2008年08月04日

第1部『魔法学院都市編』まとめ

 2004年4月〜2007年1月までの3年弱、12回にわたって遊んできた『渡る世間は竜ばかり』第1部、魔法学院都市エンドゥー・ガルダをホームタウンに、あちこち出掛けたり街の中で面倒ごとに巻き込まれたりしてきました。

 主人公ウィチカも学校から退学させられかけるところから始まって、無事優秀な成績で卒業、そして本当の意味での「幼年期からの卒業」(?)を経験したり……

 しばらく間が空きましたが、近々第2部がスタート予定。
 その前に総復習として――そして割と最後のあたりは目次の順番もごたついてしまったので、その整理も兼ねて第1部、「目次の目次」です。

シリーズ第1回『金の切れ目が……』

Dungeon誌#102収録の「Cry Wolf」を使用。
父親が死んで継母に家計をよこからさらわれた駆け出し魔法使いウィチカ、授業料の払い込みが途絶えて危うく退学させられるところを、ドルイド/バーバリアンなワイルドエルフ、アルテアと出合って冒険に繰り出し、なんとか卒業までの資金を冒険で稼ぎ出すまでの話。


シリーズ第2回『ふぁみりあ・ふぁみりあ』

HJのシナリオ集『A Seven-game Match』に掲載された『使い魔を探せ!』のテストプレイとして行われたもの。
ウィチカが自分の使い魔を手に入れるまでの話。そして指導教官の豪快すぎる素顔が明らかになる。


シリーズ第3回『マンドラゴラ始末記』

ワイルドエルフのドルイドでありながらアルテアはいつのまにか魔法学院の資材部で仕事を始めている。その資材部から、ウィチカの実家との取引に問題があった、娘のお前が責任を取れとねじ込まれ、ウィチカとアルテアは首吊り山までマンドラゴラ採取に出掛ける……


シリーズ第4回『黒き氷の……』

Dungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用。
学園都市に冬がやってくるが、“資材部の腕利き”ウィチカとアルテアに休息のときはない、らしい。魔法実験には欠かせない「黒い氷」の採取を依頼され、出身の村へ帰る出稼ぎの一行に同行してもらって北へ向かう二人。このときはAquillaの面子が何故か4人ほどゲストとして参加。雪の中の戦闘でエライコトに。


シリーズ第5回『楽しい我が家』

時は巡って、春、卒業の季節(マルドゥーングのカレンダーはそうなっているらしい)。
卒業とともに寮を出なければならなくなったウィチカが「冒険者小路」
に家を借りることに。アルテアも友達と一緒に住むほうがいい、と学院を出る。冒険者小路の住民はそろいも揃って曲者ばかり、そして借りるはずの部屋にも奇妙な因縁が……

シリーズ第6回『公衆衛生狂騒曲』

ウィチカが開業した魔法屋『ロバと天秤』屋に新たな店員が。以後、レギュラーメンバーとなる“過去のない男”キース・ライトブレードである。アルテアが薬草園の世話に出掛けている間に、ロバと天秤屋に飛び込んできたのはスラム街の治療師、“野火の”ケシュ。何やら下水道に怪しいものがいるという……
『ロバと天秤』屋の部屋のの意外な構造も明らかになる一幕。

シリーズ第7回『狗の驕り』

ウィチカの亡父の古い友人で、キースの仲間でもあるタムリスから知らせが入った。北の森で危険なことが起きた、すぐ来て欲しい……
というわけで、北の森に向かう3人。前後編の前編。

シリーズ第8回『剣の王・滅びの王』

北の森編の後編。キースの過去、失われた因縁の剣、そして一瞬の隙に失われる命。ややジェットコースター気味で、最後には「死人を視認する」だの「ワイトが沸いた」だの口走っていたとかいないとか。

シリーズ第9回『夜の女王の秘密』
シリーズ第10回『夏の夢・真夏の秘密』

シティ編前後編。『夜の女王の秘密』は2回分しかレポートがなく、そのぶん、第10回のところにダイジェストが上がっています。
キースの過去と失われた剣にまつわる因縁、謎の美女、冒険者はなかなか都会人にはなりにくいということ、そしてエンドゥー・ガルダの魔法市について。この回からアルテアはパーティー編成上の都合から素ドルイドに変更。

シリーズ第11回〜第12回『地下に眠る陰謀』

魔法市での失敗から思わぬクレーム、一方都市の深部で暗躍する魔法学院の教授たち。そしてウィチカの真の卒業。

魔法都市編、というわりには、割と外に出歩いてるなぁ、とか、げ、アルテアの2代目の相棒はセッション4回しか一緒にいられなかったのかよ!! とか、まとめなおしてみるといろいろありますが……^^;;;

これからも素敵な冒険ができますように♪
posted by たきのはら at 17:56| Comment(2) | TrackBack(0) | レポート目次(渡竜) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』目次

というわけで。
渡竜第12回(第11回ダイジェスト付き)です。

きちんと文章を物語調に起こすことができなかったのでちょっと残念なことになってはいますが、何がおきたかは見て取れるかと。

前口上
その0:緑の魔女
その1:下水道の不審者
その2:呼び出された支配者
その3:学究の徒の言い分
その4:市民の言い分
その5:最後の夜
その6:地底の決戦
その7:さらば懐かしき街

posted by たきのはら at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート目次(渡竜) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その7:さらば懐かしき街

 悪賢いんだかまぬけなんだかよくわからない魔法使いを捕まえたスルカス、いかにも通りがかりのケイヴァーが不審者を捕まえた、てなふうを装って、魔法使いをすっかり武装解除し、責任者のもとに案内させる。やりとりを見るに、この魔法使い明らかに間抜けだし、目も見えてないので安全っちゃ安全なのだが、まぁ、ウィチカたち三人は面も割れてるしということで、スルカス一人が学園のほうへ行き、後の面々はいったん(もうすぐ空き家になるはずの)「ロバと天秤」屋に引き上げることに。

 スルカスとにわか盲目の魔術師が出たのは学園の中庭。いきなり現れた珍妙な二人連れにざわつく学生に、魔術師が言う。急用あって教授にお会いしたい。案内してくれ。

 で、スルカスが連れて行かれた先はオルドロン教授の研究室(ウーズ担当だからね)。
 ほう、つまり君は下水道を見回っていて偶然にこの実験現場に出たというわけかね、と、まるで信じていない目でスルカスを睨むオルドロン教授。その通りですときっぱり答えたスルカス、クラークから貰った委任状をつきつける。

 偶然と言うのは正しくない。このところ下水道で怪しいことがおきすぎ、土木課としては放ってもおけない状態であるとして正式に調査の許可を取った。
 教授は頷いて答える。
 確かに我々も先走りすぎた。だが、君たちも我々に近づきすぎた。
 ああこいつ、だいぶ完成に近づいていた実験が頓挫して当分動けなくなったということもある以上、自分に厄介が及ばないように事件そのものをもみ消す気満々だな、とスルカスは見て取る。

 「あんたがたが研究をするというのは、すなわち力を求めるということだ、否定はできんのもわかる。だが、覚えておけ、過ぎた力は身を滅ぼすぞ」
 言い捨てて立ち去る背中に教授の声。
 「忠告感謝する。だが、研究は時に我らの人生をも要求するのだ」

 落ち合う約束の「ロバと天秤」屋へ来かかったスルカスの目に映ったのは、門柱に止まったカラスとそれを取り巻いてしんみりしている一同。すかさずそのあたりの塀に隠れ、様子を伺うスルカス。その耳に届いたのはこんな会話。

 「……教授からのご伝言である。『俺はできなかったが、お前はもっとうまくやれ』」

 カラスはハンス教授の使い魔であるところのカーだった。
 「安心するがいい、私が生きているということはご主人もご無事なのだ」
 「……どこにいらっしゃるの?」
 「それは、きっとおっしゃりたくないだろうと思う」
 「……」
 「私はあのお方の一番繊細な部分を集めて作られた生き物だから、あのお方のお気持ちを汲み取って言うのだが……強く、賢くなって戻って来い、とあの方はおっしゃりたかったのだと思うぞ」
 「……」
 「では、私に角砂糖を寄越すがいい」
 アルテアが無言で部屋に最後に残しておいた「馬車と合流するまでの当座の荷物」の中から角砂糖の包みをウィチカに渡す。ウィチカはカラスに運べそうな最大限の量をハンケチにくるむと、それをカーの首に結び付けてやった。
 「よろしい、そなたはあのお方の学生の中で、もっとも角砂糖に関して見識の高い学生であった」
 そういい残すとカーは舞い上がり、青い空の中の黒い点になり、やがて見えなくなった。

 ウィチカがまた涙をぬぐい始めるのを見て取ると、スルカスは口元にかすかに笑みを浮かべ、意気揚々とした風を装って門をくぐった。
 「よう、どうした。こっちの首尾は上々だ。教授先生は事件をすっかりもみ消すつもりらしいから、嬢ちゃんさえその気ならまだこの街に居たって悪いことはなさそうだが……」
 「いいえ」
 ウィチカは首を振った。
 「もう、行きます。……キース、アルテア、一緒に来てくれるよね?」
 ああ、とキースが答え、続けてアルテアが逆よ、と答える。街の外は私の故郷。ようこそウィチカ、歓迎するわ。
 そういうアルテアの声がわずかにうわずっているのは……彼女の背の、白い大きな包みのためだろう。ベラは戦いで死んだの、それだけよ。でなければ私が間抜けだったから死んだの。でも……街に葬るのは嫌だから連れて行くことにするわ。大丈夫、馬車と合流するまで私が背負って連れて行くから。
 キースが苦しそうにアルテアを見……そしてすまなそうにルーネスを見る。

 「まぁ、ほら、荒事になれば、それもあることですよ。お行きなさい。わが神の恩寵があなたたちの上に常にありますように」
 ルーネスの苦笑いは、すぐに穏やかな笑みに解ける。
 「嬢ちゃんたち、達者でな。兄さん、剣に使われるんじゃない、剣を使いこなせる剣士になるんじゃぞ」
 スルカスの苦く、そして温かい声。

 三人の前に続く道。
 幾度となく通った道。
 「帰ってくるわ……また。いつもと同じように。今度は長い旅になるけど」
 ぽつりとウィチカが言った。声として答える言葉はなかったが、きっぱりと引き結んだ二つの唇は、確かにそれに答えていた。

 そうして三人は歩き出した。
 やがて帰ってくるための新しい冒険へ。

 【渡る世間は竜ばかり・第一部・完】
posted by たきのはら at 16:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その6:地底の決戦

 翌朝。
 オランの持ってきてくれたスープと最後のパンで食事を済ませると、トトとセセを厩から出す。私たちは仕事を済ませたら後から行くから、先に馬車を引いて薬草園に向かっていて。もし私たちが追いつかなくてもそのまま薬草園に行って。きっとタムリスがちゃんと取り計らってくれるから。涙をこらえながらウィチカが言う。
 「ええ、早く追いついてくださいよ、待ってますから」
 トトとセセを送って冒険者小路の端まで来ると、いつもぴくりとも動かないはずの老犬が、のっそりと立ち上がり、わふ、と吼えて道を譲り、一行が通り過ぎるとまたごろりと寝そべった。
 たまらず駆け寄るウィチカ。
 「……またね」
 答えてウィチカの手をぺろりと舐める老犬。

