるだけの掃き出し窓ふうの開口部がいくつも設けられている。
 そうして建物本体の屋上部からさらに小塔がせり出しており、本体と小塔とは手すりのない細い通路でつながっている。さらにその通路にはびっしりとルーンが刻まれ、ふるえるように明滅しているのだ。剣呑なことこの上ない。

 そうして、エイヴォンは小塔の一番奥に据えられた天球儀の前に立ち、真紅の瞳でひたとこちらを見据えていた。
 「死なずにここまで来たのね。ならばひとつ褒美をあげましょう。今すぐこの塔から身を投げなさい。そうしたら私がじきじきにおまえたちの肉体を私の配下に加えてあげる」
 「断る」
 「でもおまえたちに勝ち目はないのよ。ここで私の魔法に苛まれて苦しんで死ぬのとここから飛んで一瞬で死ぬのとでは、早く済ませた方がいいでしょう?」
 血の色をした花びらのような唇の端がきゅっとつり上がる。
 「断る。そもそも貴様には私たちは倒せぬのだからな」
 アシュレイがエイヴォンと舌戦を繰り広げている間に、私たちは周囲を見回し戦場の足場を確かめる。螺旋階段の踊り場を埋める石畳のそこここには足を絡め取る魔法がかけられ、そうして渡り廊下に彫り込まれたルーンは力場の檻を紡ぎあげている。そうして小塔に描かれた魔法円は……あれは召喚の儀式の焦点か。

 「考えていても始まらない、参ります!」
 最初に声をあげたのはオーケストラだった。
 「待って、あのルーンの渡り廊下はまだ……」
 「どんな罠かなど、踏み込んでみれば自ずから明らかとなります!」
 自らの声にはじかれたように駆けだしたオーケストラの足は、渡り廊下に踏み込んだ瞬間に止まる。細い肩がのし掛かる重圧に歪む。が、
 「なんのこれしき……!」
 振り向いてオーケストラは叫ぶ。この場所に踏み込めば足は重くなり身体は押しひしがれる、魔法も外には届かなくなる。まぁ、そうはいっても魔法の仕掛けにすぎないから、見るものが見れば仕掛けの“掛けがねを外す”のはたやすいでしょう。でもそれは私の仕事ではありませんので後はお願いします、私はこの、かりそめの美しさに心を惑わされ真に尊ぶべきものを忘れた女に、我が神の愛をもって真の愛というものを思い知らせてやります。

 結局私を除く4人は、エイヴォンの邪法にいっときは塔の縁まで追いつめられたりしながらも渡り廊下を押し渡っていた。私はというと、塔の壁にしっかりと身を隠しておいて、エイヴォンが魔法円から呼び出す化け物を、でてくる端から魔法の矢で吹き飛ばしながら様子をうかがっていた。彼女の唇の動きから呪文を読み取り、何かわかったなら大声を上げれば仲間たちに危険を知らせられる――そう思っていたのだが。

 「……遅い。命あるものの血潮はぬくみがあるだけ鈍いのね。動きなさんな。そのまま立ち止まっていればほんの一瞬の痛みだけでもう死の園に逝けたのに。思い上がった愚かな連中」
 今にも血を滴らせんばかりに赤い唇がぬらりと動き、白い細い指が中空に鋭く印形を刻む。と、エイヴォンの身体が急に歪んだ。違う、彼女の周囲の時空が歪んでいるのだ。自分の周囲だけ時の流れの密度を上げ、誰よりも早く動く魔法――だが。
 「そいつはこっちの3倍早く動いてる、でもたったの3倍です、こっちには4人いるもの、勝ち目はこちらに」
 わざわざ叫んだのがばかばかしくなるような勢いでザンギエフとアシュレイがエイヴォンに打ちかかっていた。女死霊術師から吹き出す死の冷気はパラディグーム卿が全身で受け止め、そしてオーケストラが高らかに叫ぶ。
 「生死をもてあそぶものよ、そなたの凶運は決し勝利の機運は我らに微笑んだ。生きるも死ぬもならずこの世の縁にとどまり続けるがいい!」
 冷たく整ったエイヴォンの頬が引き攣れる。もう一度、時が歪む――が、それまで。

 「殺すなよ」
 打ちかかるザンギエフを見ながら、アシュレイがあざ笑うかのように言った。
 「エイヴォン。殺されたらリッチになるからいい――そう思っているのだろう? だったら無駄だ」
 「そうです、リッチになったら今度こそ完全に葬り去るまで……」
 詰め寄りかけるオーケストラをアシュレイが押さえ
 「そこまではしない。答えは、今から生殺しにするから、だ。ザンギエフ、頼む」

 私は、少しだけ、エイヴォンに同情した。
 醜くて乱暴で愚かしいおまえたち、この私を追いつめたつもりか、いざとなればいつでもこの喉を掻き切って、と大見得を切りつつ、のけぞらせた細い首筋に真っ赤に染めて尖らせた爪を押し当て、凄艶な笑みを浮かべかけたエイヴォンは、その一瞬後、こともあろうにザンギエフにつかみかかられ、おそらくは身の危険に怯えるのとは別種のものであろう恐怖の叫びを上げながら締め落とされたのだ。

 ……まぁ、生きていれば筋肉達磨に締め落とされた悪夢を忘れられる日も来るだろう。気を失った耳にそうささやいてやると、私たちはエイヴォンを縛り上げ、栞の騎士アラムから預かってきた口枷を填めた。こうすればもう呪文を唱えることも人の血をすすることもできまい。

 こうして私たちは調子に乗りすぎた死霊術師を懲らしめ、マルドゥーング魔法学院の全面的な支援とスカイメタルの分与を得るに至ったのだった。『帝国史』も学院が買い取ってくれるというし、エイヴォンの塔で見つけた魔法の品々も
 「この女に持っていてもらっても困りますから」
 ということで私たちが持っていって良いことになった。

 というわけで私たちはひとまず仕事を終え、調べもののつても確保して、アージェントに戻ることになったのだった。


(第5回はこんなところでした)

