2005年05月03日

真夏の夜の夢(その8:エピローグ)

 気がつくと、ヴァレンティンは祭壇の上、ベネディクト師の後ろ――すなわち自分の普段の定位置に立っていた。目の前ではちょうど婚礼が進行中。最後に「祝福」を与えねばならないのにヴァレンティンはどこへ行ったと師匠が焦った顔でぶつくさ言っている。

 「どうされました、お師匠様。
 私は先ほどからここに居りましたが――」

 雷撃に打たれた焼け焦げの法服のまま、そ知らぬ顔でヴァレンティンは進み出た。そうして何事もなかったかのように――幸いなことに今朝方準備したまま残っていた――《祝福》の呪文を唱えたのだった。
 唱え終えて列席者へと視線を移し……ヴァレンティンはひそかに苦笑した。
 花嫁側の家族席の先頭で、花嫁のまだ小さい弟が、あいもかわらず悲しそうなふくれっつらで姉の花嫁姿を眺めているのが見えたのだった。


 その後、ヴァレンティンが神殿の文書を紐解いて調べたことに拠ると、この聖カスバート神殿は、古い昔、キーオランド王国の初代王朝が最初の居城――城といってもそれはちょうど砦程度のものだったようだが――を置いた、ちょうどその場所に立っているのだった。

 フランとオアリディアンの長く続いた戦の後、フランの姫とオアリディアンの王子の政略結婚によって和平が成立したという。この婚姻によって立った王の名はグラグトール、后の名はミッドサマー(夏至)と言った。この婚姻を喜ばぬものが妨害を行ったが、それはフランの王タートルの道化と、道化が呼び寄せた異国の使者たちの活躍によって鎮められ、婚姻は滞りなく行われた。こうして立ったのがキーオランド第一王朝である。また、グラグトール王の宮廷には、王の義理の弟にして怜悧な知恵者、フォックス(狐)候が相談役として仕えたという。王朝は長く栄え、今に連なるキーオランドの基礎を築いた。

 しかし、また一説には、キーオランド第一王朝は幻の王朝だったとも言う。
 政略結婚はフランのフォックス王子の反対工作によって潰え、両家を結ぶはずだった婚姻の儀式は血の婚礼となったとも――

 いずれにせよ――
 そう呟いて、ヴァレンティンは嘆息したのだった。
 それは史実の光の細る伝説の時代の話、真実を指し示すものは何も残っていはしない――ただひとつ、その婚姻の場を知るものの記憶を除いては。

 あれ以来、クルトとガルツの姿を見たものはいないのだ。そうしてヴァシュマルもこの地を立ち去ったという。なんでも、もう婚礼はこりごりだと言っていたとか。そして私は――

 私は未だここにいる。
 ならば、棍棒の先に真実を運び、棍棒の後に真実を伝える言葉をもって、あのときのことを記しておくのが私の務めではなかろうか。
 そうして、ヴァレンティンは慣れぬペンを取って覚書を書き始めたのだった。


***


 夏至が過ぎ、いよいよ盛りに向かうある夏の夕暮れ。
 街外れの古い小屋の一室に香を焚き染め、占い婆エンディカは一心に水晶球を覗き込んでいた。
 婚礼の日に街に使いにやったきり、ガルツが帰ってこないのだ。街に行けばこんな街外れよりも楽しいことはたんとある、若い者のこと、しばらくは遊んで来たいのだろうさ……そう思っていたのだが、いくらなんでも遅すぎる。それになにやら今朝から嫌な胸騒ぎがしてならない。

 ガルツの行方を占っていたエンディカは、やがて深い溜息をついた。
 水晶球に移ったのは古い古い骨。しかもそれは聖カスバート神殿の礎石のはるか下、あり得ないほど古い地層に埋まっているのだった。どうやらガルツは……時の彼方に攫われていってしまったものらしい。
 夏至にはいろいろなことが起きるとは聞いていたが――

 エンディカは小さく首を振ると「そういうこともあるかもしれないねえ」と、誰言うともなく呟き、窓を開けた。見上げた空には、あの日から少しばかり位置の移った星がうっすらと光り始めていた。


***


 髭ある竜の背に家を建てよう
 家の守りは拳と棍棒
 踊って明かす夏至の短か夜
 この世はなべてこともなし!