 もう一度振り返ると、ウィチカはにじんだ涙をぬぐい、行く手にしっかりと視線を投げた。
 仕事の仕上げが待っているのだった。

 ことは順調に進んだ。
 哀れなケイヴァーたちがよろよろと立ち向かってくるのはシュノープレーに阻ませておいて、疲れ果てて眠っているランドシャークについては魔法で押さえ込み、何も出来ないうちにその上を跳び越す。
 昨日のものかどうかはわからないが、やはりフォーミアンが一体広場に出ていた。
 
 弓弦の音が響いた。
 何もなかったはずの空間から飛び出してきた矢に喉元を射切られ、フォーミアンはぐらりと傾いだ。そこにはいつの間にか弓を構えたドワーフが出現している。驚愕からようやく立ち直ろうとする矢先に、今度は魔法の矢が飛来した。ウィチカの唇がかすかに震える。力を帯びた矢は呪文抵抗を弾き飛ばし、この次元界におけるフォーミアンの生命力をきれいさっぱり奪い去った。声もなく、蟻人間は元いた次元界へ送り返されていた。広場にそれ以上の敵はいなかった。

 広場の奥にはさらに深い場所へと続く大階段があり、その下からは巨大な金属の円筒が聳え立っていた。円筒には霜がびっしりと降りていて、そのところどころに茶色い染みのようなものが付着していた(この時点でとりあえずアルテア――というかたきのはらはほっとしました。あ、ブラウンモールドは向こうで準備してくれてるんだったら、こっちはとりあえず真面目に魔法陣破壊だけやればあとは何とかなるな、と。やらなきゃならないことは「計画」からそう多くはとっぱずれないね、と。……何をこだわってたんだろうなぁ。てか、条件よくわかってない実験を外部から人為的に壊す、ってことに、PL本人が恐怖感じてたんだろうなぁ。どうも……こういう感覚は持ち込まないように注意しないと、と思うんですが)。そして、円筒の周りには三つの頂点のうち二つにフォーミアンを配した正三角形の魔法陣が描かれていた。

 嬢ちゃん、おちついて、注意して、よく見るんじゃ。あの魔法陣の構造を。誤って封印の魔法陣を欠いてしまって魔王が暴れだしたら目も当てられない。召喚の魔法陣のみを、確実に壊さねばならん。スルカスに言われ、ウィチカが立ち止まって状況を確認している間に、階段の下は酷い騒ぎになっていった。

 大事な実験のこと、守り手がいないわけはない。フォーミアンの一体が倒されたのと同時に奥から魔法使いが一人と護衛たちがばらばらと駆け出してきた。キース、ルーネスが応じるように飛び出す。あろう事かアルテアも相棒のベラに「来なさい!!」と一言声をかけただけで飛び出していってしまう。
 悲劇はその直後起きた。
 魔法使いが飛ばしてきた魔法のせいで、アルテアの飛行呪文だけが解けたのだ。瞬時に護衛たちに四方を囲まれて切りかかられるアルテア。背に腹は変えられない。
 「アルテア、逃げろ、俺が血路を開く」
 叫びざま、キースは「颪」を抜いた。

 目の前の敵が一人消し飛んだ。
 敵の隣にいたのは、アルテアの傷を癒しに来たルーネスだった。
 キースの剣に斬られながらルーネスはアルテアを癒す。アルテアはなんとか囲みを抜けようと、目の前の敵に魔法の炎を浴びせ続ける。そうしているうちに今度は防御も何もなしに剣を振るっていたキースが倒れている。
 このままではキースの命が危ない。ルーネスは敵二人の目の前に飛び出し、そのままお構いなしにキースに手を伸べる。隙あり、とばかりに繰り出された敵の剣は申し合わせたようにルーネスの傍の空を薙ぎ、ルーネスの掌の下でキースの血が止まり、目が――血で真っ赤にけぶった目が開く。そして再び立ち上がったキースが斬ったのは、目の前にいたルーネスだった。

 その時、魔法使いの悲鳴が上がった。
 「大変だ、もうダメだ!!」
 ウィチカのマジックミサイルが円筒の表面をわずかに削っていた。緻密な召喚魔法陣は、そう、円筒の表面にびっしりと掘り込まれていたのだ。
 その瞬間、円筒の中のウーズは体内に宿していた魔王からの制御を失い、ゆるゆると動き始めた。魔法陣のために封じられており、それゆえに「彼」の身体をも動かさずにいた魔王がいなくなった以上、ただのウーズである「彼」には魔法陣は何の意味もなさない。「彼」は自由になろうとしていた。

 巨大な質量を持つ触手が円筒を内側からたたく音を耳にし、ウィチカは一瞬逡巡した。……どうすれば……
 と思う前に、だが、目の前の魔術師をどうにかせねばならない。とっさにグリッターダストを叩き込んで視界を奪う。ぎゃあ、と魔法使いが悲鳴を上げ、利なしと見て取った護衛たちがバラバラと逃げ出す。

 その瞬間、荒れ狂うキースの目の前から、「彼が斬るべきもの」はいなくなったはずだった。だから彼は斬るべきでないものを斬った。ベラは一瞬で事切れて足元に転がった。次の一撃はアルテアの身体をぎりぎりでかすめ……そして、止まった。

 「大変だ、もうダメだ!!」
 魔術師はもう一度叫んだ。
 「危険だ、奴が暴走する!!」
 「どうすればいいの!?」
 さすがにウィチカの声もうわずった。
 「火だ、円筒についているブラウン・モールドに火を与えてくれ。そうすればモールドが一気に育って円筒の中を凍りつかせる」
 わかった、と答えざまウィチカは錬金術師の火を円筒に投げつける。茶色の染みは一気に広がり、そして円筒の中から響いていた不規則な音は止まった。
 「やったか!?」
 「やったわ!!」
 「そこだな!!」

 ウィチカの足元から岩のカケラが吹き上がった。……が、飛行呪文のかかっているウィチカには届かない。

 と、その時、いつのまにかスルカスが魔術師の後ろに歩み寄っていた。手まねでウィチカに静かに、と合図をしておいて、スルカスは魔術師の腕を捕まえた。

 「こんなところで何をしているんだ、これは何だ」
posted by たきのはら at 16:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その5:最後の夜

 あの連中に対しては腹は決めてある、私はどうなっても仕方ないと思ってるわ、というウィチカにアルテアが言う。
 「ねぇ、ウィチカ、街を出たほうがいいんじゃないかな」
 「……え? そりゃ、出てもかまわないんだけど」
 「事を終えたら街を出なさいよ。ここに居たらウィチカはずっと『駆け出しの小娘』のままよ」
 アルテア、なんてことを、失礼じゃないか、だいたいこの街でウィチカは育ったんだし、そんな軽々しく、とキースが詰め寄るが、
 「出るべきよ。目をつけられてまでこんなところにいることないわ」
 そりゃ目をつけられてはいるんだけど……としばし口ごもり、やがてウィチカは頷く。
 「わかった。この一件が片付いたら街を出ることにする。……でも、アルテア、キース、あなたたちは、いいの? 私のせいで店も閉めて、街を出ることになっちゃうけど……」
 俺は構わないよ、ええ、むしろそうすべきだわ、と口々に答える二人。スルカスも答えて言う。わしゃこの一件が片付いたら国に帰る。そして一族のものにこの街との契約を切るように言う。わしの一族はこの街と保守工事の契約を結んでいるのだが、こんな人を人とも思わない連中の街に一族のものを置くわけにはいかん。

 そこへ、こつこつとノック。ウィチカがため息をついてうつむいているのでアルテアが出ようとすると、ウィチカ、急に立ち上がる。いいえ、私が出るわ。ドアを開けるとゴミ投げ小僧、もといゴミ投げ小娘ことオランが鍋いっぱいのスープを持って立っている。
 「かあちゃんがさ、作りすぎちゃったから持ってけって」
 その背後に、いつも道の真ん中に寝そべっている姿しか見たことのない、小路入り口の老犬が立っている。
 「そんじゃな、お休みっ」
 鍋を渡してかけ去るオラン。老犬も一緒に立ち去って行きながら、わふ、と小さく吼える。たまらずしゃくりあげるウィチカ。

 「このスープは明日の朝いただくことにするから」
 つかつかと歩み寄ってきたアルテア、ウィチカの手から鍋を取って台所に置くと、後ろも見ずに出て行きながら重ねて言う。
 「トトとセセの世話をして、出られるように準備をしなきゃ。ちゃんといいもの食べさせて」
 とっとと厩に行く。後から来たウィチカが涙をこらえながら二頭のロバの世話をしだすと、無言でその場を離れ、馬車の手入れを始める。その間にキースは持っていくべきものを馬車の中に運び込む。

 夜中前に、出かける準備は整った。
 この街での最後の仕事のために、横になって休むことだけが残された仕事だった。


このシーンの……裏側?
posted by たきのはら at 16:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その4:市民の言い分

 というわけで全員それぞれの仕事を終えて「ロバと天秤」屋に集合。情報を総合すると、なんとも嫌な図が浮かび上がるわけで。

 つまり学院の教授陣はスペルプールを作るために公共の下水道に無許可で実験場を作り、通常の生活を送る一般人にとって危険な状況を作り出していながら(現にケイヴァーの少なくとも一名がフォーミアンにドミネイトされて死に掛けている。さらに言うならデーモンロードと融合したウーズが街の地下に存在するということ自体とんでもない)、それを「必要悪」どころかむしろ当然の権利と思っている。
 救いは、事は一見大げさだが、実のところまだ実用化の見通しは立つような立たないような、な「完成しかかった実験」の段階であり、これで上手くいけば実用化とかそういう段階だろうから規模は「巨大実験室レベル」で「工業レベル」じゃなかろうってこと。

 ……げー。
 アレだよなー。核処理施設が「私たちにとって必要だから」とかいって秘密裏に街中にいつの間にか建てられて、しかも失敗の可能性のある実験普通にしてて、それで実は被害者普通に出てましたー、みたいな。

 とりあえずこの実験は潰そう。いくらなんでもダメだ。気に入らない。で、どうやって? その後どうする?