このシーンの裏側あるいは本当にあったこと。
posted by たきのはら at 21:20| Comment(5) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第5回:その2

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。


























 すると部屋の反対側はさらに大変なことになっていた。どうやら書架の後ろに隠し部屋がありそうなのを誰かが見つけたらしい。というわけでザンギエフが本棚をひっつかんで揺さぶるとばりばりという音とともに本棚ごと壁がめくれ、その奥にはなかなか良い職人の手になると思われる彫像が5つ、6つ。

 「中身は入ってないな」
 つい先頃まで石像の中に封印されていたアシュレイにとっては人ごとではないのだろう。像を調べているその背後で、
 「おお、こいつはまさに儂のほしかった角兜じゃあ!」
 ザンギエフが歓喜の叫び声をあげる。
 どうやらこの彫像、美術品としての目的ついでに、実際の武具のしまい場所ともなっていたようで――いや、それともお気に入りの彫像にとっておきの魔法の武具をまとわせ武器を持たせて悦に入っていたのかもしれない、あの女ならありそうなことだ、と思っていると、
 「おや。こんなところで会うとは」
 ぽつりとアシュレイがつぶやいた。見ると、石像のひとつを懐かしげに見上げている。そうしてその石像の身につけた衣服や鎧はアシュレイが現にまとっているものとそっくりなのだ。
 「あなたの仲間なの?」

 「仲間……だった。良い男であったよ。もうこの中に命はない……が」
 その像が手にしている剣は石を彫ったものではない。それをアシュレイはそっと手に取った。
 「この剣、引き継いでもよい……な?」
 「おお、それはずいぶんとよきものでござるよ」
 いつのまにかパラディグーム卿が傍に立っていた。
 「試しに打ち振ってみるとよろしかろう――おお、今までの剣もよきものでござったが、失礼ながらその剣を手にするとしないとでは別人のよう。古きお仲間の持ち物であったと言うならなおのこと、その剣を引き継ぎ、アージェントをより一層よく守るがよろしかろう」
 それまで少しためらっているふうのアシュレイだったが、パラディグーム卿の言葉に力を得たかのように頷き、石造の帯びていた剣を佩いた。そうして代わりにそれまで手にしていた剣を像の手に握らせる。旧帝国の防衛兵士は本来なら皆この剣を支給されていたのだが、私はたまたま対元素戦の最中、その戦いに特化した雷の剣を手にしていたときに動作不良を起こして封印された。これまでの剣も決して悪いものではない……が、本来の我が身に合った剣のほうが好ましい。
 問わず語りにそうつぶやきながら、アシュレイはもう一度石像を見遣った。
 「大事に使わせてもらうぞ」

 ザンギエフにアシュレイ、そうしてパラディグームもそこで自分に合った武具を手に入れたが、魔術師の彫像はなかったので私が使うようなものは手に入らなかった。もちろん図書室の中で収穫があったのでそれについてはいっこうにかまわなかったのだが、彫像たちの整いすぎるぐらい整った目鼻立ちを見ていると、なんとなくエイヴォンの考えていることの想像がついてうんざりしてきたので、先を急ごうと言った。もちろん否やはなかった。

 ここから先、上へと続く階段は、塔の内側をぐるりと巡る螺旋階段になり、手すりのない階段のすぐ脇は塔の下まで続く吹き抜けになっている。危なっかしく思っていると、やはり踊り場の床から人の背丈ほどもある棘が飛び出してきた。しかもそれにはたっぷりと毒が塗りこめてあった。これは危ないというのでその先をためつすがめつすると、仕掛けらしき溝が床に刻まれている場所がいくつかあったので、取って返し、エイヴォンの彫像コレクションを引きずってきて罠らしき床に転がした。案の定床だの壁だのから棘が飛び出し、像はひとつのこらず砕けて吹き抜けに落ちていった。あれこれとすっかり片づいてしまったので、古き英雄(や、その彫像)たちに挙手の礼を贈ってから心安らかにさらに上を目指した。

 階段はいっそう細くなり、道の途中に仕掛けられた罠はさらに巧妙なものとなった。魔法仕掛けのからくりを見抜き、時には扉を蹴破りながら先頭を行くアシュレイについて、私たちは上っていった。途中階段から骨の腕が伸びてきて足首に深々とひっかき傷をつけてよこすのを切り払ったりしながら、私はなんとなく心細い気分になっていた。どうも私の命の火の燃料は随分使い潰されてきているのではないか。エイヴォンを見かけても真っ正面から歩み寄って頬を平手打ちするのはやめておこう。やってみたかったのだが。

 魔法で封じられた扉をアシュレイが焼き払うと、そこから12階に上る階段は、壁も足下もすっかり組み合わされた骨でできていた。踏むとそれはかすかに軋みながら砕けた。飲み込まれた足首を引き抜こうとすると、骨はさらに軋み、それはまるで呪詛をつぶやいているかに聞こえた。天井から白々と骨が垂れ下がり、揺れていた。それはあり得ざる長さの腕で、私たちが間合いに入った瞬間つかみかかってきた。眉ひとつ動かさずにアシュレイは新しく手に入れた長剣を構え、低く気合いを発した。剣先の空間が揺らめいたかと思うと目の前の骨は砕けた。天井から、壁から降り注ぐ骨の雨を私たちは声もなく見ていた。幻だと思いたかったが――幻の技を得意とする私にはわかる――これは紛れもなく本物の骨だ。

 骨の雨がすっかり吹き抜けの下に落ちていってしまうと、何の変哲もない石の壁と天井、そして階段がむき出しになる。悪趣味きわまりない階段を私たちは一気に駆け上った。


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 20:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第5回:その1

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 エイヴォンの第一の研究室をもうひとわたり見回すと、崩れ落ちたボーンクローが背にしていた壁にもうひとつ扉が見えた。開けると廊下が左右に続いていて、廊下を挟んだ正面に仰々しい両開きの扉が見えた。エイヴォンの頭文字Eを意匠化した飾り彫りがあるところをみると、ここはあの女の居室かと思ったが、扉には鍵も罠もなかった。アシュレイが蹴飛ばすと扉は開いた。