        ――キーオランドに伝わる古謡
       

このシーンの裏側。
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真夏の夜の夢(その7)

 大扉を入り、宴席を見渡す。
 笑い交わす人々の殆どの身体に致命傷が刻まれているのを、今度は四人全員が目にした。頭を割られているもの、手足が千切れ飛んでいるもの。老王タートルの顔には紫色のしみが浮き、美しい姫君はその首周りに締め上げたあとが禍々しい蛇のように巻きついている。
 そうしてもちろん、クルトの目には、広間の片隅にうずくまるまじない師と暗殺者の姿。
 宴席を見回していたヴァシュマルの目がすぅと細くなる。「一回目」に屋根の上にいた曲者が、フロッグの姿を見てなにやら目配せをしているのを見止めたのだ。

 老王が笑いながらフロッグに何事か呼びかける。
 「ええ、このもの共は今日の佳き日に御前を賑わせるため、このフロッグめが招いた遠来の芸人でございます……」
 答えて言うのはおそらく、いかなる芸ができるのだということだろう。クルトがうなづき、進み出る。まずはこっそりヴァシュマルにヘイストの呪文をほどこし(そのとき、広間の隅の二人――鳥かごを持った女まじない師と、二本の短剣を持った男、不可視の術のかかった二人――の顔が、微かにひきつったのがクルトにだけは見えた)、その後、別の呪文で作り出した「見えざる手」を操って、先ほど老王が口にした毒杯を宙に浮かす。
 と、グラグトール王子が何やらわめいて宙に浮いた杯に手を伸ばした。そうだ、この杯は花嫁が花婿に差し出すはずのものだったな。クルト、微かに顔をしかめ、一瞬後、酒盃の中身を床にぶちまける。王子はそれはもう全く訳のわからない雄叫びを上げて宴席を飛び越えてきた。よほど血の気が有り余っているらしい。
 「ええ、仕方のない王子様だ」
 ヴァレンティンがつぶやいた。そうして、「よし、時の車輪がきしみ始めた……なんとかここを凌げば」と顔をこわばらせながらもかすれ声で言うクルトの隣に進み出る――呆れたことに手槍を構えて。だがその顔には敵意の欠片もない満面の笑み。クルトの顔が殆ど痙攣を起こしそうになっているのに、「なぁに、いつものことですよ。それに目の前の連中が酔っ払った鍛冶屋や肉屋の一団より正気だとも思えませんしね」と言ってのけ、そうして先ほどクルトがこっそり示した広間の片隅のあたりに《解呪》の力を飛ばす。まじない師の女の姿が現れ――だが暗殺者のほうは出てこない。
 一座がざわめく。これは――何事?
 そういっている暇に、ヴァシュマルは先ほどフロッグを殺した曲者の一人と渡り合い始め、一方ガルツはフロッグが慌てて走り去ってしまわないよう、その襟首をむんずと捕まえ、自分の隣にかばいながらもう一人の曲者と剣を交え始める。だめだ、ここにいるんだ。お前が逃げ出せばお前の敵は俺なんざ放り出して、お前の喉首を突き通しに来るんだぞ。

 見苦しい、酒の一杯やそこらで、とウッドオール王にたしなめられたか、グラグトールはうなり声を上げはするものの殴りかかっては来ない。それを認めると、ヴァレンティン、にっこり笑って槍を収める――そう、正気を保って楽しむというのは良いことですよ、鍛冶屋の宴席仕様というのも結構役に立つものですね。そうして口の中でぶつぶつと呟いているのはカーム・エモーション《心鎮め》の呪文か。――そのあたり一帯の人々の表情が、苦々しげではあるものの、とりあえず一触即発という風ではなくなっている。ほっと一息ついた瞬間、まじない師の女が声たかく何事か叫んだ。続いて雷撃が二発。あっと思うまもなく、クルトが黒こげになって倒れる。もう手の施しようがない。

