2011年05月30日

隙間時間オンセの会『巨人族の逆襲』第2回:目次

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はリンク先にはいらっしゃらないほうがよいと思います。


2011年5月28日(土)23:00〜28:00ぐらいまで?
開始が遅れたりちょっと操作に不具合が出たりとかあって遅れたけど
とりあえず第1回・第2回でキャンペーンの第1章を遊んだという感じ。

第1回がチュートリアルもあって1遭遇しかできなかったので、
今回は少し頑張って戦闘遭遇2回とそうじゃないの1回を入れて
(レポ中では地の文に紛れてるけど、RPと技能チャレンジな遭遇がひとつ入ってます)
今月中に第1章を遊びきりました。そのぶん、まぁ、時間はかかったけど。

2週間に1回のオンセを2回やって1章分を遊ぶなら、
1ヶ月に1回のオフラインのセッションで毎月1章ぶんを遊ぶのと一緒だよね、とか
1ヶ月に1章遊ぶのがコンスタントにできるとすれば、
社会人としてはけっこういいペースなんじゃない? とか。

前口上
その1
その2
その3
その4


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2011年05月29日

『巨人族の逆襲』第2回:その4

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。


























 オバナーが口を開きかけたとき、またもや広場の外で炎の爆ぜる音がした。そうしてウルリクのものらしい怒号、ガーリンの聖句の詠唱も。
 「さっきの連中のほかにも随分いろいろとこの街に紛れ込んでいるようね」
 オーケストラが呟いた。「でも、なぜ……?」
 「敵が紛れ込んでいる、と? 他の者たちはどうしている? なぜさっさと侵入者を片付けぬ?」
 アシュレイが不審げに眉をひそめる。
 「いなくなった。ここにはもはや私と近習のトリアンしか居らん。そうして私が呼び寄せた数名の英雄、そうしてお前と」
 オバナーが言う。アシュレイはいっそう訝しげな顔になったが、そのまま黙り込んだ。
 
 ともあれ、このまま手をこまねいても居られぬ。私たちは手分けして周囲の状況を確認し、オバナーや虎娘のトリアンにあれこれと尋ねては、これから何をなすべきか論を戦わせた。

 広場から見渡せるそこここで、建物がいくつか燃えていた。おそらくこの街に来る際に野原で見かけた炎の精霊が、結界の緩んだ隙に街の中に入り込んだものだろう。この街は紛れもなく巨人族と精霊の連合軍の強襲にあっているのだった。しかし誰もいない建物を燃やしてなんになるというのだろう。そもそも街並みの殆どは石造りで、そのいくつかに火を放ったとしても街全体を炎上させるには至らぬ。おそらくこれは陽動ではないか。だとすれば、狙いは……

 「……記憶領域開放」
 背後でアシュレイが低く呟いた。
 「……狙いは、宝物庫、ではないのか?」
 アメジストの瞳がオバナーをじっと見据えていた。

 おそらくアシュレイは正しい、と、オバナーは言った。宝物庫といっても収まっているものの殆どは、ヒューマンに近い種族が手にする武器であるゆえ、巨人どもにはおもちゃ箱とかわらない。しかしひとつだけ、巨人どもならば欲しがるかも知れぬものがある。それは“神の鎖”と言い、すなわち“暁の戦争”の際にプライモーディアルのピラノスを封じるのに用いた鎖である、それならば奴らは手に入れようとするやも知れぬ――詳しい話はもう少し先延ばしにさせてほしい、まずは宝物庫の安全を確かめてきてはもらえぬだろうか、案内にトリアンをつけよう。

 というわけで、私たちは虎娘のトリアンにつれられて、街の北東の端にある塔に向かった。そこは守護者の塔と呼ばれているという。宝物庫はその地下にある、だが一介の兵士である私がそこに足を踏み入れる日が来るとは思わなかったとアシュレイは言葉を添えた。

 宝物庫の扉は開け放たれていた。敵どもは既に侵入していたのだ。
 扉の中にはちかちかときらめく氷の塊が飛び交っていた。狭い部屋だと思ったが違った。部屋の中央に生きて動く壁がいたのだ。百発百中の魔法の矢をすばやく打ち込み、氷塊をまずひとつ片付けた。雷撃に撃たれてかしいだ壁を、ザンギエフの大戦斧が打ち崩すと、さらに奥の部屋が見えた。

 奇妙な光景だった。炎の壁が立ちふさがり、その熱気を避けるようにして氷塊が相変わらずちかちかときらめいている。確かに精霊たちは、存在の根本を異にする同士でさえも手を結び、私たちを敵に回したのだ。しかも部屋の床そのものに、腹立たしいこと限りない魔法が掛かっていた。床に刻まれたルーンは触れれば破裂して踏み越えようとしたものを跳ね飛ばす類のもの。それに床そのものが恐るべき引力を帯び、踏み込んだものの足を捕らえ竦ませるのだ。宝物庫の守りのはずの仕掛けが、私たちの足を阻んでいた。