 そこは図書室だった。天井までの作り付けの本棚には書物がぎっしりと詰め込まれ、並んだ長机の上には広げられた羊皮紙、そしてなにやら大仰な模型。
 アシュレイとザンギエフはずかずかと室内に踏み込んだ。そうして机の上を見て肩をすくめた。羊皮紙に記されていたのは、死者の大軍勢の指揮系統図、そうして模型はというとどうやらこの塔のものらしい。
 「あの女、塔に閉じこめられて出られないものだから、自由の身になったらこれだけのことをしてやるぞとせっせと計画を立てていたのだな。だとしたらこの模型はきっと……」
 調べれば敵や罠の配置がすっかりわかるに違いない、と、アシュレイがかすかに唇を引き上げながら模型に手を伸ばそうとした……が、一瞬遅い。
 「魔法の禍々しいものではないようだな……? なら、よし!」
 ザンギエフが長机を蹴飛ばした勢いで精巧な模型は床に雪崩落ち、バラバラになって飛び散った。

 ああ、調べようと思ったのに……まあいい、どうせ罠があって死人帰りが出ることだけは調べずともわかっている。そうアシュレイがつぶやいたとき、私はふと異様な音に気づいた。奥の長机の下から、からからに乾いた骨を軽く打ち合わせるような連続音がかすかに漏れてくるような……

 「あれを!」
 覗き込むと同時に私は叫んでいた。ボーン・ナーガ――骨の蛇。知の番人たる賢き蛇ナーガの命を身体ごと昏き死の影に汚したもの。その乾いた骨が揺れ、触れ合って発するカラカラというかすかな音は、周囲に死の気配を振りまき、生命の躍動を鈍らせる。
 まだ怪しいものはいないか――そう思ってもう一度見れば、書架の間に据えられた悪趣味な燭台とばかり思っていた髑髏も、偽りの命を与えられた悪魔のしゃれこうべ、死の炎を無限に吹き出す化け物ではないか。そういうとアシュレイがかすかに唇をゆがめ、笑った。
 「図書室に炎使いとはな、舐めたまねを。では、望みどおり書物ごとすっかり焼き払ってくれる」

 いや、その前に私たちが火傷をしないように守りの呪を紡いでおいたほうが、と言いかけたときには、既に戦端は切られていた。喉も破れよとばかりの雄叫びをあげながら、ザンギエフが骨の蛇めがけて突っ込んだのだ。
 カラカラと心乱す骨の旋律を、大戦斧の唸りがかき消す。刃の軌跡は鋭い弧を描き、規則正しく並んだ蛇の肋骨に斜めから斬り込んだ。うねりくねる背骨から次々と骨が弾け飛ぶ。身体の右半分を削がれ、振り抜いた勢いでほっそりとした尾までを一気に斬り飛ばされ、さしもの骨の蛇もがらりとその場に身を横たえ、ばたばたとのたうった。
 「ほう、蛇でも倒れるのか」
 しばらくぶりの確かな手応えに、ほとんど歯を剥きださんばかりにしてにやりと笑いながらザンギエフは言った。そこにすかさずパラディグーム卿の声。
 「妖法切所(せっしょ)――無上光の加護あり申す! 今こそ打たれよ、強く!」
 その声にはじかれたようにザンギエフ、再び斧をふるう。さらに蛇の骨が砕け散る。
 「まだ終わらん、妖法狂い風! わははは!」
 卿が声高らかに叫び笑い、そうすると卿のかざした槍から吹き出す風がびょうびょうと荒れ狂って敵の牙の前に身をさらしたままのザンギエフをついとその場から運び去る。

 もちろん蛇だの悪趣味な燭台だのも黙ってはいない。半身になった骨の蛇からは墓場の毒気が吹き出し、悪魔の髑髏が大口を開いた瞬間、その場には地獄の業火が荒れ狂う。そこまで来てからようやっと私は守りの呪を紡ぎあげ――一瞬ためらったが、思い切って図書室の中に踏み込むと呪文の最後の音節を口にした。これで全員、なまじっかな炎には火ぶくれひとつできないどころか、熱いとすら思わなくなる。さて、後は安全そうな場所に退却すればいい。なにしろ魔法の使い手は他の連中と違って繊細なのだ。こんなやかましく危なっかしい部屋に長居は無用。

 と思った瞬間、部屋の外で高笑いがこだました。エイヴォンが勝ち誇って笑った――のではない、もっと凶悪な響きを帯びたそれは、なんとアージェントに残ったはずのオーケストラのもの。どうやって転移門を使いこなしたか、それからあの面倒そうな門番や表紙の騎士団をどう納得させたのか、一瞬考えかけたが途中でやめた。そんなことでいちいち気を回さなくとも、味方は多いほうがいいに決まっている。それに今この時点での彼女の登場は非常にありがたかった。何しろ高笑いの直後、私の背後の空間が歪み、書物の詰まった書架ごと壁をすり抜けるようにして、半ば透き通った剣を構えた亡霊が出現したのだから。

 オーケストラが来た以上は司祭のそばにいるのが安全というものだろう、と、部屋の奥に走り込んでしまってから私はずいぶん後悔した。なにしろ悪趣味な燭台も剣持つ亡霊も、傍に誰がいようとお構いなしに私をつけねらうのだ。骨の蛇だけは魔法でその場に釘付けにしておいたので私を追いかけてくることもなく、長机の陰でのたうち回りながらザンギエフの斧できれいに三枚に下ろされた挙げ句アシュレイの大剣で止めを刺されたのでまだよかったが、とにかくこのままでは亡霊に取り殺されて私まで亡霊になってしまう。死人の手にさえかからなければ死んでも私がなんとかしますとオーケストラが心強いことを言うので、私は思いきって悪魔の髑髏の目の前に飛び出した。ここなら死人も追って来まい。奴だって地獄の炎に巻き込まれるのは嫌に違いない。