 広間の反対側で声が上がった。暗殺者が振り上げた刃がスネークを掠めたのだ。だが、スネークは辛うじて凶刃を逃れている。時の車輪がきしむ。それを聞く男はもうこの世にはいないが。フロッグをかばいながら戦うガルツは、みるみるうちに傷だらけになってゆく。フロッグが死ねばまた世界は「繰り返し」てしまう。クルトが倒れ、「三回目」に勝ち目はない……なんとしてもここで「二回目」を終わらせるわけにはいかん。目の前の曲者をとうとう切り伏せ、もう一人の曲者がヴァシュマルにかかりきりになっているのを見て取ると、ガルツはフロッグを人のいないほうへ突き飛ばしておいて走り出した。斬らなきゃならんやつは、まだ、いる。
 「せっかく成るはずの和平を何故ぶち壊すのです、愚かな!」
 ヴァレンティンが声高に叫んだ。言葉が通じなければ棍棒にモノを言わせるまで。走りこんだヴァレンティンのメイスがうなる。よろめく暗殺者。続けて飛び込んできたガルツが一撃。だが辛うじてこの世に踏みとどまった暗殺者は目の前のガルツに最後の力を振り絞って短剣を突き立てた。たまらず倒れるガルツ。ヴァレンティンの顔から血の気が引く。だめだ、――手の施しようがない。ヴァシュマルの拳が暗殺者をあっさりとあの世に送ったものの、ガルツは帰ってきはしない。

 「カイウェン、カイウェン!!」
 グラグトール王子は隣の姫君を人質よろしく抱きすくめ、余った片手でどうやら両手剣を構えると、声高に呼ばわった。広間の反対側の隅に立っていた男が微かに顔をしかめながら剣を抜いて進み出る。一方でフランの王子も声を励まして手勢を呼び立てる。二人の老王がそれぞれに正気を保っているらしきあたりがまだ救いか、とはいえ沸騰直前の怒りの坩堝の中で、こちらに残ったのは――


***

ヴァシュマルに後を託すと私は王族たちの前に進み出ました。
覚悟は出来ていました。何、しくじればどのみちこの場にいる誰もが命がないのです。
通じはしない制止の言葉と共に、私は武器をその場に投げ捨て、
祈りの形に手を組みました。
そうして精一杯の微笑を浮かべ、
二回目にして最後の《心鎮め》の呪文を唱えたのです。
二人の王と花婿は剣にかけた手を下ろしました。
オアリディアンの戦長も剣を収めました。
しかしフランの若君は止まりません。
声を励まし、手勢を呼び立てました。
が――聖カスバートに御栄えあれ――答えたのはわずかに数人。

手勢が頼りにならぬと知って、フランの王子は自ら剣を抜き、花婿に斬りかかりました。
しかし、それを見ながら私に出来るのは祈ることのみ。
祈りをやめればたちまちのうちに静まったはずの怒りが再燃するのですから。
一度、二度……振り下ろした剣は幸運にも空を切り、そうしてついに若い王子は
自分の行為の不毛さを悟ったか、はらはらと涙を流しながらがっくりと膝を尽きました。

私の背後では、ヴァシュマルがフロッグに襲い掛かった曲者を片付け、
さらにまじない師の女も倒したようでした。
怒りの火が消えたのをようやく見て取って振り向くと、
スネークが倒れたまじない師の女の身体を抱き起こし、悲しげに俯くのが見えました。

フロッグが今は喜びに顔を輝かせ、
またもや米搗きバッタのようにお辞儀を繰り返していました。
二人の老王と、若夫婦と、それからおそらくは姉の政略結婚が許せずに
今度のことをたくらんだに違いないまだ若い弟王子も、
私たちに向かって深々と頭を垂れていました。
それは全て幻の中の眺めのようで、そうして……

 このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 00:21| Comment(4) | TrackBack(0) | Tales of MiddleAges | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月02日

真夏の夜の夢(その6)

 あわや大流血沙汰、と思った瞬間、世界がまたぐにゃりとゆがんだ。
 と思うと、一行四人は、最初にこの世界にやってきた草地に立っていたのだった。

 空を見上げると、星の位置も最初に見たものと同じ。ふむ、とクルトはつぶやく。時間の円環の中に閉じ込められたか。傍ではフロッグがやはり米搗きバッタのようにお辞儀をしながら何事か叫んでいる。