 えー、このあたりの議論がどう進んだかってのはちょっと記録聞きなおさないと再現できないので(てか、ちょっと私が熱くなっちゃっててきちんと記憶できてないんです)、ここだけアルテア(というよりはたきのはら本人)の視点を起点にして書きますね。本レポでは直しますけど。 (結局そのままなのです><)

・まさか下手打って実験失敗させたはいいもののデーモンロード付きウーズ暴走させましたー、街壊滅しましたー、とかなったらシャレんなんない
・どうやって穏便に(つまり周囲に影響を出さずに)実験をぶち壊すか
・万が一ウーズが暴走した場合、どうやって止めるか

 てところでDMから助け舟。ロー教授が「凍結保存」と言っていたでしょ。これでウィチカはジュイブレックスには宿敵、菌類の女王ズグトモイがいることを思い出していいですよ――ここではっと思い出す。「黒き氷の……」の回に、黒き氷の塔から「これも何か売れるかもー」と採取してきたブラウン・モールドだ!! あれは松明の火を近づけたら瞬時にその熱を吸い取って育ったじゃないか。その時あたりの気温は急激に低下し、燃え盛っていた炎は消えた。あれさえあれば粘体の活動は押さえられる。

 まともな研究者なら自分の実験が失敗したときの対策はちゃんと立ててある。爆発や薬品によるやけどの可能性がある実験室では、必ず部屋の外に緊急シャワーが備えてある、って感じで。ましてやいい加減な学生実験とかじゃなくて学園挙げてのプロジェクトなら、万が一の際の暴走を止めるための手段はちゃんと講じてあるはず、実験をぶち壊した結果、件の危険なウーズが暴走してもたぶん「その場にあるもの」で対策は可能だろう。

 いや、それ楽観的すぎる、と突っ込まれたんで、じゃ、旧職場に忍び込んでブラウン・モールドのストックをさらっと持ってきてしまおうかと思ったんだけど、それはリスクを増やしすぎるというので止められる。

 結局、デーモンロードを一部とはいえこちらの世界に持ってくるにはきちんとした召喚の魔方陣を書く必要がある、ウーズ本体ではなくその魔方陣を一隅でも消せばデーモンロードは消えるのだから、本体をどうこうするのではなく魔方陣を壊せばいいのだ(少なくとも「デーモンロード付きの」ウーズの暴走、ということにはならない)、ということに話はまとまる。

 ……あー、ここ見ると、明らかに私が素に戻ったせいでRPがおかしくなってるのがまるわかりですな。最悪。すみません。これはファンタジーであって、研究室でディスカッションしてるんじゃないっつの(涙
 てか、ぶち壊す方法よりも暴走させない方法が先に来るあたり、真面目にどうにかしてたと思います。ごめんなさい。

 ともあれ……やることは決まった。
 では、やった後、どうするか。
posted by たきのはら at 16:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その3:学究の徒の言い分

 というわけで得た情報を元に行動方針を立て、各々行動開始。
 まず、下水道の探索に関しては、とりあえず探索するだけはしたし、状況はわかったのでシュノープレーを呼び出して結果報告しよう、ということに。とにかく状況がコレでは自分らだけでどうなるもんでもないし、上手くいけばシュノープレーを先に立てて魔法使い連中のたくらみをどうにかしちまおう、と(最初ナイト・ハグだと思っていたのでSRめちゃ高いはず、とか思ってたのだ。実はグリーン・ハグだったそうでちょっとしょんぼり)。てなわけで街中には特に有力な知り合いのいないアルテアがこちら担当。手紙を書いてチーズに緑のリボンで結んでついでにネヅミを捕まえて伝言して……と、必ず今夜「ロバと天秤」屋に来てもらえるように手配。

 スルカスはケイヴァー溜りへ行ってクラークに報告。
 「ああ、下水道だけどな」
 「……何が居たんだ?」
 「鮫と蟻だよ」
 「はぁ?」
 とかステキ会話の挙句、クラークの胃炎と顔色はもう一段階悪化し、そらそれとしていくら街の最有力圧力団体というか市政にもっともかかわりの深い団体だといっても公共の下水道であやかしい実験など、学園のやりようはあんまりだ、きちんと調査が可能なように正式な委任状を出させるよ、ということに。

 ルーネスも元締めのいるキャラバンへ戻って報告ついでに状況確認。元締め曰く、ロー教授? ああ、ティラノサウルスの口に首突っ込んだりする奴だろ? あいつぁニコニコ笑ってるようでえらくがめつい男だ。それから、獣やら何やらがちっとも怖くないみたいなんだ。もっというと力を恐れているのかいないのかよくわからないってところか。ああ、学園? そういえば最近、なんかスペルプールを作るとかで妙な資材を色々買い込んでるな。で、それが出来た暁には、学園が配布したバッジを持ってるとそこから呪文が落っこってくるようになるんだそうだよ。てか、もうバッジの見本も納品されてるみたいだな。学園の紋章を彫り込んだちょっといい細工物で、それに学園側でしかるべき魔法処理を施すらしい。そっちの責任者はオルドロン教授って変成術学科長だ……

 うわぁ。

 そして真打のウィチカはキースと共に学園へ。
 まずはハンス教授の元に行くが教授は不在。その辺りにいた後輩に聞くと、教授は今いらっしゃいませんが伝言がありますよーとメモを渡してくれる。開くと一行「謹慎しろ」。

 うわぁ。

 といわれても何もわからないまま帰るわけにはいかないのだ。
 ウィチカ、今度は真っ直ぐ召喚術学科へ。顔なじみのこわもて助手、カール・セガール(ちなみにセガール助手には従兄弟がいて、某所でコックをやっているらしい)に案内されて行くとちょうど何やら巨大怪獣によじ登ってその耳を引っ張っているところ。

 「おお、君かね、占術学科長の横っ面をひっぱたいたらしいな」
 ヤなとこで有名になってるなぁ、とか思いつつ、ウィチカ、まっすぐ言い放つ。
 「教授、あの地下のフォーミアンは何ですか」
 教授、はははと笑い、
 「ああ、あれかね、ジュイブレックスが暴走しないようにあそこに置いている」
 ジュイブレックスっつったらアビスの222層にいるデーモンロードで粘体の王である。ウィチカの顎がかくんと落ちる。
 「いったいなんでそんなものを」

 教授、笑ってない目で笑い、ウィチカに――ウィチカのみに、言う。ちなみに教授の視界には確かにキースはいるのだが、その目にはキースは明らかにまったく映っていない。話すべき相手として認識していないらしい。
 「これを聞いた以上君は我々の仲間だ。では説明しよう」

 我々はスペルプールを作ることにした。今までなかったから。大量の呪文をコントロールするハブとして強力な魔力が必要であることは自明、そしてそのハブの素体としてウーズに魔王の一部を融合させることに成功した。それが、あそこにある。
 「そんな……あそこの上には街があるんですよ!! 失敗したらどうするんですか」
 「失敗したら? 次はもっと上手くやるさ」
 「試験体Xの脱走とかだってあったじゃないですか!!」
 「ああ、あれで粘体封じ込めカプセルの弱点がわかった。おかげで完全なカプセルが完成したよ」
 「でも、あなた方が実験をしているのは公共の下水道……!!」
 「君は……この街は何のためにあるかわかっているのかね? マルドゥーング魔法学院があるために、この街はできたのだよ? この街の存在価値の本質は言わずともわかると思うが」
 「……なんてことを!! 万が一のことがあったらどうするんですか」
 「そのときは凍結保存すればいい。
 ……さて、これを聞いた以上、君も我々の仲間だ」
 「仲間、ですか。
 ……では参考までにひとつ伺っておきますが、今の実験はもうじき実用段階に入るとかそういうものなのですか」
 「いや? 入ればいいなとは思っているが」
 ふむ。つまり例のフォーミアンが言ってた「あと10日ここにいる」ってのはあと10日で自分たちは契約が切れるってことで、あと10日で恐るべき実験が完成してとかそういうわけじゃないのね。てか、つまり、これは「壮大な実験段階」なのね。
 ウィチカが眉根をひそめながら考えをめぐらす(実際には外野も一緒に明かされる情報を総合しつつやいのやいの言ってる)間に、教授、思い出したようにひとこと。
 「……ああ、君はハンスの弟子だったな。では、言うことはひとつだ。『好きにしろ』」
 「……」
 「あの男、『しろ』といわれたことをするときの効率の悪さはそれこそ酷いもんだが、自分から事を起こしたときの効率の良さは目を見張らせるものがある。君も同じ人種だろう」
 「……わかりました。あなたがたのやり方は気に入りません。好きにさせていただきます」

 言い放ってウィチカ、退場。なお、キースは「ああ俺下民代表かよ!!」とか言いつつ何度か反論を試みていたのですが、一言たりとも相手にはしてもらえませんでした。
posted by たきのはら at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その2:呼び出された支配者

 坑道の本道はいったん深い裂け目に阻まれ、そしてその裂け目の中から青光りする巨大な鉤爪が現れた。続いてずりずりと這い上がってきたのは背中に鞍をつけた見覚えのあるランドシャーク。因縁浅からぬチビハゲエロオヤジことヴィッキー・フランの乗騎である。しかしその鞍に主人の姿はなく、そして件のランドシャーク自身やせこけ憔悴しきった姿になっている。変わり果てた巨獣は攻撃を仕掛けようとするが、狭い坑道に阻まれて鼻面を突っ込むことしか出来ない。先頭のキースがその顎の下に干し肉をばら撒く。一瞬肉に気をとられそうになるが、だが何かが無理やりにその意識を攻撃に向けさせている……

 ああお前こんなところで生きていたんだな、操られているのか、俺たちがわからないのか、とか、微妙にステキシーンが展開してるんだけど、そらそれとして何とかしないといけないわけで。で、夜目持ち以上ならわかるんだけれど、裂け目の向こうには石畳の広場が広がり、その手前部分には黒いオベリスク、そしてその奥には同じく黒い水盤。やばすぎる。そしてオベリスクの脇には赤銅色に鈍く光る肌を持つ、巨大なアリのような生き物が立っている。
 「ジャイアント・アントじゃなさそうね」
 「……フォーミアンだわ、あれ。でも、普通のじゃない。タスクマスターだわ。他の生き物を操る能力があって……」
 「つまり、あれがあの可哀相なランドシャークを操ってるって訳ね。……なんとかならないもんかしら」

 てなわけでウィチカはちょうど手近にいたアルテアにフライの呪文をかけ、アルテアは通路に詰まっているランドシャークの上を跳び越してタスクマスターを攻撃の範囲内に入れる。が、これが間違いの元で、きれいさっぱりドミネイトされる。くっそぉ、エルフの素ドルイドだからWillST高いし大丈夫ーとか思ってたのに、出た目が腐り果ててたからなあ。「支配された!!」と悲鳴上げるのがやっと。

 そのときになってやっとスルカスが操られた男たちを片付け終わってやってくる。で、状況を見て取り、裂け目の向こうにいるのがどういうイキモノかウィチカから説明をうけると、ため息ひとつついてタスクマスターと交渉開始。

 かみ合ってるんだかかみ合ってないんだかよくわからない会話をしばらく続けた後、
・さっき倒してその結果タスクマスターのドミネイトが解けた男たちをまたタスクマスターの支配下に戻してやるからアルテアを返せ
・その男たちは飢えて死に掛けているから食べ物を与えてやってくれ(といって自分たちの保存食を分けてやった)
・男一人につきこちらの質問二つ、つまり計六つの質問に答えてくれ
という要求を飲ませることに成功。

 交渉の前後から知り得た情報もあわせて整理すると、状況はこんな感じ。

・フォーミアンは学園の召喚術学科の学科長、ムッツ・クォン・ロー教授との契約によりここにいる
・彼らの仕事はこの奥にあるものを守り、「局地的な法と混沌のバランスをとる」ことである
・この奥には彼のほかに彼の同族があと2体いる
・彼らはあと10日ここにいることになっている