 もちろん待っていたとばかりに二つ並んだ髑髏はがばりと口を開け、炎を吹き出した。断末魔の声をあげたのは私ではなく、巻き込まれたザンギエフだった。骨の蛇との戦いで相応に傷を負っていたのだ。その声に重なるようにオーケストラが高らかに蘇りの祈祷を唱えた。崩れ落ちかけた膝が床に着かないうちに、ザンギエフはその喉から雄叫びをほとばしらせながら大戦斧を握り直し、床を蹴っていた。脇を突進する肉弾の勢いに私が思わずぐらついた瞬間、その私の背中を大剣が掠めていった。アシュレイが剣を投げたのだ。雷の剣をまともに喰らって半ば崩れかけた髑髏の前に、飛来する剣に追いついたかのようにアシュレイが出現、髑髏の左目に突き立った剣の柄を握り締めた途端、蒼白い雷撃が刃を走る。たまらず髑髏は爆裂四散し、その勢いでザンギエフの斧に半ば砕かれかけていたもうひとつの髑髏も完全に砕け散った――その場ではただ次々と焦げて砕け散る髑髏を呆然と見ていただけだったが、後で問うとアシュレイはこともなげにこんなことを言った。
 「ああ、あれか。
 私に埋め込まれた“雷素の心臓”を起動し、剣を雷に変えて投げつけた。それから空間を捻じ曲げて剣を追い、剣を媒体として周囲に電撃を放った。それでもまだあの気違い髑髏の機能は喪失していなさそうだったからもう一度雷撃を叩きこんで黒焦げにした……一瞬でこれだけやるのはいかに私でも堪える、こればっかりは1度つかったらその日のうちに2度はできない」
 その場で敵を片付けるのはこの連中に任せて、私は図書室に引きこもって儀式書だのなんだのの準備に専念するほうがよさそうだ、魔術師というのは繊細な存在なのだから、戦場に出る前にその仕事の半分以上は済ませておくべきに違いない。そう、つくづく思った。思ってしまってから、これがかの安楽椅子冒険者アルブレヒトの好む言い回しで、そして私はことあるごとにそれを鼻で笑っていたことを思い出して少しばかりうんざりした。
 が、まあ、役割というのはあるものなのだ。事実は仕方あるまい。

 ともあれ、その場はそんなふうにして、骨の蛇は動かぬ骨の山になり、悪魔の髑髏は黒焦げになって崩れ去って燭台の役にも立たなくなった。そして、
 「あとは私が片づけます。我が神の愛によって」
 片づけるという言葉と愛という言葉を結びつけてよいものか思わず問いたくなったが、とにかく亡霊に背後をうろつかれるのも困る。オーケストラの宣言をありがたく拝聴して、私は亡霊の目の届かなそうなところに引っ込んだ。

 その後、私たち以外に動くもののなくなった図書室を丹念に調べた。書物はちゃんとした魔術師ならこれぐらいは持っていて当然というものばかりで、つまりわざわざ持ち出す価値もないものがほとんどだったが、1冊だけ、『帝国史』なる稀覯本が見つかった。ひょっとしたらここの図書館のものかもしれないから、読み終えたら表紙の騎士たちにどうすべきか尋ねようと思いながら荷物の中にしまい込んだ。また、机の引き出しには儀式の巻物が3本ばかりあったのでこれも預かることにした。なんとなくこそ泥をしている気分になったが、まぁあの女は学院の魔術師たちをずいぶんと殺したのだしその罪でこれから封印されるのだから、ここにある資源は世界の守りの足しになるように私たちが使うほうが品物も活きるというものであると自分に言い聞かせて荷物をまとめ直し、立ち上がった。


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 20:10| Comment(6) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月24日

『巨人族の逆襲』第5回:前口上、及び重要なエラッタ

 というわけで今週も遊びました。
 台風の置き土産の冷たい空気のおかげで過ごし易く、そんなわけで今回は早めにレポートを書き出しています。

 毎回、前口上は基本的に私(や他のメンツ)の与太話で、ネタバレはないように書いてるんですが、今回ちょっとネタバレあり。

 遊んでて見つけた重要なエラッタについて、“前口上の裏側”の下の方に書いてありますので、DMの方、今後DMする予定の方はチェックしてください。
 なお、HJさんへのエラッタ報告についてはD16氏のほうでやってくれてるとのこと。

 あと、今回の描写については「敵は強く、かっこよく、美しく表現するように」と、遊んでる最中と終わってからの感想戦とであわせて10回以上言われております。
 というわけで今回は表側がリプレイ小説、裏側がプレイレポートというような様相を呈しておりますので、裏表合わせてお楽しみくださいませ。


前口上の裏側(エラッタ情報、DM向け)
posted by たきのはら at 18:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月18日

隙間時間オンセの会『巨人族の逆襲』第4回:目次

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はリンク先にはいらっしゃらないほうがよいと思います。


7月9日(土)22:00〜26:00ぐらいまで
第2章・第1場……になるのかな?
物語はオリジナルっぽいけど、マップがあったのでたぶんシナリオ準拠の遭遇だとは思う。
それにしても今回は、リアルで遊んでいたら思わずダイス袋の中身をぶちまけ、新しいダイスを捜したくなるくらいダイスボットの目が偏っていました。
ダイスボットのお祓い機能とかってないのかしら。

前口上
その1
その2
その3

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『巨人族の逆襲』第4回:その3

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 というわけで“栞”の騎士アラムの案内でエイヴォンの塔に向かった。塔に近づくにつれ、戦時下でそれなりにすさんではいるもののどこか学究的な雰囲気の残っていた街路が、どうしようもなく荒れ果ててきた。具体的にはむごたらしく引き裂かれた死体がそこここに散らばってカラスについばまれ、その間に骨だの腐った死体の残骸だのが散乱しているのである。
 「いつまたエイヴォンが出てくるかと恐れて、誰もこのあたりに近寄らないものですから」
 アラムがひとりごとのように呟いた。

 そうして、その先に、その黒い塔はあった。
 12階建てです、6階と12階に研究室があり、エイヴォンは最上階にいると思います。中の様子はこれ以上は私は知りません。どうぞご武運を。