 「何を見た、クルト。顔色が悪いぞ」
 ヴァシュマルが言った。
 「破滅の予兆と、その実現を――ヴァシュマル、お前は」

 それぞれの語ったことをまとめると、ざっと次のようなことになる。

 宴の最中に魔法の力が途切れ、ヴァシュマルはフロッグの言っていることがわからなくなってしまった。頼みの綱としていた人物に、突然言葉が通じなくなったことに怯えて逃げ出したフロッグを追って外に出ると屋根の上に二人の曲者が待ち伏せており、その一人が投げた槍でフロッグは喉を貫かれて絶命(とヴァシュマルが言ったとき、クルトは何やら納得したようにうなずいた――そう、最初に時を越える前、クルトは怪しい乞食男の喉首に赤い染みがあるのをおぼろげに見たのではなかったか)。ヴァシュマルは曲者を追って屋根に上り、連中と死闘を演じたのだが、一人を殴りつけて屋根から転がし落とし、どうやらもう一人も片付けられそうになったとき、急に建物の中が騒がしくなった。そして、死んだはずのフロッグの唇がふるえ、何事か苦々しげにつぶやくのが何故かふと目に映ったかと思うと、急に世界がゆがみ――そして気がつくとここにいたのだ、と。

 一方、クルトは宴席に連なる人々の殆どが、生きているのが不思議なほどの手傷を負い、血まみれになっている姿を幻視したのだという。そうして、いくらもしないうちに、殺戮の幕が上がりそうになり――次の瞬間、世界がゆがんだのだ。

 「間違いあるまい、俺たちは何やら呪わしい時の円環の中に閉じ込められたのだ。そしてどうやら、殺戮の幕が上がる前にことを納めることを期待されているのではなかろうか。そうして……うむ、俺たちだけは『時の円環』と共に『回って』はいないようだな」
 「それは……?」
 「俺たちが生きている限り、俺たちはきっと何度でもこの時間のこの草地に戻ってくる。だが、あの広間で傷を負えば、俺たちは傷を負ったままここに戻ってくるし、使ってしまった呪文は使われたままになる。そうして、俺たちは『ここ』に戻ってくるわけだから、絶対に『明日』はない。――つまり、新たに呪文を覚えなおすことは不可能、というわけだ」
 「ふむ。……クルト、《不可視視認》の呪文はまだ残っているのか?」とガルツ。
 「いや。今はまだ魔法の力が続いているが……切れてしまえばそれきりだ」
 「では、急がねばなりませんね」
 言うと、今度はヴァレンティンが《言語理解の呪》を唱えた。今日の婚礼の儀式の最中、ベネディクト師が祭文を読むのにつっかえたときの用心に準備してあったのだ。こうしてこれが役に立つのもおそらくは神の恩寵――
 そうしておいて、ヴァレンティンはフロッグに微笑みかけたのだった。

 「ああ、あなた様はわたくしの話していることがお分かりになる。おや……あなた様が?」
 そう、とヴァレンティンはうなずく。1度目はヴァシュマル、2度目は私だ。行こう。

 道々フロッグが語ったことによると、どうやら一行はフラン人とオアリディアン人の政略結婚の場に居合わせたようなのだった。オアリディアン人に攻められたフラン人は、やがて砦を作ることを覚え、その後両者の力は拮抗し、戦は何年も続いた。そして双方ともが戦に飽いた頃、賢明なるタートル王は婚姻にて和議を結ぶことを申し入れ、受け入れられたのだと。
 ――おそらくはどちらかの陣営にその結婚を喜ばないものがいたのであろう。そうヴァレンティンは思い、全てのフラン人がその結婚を喜んだのかとフロッグに問うたのだが……どうやらヴァレンティンの身振り手振りは酷い誤解を招くばかりなので時間の無駄はやめたがいいということが知れたに過ぎぬ。

