2011年06月14日

隙間時間オンセの会『巨人族の逆襲』第3回:目次

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はリンク先にはいらっしゃらないほうがよいと思います。


6月11日(土)22:30〜26:00ぐらいまで
第1章・第3場

今回はロールプレイ中心の情報整理パート。
今回から目次には第○章・第○場、というのをつけることにしました。
『巨人族の逆襲』は遊んでいるけれども先行している、という方が読んでくださってるみたいなので……

一番面白いのは妄言の部分なんだけど、その場にいないとなかなか伝わらないというか伝えきれないのが我ながら悔しかったりもったいなかったり。

というわけで目次。

前口上
その1
その2
その3
その4

これでようやく第1章がホントに終了。大休憩を取って、次回から第2章です。
posted by たきのはら at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ・目次 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第3回:その4

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。


























 オバナーを案内に立て、霊園に踏み込んだ。ここが細工師クオールの霊廟ですと指し示すところに来かかると、すぐにぞっとするような冷たい風が流れ、明らかに幽霊であるとわかる男の姿が墓の上に浮かび上がった。ああ、彼も死んでしまって今やこんな姿かと、アシュレイがぽつりと呟いた。
 「私だクオール――覚えているか」
 「おお、アシュレイ、此度は無事に作動したか」
 造り手と被造物の邂逅、となる前に、突然二人の間に黒い影が割り込んできた。顔の半分が骨と化した幽霊戦士であるが――その肩には、おお、アージェントの勇者の証であるという銀のクロークが翻っている。
 「わしらの眠りを覚ますのは貴様らか」
 およそ勇者らしくない言葉を、その幽霊は発した。人間、死んで長く経つと性格が悪くなるものだなと思った。
 「勇者への挨拶もなしか、礼儀知らずめ」

 まったく呆れた幽霊であった。オーケストラが形の良い眉を顰め、なるほどあなたにそのような大きな口を叩かせているのはその銀のクロークかと呟いた。ザンギエフは一歩下がると冑の角を突き出すように前傾姿勢を取った。よし殴ろうと嬉しそうにウルリクが言った。パラディグーム卿は静かに剣の柄に手をかけた。古き戦士の幽霊は少し怯んだように見えた。ザンギエフが組打ちの構えを取ってずいと一歩前に進み出た。古き戦士の幽霊は数歩後ずさった。
 「よしたほうがよいのではないか? 私の記憶にある勇士たちに彼らは劣らぬぞ?」
 無表情にアシュレイが言った。古き戦士の幽霊は消え失せた。

 そこでようやくクオールと話ができた。
 しかしスカイメタルはこの街にはもう存在しないとクオールは言い切った。オバナーの身体の中に勇者の証たる武具を作り上げるための種は存在する、しかし武具を形作る金属はここにはない。ただ、一箇所、ある場所を知っている、と。

 マルドゥーングという、秘められた知識をたたえた図書館がある。そこに一つの塔があり、塔の主はエイヴォンという名の力を持った吸血鬼の死霊術師。その者がスカイメタルを所持していた――そのものが未だ存在するかは知らぬ、しかし何ものかに倒されておったとしても、あの塔がそう易々と陥ちるとも思えぬ。スカイメタルはそこにあるだろう。

 「マルドゥーング……魔法学院のことですか?」
 私が問うと、クオールは呆れたように笑った。
 「確かにマルドゥーングは偉大な図書館だ。しかし図書館は単に書物を集めただけのもの、とても学院などというものではない」
 「では、その図書館で研究するものたちが集い、そこに学院が育ったのです。あなたはこの世を去って久しい。貴方が眠る間に命あるものは様々なことをしたのです」
 それなら筋が通る、とクオールが言うのを聞きながら、そういえばマルドゥーングの奉じる知識の神の名は絶対図書館という、図書館の概念が神格化されたものではなかったかと私は考えていた。

 「待ってください、ひょっとしたらその学院も今や襲われているのではありませんか」
 突然、オバナーの叫びが耳を打った。ありうる話だ。
 「泉へ参りましょう、クオールどの、感謝いたします」
 泉に着くと、オバナーは手にした杖を打ち振った。するとたちまち水面には、巨人と炎精の連合軍に襲われる魔法学院の有様が浮かび上がった。居並ぶ魔法使いたちが一斉に火球を放つと、巨人が数体、火達磨になって転がった。しかし巨人族の投石が始まると、今度は魔法使いたちが防戦一方、またたくまに大岩の下敷きになってゆく。怒号と悲鳴が聞こえぬのがありがたいと思えるほど、水面の映像は酸鼻を極めていた。