 うわーまじめに学院の教授かよ、とウィチカ、キース、アルテアは超げんなり、そしていぶかしがるスルカスとルーネスに状況説明し(……てか、このあたりはPCとPLの反応が見事に重なった)、ともあれまずはいったん撤退、ということに。


このシーンの裏側。
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シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その1:下水道の不審者

 で、依頼を受けたとなったらあとはまぁ、どぶさらいだろうがなんだろうがやることやるしかあんめぇ、と、光源とか錬金術アイテムとか相応に買い物をし、依頼主のハグには「じゃあ様子確かめてくるから、手下のネズミ君たちには私らを齧らないように伝えといて下さいな」とお願いし、隊列整えて地下下水道へ。

 スルカスはDFOではなく、実はとても高性能のローグで、というわけで下水道の中を先行探索。
 と、わき道のほうからぱたん、ぱたんという尻尾を床に打ち付ける音が。そっと覗くと通路の奥でオオトカゲっぽいものが通路のレンガの目地にびっっっっっしり生えたキノコを絶賛お食事中。うわぁ、とばかりそのわき道の前をひっそり通過し、先を確認するがその先は行き止まり。つまり進むべき道の先にはトカゲ氏がいるということを戻って報告。ってか通達。

 スルカスの話からアルテアが判断するに、それはどうもモニター・リザードらしい。でもあの連中、キノコもまぁ食べないことはないけど肉食なんだよねぇ、てか、下水道にそこまでびっっっっっしり生えるキノコなんかあったっけ、とか思いながら先に進む。
 で、通路の先に居るのは確かにモニター・リザードであること、目地に生えているのは普通のキノコなんだけど異常増殖してることを確認。ともあれトカゲ氏にはどいてもらわないといけないので、キースが干し肉を手に先行、交渉を試みるも、最近キノコばっかりで肉を食べてなかったトカゲ氏にとっては干し肉よりもキース自身のほうが魅力的に見えちゃったみたいで。
 戦闘開始。でも、いくつか鼻面を殴られるとトカゲ氏はこりゃたまらんとばかり逃げていく。そして逃げていった先のほうからちりんと鈴の音。うわ、魔法の警報が仕掛けられてる、とウィチカ。

 とにかく警報が鳴っちゃったのはどうにも剣呑だ。ちょっと気をつけて進まないと。トカゲのいた道の中ほどに扉があったので開けると、どうやらそこは下水道整備用の資材置き場らしい。このあたりの下水道を使用している貴族達の雇われ人のものらしき下水道作業用のお仕着せとかもあったので、適宜それを着こんで(何かあって見咎められたときに、や、我々ここの整備担当員とそのボディガードでございと主張する気だったのです)、その上でスルカスが先行。
 そして、トカゲ氏がアラームを作動させたと思しきあたりのちょっと手前に、うかつに開けると鳴子が鳴るように仕掛けられた(ドワーフ的には)大層つくりの粗い隠し扉を発見。鳴子の仕掛けを回避して扉を開け、そこまでは仲間を呼んでおいて、さらに扉の中へと進む。扉の外に残された一行は、警報鳴っちゃったしまずいんじゃないかとか、いやでもアレ鳴らしたのトカゲだし、トカゲはこの中に普通に居るんだからあの警報は普通にしょっちゅう鳴ってるんじゃないかとか、そんな狼少年みたいな警報だったら誰も反応しないんじゃないか、いったいどういう意味があるんだろうとか、あれこれ首を捻っていたり。

 隠し扉の中は土を掘りぬいた空洞をを補強したような形になっている。補強の木材は古いものもあり新しいものもあり、どうも一度は使われなくなった坑道を新たに補強したものらしい。で、スルカスが進んでいくと人声が聞こえる。

 「鈴が鳴ったから見て来い、って、アリが言ってるぜ」
 「鳴子は鳴らなかった。どうせまたトカゲだろう」
 「だが見てこなかったらまたアリにどやされるぜ」
 「しょうがねえ、誰か見に行くしかねえな」
 「ああくたびれた、アリの奴らめ、俺達が死ぬまでこうやってこきつかうつもりなのかなぁ」
 ……アリ?
 ともあれ、声は三人分。どの声も憔悴しきっている。

 やがて誰か一人が行くことに決まったようで、弱い蝋燭の明りを掲げてふらふらと近づいて来た姿をみてスルカス仰天。なんと近づいてくる男はケイヴァーの制服を着込んでいる。すばやくわき道に隠れ、男が通り過ぎようとするところを捕まえて引きずり込む。お前ケイヴァーだろう、どうしてこんなところに居る、何をしているんだ。男曰く、そうだ、俺はケイヴァーだ、アリに捕まって従わされているんだ。そこまで何とか言ったところで顔色を変える。しまった、奴に気付かれた。逃げろ!! 同時に男の口は「侵入者だ!!」と叫んでいる。

 扉の外で様子を伺っていた面々にもその声は届く。すわ、と、坑道内に駆け込むが、そこはそれこそ一面にカビやキノコが繁茂しており、足元が悪い。森渡りはカビ・キノコ渡りではない、ということでアルテアも条件は同じ。残念。

 そのまま細くてわき道の多い坑道内で展開。「ナニモノかに操られていると思しき」三人の憔悴しきった男たちとの先頭になる。こちらは人数が多いので、手が空いているものはわき道からの新手を警戒しつつ戦闘終了を待っていると、突然坑道じゅうにキースの素っ頓狂な声が響く。

 「うわぁ、あのチビハゲエロオヤジの乗騎が!!」


このシーンの裏側。
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シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』その0:緑の魔女

ええと。
実は第11回の記録がホントにメモ程度しか残っていませんで……
というわけで、第11回のレポートは「12−0」としてまとめることといたしますm(_ _)m

なお、第11回および第12回には、ゲスト・キャラとして

スルカス(ドワーフ・ローグ):上下水道並びにエンドゥー・ガルダの都市機構の地下部を維持する技師集団(ある程度の警備も行なう)ケイヴァー(穴倉屋)の熟練工。PLふぇるでぃんさん。

ルーネス(人間のクレリック):道と通商の神の司祭。若くて美形。PLてつさん。

のお二方が参加されてました。

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

 魔法市のときに高級化粧品を景気よく売りさばき「お気に召した方には今後もお届けいたしますよー」とやらかしたはよいものの、最初の一日はうっかりして「お届けは大陸内にお住まいの方に限らせていただきます」と付け加えるのを忘れてしまっていた。
 ミスすると悪いことはきちんと起こるもので、「夜泣き島」とかいう、一般に使われている地図のはるか外側にあるような島に住む魔女から「ちょっと、続きが届かないんだけどどういうことよ」とクレームがつく。クレームは、直接は旅と通商の神殿の元締めのとこに届き、そこから若い神官(美形)のルーネス(PLてつさん)がクレームを伝えに「ロバと天秤」屋にやってくる。ちなみにクレームの内容は「届けるというのに次の品が来ないのはどういうことだ、きちんと対処するように。この件についてはエンドゥー・ガルダに住む妹のシュノープレーに中継ぎを頼むこと。それから妹に一か月分の化粧品を私からの贈り物として渡してください。あ、最後のに関してはお代は払います」とかなんとか。

 一方、ケイヴァー(『穴倉屋』、街の下水道の管理をしている面々の総称)の中の一匹狼、ドワーフのスルカス(PLふぇるでぃんさん)のもとに、上司のクラークが泣きを入れてくる。最近下水道の中を地下の深いとこから上がってくる剣呑な連中が徘徊してて大変なんだ、担当違いなのはわかるが手を貸してくれ。

 で、スルカスが下水道に出向くと出たのはフック・ホラー。あっという間に買ったばっかりの高品質のバトルアックスが一度もヒットしないまま粉砕され、こりゃいかんということになったのがちょうど「ロバと天秤」屋の地下室〜下水道への出入り口の脇。で、こちらもちょうどルーネスが訪ねてきていて話をしていたところに地下から凄い音が響いてきて一大事を知ったウィチカ、キース、アルテアそしてちょうどいいあんたも一緒に来いとか言われてまきこまれたルーネスが飛び込んできて(このときはベラは学園に預けているので不在)加勢、どうやらフック・ホラーを片付ける。

 という、なんか凄くアレな出会い方をした一行。危機を助けてもらった恩があるから何か困ったことがあったら協力するが、とスルカスが言って、とりあえずゲストお二人を迎えたパーティーが結成される。で、困ったことといえば現状なんとなく困っているわけだけど、まさか地図のはるか彼方の夜泣き島まで行くというわけではないし、連絡すべき相手と打つべき手ははわかっているから、今度何かあったらよろしくお願いしますということに。ちなみにシュノープレーはこの街の下水道に住んでいる緑衣の貴婦人で、そしてネズミたちを操るのだという。

 まぁ、このシュノープレーを呼び出してなんとか姉上様にとりなしてもらわなければならない、と、「シュノープレーを呼び出す儀式」であるところの「緑の布切れと手紙を結びつけたチーズを下水道に置く」ということをやってみると、夜半、澄んだ笛の音と共にネズミたちを足元にまつわりつかせ、左右をワーラットに守らせた美女がやってくる。

 が、この美女、キースを見るやとたんに様子が変わり、凄い勢いでセクハラをしかける。で、尻を撫でられたキースは感づいてしまうのだが、この緑衣の麗人はハグがポリモルフした姿であった!!
 なんとか言いつくろってハグをつれたまま部屋の中に戻り、体勢を立て直そうとするキース、が、状況を素敵な感じに誤解したアルテアがハグ(の化けた美女)に詰め寄ってしまい、事態は一触即発。ハグは逃げ失せ、「姉上様にとりなしていただく」どころの話ではなくなってしまう。

 その話を聞いたスルカス、呆れ果てて「まったく若い者は」とぶつくさ言いながら、大人力を最大限に発揮。まずきちんとした宴の用意を整えさせ、ネズミのためにもチーズを用意させ、キースには「尻ぐらい撫でられたって減るもんじゃなし」と言い聞かせ、で、改めてシュノープレーを呼び出す。

 礼を尽くした詫び言……というよりはキースに思う存分セクハラできて機嫌が直ったシュノープレーは姉へのとりなしを引き受け(3か月分の化粧品を無償にて差し上げるということで話はまとまった)、ついでに最近下水道が何かと物騒なのでどうにかして欲しいという。

 なんでも地下の深いところから剣呑な連中がちょくちょく上がってくるようになったし、妙なカビやきのこが生え始めた。さらにこのカビやきのこを餌にする生き物も増え始め、下水道内のバランスが崩れている。
 また、一方で丘の上の魔法学院の連中が下水道を仕切って何やら忙しげにしているが、そのあたりで何か良くないことが起こっているようだ。魔法学院が仕切ったエリアに近づいたネズミやワーラットがそのまま行方不明になったりもしている。さらに言うなら、あのあたりで今まで見たこともないウーズが出たという話もある。どうにもうっとおしいので、様子を確認し、何か悪いものがいるのならきれいさっぱり退治して欲しい……ということらしい。

 うわーどぶさらいかよ、とか、それにしても学園がらみで妙なウーズって……と、かつて『公衆衛生狂騒曲』事件で実験容器から逃げ出したっぽい謎ウーズのことを思い出したりとか、まぁいろいろ思いつつ(そしてキースはハグなんかにセクハラされたというのでおもいっきりげんなりしつつ)次回へ続く、となった……のがちょうど第11回の話。