 怖気もせずに踏み込んでいったザンギエフとアシュレイの背を見ながら、私は壁の影に身を潜め、精霊どもに魔法の矢を飛ばした。鎧纏わぬ身には正面切っての戦いは避けたいところだった。が、隠れきったと思ったのが間違いの元だった。私の矢が敵に届くのなら、敵の矢も私に届くのだ。一瞬後、私は火精に壮絶な打ち込みを続けるザンギエフの隣で火の腕に絡め取られ、一瞬ごとに肉を灼かれながら臆病の罪を償う破目になっていた。しかもそうなった私が戸口を塞ぐ形になってしまったため、オーケストラもパラディグーム卿――騎士殿はそういう名であった――も、先行するアシュレイが鋭く短い叫び声を――おそらく酷い傷を負わされたのだ――挙げても助けにも行けぬ。

 このまま生きた壁に使われるわけにはゆかぬ、私は覚悟を決めた。炎の腕を振り払い、まとわりつく火を真っ直ぐに突っ切って奥の間に身を躍らせた。視界の端でちかりと氷塊が光った。背中をごそりとえぐった火傷が酷く痛んだが、まずそいつに魔法の矢を打ち込んだ。私の前後で仲間たちが、それぞれに火精に切りかかっている。アシュレイの声が何事が叫んだ。聞き取れずにいる私の目の前を、ザンギエフが凄まじい勢いで走りぬけ、そのまま入り組んだ壁の向こうに消えた。私からは見えなかったが、奥で争う音がした。アシュレイの叫び、ザンギエフの怒号、静寂。それからザンギエフの換わりに火精が飛び出してきた。
 後から聞いたところによると、どうやら一番奥の部屋では身体も顔もローブにすっぽりと隠した男が、神の鎖――巨人族の手から守りきらねばならなかったはずの、まさにその品を盗み出そうとしていたらしい。ともあれそれにも気付けぬほど私は疲弊していた。ほうほうの態で部屋の奥に身を隠し、そうしておいてから申し訳程度に火精どもに雷撃を放った。またもや隠れそこなったと知ったのは、両方から炎の壁が迫ってきたときだった。

 炎の鉤爪でいいように切り裂かれたが、どうやら生き延びた。というよりは、私の命が燃え尽きる前に仲間たちが火精にいっせいに討ちかかってくれたのだ。隙を見てどうやら仲間の後ろに飛び込み、さて戦い直そうと思ったときには火精は消し止められようとしていた。

 「おれはこのまま消えるが」
 その残り火は薄気味悪く揺らめき、人語を話した。
 「貴様らもまた負ける。ここで死にそこねたがゆえにさらに痛みと苦しみ多き有様で、命の終わりを迎える。神の鎖は既に我らの手の内にあり、燎原、地震、氷河は既に立ち上がっ……」

 ザンギエフが炎を踏み消し、声は途切れた。
 「今のは……」
 「巨人には三つの系統がある。火と、大地と、霜と。さっきのはそれぞれの長の名だ。火の巨人どもの長の燎原、大地の巨人どもの長の地震、そして霜の巨人どもの長の氷河」
 アシュレイが低く言った。
 「一番奥の部屋に今の盗人どもの親玉がいた。切りかかったが、オバナーの言う“神の鎖”を奴が手に取る前に殺しきれなかった。そのまま逃げられた」

 一息おいて、アシュレイはぽつりと言った。
 「戻ろう、オバナーに報告しなくては」


(2回目はここまででした)
posted by たきのはら at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第2回:その3

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。


























 結局5人でランドシャーク2頭、それに悪しき元素に染まったドワーフであるところのゲイレブ・ドーアの石工どもを相手取ることになった。とりあえず手近にいたランドシャークを幻の鏡の迷路に放り込んでおいて広場の端までいったん引き、次の魔法を紡ぎかけたとき、オーケストラが呻くような叫びを上げた。
 「しまった、ウルリクを行かせるんじゃなかった!!」
 もう1頭のランドシャークの掘った穴から這い出してきたのは、その視線で石化の呪いを振り撒く恐るべき大蜥蜴、バシリスクだったのである。

 「蛇王憤怒拳の遣い手だというあの男なら……」
 「この場に居ないもののことを嘆いても仕方ありませんのですじゃあ!!」
 歯噛み交じりの呟きを圧したのは轟くような叫び、そうして大戦斧が宙を裂く音。

 「! ……そうだった、待ちなさいザンギエフ。神の導きを貴方に、神の雷を貴方の刃に!!」
 オーケストラが聖印を高々と掲げる。細い指が中空に戦闘の神のみしるしを描く。
 「悪しきものを神が見逃すことなし、凶眼持つ者よ、そなたの運命は既に決した、私には見える、そなたの滅びが……!」
 ザンギエフの身体を覆ったのは神の光か、はたまた彼自身の闘気か。ランドシャークが跳ね上げちぎり飛ばした石畳の残骸が一帯に散乱する足場を、がっしりとした足が一歩、二歩、後ずさる。それにあわせるように大蜥蜴の長い身体がずるりと向きを変える。眠たげなまぶたが持ち上がり、毒持つ視線がザンギエフを捕らえたかと思った瞬間。

 咆哮と共に筋肉の塊が石畳を蹴った。崩れた足場も尖った石くれも踏み砕いて無人の荒野を行くようにザンギエフは突進した。大戦斧がバシリスクの喉首に食い込んだ。脈が破れ赤黒い血が噴水のように飛び散った。生死を分けようとする一撃に、それでも大蜥蜴は最後の力を振り絞り牙を剥くが、
 「貴様の眼を開かせるわけにはゆかんのじゃあ!!」
 こちらも渾身の力を篭めてザンギエフは戦斧の柄を握り込む。そうして三寸深く沈んだ刃は、文字通り凶眼の蜥蜴王の命脈を断ち切ったのであった。
 長い身体はその半身を穴の中に残したまま、命を失って石畳に転がった。穴から首をもたげた魔物は、その凶眼を見開ききりもせぬまま、ザンギエフの斧に真っ二つに斬り飛ばされていた。