 ついに魔法使いの一人が戦列を離れた。走っていく先には黒い塔。
 魔法使いは黒い塔の門扉のかんぬきを外し、そこに自分の指を食いきって溢れる血を注ぎかけた。と、塔が脈打った。水面の揺れがそう見せたのではないと断言できるほど、禍々しい脈動だった。そのまま門が倒れ、哀れな魔法使いを押しつぶした。そうして開いた黒い塔の中からあふれ出たのは無数の骸骨ども。骸骨たちは巨人どもにつぎつぎと飛び掛ってゆく。叩き潰されようが踏み潰されようが向かってゆく。偽りの命を得た死者たちは無数に塔の口から吐き出されてくるのだ。そうして骸骨たちに混じって風のように駆けだしてきたひとりの娘。素裸にクローク一枚だけを纏い、手近にいる命あるものを、当たるを幸い食い殺してゆく。嬉しげに喉を反らせ、笑いながら手を述べ、無造作に犠牲者の喉首を長い爪で掻き切っては血飛沫を心地よさげに浴びるのだ。犠牲者は巨人だけに限らない。手近にいれば魔法使いでもよい。

 「ああ、これはどちらが敵なのだろうな」
 アシュレイが呟いた。何の表情もない声だった。
 「あー……見捨てて置くわけに行き申さん。今すぐ救いに行き申そう」パラディグーム卿が言った「マルドゥーングに行って巨人どもを成敗するは腕を磨くによかろう。人を救えればさらによかろう」
 「順番が逆です」
 呆れたようにオーケストラが言った。やはりこの娘が一番まっとうなのであろうと私は思った。それは口に出さずに、代わりにこう言った。 
 「そうと決まれば、皆様どうぞ身支度を。儀式の準備が整い次第、マルドゥーングへ飛びます」

 まずはマルドゥーングに行く。調子に乗り過ぎた死霊術師を懲らしめ、魔法の使い手たちを救い、そうしてスカイメタルを手に入れる。ついでにアルブレヒトのところでうっかり聞き忘れた、神の鎖に関する情報も手に入るだろう。何しろ相手は絶対図書館を奉じる場所だ。調べ物には不自由しまい。
 それから爪の一族を探しに行く。マルドゥーングで充分な調べが付かなければ、アージェントに戻ってからでも巨人の軍勢の全容について調べねばなるまい。

 数え上げながら小さくため息をついた。
 やはり私では知恵が上手く回らぬ。アルブレヒトに特製のマスクをこさえてやる算段も、本気で考えねばならぬだろうか。


(第3回はここまででした)


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第3回:その3

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 というわけで、妖精界はアルブレヒトの塔の1階の転移門に出た。いつもならこのような行き来は後詰の魔法使いの誰かにさせるのだが、今回はこの手の儀式を使えるのが私だけなのだから仕方がない。転移の儀式の執行に必要な貴石類については手持ちがなかったが、オーケストラから借りてどうやら間に合わせた。アージェントに戻るための儀式はオバナーから教えてもらった。儀式に必要な材料も借りた。どうにもみっともよよろしくない。

 アルブレヒトの塔の転移門の間は、凄まじい烈風が常に吹き荒れている。遠来の客人の身体や衣服にはどんなゴミや汚れが付いているとも知れぬ。万が一それが塔の主の命を危険にさらすような代物であってはならぬというわけで、塔の居住区に入るためには身に付けた塵をすっかり吹き飛ばしてしまわねばならぬのだ。
 その後私はようやく塔の最上階に招き入れられ、“西域の堅砦”アージェントの来歴と現状を事細かにアルブレヒトに報告した。

 いちいち頷きながら私の言葉を書き留めるアルブレヒトに、私は逆に質問した。そんなわけで“神の鎖”の欠片は奪われてしまった。なんとか取り戻すなりほかの欠片を手に入れるなりせねばならぬが、手掛かりがない。せめて盗人の正体なりともわからぬものかと思うのだが。すると一瞬考え込み、そしてアルブレヒトは答えた。