 シリーズ第12回はそれを受けての話となります。

posted by たきのはら at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第12回『地下に眠る陰謀』前口上

 前口上もへったくれも!!
 2006年7−8月あたりに第10回を遊び。
 その1年後に第11回を遊び。
 第12回は2007年1月ごろだった様子。

 ……ええ、mixiの日記には一応記録が残ってるんです。
 当方一時期妙に殊勝らしい気持ちを起こしまして、「mixiで仮レポートを書き、ご一緒した人に読んでもらってチェック入れていただいてからblogに本レポートとしてアップする」とか言い出してですね。

 教訓:
 できることと出来ないことをわきまえましょう。


 時間に比して書く量が増えたり、それ以前に日常がバタバタだったりして――ええ、破綻いたしました。

 それからなんだかだと忙しくしていたのですが――あ、D&D関連でちょっぴり翻訳のお仕事なんかもさせていただいたりしてまして――いや、やっぱり落ち着いて遊んで、落ち着いてレポートも書こうよ、みたいな話をいたしまして。

 で、渡竜は第12回で「第1部・完」っぽくなっていたのですが、近日中に第2部をはじめましょうてなことになりました。
 となると、いままで穴だらけだったところを補って、物語をもう一度繰り広げなおして……

 というわけで、結局「仮レポート」をそのままblogに持ってきただけのような形ではありますが、第11回・第12回を整理してみるような次第ー。
posted by たきのはら at 16:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

記録と表現のルール(まとめ)

 というわけで、写真関係を中心とするあれこれ(たまに脱線してるけど、まぁ、それはご愛嬌ということで)をまとめてみました。

 あ、結局、発端となった事件については……私個人に関して言えば、基本的に楽屋を出た時点で肖像権は放棄してる(か、主催者に預けてる)ので(いや、そうじゃない方も大勢いらっしゃいますよ?)権利問題は言い出せない。

 てなわけで、舞台写真の私的撮影がNGな理由として、今回、私が主張できるのは

・上演中は私的撮影はNG、とアナウンスしたのに無視された
・やはりファインダー越しでなく見てほしかった
・一般座席でカメラを構えたりフラッシュを焚いたりするのは周囲のお客様にも出演者にも迷惑

 ということで、マナーがらみでNG、ってことでよかったようです。
 まぁ、こっちでNGっつったらNGなんだから、「劇場のルール」とも言えそうだけど……
 あー、やっと最初に戻ってきた。
 そして正しい対応ができててよかった><
 
*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

そして、調べたことをざっとまとめると、

そのI

・人はそっとしておいてもらう権利がある
・人は不愉快な思いをしない権利がある
・それを撮影者は侵害してはならない
・侵害したら不法行為だからね
・これはルールでもあるので、
 せめてルールはきちんと知って、守ってね

そのII

・権利侵害をしないためにはどうすればいいか
 ……撮影、公表の許可をきちんと取りましょう。
・最近は技術の進歩で世界のありようが変わってきました、
 なあなあでは済まなくなりつつあります。

そのIII

・実際に写真を撮るときの心得
 ……誰もがイヤな思いをしない表現を。
 これは許可を得るときにもいえるし、
 もっと言えば他の表現を行なうときにもいえるんだと思います。

そのIV

・ちょっと脱線。プレイレポートや録音について

そのV

・著作権は撮影者に属する権利。写ってしまった人の権利ではありません。
・そらそうと、著作者は、著作行為を行なうに当たり、
 自分の著作物が他の人の各種人格権を侵害しないようにしなきゃなのです

という感じ。

 結局、

・権利は法で守られるべきものとして存在する
・写される人の権利が第一である
・権利放棄は黙示でもできるが、許可の有無で揉めないように、コミュニケーションはきっちり取ること
・コミュニケーションを取る際には高いモラル意識と、なぜこの写真を撮るのかという目的意識を強く持つこと


てな感じになるのかしらん。
そしてこれは、その他の表現すべてにおいていえることだな、と。

そして最後にいえること――自戒もこめて。

かかわった人にとって、いろんな意味で「プラス」になる表現を!!

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

そして、くりかえしになりますが……

ご留意いただきたいこと。

・上記のテキストには法律関係のことについて述べた文章が混ざっていますが、たきのはらは法律の専門家ではありません。文章中の法的な解釈は、すべてたきのはらが「こういうことなんだろうな」と独自解釈したものですので、決してそのまま丸呑みすることなく、何かありましたら、法律の専門家にまずはご相談下さい。

・本文中に法的に誤った解釈等、指摘すべき点がありましたら、その旨、takinohara@gmail.comまでご連絡いただけると、大変ありがたく思います。

もうひとつ:

本稿へのリンク等はご自由になさってくださって構いません。ただ、できれば、この「まとめ」のページにリンクしていただけると助かりますm(_ _)m
どうぞよろしくお願いいたします……

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

参考文献。

上記の文章を書くに当たって、以下の書籍を参考にいたしました。

1)著作権法講座 教育・研究・創作者のための著作権読本/作花文雄 著/CRIC 社団法人著作権情報センター/平成15年
2)プライバシー権・肖像権の法律実務/佃 克彦 著/弘文堂/平成18年
3)判例六法 平成20年度版/有斐閣
4)スナップ写真のルールとマナー/日本写真家協会編/朝日新書/平成20年(第4刷)
posted by たきのはら at 15:25| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

記録と表現のルール(V)

 やれやれ、すみません。
 レポート……とか言い出すとついアタマが堂々巡りに><
 というわけで本題に戻ります(^^;;;)

○著作権・著作隣接権:

 そしてとても誤解されやすい権利。
 著作権は、写真を撮った人、文章を書いた人、ともかく「著作者」を守るためのものです。写真の著作権、といえば、写真を撮影した人の権利です。写真に写っている人の権利ではありません。

 また、著作隣接権というのは、著作権の一部で、実演(演奏、歌唱、上演、舞踏など)・レコード(録音媒体に固定されている音の総体。実演を固定したもの)・放送及び有線放送(放送・有線放送される音または映像の送信信号)の各種について、「それそのものは著作物ではなく、関わっている人たちも著作者ではない場合もある。しかし、『著作物を世の中に伝達するために演奏・歌唱等を行なう実演家や、商品として完成させるレコード製作者、広く世の中に拡布する放送事業者の存在が不可欠であり、また、これらの実演家等は著作物の伝達を担うだけではなく、その程度や内容はさまざまであるが、創作的な行為をも行なっているものと評価できる』*1として、著作物に非常に近いところで著作に近い活動を行う人やその活動そのものを保護するものです。

 音楽で言えば、自作を演奏するのであれば演奏者は著作権者であり、著作隣接権者でもあります。他に作詞者・作曲者がいるのであれば、詞の著作権は作詞者に、曲の著作権は作曲者に帰属し、演奏者が著作隣接権者となります。歌詞や曲は著作物ですが、実演されたものやそれを録音したものは著作隣接権によって保護されるものであって、著作物ではありません。
 なお、著作隣接権は、著作物ではないものに関する権利(規定されている報酬や使用料を貰う権利、自分の実演に際し氏名または芸名等を表示する権利・自己の名誉や声望を害するような実演の変更や切除を受けない権利等・実演の録音の権利・放送の権利、録音・録画されたものを公衆に提供する権利等)を保護するために存在するもので、著作者の権利に影響を及ぼすものではありません(*3「著作権法」より一部抜粋)。

 ……ああ、目が痛い。すみません><

 なんでこれが誤解されやすいのかというと、これも肖像権同様、人格権や財産権がらみの権利であること、his photoってのが“彼が撮った写真”なのか“彼が写ってる写真”なのかわかりづらいように、“写真に絡む権利”だというのでごっちゃになってること、あと、写真に写るという行為を表現行為と考え、著作権か著作隣接権が絡むんじゃないかと考えることから来てるみたいです

 が、著作権と『被写体となった人の権利』はまったく別のものです。

 関係するとすれば、著作者は著作権を有するが、それ以前の問題(というか、それより重大な問題)として、著作行為を行なうに当たり、他人の(肖像権をはじめとする)人格権を侵害してはならない、ということでしょうか。

 ……で、これって「関係」っていうのか?
 むしろ、著作者の義務と責任、っていう別の話のような。
 (なお、肖像権の侵害の有無とは別に、たとえば写真の著作権は撮った人に帰属します。でも、著作権があるからといって肖像権等の侵害が許されるわけじゃありません

 あ、あと、著作権ついでに
 フォトコンテスト等に応募するとき、応募作の著作権は○○に帰属します、というのは……たぶん、その写真を利用したり、その写真で利益を得たりする権利(財産権としての著作権)のほうであって、勝手にトリミングしたり加工したりする権利や、撮影者であることを主張する権利(こっちは著作者人格権になります)は譲渡することはできない……とありました*4。
 でもなんか解釈の違いでもめそうだよなあ、これ。

まとめに続く

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

参考文献。

上記の文章を書くに当たって、以下の書籍を参考にいたしました。

1)著作権法講座 教育・研究・創作者のための著作権読本/作花文雄 著/CRIC 社団法人著作権情報センター/平成15年
2)プライバシー権・肖像権の法律実務/佃 克彦 著/弘文堂/平成18年
3)判例六法 平成20年度版/有斐閣
4)スナップ写真のルールとマナー/日本写真家協会編/朝日新書/平成20年(第4刷)
 
posted by たきのはら at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

記録と表現のルール(IV)

 プライバシー権としての……というよりは、むしろ「人格権としての」って感じになってきましたが、とにかくその周囲の肖像権についてはとりあえず一段落。

 なので、その周囲の話、そして混乱しやすい権利について。

○書くことはいいこと? 拙いこと?:

 私は……ここんとこちょっとお休み中ですけど……ってか1年ぐらいお休みしてるけど……プレイレポート書きでもあったりするわけで。いや、書くから!! 書くんだから!! 落ち着いたら!! (←いつだよ)

 おいといて。
 ええ、この一章があるから日記サイトじゃなくこちらにこの文章載せたんですけれども……

 ところで、これまでこのプレイレポートって、……公表に当たって、当事者の“事前の許可”って取ってないんだよなあ。書いていくから違ったらコメントしてね、って明記はしてあるけど、「あれだけの量とスピードで書かれると、たとえ違っても言い出しにくい、あれは一種の暴力です」って言われたこともあり。
 とすると、これ、人格権の侵害にあたるのかも?