 そうなれば後は最初の見込みどおり、ランドシャーク2頭とゲイレブ・ドーアの石工3人だけが相手である。しかも新たな仲間もなかなかの凄腕だった。
 騎士殿はたくみに槍を操ってはランドシャークの隙を誘い、そこにザンギエフが雄叫びを上げながら斧を振りかざして飛び込み斬り立て、衝き転ばす。もう一方のランドシャークはというと、これはオーケストラの聖印からほとばしる光とアシュレイの剣先からほとばしる黒い雷光に撃たれて動かなくなった。私は広場の端から石工どもの真ん中に火球を放り込んだ。慌てるところに幻を飛ばし、同士討ちのひとつもさせてやろうと思っていたのだが、そうなる前に踏み込んできたザンギエフとアシュレイに、石工どもは残らず首を刈られた。

 広場の敵がすっかり片付いたところで、オバナーが虎娘とともに戻ってきた。街の結界を回復させたという。たしかにランドシャークどもの出てきた、どこにつながっているとも信用のおけぬ不穏な穴も、いつの間にか跡形もなく塞がっている。

 「ようやくこれであなた方に落ち着いてお話ができます」
 私たちが突然できた戦友たちと慌しく名を名乗りあっているところにやってきて、オバナーはそう言ったのだった。

 
posted by たきのはら at 22:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第2回:その2

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。
























 じりじりと足場を移しながら、ランドシャークと私たちはにらみ合っていた。
 と、広場の奥のほうでにわかに轟音が炸裂し、次いで炎の激しく爆ぜる音。ウルリクが咄嗟にそちらへ走り出した。ウルリク、単身では危ない、ガーリン付いて行ってとオーケストラが手近にあったガーリンの座る椅子を蹴飛ばす(ザンギエフは相変わらず椅子ごとガーリンを捧げ持って来ていたのだ)。
 「あああっ、ガーリン様ぁ」
 ザンギエフが情けない声をあげるのが届いたかどうか、ウルリクの消えたほうにガーリンも転がるようにすっ飛んで行く。

 「ランドシャークの2匹やそこら、5人もいれば充分だわ」
 オーケストラが言って聖印をかざそうとした時
 「6人だ」
 オバナーの後からいかにも騎士然とした男が現れ、私たちに背中を預けて槍を構えた。が、
 「足りない!」
 そう私は叫んでいた。ランドシャークの掘り抜いたふたつの穴の奥で、ぞろりと何かがうごめいたのだ。まだ、出てくる。ウルリクとガーリンの腕前は先ほど見ている。槍持つ騎士の身ごなしは確かに一分の隙もないが、ほかが虎娘と機械人形では空いた穴の充当には心許無い。
 「では、切り札を! ……今度こそ上手く動いてくれねば困るのだが……」
 私の顔をちらりと見たオバナーはずらりと並んだ石像のひとつに走り寄り、その杖を振り上げ、叫んだ。 
 「今一度、目覚めよアシュレイ! 13番の兵、雷の心臓を持つ者よ、アージェント存亡の秋(とき)来る!!」

 その杖が振り下ろされるや、蒼い電光がほとばしり、彫像の一つを撃った。その像は少女の姿をしていた。
 豪雷は石像を打ち砕き、ばらばらと欠片が飛び散る。だが、もうもうと舞う粉塵の中に閃く電光を私は見た。
 煙が剣風に切り裂かれた。
 塵芥の帳が落ち、そこに立つのはひとりの娘。
 電流、火花がその身体を走る。
 かくして、敵味方ともに身動きひとつせぬ静まり返った広場に、稲妻色の肌に稲妻の紋様を纏わせた娘は、不釣り合いなほど大きな抜き身の剣を携えて、石の台座からゆっくりと降り立ったのである。

 ――後に資料を読み解いた結果、以下のようなことがわかった。
 アシュレイ、絶対世界防衛都市、“西域の堅塞”アージェントにおいて開発されたエレメンタル駆動型防衛兵士第13番。
 体内の【雷素の心臓】により駆動する生体改造兵士。
 この世界の人型生物――おそらくヒューマンの少女だろう――を素体としており(しかし改造を施された結果、種族的には嵐魂ジェナシとほぼ同等の存在となった)、防衛用の兵士ながら極めて攻性能力に偏った調整がなされている。当時の戦況において何らかの要求があったものと見られる。
 攻撃力を増加する為に混沌の力が強く移植されており、ゆえに戦場での振舞いに不安な点が残ったようだった。そうしておそらくは、それを懸念した結果だろう、実際の運用に至らぬまま、石化封印されていたのだ。

 冷たい陶器を思わせる頬に、ガラス糸のような髪がふわりとかぶさった。薄紫色の皮膚の下で銀の魔術回路が明滅している。手にした長大な魔剣は、対元素精霊戦を意識した専用装備のようだった。
 アメジストの瞳で周囲を一瞥すると、娘は間を置かずにランドシャークに向き直り、剣を構えた。敵と味方の識別はできているようだった。それを見届けるや、
 「後のことは頼みましたぞ。私は守護の結界を張りなおさねばなりませぬ!」
 そう叫んでオバナーは踵を返し、走り出したのだった。