 「それは……フォスではないだろうか。元素操術師ブレヴェン・フォス、マルドゥーング魔法学院の俊英だった。しかし力を手に入れるのに逸りすぎたか、実験の失敗で盛大な人死に事故を起こし、学院に幽閉された。その後、何ものかの手助けを得て脱獄、以後、行方知れず」
 力を切望すること激しく、無茶な研究を重ねた揚句魔法学院の建物一棟を丸ごと氷漬けにする事故を起こしたのだと言う。そのとき運悪くその建物の中にいたものは一人残らず死んだのだそうだ。危険人物として幽閉されたが脱獄、元素の研究に血道をあげていたから、巨人族と精霊たちのもとに走ったとしてもおかしくはない。

 わかった、ではそいつに弱点はないのか。そう尋ねるとアルブレヒトは薄く笑み「ヒューマン以外のものになったという話は聞きませんよ」と言った。つまり首を刎ねれば死ぬ、心臓を突き刺せば死ぬ、そういうことだ。もう少し情報はないのかと食い下がった瞬間、にわかに外が騒がしくなった。見れば、人間たちの世界にあったはずのエラドリンの宮殿が、さんざんに打ち壊され、ところどころ炎上しながら妖精界に転移してきたところ。そしてその打ち壊され方にはなにやら思い当るところがあった。

 「まさか、あの城も巨人族の襲撃にあったのでは」
 これにはさすがにアルブレヒトも顔色を変え、水晶球を取り出すと、私が旅していた大陸の主だった都市を次々と映し出した。巨人族の襲撃にあっていない場所はひとつとしてなかった。
 「なんと、アージェントを守るだけではどうにもならないではないか」私は叫んだ「すぐに巨人族の軍勢の全容を調べ上げなくては」

 「だったらアージェントに戻るのが一番よいでしょう。これまで次元の破れ目をつくろい守り続けてきた場所です、情報はそこにこそあるはず」
 「おお、確かにその通りだ。ああ、私だけでは知恵が回らぬ、どうか一緒に来てはくれないだろうか」
 言った途端アルブレヒトは顔をしかめ、私を危険極まりない空気から守るマスクでも拵えてくれるというのならと言った。どうやら琴線に触れてしまったらしい。なんとかそのようなマスクを拵える算段も考えてみるからと言い置いて、早々に退出した。



 アージェントに戻り、盗人の正体を告げるのもそこそこに、大陸中が巨人族の襲撃を受けているということを話した。となればますますこの地を守ることが重要になるとオバナーは言った。次元の裂け目は世界の方々に出来ているかもしれないが、世界同士を隔てる壁が最も薄いのはアージェントのあるこの場所なのだから、と。そもそも巨人族はこの世界に元から住みなすものであるからどこに現れてもおかしくない。しかし次元の裂け目を通って悪しき元素が自在に出入りするようになってしまっては、各地の戦況はより悲惨なものとなるだろう。

 というわけで、腰を据えてこの砦を守ることにした。

 では、我々に何ができるだろう。
 もう一度数え上げた。

 まず爪の一族を探し出して呼び寄せ、この地の守りを強めること。
 それから巨人族の軍勢の全容を調べるあげること。

 「ああ、それにしても」と、オバナーは嘆息した「こうして英雄たちがこの砦のために立ちあがってくれているというのに、既にこの地にはあなた方に差し上げるべき英雄の証がないのです」
 
 もので証だてなくともわしは自分の技で自身を証だてられるぞ、と、やや鼻白んだふうにザンギエフが言った。なにしろわしの師匠の言うには、我が魂の宿るのは、ほかでもないいくさの技の中にこそ、というほどのものらしいからな。
 確かにそれはそうですが、その英雄の証は特別な鉱石を鍛えて拵えた特別な武具や装具で、特別な力をもつものなのですとオバナーはさらに言葉を継いだ。私はその作り方を知っている、しかしもう材料がない。それがいかにも残念だ。