 人格権、と言ってしまうと言葉が堅いけれど、これは、不愉快な思いをしたまま泣き寝入りをする人を出さないことを目的に法規定が成されている……ことを考えると……

 唐突にレポートの話になりましたが、実は結構重要なことなのではないか、と思ったので、話を肖像権から少し離します。というのも、プライバシー権についていろいろ調べていくうちに、作家がとある人をモデルにして小説を書いた、そしてモデルとなった人が「そのことで、精神的苦痛をこうむった」と訴えた場合、作家側がことごとく負けてるという事例に気付きました。有名どころで言うと、三島由紀夫とか柳美里とか*2。

 で、プレイレポートもこれに準じるんじゃないか、と。 
 今まで散々レポート書きながら、一方で、「私のレポートはこれでいいのかしら?」と悩んでいたのですが、個人の人格権を守るための法の目的や運用を参考にして考えていくうちに、目安みたいなものが見えてきました。

 まずひとつ。
 レポートの公開は参加者全員の許可を得てから。また、PL名をレポート中に書くことについても、事前の承諾を得られない限り行なわないこと。

 その日そこにいたこと、そこでゲームしていたことを伏せたい事情があるひともいるかもしれません。
 ※実際、絶対に本名はNGとか、PC名だけで……とか、あるいは名前を出す場合は「いつ」「どこで」は伏せてほしいとか、様々なケースについて関わったり伺ったりしてるので、別に極端な話でもないと思います。

 名前を伏せてPC名だけ出すにしても、プレイスタイルで「あ、きっとあいつだ」ってわかっちゃうかもなので……とか言い出すとほんとに何も書けなくなりますが、そういうことだってあるかもしれません。最初は「名前出しOK」だったキャンペーンとかで、PC名とPL名が対応しちゃってる場合でも、途中から名前出しNGになることも考えられます。そういう場合は「諸般の事情につき今回のセッションに関してはレポートの不特定多数への公表はナシで」と当事者に主張してもらうしかありません。そして主張する機会を確保するためにも、「レポート書いて/アップしていい?」って尋ねることが大事になってくるんじゃないかと思います
 ともあれ、人には事情があるものなので、記録する際はそのあたりには十分に考慮すべきかと
 
 と、ここまではプライバシー権の範疇でしたが、「人は不愉快な思いをしない権利がある」ということをもうちょっとつっこんでみると、「どういう形でレポートを書けばいいか」ということについてもヒントが見えてきます。これは今まで自分が散々悩んできたことでもあるので(ひょっとしたらここに書くべき内容としては少し外れるかもしれませんが)ひとつの解釈として書きます。

  まぁ、ぶっちゃけて言ってしまうと、私がよくやってた“第三者視点・物語調”レポートを、当事者のチェックを入れずにガンガン書いていく、ってのは、よほど気心の知れた仲でもないと危険なのかもです逆に、気心が知れた仲であれば、レポートを書く時点で「どんなふうに書いて欲しい?」というようなやりとりを十分に行なうことも可能なので、そのような場合についてここで一般化することは、この文章の目的ではありません)。
 幸い今までトラブルはなかったけど、これは幸運な偶然。だって、物語調=神視点のレポートは、いわば欠席裁判。レポートに書かれた誰かが、「いや、自分はこんな風には行動しなかったんだけどな」「そういう意図で行動したんじゃなかったんだけどな」と思ってもうまくいえなかったり、周囲が「レポート来た!」って喜んでると言い出しにくかったりということだってあったかもしれない。

なので

・物語調レポートとか書くのは身内で遊んだ時など、事前に「どういうふうに書いて欲しいか訊ねる」等のコミュニケーションが十分に取れる(そして合意に達した)場合、もしくは“物語調”のレポートを書くことのコンセンサスが事前に取れている場合に限る

・それ以外の場合(主に、レポートの書き方に関する相談が十分に行なえない場合など)は、PL視点なりPC視点なり「これは書き手の主観が入ってます」てのがはっきりとわかる形で書く。他PCの行動意図や考えを勝手に“なりかわって”解釈した描写は避ける。――妥協案に過ぎないかもしれませんが、“神視点”で書き散らかすよりは、嫌な思いをする人は出にくいでしょう。

・レポートがアップされることの了解があらかじめ得られていないような場合は、レポートはまず参加者だけに見える形で書いて、全体公開は全員の了解が得られてから(了解がひとつでも欠ける場合は公開はしない)。

※“物語調”“神視点導入”などの書き方をやらない限りにおいて、セッション参加者のみに限定してレポートを公開するぶんには、他の人の許可を得る必要はない、自己判断のみで構わないと私は思っています。

 とかの点に気をつけるようにするといいのかなぁ。

 公開については、プライバシーに配慮する、という意味もありますが、こちらでは“神視点”だろうが“PC視点”だろうが、自分の納得していないレポートを公開されるのは不愉快と思う人もいるかもしれない、また、“公開できるように訂正してほしい”とレポート執筆者から他の参加者さんに要求するのは求めすぎかもしれない、ということで再度リストアップしました。公開しなければ、不愉快は最小限で済む……てのは甘い考えかもしれませんが。

 ただし、これはプライベート・セッションの場合で、参加者全員によるレポートの事前チェックが困難となる場合もあるコンベンションでこんなことを言っていては、レポートそのものが存在し得なくなります。そのような場合は――これはあくまでも一案ですが――「誰にも不愉快な思いをさせない、誰が読んでも楽しいと自信をもって言える」レポートをのみを(もちろん、レポートを書いたり公開したりする許可はあらかじめ得ておいた上で)書き、公開するのであれば可、ということになるかもしれません。
  
 ともかく、「書いてはいけない」のではなく、レポートを気持ちよく書き、気持ちよく読んでいただくためにはどうすればいいのか、ってことは考えなきゃいけないと思うのです。

 あ、レポートを書くことの是非については、これまでも必ず許可取ってきました。参加者は○○さん、てのも原則許可を得てからにしてたと思うんだけど……一時期どこに参加してもレポートを周囲から期待されてるとか自分で思い込んでたところもあって(書き方が“物語調”だったので、嫌がったり奇異に思ったりする人もいるかもしれない、という意識だけは何故かあって、レポート書きの許可は取っていた)そのあたりはいい加減になってたかも。うう、もし不愉快な思いをされた方がいらしたら申し訳ありません。今頃気付いても遅いかもしれませんが。……実は○○が嫌だったとかあったらメッセージ下さい。今からでも対処可能なところは対処します。

あと、レポート書く際の記録補助としてのセッション録音、これは

・周囲に目的を告げた上で録音の許可を得る
 (許可が得られなければその時点でNG)
・録音の開始と終了ははっきりと宣言する
 (許可が得られたからといっていつのまにか録音開始していたとかはNG)

という条件を満たした場合のみ可、だと私は思っているのですが……他につけるべき条件はあるかしら? 
 ま、録音したものをそのまま公表する人はいないだろうから(まぁ、許可する人もいないと思うけどな!!)この際の公表の許可……は、あ、レポートか。レポートの作成・公表の許可については前述のとおり、ということで。

 逆に考えると、写真みたいな、不特定多数と一瞬のかかわりもなく画像が手に入るものとは違って、セッションはある一定時間コミュニケーションを取り続けるものなのだから、その間に記録(まぁ、録音については最初に尋ねてNGだったらそのままNGだけど)、レポート作成・公表の許可が得られるだけの信頼関係が築ければ無問題って話でもあります。

 なんつか、ね。
 レポートって、オプションじゃないですか。
 私がオプションに手を出しさえしなければ何事もなかったものを、変にヤリ散らかしたばっかりに悲しい思いをしたり、トラブルに巻き込まれたりする人が出た、なんていったら、本当に不本意だし、辛いので……

 辛かったら最初っからレポートなんて書くな、って言われそうだけど、それでも書きたい。だから、辛くならないための方法を模索する、ルールを知っておく、というのが前向きな責任の取り方なんじゃないか、と今更思うのです。むしろ義務といったほうがいいのかもしれません。
 逆に、これを書いたり発表したりすることで嫌な思いをする人がいるかも、と不安に思うのならやっちゃいけない。自分でも確信の持てないことをやるのは無責任なことだったのだ、と。

 あ、いや、表現てのは静かな水面に敢えて石を投げ込む事、って考え方もありますが、「起こすつもりのない波、まるで意図しない波」は起こさない、ということについては、きちんと考慮しなきゃならんのじゃないでしょうか。
 それに、大波起こすつもりでセッションレポ書くとか、ないと思うしなー。
 
うげ、長くなった>< しかも大脱線した(汗
……V に続く!!

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

参考文献。

上記の文章を書くに当たって、以下の書籍を参考にいたしました。

1)著作権法講座 教育・研究・創作者のための著作権読本/作花文雄 著/CRIC 社団法人著作権情報センター/平成15年
2)プライバシー権・肖像権の法律実務/佃 克彦 著/弘文堂/平成18年
3)判例六法 平成20年度版/有斐閣
4)スナップ写真のルールとマナー/日本写真家協会編/朝日新書/平成20年(第4刷)
posted by たきのはら at 15:13| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

記録と表現のルール(III)

 法律の話は一段落。
 いろいろと四角四面なことを書いたI、IIですが、これは「トラブルの起きるメカニズム」「トラブル解消のメカニズム」を概説したようなもんで、いわば基礎のお話。てなわけで臨床……じゃねえ、現場の話に。

○表現と撮影の実際:

 実際にプロ、セミプロとして写真を撮っている友人知人数名に「あなたがたならどうする? どうしてる?」という問い合わせをしてみました。お返事がいただけたものをまとめると……

Q.撮影の許可はどうやって得ていますか?
A.
・事前に「撮っていいですか?」と、許可を得る
・距離が遠い・雑踏の雰囲気を撮ることが目的・点景として写りこんでしまう場合等で許可の取りようがない場合は仕方がないが……
・そもそも旅行の記念写真等、人物を撮る目的ではなくシャッターを切る場合と、人物を撮ることを目的としてシャッターを切る場合は別と考えている。人物を撮ることを目的とする場合はあらかじめ許可を得るか、信用できる人にとりまとめを頼む


Q.公表の許可はどうやって得ていますか?
A.
・撮影と公表の許可は同時に得るようにしている
 (撮影の許可を得る際に、撮ったら何らかの形で使用することがわかるように説明する)
・作品集を持ち歩き、「このような形で作品にします」と説明する。

Q.その他、気をつけていることは?
A.