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第2回:その1

 ――はるけくも来つるものかな。
 パラディグーム卿は長嘆息して、雲ひとつない青空を見上げた。この空の下をどこまでも行くならあの沙漠に行き着くだろう、そうしてその沙漠に踏み込んで七日と七夜を早足で行くなら、あの心馴染みの街に着く。カナートの水清く、美味なる饅頭と濁り酒、甘い果物に、美しい女達。誠実なすばらしき人々ばかりの住むあの佳き街に。

 ――しかして、今は。
 卿の佇むこの街はぐるりに高く厚い壁を巡らし、扉を閉ざして人を寄せもせず、また出てゆくことも許さない。そうしておそらくは卿の唯一の案内人となるのであろう“もの”――金属製のからくりか、あるいは命ある人造か――は、卿の隣で軋む声で繰り返すばかりである。
 「ホドナクアナタノ仲間ガヤッテ来ルデショウ」

 卿は一所不在を習いとする放浪の騎士である。光に仕え、善をなし、弱くよるべなき人々を助けることこそが、卿がこの世にいま在る理由である。そのために卿は剣を振るい続けるのである。
 そうしてあのときも、卿は単身奈落の深みに潜り大悪魔を打ち倒した。青い巻物を掲げ青い光の門を潜った。門の彼方には奈落の一角に光の軍勢の設けた“奈落の堅砦”があるはずであった。しかるに卿の出たのは“奈落の堅砦”にうり二つの“西域の堅砦”であり、しかもそれはかつて卿の居たあの街――アクイラと同一の世界に存在していたのである!

 卿はここで世界のために再び戦うことが己の使命であると悟り、単身敵中に踏みこもうとしたが西域の番人はこれを止めて言った。

 「ホドナクアナタノ仲間ガヤッテ来ルデショウ」 
 「ほどなく。それはいつのことでござるか」
 「ホドナクアナタノ仲間ガヤッテ来ルデショウ。ホドナクアナタノ仲間ガヤッテ来ルデショウ」

 このものは機能不全を起しているのではないかと卿が疑いはじめたころ、番人は卿に向き直ってこう言った。相変わらず軋みはするが、時の中に古びた深い深い声で。
 「たったいま、あなたの仲間がやって来ました」
 
 と同時に街の空気がちらちらと揺らめき始めたのを卿は感じ取った――いままでこの街には、命あるものがあまりにも居なかったのだと突然卿は悟った。空気の中に脈動しはじめたのは生きとし生けるものの精気である。そうして番人の歯車を滑らかに動かすものこそその精気なのだと、足を早める番人の背を見ながら卿は知ったのである。

 番人の後姿の向こう、石像の広場に、数名ぶんの人影が突如現れた。
 卿も知らず、足を早めていた。


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 20:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第2回:前口上、あるいは変わらないということ

 前回、たしかこんなことを書きました。
 「学生時代は、それはもう無茶な遊び方をしていました。具体的にはAquilla血風録の頃とか」
 うん、書いてる、確かに。過去形で。“無茶な遊び方をしていました”って。

 で、社会人になって忙しくなってそうそう遊べなくもなったけどオンセなら遊べるから、って、我々、久々にキャンペーンを開始したのでした。それでもみんないつでも都合が合わせられるとは限らないから、2週間に一度と機械的に日程を取ってしまって、その日に来れる人、というフローター・スタイルで。

 とはいえ、誰が来るかはあらかじめはっきりさせとかなきゃいけないので、日程調整――というより、メンバー確認はするわけです。するとある人から「その日はガーリンPL宅でセッションだから不参加」との連絡あり。……って、そのセッション、確かD16氏もPLで参加してなかったっけ?
 慌てて問い合わせると、「うん、そうだけど22時までに帰宅すればいいから特に問題ないと思ってたんだけど?」

 ……えーと。

 日程前倒ししようにも、金曜夜はさすがにあれこれあって人が集まらず。そして土曜の昼間のセッションと夜のセッションのメンツは結構な人数が重なってたりするのです。
 で、結局オフラインのセッションのほうを早め開始の早め切り上げ、オンラインのセッションを少し遅めに開始することで、一日一晩で2セッションを可能に。そうして最終的には日曜の朝4時近くまで遊んでいたのでした。

 家族にも社会にも迷惑をかけずに遊ぶ手段さえ手に入れれば、昔と何も変わらないってことね。
 終電や始発を気にしなくてよくなったぶん、却ってアレなことになっただけかもしれません。


前口上の裏側。
posted by たきのはら at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月25日

「CBT的アプローチのセッション運営」のAGS掲載は不適切と考えます

 岡和田晃氏主宰のAnalog Game Studiesに掲載された「CBT的アプローチのセッション運営(第1.5回)」を拝読いたしました。

 上記では、伏見健二氏が提唱する「認知行動療法を援用したTRPGセッション運営」に関する論考の連載企画について、著者と編集者の見解と方針が記載され、これをもって当該論考の第1回への対論・応答を締めくくるとされています。