 というわけで踏み込んだ。
 魔法に詳しい上、いざとなったら扉を蹴破ることもできるアシュレイが先頭に立った。

 魔法の罠を外して難なく2階に上った。
 気をよくして3階に入ろうとしたら、扉から66本の黒い矢が飛び出してきた。どうやらからくりの仕組みを間違ったらしかった。
 なので4階の扉は蹴破った。もちろんアシュレイが、である。

 そうしたら中にスフィンクスがいた。
 スフィンクスが何か言う前にアシュレイは「にんげん」と呟いた。それをじろりと見たスフィンクスは、そなたたちの求めるものとその理由について説明してみせよと不機嫌そうに言った。そこで滔々と演説をした。恐れ入ってスフィンクスは私を通した。次はザンギエフが筋肉を誇示し、恐ろしい顔をしながら俺たちを通さないと恐ろしいことが起きるぞと脅しつけた。スフィンクスはまた鼻をならしてそっぽを向いた。
 そこへすかさずパラディグーム卿が踏み込み
 「答えは少しも知り申さぬ。だがわれらは前に進まねばならぬのです」
 そう言ってにっこりと微笑んだ。スフィンクスはその笑顔を見た瞬間、顔を赤らめ、背後の扉を開け放った。
 蓼食う虫も好き好きとはよく言ったものだと思った。しかしザンギエフは、儂のところの村長そっくりなふうを見てもびくともしないあのスフィンクスの胆力は大したものだと、妙なところに感心していた。村長がいかに恐ろしいといってもザンギエフが真似られる程度なのかと問うと、とんでもない儂が真似られるのは村長の一番機嫌の良いときの顔で、しかも一瞬だけだが、村長はあれがずっと続くのだと当然のようにザンギエフは答えた。まったくとんでもない話だった。
 そうやって5階に上り、5階から6階への階段も苦もなく通り抜けた。
 
 6階の扉を開けるとそこは小さな部屋になっていて、そこに女死霊術師エイヴォンがいた。今回は黒い分厚いローブをきちんと着込んでいる。が、見てすぐわかる、幻影だ。何しろローブのほうではなく身体が半ば透けているのだから。

 「よそ者が。私の研究室を荒らすなら命はないと思いなさい」
 台詞には意外性はなかったが、見た目は特筆に値した。真っ白な肌、そして丈なす白髪。こちらをひたと見据える真紅の瞳。精魂篭めて造られた人形のように整った顔立ちともあいまって、その白子の女はこの世のものとも思われぬぞっとするような気配を漂わせていた。そうして身じろぐたびにちらちらとローブの袖から見え隠れする白い腕にきざまれたのは……無数の傷痕?
 
 エイヴォンの姿を見たとたんがたがたと震えだしてアシュレイの後ろに隠れようとするザンギエフと、私は美少年か美青年、それも人間のそれにしか興味はないので勘弁してくれといかにも自尊心を傷つけられたように叫ぶエイヴォンの幻影を興味深く観察していると、
 「あーお嬢さん。それがし思うに人の身体というのは父母からさずかったもので傷つけてはいけない」
 パラディグーム卿が突然、いかにも場違いなことを言い出した。が、途端。
 「父のことは言うな!」
 かっと目を見開き、口いっぱいに叫んで幻影は掻き消えた。人の家庭の事情に口を挟むのはそもそも礼儀にもとるし、さらにダンピールの家庭が複雑でないわけはないから、ずいぶんと悪いことを言ってしまったのかもしれなかった。それはそれとして件の幻影は通り一遍の警告のためだけにでてきたのだろうか。

 そして、塔に入る前に聞いたことが正しければ、この階はエイヴォンの研究室になっているはずだった。おそらく幻影が背にしていた扉の向こうが研究室になっているのだろう。そう思っているとザンギエフがいち早く扉の前へと歩を進めた。アシュレイが声を上げかけたが止める間もなかった。部屋の隅の何かの仕掛けが作動して、部屋中を炎の嵐が吹き荒れ、ザンギエフは盛大に火傷を負った。とりあえず剣呑なのは間違いなかった。最初は火だったがあの女の得意技は死霊使いだ、踏み込む前に死霊避けの霊薬を飲んでおいたものかと誰かが言ったが、扉に耳を当てて向こうの様子を伺っていたパラディグーム卿が「うむ。飲む必要はあるまい。この扉のむこうに敵のおり申さぬは明白」と断言したのでそのまま行くことにした。なにしろ霊薬の数は限られているのだ。

 ザンギエフとパラディグーム卿が扉に取り付き揺さぶると、蝶番ごと扉は取れた。
 そしてその向こうには、やたら爪の長い巨大な骸骨が2体、ひっそりとうずくまっており、扉が取れるとむくりと首をもたげてこちらをひたと見据えた。うっかり忘れていたが、死体は動きさえしなければ静かなのは道理なのだった。
 「ボーンクローだ。死にぞこないの一種なのはたしかだが、でかくて爪が長くてすばしこい。つまり厄介だ」
 アシュレイが吐き捨てるように言って、剣を構えた。

 確かに厄介だった。
 なにしろ遠くにうずくまったまま、爪だけを凄まじい勢いで繰り出してくる。こちらの剣先は届かぬのに、その爪のほうは易々とこちらに届いてしまうのだ。が、
 「妖法先読−−ははは、そう来ることはわかっていた!」
 2体めの爪が伸びてきた瞬間、それを払い除けてパラディグーム卿は叫んだ。この卿は騎士なのか、それとも術使いなのか時々わからなくなる。なぜと言うに、卿が槍を構えながら“妖法○○……”と声高に唱えると、相手の剣先はふらふらと揺れ、或いは空に弾かれてあらぬところを薙ぎ、そうしてできたおあつらえ向きの隙に乗じてザンギエフやアシュレイが飛び込むのだ。
 が、狭苦しい部屋の中だと勝手が違うのか、飛び込んだザンギエフの斧もあらぬところを薙いだ。そういうこともあり申す、と卿は励ますように声をかけた。