・人物の写っている写真はWebには公表しない
・被写体となる人、とりまとめをする人は信頼できる人にする
・写真嫌いとわかっている人には最初からカメラを向けない
 (カメラが身近に存在するだけで不愉快になる人もいるので)

複数の人の回答をまとめたり並べたりしてるので、ちょっとごちゃごちゃしていますが……

その他にも本から引く形になりますが

・写真になって衆目に曝されることが嬉しくない、不快であると思われるような構図では(例え撮る側にとっては面白い構図であっても)写真は撮らない。
・隠し撮りや拒否を無視して撮るのは言語道断
・不特定多数を撮るようなものを公表する際は、自分の連絡先を明記すること
・写真に写ることが不愉快だと思われないよう、誰が見ても「いいなあ」と思える写真を撮ること
・写真を撮る際に、人に不愉快な思いをさせないよう気をつけること

……等々*4。

 えーと、ひとことでまとめると、

・撮った人も写った人も「撮って/写ってよかった」と思えるように写真を撮る

 ってことに尽きてしまうのかなぁ。そしてそのためのガイドラインとして存在するのが法である、と。
 判例とかは「トラブルが起きてしまった後」の話になるので、どうしてもきつい話になりますし、「これこれこうだから写真撮っちゃダメなんだよ!!」って話になりますが。

 もちろん、報道写真とか、社会問題を切り取ろうと言う意図のある写真だと、そうも言っていられません。災害現場の写真なんかは、写真が存在すること自体が救助の怠慢と受け取られ、激しい抗議に曝されることもあるそうです*4。そういえば、まさにその問題で、ピュリッツァー賞を受賞しながら自殺してしまった写真家もいましたよね。

 土門拳さんの『筑豊のこどもたち』だって、とても暗い、辛い写真です。でも、土門さんはその写真を撮って公表することに意義があると思い、その信念でもって、それこそ自分の人生を掛けて筑豊入りし、住民の方たちと交流し、人間関係を築き、撮影を行なった。覗き趣味で撮ったわけではない。「よかった」とは言えないにしろ、「意義があった」「撮るべきだった」ということになっているから、あの写真集は存在が許されているのでしょう。

 でも。
 それでも、どんなに写真家に信念があっても、被写体がイヤだといえばNG、というのもまた事実。
 どんな被害が起きたかではなく、イヤだ、ってのは充分理由になるのです。

 あと、「顔が写ってなければいいや」……これはNG。
 体格等から個人がすぐに特定されてしまうとか、身体の一部でも、例えば被写体の人の自身のない部分であったとか、そんなふうに自分の身体を捉えられることがイヤだとか、その写真そのものが好きじゃなかったとか、イヤだと思う理由はいくらでもあるから……というメッセージもいただきました。

 うん。私だって足が短いのや、腹が出てるのをわざと強調するように撮られたり、ゆがんで見えるようなアングルで顔写真を撮られたりして無断で公開されたら(いや、打診が来たら即座に「いやそれ公表するの勘弁」って言う……だろーなー……あー、でも場合によりけりかー……ともかく、嬉しくはないよなー……)かなり不愉快(まぁ、てめえの責任だろと言われたらその通りですが)。
 法律的なところで言うと「容貌および姿態」に肖像権はかかることになってくるので、その上でもNGだったりします。

 あと、顔を隠したりした写真って「素敵な写真」にならないと自分は思うから、そういう写真は撮らない、っていう回答もいただきました。

 私が顔隠し写真を出すのは基本的に和装関連で、これは「どんな着物、どんな帯」てのをやっぱり紹介したいから。もちろん撮影・加工・公表の許可は得た上でですが……
 
 こうなるともうひとつ、「なぜ写真を撮るのか、公表するのか」ってことも考えて、それをきちんと説明した上で撮り、公表することが望ましい、ってことにもなるのかなぁ。
 少なくとも自分の中では意図が明確でないとね。


 
○撮影と記録の実際:

 転じて記録撮影。
 以前イベントスタッフをやっていたこともあって、このあたりについては私自身もう少し考えなければならなかったかなぁ、と。

 不特定多数の人が集まる場所である状況を記録したい、それには不特定多数の人が写りこんでしまう可能性が非常に大きかったり、そもそも不特定多数を写すことが目的だったり。

 このような場合は、いろいろな考えを持つ人を相手にするということ、そして被写体とのコミュニケーションがだいぶ減ってしまうことから、法的な観点からいろいろと手を打たざるを得ないんじゃないかと思います。
 あと、それがきちんとできてないと、主催者の信用度ががた落ちになったり、起きなくてもいいトラブルが起きたり。

 そすと、取りうる手段としては以下のようなものが考えられます。

1.最初から問題になるようなものは撮らない
2.撮っていい人、撮っちゃダメな人がそれぞれ抵抗なく意思表示できるようにして、撮っちゃダメな人は撮らない
3.明らかなプレススタッフを用意、プレスの立ち位置や撮った写真の公表範囲を周知して、写りたくない人は避けてもらう
4.参加者に最初から肖像権を放棄してもらう


 とか、そんな感じになるのかなあ。そしてこれらの立ち位置のいずれを取るのかをあらかじめ明確にして、フェアなやりかたをしていると認めていただくとか。
 ……自分がイベントスタッフやってたときは、この辺の認識が極めて甘く、大変に周囲に面倒をかけました。ごめんなさい。今頃謝っても多分遅いけど。

 ちなみに、最後のは極論でも暴論でもなんでもなく、実際の話です。アメリカの話ですが、スポーツの試合会場に中継が入る日のチケットは事前に「この日に入場したら肖像権ないよー」って明記されてるそうです*4。
 確かに、最近の高機能カメラをもってすれば、観客ははっきりと個人特定されるぐらいの解像度で写りこんでしまうし、それで肖像権を言い出されたら中継そのものが不可能になってしまう。さらに、アリーナで試合中に観客が絶対に写りこまないアングルでのみ撮って試合の中継を行なうとか、無理ですから。

……IV へ続く

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参考文献。

上記の文章を書くに当たって、以下の書籍を参考にいたしました。

1)著作権法講座 教育・研究・創作者のための著作権読本/作花文雄 著/CRIC 社団法人著作権情報センター/平成15年
2)プライバシー権・肖像権の法律実務/佃 克彦 著/弘文堂/平成18年
3)判例六法 平成20年度版/有斐閣
4)スナップ写真のルールとマナー/日本写真家協会編/朝日新書/平成20年(第4刷)
posted by たきのはら at 15:05| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

記録と表現のルール(II)

 肖像権の定義についてはひとわたり書いたので、「じゃあどうしましょう」ってなことを。

○権利侵害をしてしまわないためには:

先に答えを書いちゃいますと、

・写真は許可を得て撮影すること
・事前に公表の条件を知らせたうえで公表の承認を得られた場合にのみ公表すること


 許可は別に口頭でも構いませんし、「黙示」という「結果的にそうなった」ってものもありますが……ともかく。
 理由や解説は以下の通り。ざっと4項目に大別できます。

1.権利の侵害は不法行為になります。パブリシティ権についてはお金が絡むのでまた別の話になりますが、プライバシー権については「不法行為の違法性は被害者の承諾によってキャンセルされる」ので、肖像権侵害の場合も被害者の承諾があれば、違法性はキャンセルされます*2。

 あ、えーと、被害者だの不法行為だの、言葉はとってもきついんですが、結果としてそういうことになるです。ひとつ覚えておかなきゃなのが、プライバシー権侵害というのは親告罪(当事者が「これはイヤです!」と言った時点で罪になるもの)だということ。だから、逆に被写体となった人が気にしなければ結果的には「何事もなかった」ってことになるんです。これが「潜在的に不法行為が存在しており、承諾があった時点で不法行為でなくなる」のか「トラブルがあった時点で遡って不法行為になる」のかはなんだか偉く諸説あるっぽいのですが、確実なことはひとつだけ。当事者(場合によっては当事者の保護者も)がOKっていったらOK、NGっていったらNG、なのでOKをちゃんと貰うこと

2.もうひとつ、大事なこと。肖像権は「撮影されない権利」「公表されない権利」の双方を内容とするため、承諾は「撮影」「公表」の両方に必要です*2。

 撮るのって公表前提なんじゃ……? って思ってることもあるかも。でも、撮ってその人が個人や家族で見ているぶんにはいいけど、不特定多数の目に触れるのはイヤ、ということは有り得ます。
 てか、デジカメと個人ブログがこんなに「ごく普通」じゃなかった頃って、写真って撮っても自分や家族、せいぜい周囲の友人知人が見るものでしたよね?
 公表、って、本来はデフォルトじゃなかったのです。

 あと、話は少しずれるのですが、公表にもいろいろあります。最も“公”表度が高いのは、実はブログやサイト等への掲載。誰でも見られる上に誰でもその写真をデータとして「持っていって」しまうことができます。加工とかだってできるし、下手すれば悪用も……

 また、フォトコンテストへの応募とか、紙焼きの作品として発表するとかといった公表のスタイルもあります。この場合、その画像を目にする人の数とかアクセス難易度とか、写真の再利用の可能性とかは、Web上にアップするものとは全く違ってきます。


3.承諾を(特に「公表」について)行なうにあたり、どのような条件下において公表されるかで承諾の可否が変更される可能性があるので、どのような形で公表するかは事前に提示し、承諾を得た条件下でのみ公表の違法性はキャンセルされます

 ……あ、そろそろ自分の日本語がおかしくなってきたので判例を借りよう。

 「肖像権を放棄し、自らの写真を公表することを承諾するか否かを判断する上で、当該写真の公表の目的、態様、時期等の当該企画の内容は、極めて重要な要素であり、人が自らの写真を公表することにつき承諾を与えるとしても、それは、その前提となった条件の下での公表を承諾したに過ぎないものというべきである」(東京地判2001(平成13)年9月5日)*2)

 これ、もともとは前に撮って公表のOKも貰ってた写真を、全然別の雑誌記事に(それもかなり侮辱的なものに)つけたんでうったえられたとかそういう事件のものです。
 ここまで極端ではないにしても、カップルでもないのに「カップル」ってキャプションをつけられて公開されたら困る、とか、そういうレベルから考えられるので、公開の形式はきちんと相手に伝えて了承を得ないとNGです*4。

そうして、写真の白黒が曖昧になる元凶みたいな最後の項目。

4.承諾の有無は当事者の意思解釈の問題であり、明示のみならず黙示(公表されるだろうということがあらかじめわかる場合に、特に公表を反対しないということで、結果的に承諾した形になるもの)のものもあってよいものなので、黙示の承諾の有無が問題になります。

 また、これまでは「『みだりに』撮影・公表してはならない」の「みだりに」の部分がいわゆるバッファーゾーンとして(つまり、「確かに正式な手続きを踏んではいないが、この程度なら不法行為にはならない――『みだり』ではない」とされる)働いてきましたが、近年は、プライバシー権に関する意識の向上や、肖像撮影や公表がデジタル化し、公表された際の閲覧や保存がとても簡便になってしまった等の理由により、肖像権侵害の判断は厳格になってきています。

 Ex.銀座の公道を歩く一般の人(原告)の写真を本人の承諾なく撮影してウェブサイトに掲載した行為に付き、「原告の容貌および姿態を捉えたものであることが容易に判明するような形」での掲載が相当性を欠くとして肖像権侵害の成立を認めた(東京地判2005(平成17)年9月27日*2)
 
○もし、侵害してしまったら……:

 不法行為である以上、「やらかした場合どうする」についても法的に定められています。こうなると、人間関係のトラブルどころの話ではすまなくなります。

・金銭賠償:肖像権を侵害する行為は不法行為を構成する。したがって、肖像権を侵害されたものは加害者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求できる(民法709・710条)。「損害」としては、精神的損害その他の無形損害のみならず財産的損害(肖像権が侵害されたことにより、何か金銭的な被害が発生した場合や、訴訟となった際の弁護士費用)も含まれる。

・回復処分:侵害行為に対し、侵害者に謝罪広告その他の回復処分を行わせる。

・事前差し止め:公表される前の事前公表差し止め(撮影のみ行なわれて、出版やアップロード等の公表がまだだった場合)
(以上、2より)

……IIIに続く

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参考文献。

上記の文章を書くに当たって、以下の書籍を参考にいたしました。

1)著作権法講座 教育・研究・創作者のための著作権読本/作花文雄 著/CRIC 社団法人著作権情報センター/平成15年
2)プライバシー権・肖像権の法律実務/佃 克彦 著/弘文堂/平成18年
3)判例六法 平成20年度版/有斐閣
4)スナップ写真のルールとマナー/日本写真家協会編/朝日新書/平成20年(第4刷)
posted by たきのはら at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