 しかし、今回掲載の見解・方針を拝読しまして、当該論考については現状での連載続行はすべきではなく、

・医師もしくは臨床心理士等、適切な資格保持者による実名での監修があること
・連載ではなく一挙掲載とすること


 が必要であり、それが満たされない限り非公開としておくべきであると考えました。そこで、意見をAGSにお送りし、またこのように公開しております。

 以下は当方がそう考える理由です。

●病者への関わり方の論が未だ実験的なものである場合、広く一般に公開して論じるべきではない。また、限定した場所で、もしくは十分に注意して公開する場合であっても、社会的責任を取りうる形での有資格者の氏名の公表は必須である

●病者への関わり方について新たな論を一般公開する場合、論は既にある程度完成されたものでなければならない

●病者への関わりを論ずる場合、最重要視されるべきは論の新規性ではなく安全性である

●有資格者の支持を新規な論の公表の根拠とする場合、支持者の氏名・職位の公表は必須である

 現状のAGSにおける伏見論考の連載やその方針において、以上の要件はいずれも満たされていません。
 よって、連載は取り下げるべきであると考えております。

 伏見論考のような、精神保健に積極的に関わる言説は、精神科医や臨床心理士等の、適切な資格を有し、必要な知識・技能・態度の保持が担保されている方が、実名を公表し、社会的責任を負う形で監修をして初めて広く一般に公開しうるものです。
 当方は、AGSで公開された言説がもとで何らかの事故が生じ、病者や関係者の心身を損なうこと、そしてそれがためにTRPGの評価が低下することを恐れるものです。いたずらにAGSやそこに掲載された論考を攻撃しようとするものではありません。適切な資格を有する方の適切な監修のもとに当該論考が公開されるのであれば、当方からはこれ以上申し上げることはありません。


以下は理由詳細となります。
posted by たきのはら at 14:15| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月15日

隙間時間オンセの会『巨人族の逆襲』第1回:目次

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はリンク先にはいらっしゃらないほうがよいと思います。


2011年5月14日(土)22:00〜26:20ぐらいまで?
最初のチュートリアルと山ほどの馬鹿話込み。

前口上
その1
その2
その3

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『巨人族の逆襲』第1回:その3

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。





















 そうこうしているうちに虎娘が駆け寄ってきた。
 命を救ってくれたことに感謝の言葉を述べた後、彼女は感に耐えないといった様子で叫んだ。
 「ああ、感謝します、私がこの巻物を渡すべき英雄が今こうして目の前にいるとは!」
 英雄と呼ばれて悪い気はしないので訳を訊いた。すると彼女は巻物を差出し、
 「どうぞお受け取り下さい、そして今ここでお読み下さい」

 おそらく一番身分の高そうに見えるであろうガーリンに巻物を手渡した。巻物を開いて読み進むうち、ガーリンの顔色が変わった。
 「なんということだ、冗談ではない!」
 行儀の悪いことではあったが、思わず好奇心に駆られ、ガーリンの肩越しに巻物を覗き見てしまった。と、そこには招請状と記されており、さらに“西域の堅塞”の五文字が目に飛び込んできた。

 「もしや西域の堅塞からの招請とでも?」
 私は勢い込んで虎娘に聞いた。
 「そうです、西域の堅塞、アージェントの都、忘却の中に滅ぼうとする伝説の都。オバナー様のご命令で、英雄たちを探し、その地にお迎えするために私はこちらに来て……」
 「参りましょう、その都へ、オバナー様とやらのところへ」
 間髪いれず私は叫んだ。伝説と幻と忘却の中から迎えに来たというのだ。願ってもない案内人ではないか。
 「では、こちらへ」
 虎娘は懐からもう1巻、巻物を取出して繰り広げた。するとそこに記された文字が歪み、浮き上がり、集まり、姿を変え……数瞬の後、そこには立派な門が聳え立っている。異世界へと通じる転移門である。虎娘の指し示すままに私は門を潜った。背後でガーリンが叫び声を上げていた。英雄を招請せねばならぬというほどだ、私はろくに読まなかったが、きっと情け深い人物にとっては黙っておられぬほど、よほど悲嘆と悲惨に満ちた文言が記されていたに違いなかった。

 転移門を抜けた先は、石像に囲まれた石造りの広場だった。石像はそれぞれに異なっており、見ればひとつひとつが種族も得物もさまざまな英雄たちの姿をかたどっているのだった。
 それを見たとたん、ウルリクが乾いた笑いの混ざる声で、おおこれは師匠の部屋にあったものにそっくりだと言った。
 「師匠とは?」
 「おれの蛇王憤怒拳の師匠だ」
 「それはまた」
 「師匠は敵対者を石像に変え、粉々に砕いておった」
 ウルリクがどのような修行に熱心であったのかまで聞いておくべきだったとかすかに後悔した。

 「ここがアージェントです」
 虎娘は言った。しかし伝説の都だというのに、そこには人っこひとり見当たらない。何かあったのかと尋ねると、長い年月のうちに様々な事がおこり、そして今となっては、ここにいるのはオバナー様と私だけなのですと虎娘は悲しげに答えた。それからふと明るい顔になって、オバナー様がいらっしゃいましたと言った。

 虎娘の指し示すほうをみると、確かにやってくるものがある。しかしそれは人ではない。鎧だ。

 最初は鎧をまとった人が歩いてくるのかと思った。
 次に鎧の中は空洞で、すなわちあれは亡霊の類なのではないかと思った。
 が、どちらも違う。鎧の中には歯車やねじがぎっしり詰まり、錆びた音を立てて動いている。
 「ウォーフォージドだわ」
 突然気付いて私は叫んだ。はるか昔に作られた人型の戦争機械。つまり機械仕掛けのゴーレムだ。