 なおもフロッグが語るのによると、オアリディアンの王の名は豪勇並ぶものなきウッドオール、そして今日の花婿は先陣を駆ける死とも呼ばれたグラグトール王子だという。また、二人につき従うオアリディアンの戦長は傷負わずのカイウェンといって、いかな戦士といえどもその身体に刀傷を負わせることはかなわないという剛の者……

 そう言ううちに砦が見えてきた。
 「急げ。《不可視視認》はもう長くは持たんぞ」
 クルトが鋭く言い、一行は「フロッグの招きに応じて参内した遠来の芸人」という触れ込みで宴会場に乗り込んだのだった。

このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 22:34| Comment(2) | TrackBack(0) | Tales of MiddleAges | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

真夏の夜の夢(その5)

広間は着飾った人々であふれ、笑いさんざめく声に満ちていました。
正面の豪華なテーブルについているのは、花嫁花婿とその父たちに違いありません。
堂々たる押し出しの老人と、歴戦の勇者といった若者。
似通った面差しを見るまでもなく、
花婿たるオアリディアンの王子と父王と見て取れました。
王子の隣に並ぶのは美しい娘、
その隣に立つフランの父王はいかにも老賢王といった風。
その隣に位置を占める、引き締まった面差しの若戦士は、
あれはフランの王子でしょうか。

我々の眼からすればいかにも質素な――しかし華やいだ宴でした。

と、その時私の目に何か不穏なものが映りました。
目の前で和やかに談笑している祝い客のうち、ひとりの娘さんの頭に
ぱっくりと傷口が開き、たらたらと血が流れ落ちているのです。
あ、と思い、目を擦ると、どうやら見間違いだった様子。何もありません。
その時、急にフロッグが外へと走り出しました。
ヴァシュマルがそれを追って走ってゆきます。
何事、と思ったときには、私たちは既に宴の中に入ってしまっていたのです。

***


 新しく入ってきた客人に、話しかける人々。クルトは何やらエルフ語風の言葉を話す宮廷魔術師風の男に竜語で答え――どうやら双方共に古い言葉とあって、辛うじて通じないこともない様子なのだ――何やらかみ合わない会話をしている。その上……これはどういうことだろう。クルトが何か一言言葉を発するたびに、魔術師は聞いてはいけない言葉を聞いたかのように顔を顰めるのだが……。
 その隣でものめずらしげに周囲を見回すガルツ。どうやらこの建物は随分古い様式のようだが……ふむ、建物自体はそう古くはないな。が、焼け跡だの矢傷だのには事欠かない。目下現役中の砦といったところなのは確かだな……
 一方でヴァレンティンはというと、さっき頭から血を流しているように見えたオアリディアンの娘さんについ歩み寄ったのが運の尽き。いきなり気に入られたようで、踊りの輪の中に引き込まれてしまっている。まったく異なる二つの部族の婚礼とあって、由緒正しい輪舞曲などが踊られているわけもなく、踊りといっても手に手をとってくるくる回るばかり。そもそも輪舞のステップなど生まれる前の世界やも知れず。

 スネーク(蛇)と名乗る魔術師との会話の最中に、クルトはふと花嫁花婿の座を見やった。ちょうど花嫁が酒盃を取り、花婿に渡そうというところ。その杯を脇から花嫁の父が笑いながら取り上げる。まずは父王に注いでおくれでないかとでも言ったのか……
 微笑ましく眺めているクルトの目に、恐るべき光景が映った。
 酒盃を飲み干した父王の口から血が糸を引いて落ち、そうしてフランの王はばったりと倒れたのだ。騒然とする人々。
 毒殺か、それとも目に見えぬ襲撃者でもいるのか――クルトが急いでシー・インビジブル《不可視のものの視認》の呪文を唱える。と。
 