 どのような材料なのだとザンギエフが問うた。特別な材料と言われ、ドワーフの血が騒いだらしかった。
 「スカイメタルと呼ばれるものです。天空から飛来する天の鉱石です」
 おお、それなら知っているとザンギエフは即答した。わしの村の真ん中に、大昔に天から降ってきたとかいう何やら奇怪な岩が突き刺さっている。しかしそれは村長が後生大事にしているものなのでここで使うわけにはいかん。それに手を触れようものなら、わしの兄弟子と兄弟子と兄弟子と師匠が地平の彼方から突撃してくるからのう。

 突撃される前に説得すればいいだけの話ではないかと思ったが、しかしザンギエフをさらに極端にした生物の複数名を前にしてどのような言葉を連ねればいいのかとんと思いつかなかったので、やはり品よく黙っておくことにした。それにスカイメタルの所在を知る者がこのアージェントの中にいるとオバナーが言葉を継いだのが聞こえたのだ。この街の住人に尋ねるほうが穏当に決まっている。

 「それは細工師クオールと言って、私を作った人です。大昔に亡くなって、今はこの街の霊園に眠っています。が、心残りがあるのか、霊園に詣でるたびに幽霊となって現れるのです」

 私はちらりとオーケストラとガーリンを見やった。幽霊なら僧侶の担当だろう。
 「なに、幽霊とて心はあろう。我が神の愛によって説き伏せればなんということもない」
 もちろんオーケストラはこともなげに言い放った。しかし私が思う僧侶の口調とは酷く違っていた。

 が、仕方あるまい。これから先は危険な仕事が待ち受けているのだ。隣の墓場まで行って幽霊と話すだけで特別な道具が手に入るのなら、そうしない理由はない。
 私たちはぞろぞろと霊園目指して歩き出した。


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 18:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第3回:その2

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。



























 では、トリアンは、とオーケストラが訊いた。その娘も長い時をオバナーとともにこの砦で過ごしてきたのか。

 「いいえ」
 そうトリアンは言った。この砦の勇者に仕え、ともに砦を守ってきた爪の一族――人虎、人羆、そして人鷲の、爪をその主な武器とするものたちをそう呼ぶのだと言う――の娘、それが彼女なのだ。彼女の一族もまたかつてこの砦に仕え、そして砦を去った。それが40年ほど昔のこと。しかし砦の物語は一族の中に言い伝えられてきた。それを聞いて育ったトリアンは長じると親兄弟を離れ、伝説のアージェントを目指し、辿りついた。以来、ここにいる。確かに長い時をここで過ごしてきたとはいえ、オバナーほどではない。

 「しかし感心なものだな。わざわざ戻ってきたのか」
 アシュレイが言うと、トリアンはわずかにうつむいた。
 「ええ、白銀の都アージェントには白馬に乗った騎士様たちがいらっしゃる……と……そう物語には……」
 そして、恥ずかしそうに伏せた睫毛の下から、目の前にずらり並んだパラディグーム卿、ウルリク、ザンギエフ、ガーリンを順々に見つめたものである。

 「残念ながらトリアンどの、白馬は喰って旨いものではないぞ?」
 数瞬の沈黙の後、ザンギエフが口を開いた。普通なら足を蹴飛ばすべき台詞だが、何も言わないよりはましに決まっているので放っておいた。トリアンが悲しそうな顔になったところに、パラディグーム卿が真顔になって、あいやお娘御、騎士の騎士たるは馬を有しておるかおらぬかに拠るものではござらぬ、騎士が勤めといたす騎士道の掟を心に持って居るかに拠るのでござると訥々とした口調で諭したので救われた気になった。トリアンの目の色を見ればその言葉に感銘を受けているのは明らかだったが、しかし40がらみの卿は、トリアンの婿君としてはやや歳が行き過ぎているようにも思われた。
 かくなるうえはウルリクを売り込むしかないとオーケストラが不穏なことを言っていた。そうして、ああみえても実は人間であるだの、血がすべて猛毒ということもないだのと口走っていた。私もそこそこ長く生きているほうだが、そのような台詞が婿の売り込みの口上になるのは初めて聞いた。そもそも当のウルリクはというと、ザンギエフが切り捨ててあったバシリスクの死体を目ざとく見つけ、その解体にとりかかりながらいわく言い難い視線をときどきトリアンに投げているのである。エラドリンのウィザードとしての知識を隅から隅までひっくり返しても、娘御に思いを寄せるというよりは、ありていにいえば気違いを見る視線だった。白馬の騎士などと本気で口にできる娘は、アシュレイが男装して寄り添ってやっても大いに嬉しがるのではないかと思ったのだが、皆まで言う前に横腹に電撃を叩きこまれたので口を閉じた。まったく、一番まっとうな提案をしたのは私だというのに。