 と思ったのに、そのゴーレムは口をきいた。錆びてきしむ声で、自分こそがアージェントの最後の守護者オバナーであると名乗った。
 ここは西域の堅塞と呼ばれた都アージェント、しかし時の流れのうちに忘却の中に朽ち落ちてしまった。そうして失われたはずのこの都に、今、恐ろしい災厄が襲いかかろうとしている。そうオバナーは告げた。

 災厄とはすなわち巨人族である。さまざまな巨人族が精霊達と手を結び、協働して人間に牙を剥こうとしているのだという。彼らの第一波をまずここで食い止めなければならない。何故ならこの都アージェントは守りの要であり、古来からネラス帝国の英雄たちの手によって守りぬかれてきたものである。そうしてこの都が陥ちれば、人間社会はあっというまに押し寄せる巨人の手に落ちるであろうから。だから、私の呼びかけにこたえてくれた君たちは……

 そこまでオバナーが言ったとき、突然日が翳った。違う、頭上を巨大な岩塊が飛んでくるのだ。
 危ない、と身構えた瞬間、岩は砕け散った。

 「そうです巨人どもが岩を投げつけてくるのです。しかしご安心下さい、衰え朽ちつつあるとはいえ、このアージェントは守りの要。上空には強力な守りの魔法が施されております」

 まじめくさった声でオバナーは言った。もちろん得意げな響きは隠しきれない様子。
 と思った瞬間、今度は大地が揺れた。
 「が、守りは万全と……地下も?」
 「いや、その、しまった、地下には何の守りも……」
 その声に答えるように、とんでもない獣が広場の石畳に開いた大穴から飛び出してきた。ランドシャークである。それも1体ではない――その背を不吉な色に光らせ、2体の獣はゆっくりと身体を捻り、オバナーと虎娘、そして私達をひとりひとりねめつけた。


(というわけで、第1回はここまででした)
 
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『巨人族の逆襲』第1回:その2

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。





















 呪文を紡ぐにはしばらくかかって、苛立っているふうのものもいたが、待たせるだけの価値のある仕事はした。目の前で燃え盛る木々の倍の炎に撃たれようともびくともしないだけの守りを織り上げたのだから。それで後は目の前で唸り声を上げる精霊たちやアルコンに嫌がらせをしながら、文字通り高みの見物を決め込むことにした。

 私が守りをかけてやった連中は、確かに凄腕だった。
 杖と棍棒を手にした男は守りの呪文が完成するやいなや風をまいて走り出し、虎娘を取り巻いていた数多の火の玉を、瞬きひとつの間に羽虫でも潰すように叩き潰した。そうして後は虎娘の手に負えるだろうと見るやくるりと踵を返し、ごうごうと唸る火の精霊、炎の嵐に突っ込む。杖がうなりを上げて振り抜かれた瞬間、人の背の倍はあろうという高さまで燃え盛っていた精霊は消し飛び、惨めにゆらゆら揺れるのがやっとの炎がその場に残るばかり。

 エルフ娘も負けてはいない。神に祈りを叫ぶと見る間にその場にいたものの身体を光の膜が覆い、そうしておいて今度は槍を構えて敵に肉薄し相対する。すると娘の手にした槍から稲妻がほとばしりそれに触れた敵の肉をえぐり焼き焦がすのだ。聖印から神の力をほとばしらせる祈祷でないのは珍しいが、戦闘の神の一宗派には聖印のかわりに武器を使いこなす者たちがいるという話は聞いたことがある。そして、これこそがわが神の愛、と叫ぶ彼女の声を聞いた気もするが、さすがにそれは気のせいだろう。土の精の腕を身軽にかわし、私の傍を通り過ぎながら、彼女はにこりと笑ってこう言った――誰も血を流さないから、私の仕事が少なくて助かるわ。

 「ガーリン様ぁ、儂ゃいつでもぶん殴りますじゃあ、どうぞご指示を!!」
 筋肉の塊が椅子を地面に置き、叫んだ。それで身なりのいいほうのドワーフはガーリンという名だと知れた。ガーリンは椅子から転がり落ちるように降りると、今まさに自分を撃とうと鉤爪を振り上げた土の精霊に何ごとか言った。間に合わず、鉤爪は振り下ろされたが、しかしそのまま精霊は考え込むかのように動きを止めた。次の瞬間、私は耳を疑った。
 「な、そうじゃ、話せばわかる、話せば」
 確かにガーリンはそう言ったのだ。

 筋肉の塊は非常に筋肉の塊らしい仕事をした。喚き叫んで大斧を振り下ろすと、一撃めでは大地が大きくえぐれた。にやりと笑って少し後ずさる。ああ、あれは脅しというか警告だったのだと思い当たったときには、猪でもこうはいくまいというような勢いで突っ込んだ筋肉達磨の振り下ろす斧で、土の精霊がぼろりと崩れた。がっくりと身を追ったところを返しの刃が薙ぐ。怒声の響きが消えないうちに土の精霊は土くれとなってその場に散らばった。

 アルコンが消えた。残る土の精霊は火の中に押しこまれ、文字通り焦土となって崩れ去った。火の玉などはとっくにどこかに消え失せていた。最後に残った火の精霊は逃げ出そうとしたが、このまま野良山火事になってもよくないので追い詰めて消し止めた。それからようやく私達は顔を見合わせ、名を名乗りあった。