 たちまち視界の端に浮かび上がる怪しい二人。一人は鳥かごのようなものを掲げたまじない師風の女。もう一人は短剣を両手に構えた男。男のほうはスネークを狙っているような――
 「危ない!ガルツ、刺客だ、魔術師を守れ!!」
 叫びに応えて走りより、闇雲にスネークを床に引き倒そうとするガルツ。なにごと、とうろたえてガルツを振りほどいたスネークは、次の瞬間刺客の短剣に両脇腹を裂かれてばったりと倒れてしまう。人々がいっそう慌て騒ぐ中、「鳥かご」をささげ持った女はオアリディアンの人々へ向かって歩いてゆく。「鳥かご」の中には妖精のようなものがいて、それが小さなフィドルを構えて弾き始めると――そのへん一帯にいた人々の殆どがフィドルの音の操るままに踊り始めてしまったのだ。その中にはもちろんヴァレンティンも――

 「ええい、坊さんのくせに何をやってるんだ!!」
 ガルツが叫ぶが、ヴァレンティンは情けない悲鳴を上げるばかり。振りほどこうとした娘さんの力が存外に強く、どうにもこうにもならないのだ。もっとも娘さんとしては突然の人殺しに驚き、踊り続ける自分の足におびえ、頼りになりそうな青年にしがみついているだけのことかもしれないが。
 ともあれ、なんとかここを凌がねばならない。クルトは烏に指図してまじない師の女の頭上を飛ばせ、ガルツとヴァレンティンにはあの烏の下に曲者がいると叫んでおいて、やおら女にグリッターダスト《きらめく微塵》をぶちまけた。何もなかったはずの空間に金粉まみれの人の姿が浮かび上がる。

 狼狽した女は、それでも「鳥かご」をささげて進み続け、ヴァレンティンは何とか娘さんを振り切って、くるくる踊りながらメイスを構える。オアリディアン王家の王と王子が怒り狂った叫び声を挙げるのを合図のように、満場の人々もそれぞれに足は踊り狂いながらもぞろぞろと剣を抜きつれ……



 このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 17:39| Comment(2) | TrackBack(0) | Tales of MiddleAges | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

真夏の夜の夢(その4)

 フロッグは一行を連れてずんずんと歩いてゆく。
 砦の柵の入り口を通過しようとした時、門の脇に槍を携えて立っていた男の一人がフロッグを止め、何事か言った。おそらくフロッグの後ろに続く四人を誰何したものだろう。

 「おお、これは今日の佳き日をにぎわせるために、道化めが遠路はるばる招いた芸人一行にございます……」
 芸人?顔を見合わせる一行四人。ヴァシュマルが進み出、男の一人に向かって修行者式の礼をしてみせる。まぁ芸人かもしれないが、只者でもないことを示したつもり……なのだが、槍持ちの男、きょとんとした顔をしているばかり。
 ふむ、つまりそういうことか、と一行納得する。
 「今」は、「はるか昔」なのだ。
 はるか昔、フラン人がまだ各地に隆盛を誇っていた頃の時代であり、しかもまだこのキーオランド一帯には異国の修行者がやってくる前の時代なのだ。クルトあたりの頭の中では忙しく年代記のページが繰られているのだが、一方「神は紙に記されて死んだ言葉など喜ばれない」と言い切って恥じることなかったヴァレンティンのほうは自分の神殿の来歴に何やらかかわりがあるのであろうなぁと何となしに思ったばかり。

 歩きながら見ると、柵の内外に立っているテントは二種類。柵の内側はテントというよりはティピー。柵の外側には簡易式のテント。おおそうだ、とヴァレンティンが言う。
 「先ほどフロッグ殿も『今日の佳き日』と申されておいででした。今日はひょっとして、こちらでもご婚礼があるのではないでしょうか。しかも違う部族のものどうしの婚姻……」
 まったくありそうなことだと応えて、クルトが使い魔を調べにやる。と、どうやら「柵の内側」の部族は赤銅色の肌の頬に渦巻き型の刺青を施した人々。おそらくはフランの部族。そうして「柵の外側」の部族は黄色い肌にがっしりとした顔つきの人々、おそらくはオアリディアンの部族。ただしテントの内外にいるのはフランだろうがオアリディアンだろうが皆みすぼらしい身なりのものばかり。思うにもう婚礼の式典は始まっているのであり、ここにいるのは身分の低い者たちばかり、花嫁花婿や身分の高い人々は建物の中ではなかろうか――