 これは近づいてどうこうできる敵ではない、私の出番かと身を乗り出しかけたとき、壁の向こうを走るなにやら不気味な乾いた足音を聞いた。視線をそちらに投げた瞬間、私は凍りついた。全員がこっちを見ていたから、きっと間抜けな悲鳴でも上げたのだろう。そこにいたのはスケルタル・アーケイン・ガーディアン……別名“魔術師殺し”。4本生えた腕のそれぞれに武器を握った骸骨というだけでもおぞましいのに、こいつは秘術のわざが発動した瞬間、術師のもとに滑り込んできて手に持った武器で滅多打ちにしてくるのだ。もちろん勝ちようはある――状況次第だが。術の気配を嗅ぎ付けて走りよって来ると言っても限りがある。充分離れたところから魔法のありったけをたたきつければいい。だが、この狭苦しい部屋の中では――

 私は息を殺して棒立ちになったまま震えていた。
 「ああ、なんとかいたし申す。それまではどうかそのまま」
 パラディグーム卿の声が耳に落ちた。
 「妖法血煙り街道−−さあッ! 行くがよい! 道はあいておるぞ!」
 ずるり、と爪の化け物が引きずられるように動く。引きずり回されるそれに吸い寄せられるように、アシュレイの剣、ザンギエフの斧が唸る――のを、私は夢の中の映像のように見ている。ちょっとでも動いたらあの恐ろしい4本腕の骸骨が私の隣に滑り寄ってくるのではないかと思えてならないのだ。が、次いで
 「妖法誘蛾光−−うぬらはこの槍の光から目をそらせぬ。さあ来るがいい」

 急に目の前の霧が晴れた。卿の槍が眩い光を放ったかに見えた。そうしてその光に吸い寄せられるように、骸骨どもがずるりと間合いを詰める。そのぶん皆の剣先が連中に届くようになる。そうして、おお――今ならばもう私は恐れることはない。4本腕の化け物は卿の槍の穂先の光に惑わされるように、頼りない足取りでふらついているのだ。もちろん許された時間は限られている。大急ぎで火球を叩き込み、ついでに惑わしの術をかけて、ボーンクローに4本腕の怪物の背中を思い切り抉らせた。やるだけのことはやったので、後はまた彫像のマネゴトをしていた。いつ4本腕の怪物が私に気付かないとも限らない。

 戦いは長引いた。
 恐ろしいことに、ザンギエフの斧がまったくと言っていいほど――いや、まったく敵に掠りもしないのだ。自ら切りかかっても駄目、パラディグーム卿が敵の隙を誘っても役に立たぬ。せせこましい塔の部屋の中では足を封じられたも同じこと、縦横無尽に戦場を駆け回るのが持ち味のザンギエフには辛かったのかとも思えたが、それどころの話ではない。思い切り斧が空振りした脇でアシュレイの剣がどうやら骨の化け物を1体倒す――「この塔は悪い場所だ」そう、ザンギエフは呻いた「しかもさっきから身体が重い。ひょっとしたらあの女が儂を見ているのではないか」
 そんなこともあるかもしれない、いや、あるのだろう、と私も背骨の冷える思いをしながら小さく頷いた。ただ、ザンギエフに注がれている視線の種類にはいろいろと議論の余地がある気はしないでもなかったが。

 結局パラディグーム卿とアシュレイのほぼ二人だけで、散々苦労しながら3体の骨の化け物を片付けた。私も例の化け物が卿の槍に気をとられている隙にいくつか術を飛ばしはしたが、まぁ、たかがしれている。そうしてザンギエフの斧はとうとう最後まで空だけを斬り続けた。
 ともあれ、化け物どもが片付いたので先に進む前に研究室を調べた。エイヴォンの手記でも見つからないかと思ったが、あの女、記録はすべて自分のすぐ手の届く範囲に置く主義らしい。代わりに相当量のレシディウム――魔力の結晶体が見つかった。行きがけの駄賃というと聞こえは悪いが、ともあれあの女とは敵対しているのだ。見つけたものをこちらのために使わせてもらうのも道理というものだと口の中で呟くと、見つけたものはすっかりこちらの荷物の中にしまいこんだ。


(第4回はこんなところでした)


このシーンの裏側。
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2011年07月17日

『巨人族の逆襲』第4回:その2

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 パラディグーム卿が巨人の間合いの懐に飛び込み、今にも乱戦にもつれ込もうという一瞬、私は軽く指を鳴らした。もっと混乱すればいい。
 向かってきたパラディグーム卿に対して身構えていたはずの巨人が目にも留まらぬ速さで振り返りざま、振り抜いた棍棒は隣の巨人のこめかみをきれいにぶん殴った。殴られた巨人は呆然としていたがやおらさっきまでの友人につかみかかる……ということはなく、こちらを見て唸り声を上げた。ふうん、つまんない。

 その後はどうということもなく殴りあいになった。ザンギエフの大斧が巨人を滅多打ちにし、そこにパラディグーム卿の槍が唸りをあげる。破れかぶれになった巨人が棍棒を振り回す。今度こそ小うるさいちっぽけな連中――具体的にはパラディグーム卿の胴体を捕らえたと思った一撃は、アシュレイの剣先が小さな円を描いた瞬間、捩れた軌跡を描いて思い切り仲間の背骨に食い込んでいる。瞬く間に一匹が倒れた。泡を喰って逃げ出したもう一匹は見逃しても良かったが、状況からしてこの世に巨人は一匹でも少ないほうがいいので、凄まじい勢いでザンギエフが後を追った。脚を二本とも斬り飛ばされて巨人は死んだ。

 そうして状況からして少しでも資金は多いほうがいいので、巨人の持ち物を探った。
 が、攫ってきた牛を焼いて食べる程度には文明化されているにもかかわらず、巨人もオーガもびた一文持ってはいなかった。それはもうあきれるほどだった。銅貨いちまい、くず宝石ひとつないのだった。代わりに巨人の袋の中に入っていたのは死体と、そして死体に押しつぶされかかっている生きた男だった。
 「なんとまあ、巨人の喰い残しか」
 ザンギエフが呆れたように叫ぶと、男は命を助けてくれたことに礼をいい、今度からそのように名乗ると言った。それから命の恩人に礼がしたい、なんでもするといった。職業を聞くと牛飼い兼農夫だという。少し考えてからアージェントに行って炊事を手伝ってほしいと頼んだ。これであの街に戻っても、自分で料理をせずとも温かい食事にありつける。