 杖遣いの男はウルリク、エルフ娘はオーケストラ・シルエータと言い、ともに放浪の途にあるものだと言った。ただし今は近くの村を通りかかったときに村人に頼まれ、西のほうで巨人が群れをなし、しかも精霊達と手を組んで今にも近隣の村々を襲おうとしているという噂の真偽を確かめにやってきたのだそうだ。そして、少なくとも精霊については人間に牙を剥く気でいるのは間違いがなさそうだとオーケストラは冷たい怒りに満ちた声で言い添えた。また、オーケストラは思ったとおり戦神コードの戦司祭であり、一方ウルリクは大変意外なことに悪魔とはついぞ関係ない、非常に熱心な武術の修行者であるらしかった。

 そうしてドワーフ二人組は、ウルリクとオーケストラに頼みごとをした村の腕利きということだった。筋肉達磨のほうはザンギエフといい、身なりのいいほうは先ほども聞いたとおり、ガーリンという名だった。
 ガーリン様はとても賢く、そして情け深いお方なのじゃとザンギエフは熱心に言った。だからいかにひと目で悪いやつと思うような相手であってもいきなり殴りつけるようなことはない、まず振り上げた拳を打ち下ろせないようにしておいてから、切々と理を説かれるのじゃ。
 「じゃから儂は何かを殴るとき、まずガーリン様のお知恵をお借りすることにしておるのじゃ。間違いがあってからでは、相手は死んでしまっておるからの」
 それから一段と声を低め、しかしガーリン様は普段は大変情け深いお方じゃが、本当は目もくらむほどお強いお方なのじゃとザンギエフは付け足した。だから決してガーリン様を怒らせてはならぬのじゃ。
posted by たきのはら at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第1回:その1

ネタバレ注意!!
このレポートは『シルヴァー・クロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊んだものです。
まだ遊んでいない方はこの先はお読みにならないほうがよいと思われます。




















 私の名はミルタ。妖精郷生まれの学究の徒。
 学問は常に実地における調査と研究を重んずべしというのが師匠から受け継いだ私の主義なので、今となっては児戯に等しいとも思えるほどのちっぽけな魔法を身につけて以来、妖精郷の帳を抜け、諸国を経巡ってきた。そうして随分多くの世の不思議を見、さらに多くのわざを身につけた。

 ある日、旧知からの使いが私の宿を訪れた。差し出された手紙を見れば、安楽椅子冒険者――というのはもはや蔑称であろうと私などは思うのだが――の名で知られる、私と同じエラドリンの魔術師、アルブレヒトからである。この男は呼吸器に、というか鼻に酷い病を抱えており、常に真っ赤な鼻をハンケチで押さえつつ、ひとこと口をきくにもくしゃみと戦わねばならぬという有様である。しかも、とある黴だか茸だかの胞子を吸い込むと呼吸困難に陥って死ぬように定められているとかで、それを恐れて塔からびた一歩たりとも足を踏み出さない。ところで天はその宿痾と引き換えに、この男に明晰この上ない頭脳を与えた。というわけで彼は塔に篭ったまま他の者が集めてきた情報をもとに次々と論文を発表し続けている。情報を提供する側としても、化け物どもの巣の近くに息を潜めながら書き物をするよりはアルブレヒトにペンを取らせて共同執筆者として名を連ねたほうが割がいい。そんなこんなでこの男は塔の最上階の安楽椅子の肘掛を握り締め、くしゃみを連発しながら素晴らしい冒険の記録とその考察を素晴らしい筆致で執筆し――そうしてついた二つ名が安楽椅子冒険者。

 おしゃべりが過ぎた。
 ともかくアルブレヒトは私を呼びつけ、サイイキノケンサイとやらについて調べて来てほしいと頼んで寄越したのだった。それは伝説に語られる古い砦で、かつてはネラス帝国が勇士たちを次々と送り込み、何らかの脅威に備えていたと伝えられている。で、アルブレヒトは最近その砦に関して記された古文書をいくつか手に入れたらしい。これは大発見と意気込んだはいいものの、手繰るもの手繰るもの、すべて肝心の場所になると記述が曖昧模糊として、酷い場合には数頁が欠落している――まるで何ものか、あるいは運命そのものがその砦の去来を伝えるのを嫌って記録を歪めたかとさえ思えるほど。

 これはただならぬことと思ったのです、とアルブレヒトは言った。他の学者連とも相談したが皆、これは何か起きているのではないかという。
 「けれど私は病を得た身体、この塔から一歩も踏み出すことはなりません。ですから」
 実地研究で名を馳せた私に白羽の矢が立ったということのようだ。行って“西域の堅塞”について調べてきてくれたら論文の共同執筆者として私の名を載せるだけでなく、世にも珍しい魔法の品を差し上げましょうとアルブレヒトは言った。約定を違える男ではないとは思ったが、気が変わらないうちに引き受けて出発した。

 とはいえ雲をつかむような話ではある。
 アルブレヒトにしてからが曖昧模糊と言うのだ、私にわかるはずもない。とりあえず西域というのだから西なのだろうと西を目指した。荒野を横切って旅を続けていたところ、草原の中に岩がひとつ顔を出しているところに来かかった。登ってみるとちょうど身体を休めるによいくぼみがあったので、そこで一休みすることにした。あてどない旅はくたびれるものだ。