 ともあれ、無駄口ばかり叩いているわけにもゆかぬ。善後策について話し合うことにした。
 まず、勢いでここに乗りこんできてしまった私たちではあるが、本当にこの砦を守るのに力を貸すのか。アシュレイはそもそもこの砦の防衛のために造られた兵士である。パラディグーム卿とオーケストラは、それは騎士の務めとして、あるいは神の戦士として当然のことであると言い、私は自分の都合で招請状に乗ったのだからそれは契約がなされたのと同じであるということを、もう少し遠まわしに言った。ガーリンは口の中でもごもごと何ごとか言い、ザンギエフはそれをきいて感に堪えないといった表情をし、わしはどこまでもガーリン様についていきますじゃあと叫んだ。なんでもガーリンは興奮のあまり、「変えるかえる世界を変える変えねばならぬ」と連呼していたのだとか。そうして最後にウルリクが「十分に強い敵が用意されているのなら俺に不満はない」といってにやりと笑った。とりあえず、全員に否やはないということだった。

 さて、では、私たちにできることは何か。
 まず、この地を立ち去った爪の一族のもとに行き、現状を説明して砦に戻るよう説得するというのがある、とオバナーは言った。旧帝国が潰え、勇者たちが送られてくることはなくなってしまったとしても、その従者たちなりとも戻ってくればずいぶんと心強い。それにトリアンを案内に立てれば人虎たちが住む場所にはすぐに行きつけよう。できない話ではない。

 もうひとつ、奪われた“神の鎖”を取り戻し、また集めるというものがある。この“神の鎖”は、“暁の戦争”の際にプライモーディアルの王たちのひとりピラノスを捕えて封印する際に、その封印の儀式の焦点具として使われたものだという。それは五つの輪から成る短い鎖であったが、儀式が完成された後、封を解くための解除の儀式に用いられることのないよう、ひとつづつの鉄輪に分解され、そうしてそのひとつがこの“西域の堅砦”に収められた。
 巨人たちはピラノスを解き放ち、それを王として人間の世を攻め滅ぼすつもりだろうとオバナーは行った。鎖は五つの輪がそろわなければ焦点具として機能することはない。巨人どもがすべての鉄輪を集めてしまう前に、ひとつでも“神の鎖”を確保しなければ。

 しかしこれはこれで雲をつかむような話である。そもそも“神の鎖”を盗み取ったものはローブで顔も身体もすっぽりと隠し、正体のつかみようがなかったというではないか。

 「まったくだ。顔も見えぬ技も見えぬ。これだから魔法使いは好かぬのだ。だが、私の一撃、そしてザンギエフの一撃を喰らっても倒れなかったのは、これは珍しいのではないか」
 「黒いローブから血が絞れるほどにはぶんなぐってやったのじゃがなあ。逃げる一瞬だけ、掲げた手の指にはまった指輪が光っておった。にしても技が見えぬのは何とも腹立たしい。何しろわしらに殴りかかってきたのは、奴の手下の火精どもじゃったからなあ」
 「……今、なんとおっしゃいました」
 アシュレイとザンギエフの言葉に、私ははっと顔を挙げた。

 「あなたがたの斬撃に耐え、転移の指輪を使いこなし、そして元素の精を手足のごとく使いこなす……それはヒューマンでしたか?」
 「手ごたえからするとヒューマンだった」