記録と表現のルール(I)

 お久しぶりです。
 最近活動場所をmixiに移したら、すっかりこちらに出てこなくなっておりました。で、mixi外の友人から「いいかげん本家サイトにもレポートをちゃんと掲載するように」とクレームが来ちゃったりして。

 ともあれ、暫く引きこもっているうちにテキストもそこそこ増えましたし、ようやく遊ぶ余裕も出てきたし、こちらも立て直して……ということで。

 まずは、プレイレポートじゃないのですが、ちょっといろいろあってまとめてみたテキストを。

ちょっとご留意いただきたいこと

・以下のテキストには法律関係のことについて述べた文章が混ざっていますが、たきのはらは法律の専門家ではありません。文章中の法的な解釈は、すべてたきのはらが「こういうことなんだろうな」と独自解釈したものですので、決してそのまま丸呑みすることなく、何かありましたら、法律の専門家にまずはご相談下さい。

・本文中に法的に誤った解釈等、指摘すべき点がありましたら、その旨、takinohara@gmail.comまでご連絡いただけると、大変ありがたく思います。

・追記:
本文中の“*○”は参考文献の番号を示します。

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

発端。

 先日、母の友人で写真を趣味にしている方から、「ちょっと昔のものだけど……」と、封書が送られてきました。
 開けてびっくり。3年前の私の発表会の舞台写真です。
 (当然、“客席からの舞台の写真撮影はお断り”してます)

 困った。すげえ困った。目上の方だし母の人間関係をこっちからぶっ壊すわけにもいかないし、カメラマンさん(いわゆる“発表会写真のプロ”の方)と写真家さん(師匠の舞台をずっと撮り続けている芸術写真家……で、ニュアンスわかるでしょうか?)の両方が入ってる舞台だから、「一眼レフ構えてバシバシ撮ってる人もいたのに、なんで私が撮るのはダメなの?」とか言われると説明が非常に面倒だ。うっかりすると角が立つしなあ。

 結局のところ、こんなふうに言いました。……母に><

・写真は嬉しいけれど、できればファインダー越しでなく見ていただきたかった。
・たまたま私は気付かなかったけれど、踊っているときに客席でフラッシュを焚かれると凄く怖いし、演技にも悪影響が出かねない。
・こちら側からは、他のお客様の鑑賞の迷惑となることから、写真撮影はやめていただくようアナウンスしているので、それには実のところ、従ってほしかった。
・写真家さんは確かに入っているけれども、他のお客様の鑑賞の迷惑にならないところに位置取りし、フラッシュも焚かずに撮っていただいている。

 たぶん、適宜説明して、以後、二度と劇場内ではカメラを引っ張り出さないように諭してくれるのではないかなぁ(母が)。発表会とかだと、この手の“完全に善意”の困った方が量産されるのでホントに困るのです。

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

派生。

 で、どーやって説明すべーかなー、と、あれこれ調べてたわけです。結果的には、あまりこのケースに有効な説明がみつからず(そして実際にトラブルになりかねないことが起きちゃった後だと、法律だなんだと持ち出すと相手が善意なだけによけい根を深くしかねないので)、上記のような説明になったんですが……てーか、今回のはマナー&誰か(主に記録写真を撮ってる撮影会社さん)の権利、の問題っぽいんですよね。

 せっかく調べ始めたんだし、そういえば某書に触発されてカメラ楽しそうだなーとか思い始めたし(その前にビデオ買わなきゃだよ!! 稽古記録用に!!)、以前にDACのスタッフやってたとき、参加者の方たちの肖像権と記録写真についての立ち位置の整理は後にバトンタッチした状態で来ちゃってるから、せめて自分の中ではきちんと整理しておきたいし。

 というわけで、写真撮影に絡むあれこれについて――ぶっちゃけると、肖像権とか著作権とかルールとかマナーとかのあれこれについて――最後まで調べきってみました。
 いや、自分が調べきれるとこまで、が正しいか。なにしろいろいろと灰色だったり白だったり黒だったり、灰色が白になったり黒になったりする分野なので。

 すると、結構重要なこと、表現者として知っておかなければならないこと等々、多々出てきましたです。
 自分ひとりの知識にしておくのはもったいないので、日記にしてみる次第。え、自己満足? ……うみゅー><

*****☆*****☆*****☆*****☆*****☆*****

そして、本題。

○そもそも、肖像権とは:

 「肖像権」とは、法文上明定されているわけではありませんが、判例及び学説において、憲法あるいは民法・不法行為法に基づき法的に保護すべき権利として認められてきたものです。あ、ちなみにこれは、「人格権としての肖像権」のほう。

 憲法、てのは第13条の「すべて国民は、個人として尊重される」ってところ。「個人として尊重される以上、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有する」という解釈になるわけです*4。

 ここでちょっと厄介なのは「法文上明定されているわけではない」「判例及び学説において」というあたり。つまり、写真を撮ること自体がそのまま違法というわけではないんです。トラブルが起きたら憲法や民法、不法行為法に則って処断しますよ、ということ。そしてまぁ、トラブルが起きた時点で相当高い割合で「違法」ってなるんですけど。特に最近は。

ともかく肖像権の定義そのいち、人格権(プライバシー権)としての肖像権:一般の個人に対して適用されるもの

@みだりに撮影されない権利(撮影の拒絶)
A撮影された写真、作成された肖像を利用されない権利(公表の拒絶)

をいう*2。これに関する判例としては以下のようなものがあります。

 「通常人の感受性を基準として考える限り、人が濫りにその氏名を第三者に使用されたり、又その肖像を他人の目にさらされることは、その人に嫌悪、羞恥、不快等の精神的苦痛を与えるものということができる。したがって、人がかかる精神的苦痛を受けることなく生きることは、当然に保護を受けるべき生活上の利益であるといわなければならない。そして、この利益は、今日においては、単に倫理、道徳の領域において保護すれば足りる性質のものではなく、法の領域においてその保護が図られるまでに高められた人格的利益(それを氏名権、肖像権と称するか否かは別論として。)というべきである」(東京地裁昭和51年6月29日判決「マーク・レスター事件」より*1)

 「個人の私生活上の自由として、人は、みだりに自己の容貌ないし姿態を撮影され、これを公表されない人格的利益(いわゆる肖像権)を有し、これは、法的に保護される権利であり、これを侵害すれば、民事上不法行為が成立し、損害賠償の対象となると解される」(東京高判2003(平成16)年11月10日*2)

※「マーク・レスター」事件とは、英国の子役俳優マーク・レスターの出演映画「小さな目撃者」のワン・シーンをロッテ製品のコマーシャルに利用したものであり、日本の裁判例において、最初にパブリシティの権利の概念を明確に認めたものです(なお、ここでは、パブリシティ権に言及する前に人格権としての肖像権に言及している部分を引用しています)。

 つまり、このあたりのあれこれを要約すると、

・人はそっとしておいてもらう権利があり、それは憲法をはじめとする種々の法律でも保障されたものなので、その容貌や姿態を写真に写したり公表したりすることで、それを侵害してはならない。

ということになります。

○もうひとつの肖像権

 肖像権にはもうひとつあり、「財産権としての肖像権」「パブリシティー権」等と呼ばれます。お金が絡まない限り関係ないので、一般人にはほぼ関係してこない問題だと思っていたのですが、撮影された写真が商材として取り扱われる場合、金銭が絡んでくるので、こちらの肖像権についても問題が発生するようです*4。

 というわけで、肖像権の定義そのに、パブリシティ権としての肖像権:肖像の主体が芸能人やスポーツ選手など、その容貌や姿態が世に著名なものの肖像権について適用される。

 これらの者は、その肖像が報道等においてある程度利用されることはその性格上やむをえないことであり、肖像権のうち人格的な利益の確保(プライバシーの保護)の面では通常人の場合に比して、ある程度の制約があるものと考えられている。
 他方、これらのものの肖像には経済的名価値があり、その法的保護が必要となる。つまり、肖像の利用に対する本人の財産的利益を保護する権利であり、人格権というよりも財産権に分類されるべきものである。*1、2)
 これに関する判例としては以下のようなものがある。

 「俳優等は…人格的利益の保護が減縮される一方で、一般市井人がその氏名及び肖像について通常有していない利益を保持している」「俳優等の氏名は肖像を商品等の宣伝に利用することにより、俳優等の社会的評価、名声、印象等が、その商品等の宣伝、販売促進に望ましい効果を収め得る場合があるのであって、これを俳優等の側から見れが、俳優等は、自らかち得た名声のゆえに、自己の氏名や肖像を対価を得て第三者に専属的に利用させうる利益を有しているのである。ここでは、氏名や肖像が…人格的利益とは異質の、独立した経済的利益を有することになり(右利益は、当然に不法行為法によって保護されるべき利益である。)、俳優等は、その氏名や肖像の権限なき使用によって精神的苦痛を被らない場合でも、右経済的利益の侵害を理由として法的救済を受けられる場合が多い」(東京地裁昭和51年6月29日判決「マーク・レスター事件」*1)

 パブリシティ権は肖像に関する財産権ともいえるので、一般人であってもお金が絡めばこの種の問題が生じるのは先に述べたとおり。具体的には、撮影や写真使用の許可があらかじめあった場合でも、その写真を商用利用して金銭が発生した場合はちゃんとその旨対応しなきゃダメよってことです。

 逆に言えば、ブログに無断で写真を載せてトラブッちゃった、というような場合、問題になっているのは(通常は)プライバシー権としての肖像権についてであり、パブリシティ権についての肖像権に関しては問題にならない――というか、元から無関係です。ここで「“肖像権”と名前は同じでも、まったく性質の異なるものが存在する」ことへの理解がないと、問題の本質とは無関係なところで泥沼化しかねません>< 要注意そのいち、です。

余談:学説とか表記とか

 さっきから、人格権としての、とかプライバシー権としての、とか表記が揺れていますが、これについては私が素人調査をしたかぎり、「学説が一定してない」ってところのようです。えーと、人格権とプライバシー権は並列であるとかどちらかがどちらかを内包する、とか。

 とりあえず便利と見た目のため、以後は「プライバシー権としての肖像権」「パブリシティ権としての肖像権」で表記します。法学的根拠はゼロですが、きちんと調べようとすると3年経っても一行も書けないとかなりそうなので、とりあえず勝手に妥協してます。もし何かミスがあった場合はご指摘を願います……が、議論することはできませんので悪しからずご了承願います。いや、単に私の実力の限界なんだけど。

……IIに続く。


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参考文献。

上記の文章を書くに当たって、以下の書籍を参考にいたしました。

1)著作権法講座 教育・研究・創作者のための著作権読本/作花文雄 著/CRIC 社団法人著作権情報センター/平成15年
2)プライバシー権・肖像権の法律実務/佃 克彦 著/弘文堂/平成18年
3)判例六法 平成20年度版/有斐閣
4)スナップ写真のルールとマナー/日本写真家協会編/朝日新書/平成20年(第4刷)


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