 剣呑な気配がしたので目を覚ました。
 草原は大変に剣呑なことになっていた。具体的には野原のはるか向こうで1人の虎娘が無数の火の玉に取り巻かれており、野原の木々は一本一本が紅蓮の炎で包まれ――しかし不思議なことに焼け落ちはせず、目の前には見上げるような炎の精霊と土の精霊がうろつきまわり、そうしてその親玉らしい炎のアルコンが、さあ殺せ片付けろと喚き叫んでいる。
 そうして岩のすぐ下にも剣呑な連中がいた。

 一応全員人型はしていた。
 悪魔とでも取引をして生まれもつかぬ姿になったのかと一瞬思うほど、不吉な影めいた男。蓬髪の間から眼ばかりがぎらぎらと光り、にやりと笑った口元がなにやら不安を掻き立てる。得物らしきものといえば見るも不吉な形にねじ曲がった杖、そして奇怪な形の棍棒。好意的に見れば奇異な武器を得意にするものといったところだが、これはどうあっても何か禍々しい技の遣い手に違いない。
 弓を手にした森妖精の娘。戦神の聖印を仰々しく身につけているところを見ると、戦司祭ということだろうか。多少血気にはやっていそうなところを除けば、この娘だけは尋常な姿。
 そしてまったくもって尋常ならざるドワーフが2人。

 1人は、チェス盤を立てて手足と首をつけ、それに筋肉を思う存分盛り上げた挙句もう一回り逞しくしたらこうなるかといったもので、片手に奇妙な形の大戦斧を握り締め、もう片手で恭しく椅子を捧げ持っている。
 その椅子の中にもドワーフがいて、これは髭と髪をきれいに撫で付け、随分とよい身なりをしている。きっと身分が高いのだろう。そうしてこれが片手を挙げ、虎娘のほうをぶるぶる震える指で指差した。声は良く聞き取れぬが、顔を真っ赤にして何ごとか言っている。

 さてどうしたものか。
 と思った瞬間、義を見てせざるは勇なきなりとエルフ娘が叫んだ。どちらかに味方せねばならぬならこういう娘のいるほうだろうと思った。そこで私は岩のくぼみから歩み出し、足もとに叫び降ろした。
 「私の呪文が完成するまでその場で待ちなさい。炎に対する守りをあげます」

もう少しまともなキャラ紹介
posted by たきのはら at 20:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『巨人族の逆襲』第1回:前口上、あるいは隙間時間オンセの会の発端について

 学生時代は、それはもう無茶な遊び方をしていました。具体的にはAquilla血風録の頃とか。

 金曜夜から土曜夜中にかけて仮眠挟んだりメンツが多少入れ替わったりしながらぶっ続けでセッションして、結局終電なくなって日曜の昼ごろ解散とか、メンツに社会人と学生が混在するようになって時間を合わせるのが大変になってきてる一方でキャンペーンが大詰めだったりすると「ちょっと非常識かもしれませんが12月28日の仕事納めの日、この日はどうせお勤めの人も掃除と挨拶回りぐらいでしょうから夕刻からセッションしませんか」とか、ホント馬鹿じゃねえのっていうか体力よくもったなってな遊び方をしていた私達ですが、さすがにメンツが結婚したとか親になったとかなると、そんな遊び方できない……というか、遊ぶ時間そのものが取れなくなってきました。

 それでも新しいルールが出たら買い、プレイグループの誰かと顔を合わせれば「遊びたいねえ」という話になる。そんなところに、オンラインでセッションできる環境ができ始め「オンラインいいよ、交通時間とかゼロだし」「今なら2-3時間でそれなりに遊べるらしい」「子どもを寝かしつけた後だったら時間自由になるし」「あ、私オンラインで遊びました、けっこう普通に遊べますよ」「っていうか遊びたい」「よし遊ぼう」という話に。

 というわけで『隙間時間オンセの会』と称してお試しで何度か遊び、確かに他のPLの顔は見えないけど声は聞こえる、打ち込みチャットと違ってフリーアクションで馬鹿話もできる、これはルールブックから顔を上げずにセッションしてるようなもんだ、誰かがとんでもないことを口走ったときにぶん殴ることはできないけど、時間と空間の都合を無視できるのは大きい、キャンペーンだって行けそうだ、せっかくだから伝説級を遊んでみたい……

 で、『シルヴァークロークス戦記 巨人族の逆襲』を遊ぶことになりました。
 DMはD16氏、メンツは大学時代からのプレイグループのうち、その晩時間が取れるもの。
 時間は土曜夜、22:00〜の2、3時間。2週間に一度。Skypeとどどんとふを使用。フローター・スタイルで、参加希望者は金曜から土曜に日付が変わるまでに参加を表明すること。 

 セッションの開始時にはまだ寝付かないお子がお父さんに話しかける声をマイクが拾っていたりして、ほほえましいのはいいけれどお子の前でぶっ散らばるのなんのと口走らせるわけにもいかず、「待ってるから先にお子さんを寝せてあげて下さいよ^^;;;」とか言いつつ、ゆるゆると遊び始めます。

 まぁ、夜中過ぎる頃には死ぬの殺すのと全員が物騒極まりないことを口走っているのですが。

 どなたかのお子がうっかり起きていて「お父さんが何か怖いこと言ってげたげた笑ってるー」とか思ったりしないことを心から祈りつつ。

posted by たきのはら at 19:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 巨人族オンセ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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