 ならばわかるかもしれません、と私は言った。
 妖精界に、世界中から持ち込まれた知識を頭の中に詰め込んでいる稀有な友人がいます。私をここに寄越したのもその友人なのです。それだけの使い手の人間とあればそこそこに名の知れた者のはず。彼に訊いてみましょう。

posted by たきのはら at 14:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月13日

『巨人族の逆襲』第3回:その1

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。

























 広場に戻ると、オバナーは私たちの無事を喜び、被害が“神の鎖”一点のみに留まったことを不幸中の幸いと言い、そうして英雄らしい働きをしたのだからまずは一休みするようにと言って、私たちを(ひとっこひとりいない)街なかに案内し、一軒の家の扉を開けた。これこそアージェントに一軒だけ残った宿屋で、その名もシルヴァークローク・インというのだそうな。いつか英雄たちが訪れる日のためにオバナーは精魂こめて店を維持していたらしい。店内は居心地よく整えられ、棚には多くの酒瓶が並んでいたが、ざっと見たところどれもこれも呆れるほど強い酒ばかり。するとザンギエフがどこからかジョッキをひとつ取出し、これは魔法のジョッキだから中からいくらでもエールが出てくる、だから酒の呑めない向きはこれで喉の渇きを癒やすといいと言った。エールも一種の酒ではないかと思ったが、ドワーフ相手にそんなことを言おうものなら酷く面倒な破目になるに決まっているので、品よく口を閉じておくことにした。

 それよりも心配なのは、オバナーがどこからかエプロンを取り出してきてごそごそと首にひっかけると厨房に入り、火をおこして鍋を引っつかんだきり突然静止したことだった。どうしましたと言ったらもう気が遠くなるほど長い時間をトリアンと二人きりでいるものだから料理の仕方を忘れたのだと答えた。虎娘のほうを見たら、料理は練習しているのですけど、いつもこんなぬるいスープを客人に出せるかとオバナー様に叱られるのですと言い出した。虎娘だけにどうやら猫舌らしかった。仕方ないので私が食事を作った。

 食事をしながら、この街の来歴を初めてまともに聞いた。

 なんでもこのあたりは次元の壁が薄くなっており、世界の破れ目ができやすいのだという。次元の帳の裂け目からはさまざまなものが漏れ出してくる。良いもののときもあるが、だいたいろくでもないものが、この豊かで美しい世界を侵略しにやってくるのである。だからこの場所に砦を築き、世界の守りとした。砦の守りは帝国の各都市が約定を結び、それぞれの都市が我と我が身を守るためとして選出した勇者たちが務めてきたのだとオバナーは言った。

 「だが、なんということか、いつしか守られることに慣れきった都市は勇者たちを寄越さなくなり、我らは力を失っていったのです」
 「おお、それはなんと。この世界では騎士道が廃れて長いということか」
 「それは誤解でしょう」
 恨めしげに言うオバナー、そして憤るように言うパラディグームに私は告げた。帝国という呼び方に心覚えはあったが、それは史書に残る昔にあった国の呼称。

 「あなたの言う帝国はいったいいつのものでしょう。帝国はもうありません。滅びたのです。今では旧帝国の名が残るばかり。そして旧帝国は崩れだしたらあっという間、あまりにも瞬時に滅びたので、あなたがたのもとに使いを立てることもならなかったのでしょう」
 「ならば仕方あるまい」
 パラディグームは得心したように深々と頷いたものである。
 「身どもはこの世界のことは存じ居らぬが、まことの騎士というものは一つの時代に二人か三人あればよいものじゃ。さらに国が滅び制度が廃れれば、頭数が揃わなくなるのは無理からぬことじゃろう」

 この騎士殿、ものごとをわかっているようで余計面倒にしそうだったので、慌てて言葉を継いだ。
 「それからもう、長い時が流れてしまったのですよ。けれど、この砦のことはいくつかの書物や巻物に記され、私たちの手元にまで記された言葉は届きました。けれどそれは時の流れの中に磨耗し、曖昧模糊としたものと化していました。それがために私はここに来たのです。この西域の堅砦、アージェントの去来を調べるために」
 「おお、それなら帝国は滅びたといえどもあなたがたをこの地に使わしたのだ。ならば私もずいぶん丁寧に説明せねばなりますまい」
 オバナーは大きく頷き、それから宿屋の白壁をじっと見つめた。その目が明るく輝き始めたかと思うと、オバナーの目から映像が壁に投影され始めた。ぽんこつとばかり思っていたが、ずいぶん便利なからくりを仕込んでいるもののようだった。