 そこから転移門まではすぐだった。なので、すぐにマルドゥーング近くの転移門まで飛んだ。
 マルドゥーングまでは何ごともなく着いたが、そこからが厄介だった。学院はおろか街に入れない。門は堅く閉ざされ、話のわからなさそうな門番が頑張っている。4人がかりで押しかけたら、私以外の3人とその門番の間で、押し問答どころでは済まないことが持ち上がりそうだったので、3人には口をつぐんでいるように言い渡して門番のところに行った。大変不躾な目つきでじろじろとこちらを見ながら誰何してくるので、西域の堅砦からそなたたちのしでかした不始末の始末をつける手伝いに来たのだと答えた。たちまち険悪な空気になったが、アージェントの水鏡で見た事件の見たままを言ってやり、お前では埒があかないから話のできるものを連れてくるようにというのをもっと丁寧な言い方で言うと、門番は薄気味悪そうに私を見たあと、走っていった。

 やがて、ローブの下に鎧を着込んだ男たちがぞろぞろとやってきて、もう少し礼儀正しく誰何して寄越したので、同じことをもう少し丁寧に繰り返した。西域の堅砦より参りました。アージェントはもとより、この世界に住むものはみな、巨人族と精霊の連合軍の襲撃を受けています。しかしそれを
知った時、水鏡がより恐ろしい光景を映したのが、ここ、マルドゥーングでのことでした。巨人族を迎え撃つ前に手を打たねばならぬ内憂を除きに、我々はアージェントより参りました。

 「それはかたじけない、が……」
 我らは絶対図書館を守る“表紙”の騎士団、そして我はその中央なる“栞”の騎士アラム――そう名乗った男は、訝しげに私たちに視線を投げた。
 「銀のクロークがないことを訝しんでおいでですか」
 可能な限りの穏やかな笑みというやつを浮かべて私は言った。
 「そう、ないのです。アージェントは時の流れの中でいったんその力を失い、ただひとりの守護者とその近習のみが砦を守っていました。そこに私たちが招請されたのです。しかし、一度その力を失ったアージェントには、もはや私たちを砦の騎士と証だてるための武具を鍛え、白銀のクロークを織り出すだけの材料は残っていなかったのです。
 私たちも、ただあなた方を救うことのみを目的として参上したのではございません。あの死霊術師を封じ得た暁には、私たちを証だてるためのスカイメタルをお分けいただきたく存じます。そして敵うならば図書館の本の閲覧許可も……でもこれはあなたがたの損にばかりなる話ではないと存じます。なにしろ私たちはみな巨人族の襲撃に苦しんでおり、そのためには……」

 「承知いたしました」
 さすがに図々しいことを言い過ぎたかと少し言いよどんだところを、アラムは引き継ぐように答え、軽く会釈してよこした。さすが、偏屈な魔術師の集団と付き合い慣れているだけあって如才ない。
 「たしかにスカイメタルは我等が学舎の宝物庫に納められております。あの死霊術師エイヴォンを取り押さえ、封じるのに力を貸して下さったなら、要り用なだけお分けしましょう。また調べ物も。ご自身でお調べがつかなくとも、図書館にはその道に通じた者たちが数多くおります。きっとお力となれましょう
 さて、そこで死霊術師エイヴォンですが……」

 アラムが言うには、件のエイヴォンという女はヴァンパイアと人間の間に生れたダンピールで、死者の血を宿すが故か死霊術に並々ならぬ才を発揮したが、次第次第に人道の範囲を踏み外すようになてきたので塔に封じられていた、それがうっかりと解き放たれてしまったものだから、これまで幽閉されていた憤懣をさんざんにぶちまけた挙句、今は塔に立てこもり、むしろ今となっては巨人族よりもエイヴォンのほうが学院の憂いとなっているのである――ということであった。
 何か気をつけねばならぬことはあるかというと、
 「決して止めを刺さないでください」
 そう、アラムは言った。

 何でも、エイヴォンはリッチとなるための経箱を既に完成させているのだという。そしてそれをどこかに隠しているのだ、と。
 「あの女が経箱を作り上げたのまでは調べがつきました。が、どこに隠しているかはとうとうわかりませなんだ。ですから、あの女は決して殺さないで下さい。殺したらすぐさまリッチになって、余計手におえなくなるだけなのです。生身のまま縛り上げ、私どもを呼んでください。そうすれば、まだ封じることがかないます」

 「しかし、それでは、我々が止めを刺さずとも、その女は自らリッチとなることができるのではないか?」
 アシュレイがいかにも解せないというふうに声を上げた。
 「そうです、が、あの女はそうはしないでしょう。いずれは死ぬ、ならばそのときにリッチとなればよい、それがあの女の考えです。この世には――生身でこそ享受できる楽しみも数多くありますから。そうしてあの女はそのような楽しみごとをことのほか愛していますから……例えば、見目良い殿御とか」
 アラムは随分と品のいい言い方をしたが
 「では、村一番の美しい筋肉を持つといわれた儂の危機ではないか!」
 ザンギエフが悲鳴を上げると、さらに品よく目を伏せた。偏屈極まりない術者たちとの付き合いで培った礼儀はここでもこの上なく発揮されていた。




このシーンの裏側。
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2011年07月13日

『巨人族の逆襲』第4回:その1

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。


























 一晩休んで、これからの荒事に備えた。
 すぐにマルドゥーング魔法学院直近の、学院を訪れるものがよく使う移動用魔法円に飛ぶつもりだったが、そうもいかなかった。第一に手元不如意で儀式のために必要な品々が不十分、第二に外患(巨人族の軍勢である)内憂(調子に乗った死霊術師である)に痛めつけられた魔法学院は、おいそれとよそ者が入り込めないように近隣の魔法円を片っ端から封じたらしく、秘術で繋ぐべき経路をいくら辿っても、魔法学院からやや離れた、ちっぽけな魔法円にしか出られないようなのである。しかもその魔法円に出られる“入り口”も、アージェントからしばらく歩くような場所にしかないときた。こちらの手持ちが潤沢であれば相応に儀式を構築し、とっとと学院に乗りこむこともできようが……