 この世は決して堅牢なものではない。古い衣服の布地や縫い目がほつれるように、世界と世界を隔てる壁にほころびの生じやすい場所がいくつもある。西域の堅砦アージェントもそのような場所に据えられたもののひとつ。他には“東方の長城”だの“南海の竜城”だのがある。
 西域の堅砦は各都市から集まった勇者たち、そして彼らを助ける“牙の一族”によって守られていた。しかし新たな勇者は来なくなり、それまでに居た砦の勇者たちは戦いで欠け、あるいは年老いて死んで、一人二人と減っていった。アージェントを守る勇者が最後のひとりを残していなくなったとき――驚いたことに、目の前のぽんこつ氏、オバナーこそが最後の勇者だったという――牙の一族はもはやこの地に使えるべき理由なしと判断し、去ることを決定した。そうしてこの街はオバナーを除いては無人と化したのだという。

 私は金属の身体に魂を宿したもの。ならば身体から魂が引きはがされぬ限り、永遠にも近くこの世に存在することができます。ですから私はただ一人、このアージェントを守り続けたのです。

 そうオバナーは重々しく告げた。
 そう、彼の肩を覆うのは、アージェントの全盛期の風景の中、砦を闊歩していた勇者たちがまとっていたものと確かに同じ、白銀のクロークだったのである。
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『巨人族の逆襲』第3回:前口上、そしてセッションログのススメ

 というわけでつい先ごろの土曜日も、オンセで遊んでおりました。今回はわりとロールプレイ成分多めということで、ぶっ散らばるのよりも会話と状況説明がたっぷり。

 そうして、今回初めて、どうやら私たちは過去にネラス帝国やバイル・トゥラスがあった世界ではない場所で冒険をしている、ということが明らかになりました。

 「ここ」は、D16氏のユニーク・ワールドの繍羅(シュウ・ラ)、時を縦糸に命を横糸に織り成され、そこにヒトの営みが刺繍となって紋様を記していく世界……という大仰な説明がセッション中でなされたわけではなく、もう十数年つるんできたグループ内ではおなじみの地名や事件名をDMが口にし、そして「ネラス帝国……っていったか。それ、“旧帝国”としといてください」と訂正宣言が出たということなのですが(そんなわけで、このレポートは時々ひっそり訂正されていたりします。特に見え消しとかはしないので、まあその、残っているものが正史ということで)。

 その瞬間、自分たちが遊んできた、或いはキャンペーン途中で沙汰止みになっているあれこれが、突然「歴史」として、少なくとも遊んでいる私たちにとっては有機的なものとなったわけです。これは嬉しかった。前回パラディグーム卿の来歴をリンクしながら嬉しくてしょうがなかったのですが、今回はこれまでに自分が記録してきた山ほどのセッションログが突然「歴史」「事実」になった瞬間に立ち会えて、これまた嬉しくてしょうがなかったとか。

 キャンペーンだったり単発だったり、セッションどうしのつながりはキャラクター・レベルでは存在しなくても、自分たちの遊んだことや告げられた設定をみんなの見えるところにメモってまとめて残しておくだけで、記憶と記録に裏打ちされた遊び方だってできるんだなぁ、と。

 もちろんメタ的な楽しみではあるし、やりすぎるとセッションAには参加してるけどセッションBには参加してない人をうっかり置き去りにしちゃったりする危険もあるし、ゲーム本来の楽しみとはちょっと別のところにあるものだとは思うのだけれど(というか、私自身それでよく注意される)……

 でも、もし10年遊ぶなら。
 どこかで遊んでない期間ができるにしてもまたいつか遊ぶだろうと思うなら。

 やっぱり記録は残しておいたほうがいい。設定もとっといたほうがいい。
 それはいつか、お菓子についてくるオマケみたいに、ちょっと嬉しいものになるだろうから。

 今まで記録を取ってなかったら今日のセッションからでも残しておくといい。遊んでれば10年なんて(大変恐ろしいことに)すぐ経つから。

 システムレベルでどうことうとかいうんじゃなく、遊んで、記録するというプレイヤーのレベルでこそできる、というか――遊んだ本人たちだけができる「歴史」の作り方があるんだな、と。 

 ……そんなわけで、今回は「裏側」のほうに、過去の資料へのリンクをちょこちょこ置いてみたり。
 やや楽屋ネタっぽくはあるけど……うん、そもそもblogには載せるように書いたものである、ってことでどうぞご容赦を。
posted by たきのはら at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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