 首をひねった挙句、どうにも仕方ないので、一応頭脳労働ができそうなものはアージェントに残して書庫で調べ物をする役を任せ、魔法学院で気の触れた死霊術師とその取り巻きを相手するのに向きそうなものが3人、そして私という小勢で乗り込むことになった。ところが人選を済ませてみると癒し手がいないのだった。小さい魔法円しか使えないので人数の上限は限られる。荒事の得意をひとり残して司祭が誰か同行するべきという話になりかけたが、しかし神の恩寵が繋ぐ魂の緒は、金と秘術で縒り合せることも可能なのである。不如意な手元のありったけをはたいて、私たちは霊薬の小瓶を買い込んだ。傷薬に死霊よけ、果ては感覚を研ぎ澄まし手元を確かにする水薬まで。軽くなった財布の中身をどう補充するかと一瞬考えたが、ままよ、何とかなるだろう。

 というわけでアージェントを出たのは4人。
 ドワーフの闘士ザンギエフ。
 雷撃を纏う兵士アシュレイ。
 次元遍歴の騎士パラディグーム。
 そうして私。

 あの橋を渡れば目指す魔法円、というところで、橋の向こうになんとも古式ゆかしいものを見た――多少大き過ぎたが。
 いかにも山賊然としたオーガが5匹、頭目らしき丘巨人2匹を取り巻くようにして牛を炙り焼き、ばりばりと貪り食っていたのである。丘巨人どもはもう十分に食事を済ませたものらしく、折った骨を楊枝代わりに歯をせせっている。見れば巨人の片方が腰に下げた袋の口からは人の手がにゅっと飛び出している……しばらく観察するがぴくりとも動かないのは、これは手遅れと言うことか。
 「ここで私たちが戦ったところでできることはありません、あの連中は身体が大きい分鈍いのです、こっそりと抜けましょう」
 言いかけた時には時すでに遅く、騎士パラディグームが大声を張り上げ名乗りを上げていた。これでは丘巨人といえども聞き逃すはずもない。山賊どもは一斉にこちらを振り向き、そうして声をそろえてこう言ったものである。
 「この橋を渡りたくばひとり置いていけ」
 「おお、わしらは先を急ぐのだ。わしひとりいなくとも残り3人が居れば用は足りよう、わしがあんたらの昼飯になってやろう、さあ他のものは通してやってくれい」
 打てば響くようにザンギエフが答えた。ああそういうことは3つ数えてから悲壮な表情を浮かべて言うものだ、そんなに口元に嬉しそうな笑みを浮かべるものではないと腹の中で思ったが、案の定。

 「騙されるものか。お頭、気をつけなきゃいけません。ちっちゃくてすばしっこい奴はわしらの踵を切り裂くし、ちっちゃいくせにむさくるしい連中はわしらの膝の皿をかち割るんだ」
 オーガの1匹がやけにこざかしい口をきいた。それで結局殴り合う羽目になった。

 オーガどもの爪は鋭く重い。3匹のオーガに押し包まれたアシュレイがあっという間に血まみれになる。が、私が見ていたのはパラディグームの槍の穂先ががかすめた瞬間にあっけなく倒れた化け物の姿だった。
 「見かけ倒しの、雑魚のくせに」
 その場から一歩も動かずに私は指先から魔法の矢を飛ばした。狙いを外さぬその矢が触れたオーガはしゃぼん玉のようにはじけて飛んだ。
 「ならば貴様らはこれでも喰らえ」
 整った頬に滴る血を拭いもせずアシュレイが囁いた。雷光の剣が無造作に目の前のオーガの胸を突く。骸からさらに稲妻が弾け、両隣のオーガを撃った。アシュレイの前に壁となって立ちふさがっていた3匹のオーガは、その陣形が災いして一瞬のうちに3つの死体と化した。

 丘巨人どもは目を白黒させていたが、急に棍棒をひっつかんで立ちあがった。
 が、もう遅い。橋の向こうにいたはずの“ちっちゃくてむさくるしい奴”の斧がうなりを上げて巨人の膝にめり込んでいた。ついでパラディグーム卿が、アシュレイが、またたきひとつの間に死体と化したオーガを踏み越えて迫ってくる。




 このシーンの裏側
posted by たきのはら at 13:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第4回:前口上、ならびに時候のいいわけ

 ええ、そりゃもちろんわかってるんですよ、こういうこといちいち言うの見苦しいって。
 でも、帰宅した途端に寝つぶれてるのはどうしようもない。
 ……というわけで、『巨人族の逆襲』第4回、遊んだのは先日の週末なのですが、レポのほうがずるずると遅れております。

 ちなみに2週間前はDMが夏風邪で寝込んだため『巨人族』オンセはお休み、代わりにオーケストラのPLがDMでデルヴが走っていろいろと阿鼻叫喚な光景が展開されていたとかなんとか。

 それにしても暑い。
 セッションは夜なので節電の時間帯からは外れているとはいうものの、ひとりの部屋を冷やすのにエアコンのスイッチを入れるのもなんだか申し訳なく、こちらは氷枕を抱えながらPC前に。ちなみに数か月前は同じ水枕に熱湯入れて湯たんぽにして抱えてましたが今となっては湯という字を見るさえ暑苦しい。別の誰かは、マイクがやたらバタバタいう音を拾うと思ったら、「俺の部屋にはエアコンがないので、そのへんに落ちていた恋姫無双の団扇で扇いでいる」とかなんとか。

 音声チャットができるようになったんだから、あとはウェブカメラを各自が導入して、ついでに誰かがとんでもないこと口走ったらスイッチひとつでそいつの身体に電撃を飛ばせる装置をつけたら完璧だよね、などと言っていたのですが、やっぱりカメラは軽々しく導入すべきではないような……

 
posted by たきのはら at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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