 というわけで一行、フロッグの導くままに建物へと入ってゆく。


このシーンの裏側。
posted by たきのはら at 16:40| Comment(1) | TrackBack(0) | Tales of MiddleAges | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

真夏の夜の夢(その3)

 気がつくと一行が立っているのは森の中の空き地。
 空を見上げれば先ほどと同じ星空。
 ……というのであれば、一応ここは先ほどと同じ場所で、時も同じ夏至の宵なのであろう、と、何の確証もなく思うクルト。

 男は四人を前に米つきバッタのようにお辞儀を繰り返し、何か言い募っている。とはいえ、世界の風景は変わったが男の言葉がちんぷんかんぷんなのはまったく変わらない。
 と、ヴァシュマルが急にぶつぶつと何やらつぶやき、それから男の肩に手を置いた。あ、とヴァレンティンが頷く。人は見かけによらぬもの、この下男風の男も神に仕えるものだったのか。

 ヴァシュマルが使ったのはコンプリヘンド・ランゲージ《言語理解の呪》。神の御力によって、触れているものが発する言葉や記された文字の意味を解するのだが――つまりこれは、今夜の「かきいれどき」に、種々雑多な酔っ払いが自国の言葉で酔いに任せた注文をおっぱじめるのに応対するときの用心にと用意しておいたものだったのだ。

 他の三人に向かって俄かに説明を始めたヴァシュマルに、男は顔を輝かせる。
 「ああ、あなた様は私共の言葉がお分かりになる、お分かりになるのですね。
 私はこの谷を治めるフランの酋長、タートル(亀)王の道化にて、フロッグ(蛙)と申します。実は大変よくないことが起きそうな気がして、あなた様たちに助けていただきたいのです」
 いったい何が起きるというのだ、と問おうとして全員ハタと困る。《言語理解の呪》は相手の言葉を理解することのみが可能になる呪文。こちらから相手に話しかけることはできない。そうして、「自らの知らぬ異言を話すための呪文」など誰も用意がないのだった。

 「ところであなた様は私の言葉がお分かりになるという。ならば、私共の言葉でお話いただけないでしょうか」
 フロッグに頼まれ、困り果てたように首を振るヴァシュマル。
 「お分かりにならない……?あなた様は私の申し上げることはお分かりになるのに、お話いただくことはできないのですか?」
 それはもう物凄い勢いで首を縦に振るヴァシュマル。いぶかしげな顔のフロッグ。

 「ええ、それは……」
 今度はヴァレンティンが聖印を取り出し、それに向かって拝むまねをしてみせる。
 「私……神……祈る。あなた……話す。私……わかる」
 しばらく必死に身振り手振りを続けると、突然フロッグ、顔を輝かせて深々とうなずき、
 「おお、そうです。私は(といって、腰に下げた皮袋の中の酒らしきものを口に含み、ふぅと噴出すと口からごぉと火がほとばしった)このような芸を生業にするタートル王の道化めにございます」
 どうやら「話す」のつもりの身振りは「火を噴く」に取られた模様。

 かくして行き違いも甚だしいやりとりが散々に混迷を極めた後、とうとうヴァシュマルが名案を思いつく。地面に亀の絵を書き、そこへ蛙が四人の人間を連れて向かっている図を描いたのだ。
 「おお、そうでございます。私はタートル王の道化で……」
 ええい、いいからそこに俺たちを連れて行ってくれ、と言いたいクルト、フロッグの手を取ってずんずん歩き出し、しばらく行って不意に止まる。途方にくれた表情をして見せ、それからフロッグを押し出し、拝むようにしてみせる――タートル王のもとに急ぎたいが、どう行けばいいのかわからない。どうか案内してくれ……

 今度は腑に落ちたようにうなづくフロッグ。四人を連れて歩いてゆく。
 そうして着いた場所には、柵に囲まれたそこそこ大きな二階家がひとつ。家というよりは砦といったほうがよさそうな無骨なつくりである。そうして、建物の周り、柵の内外にはいくつものテントが立ち並んでいたのだった。

 そのとき、ヴァレンティンはふと気付いた。
 先ほどの場所が広場だとすると、この砦があるのは――ちょうど聖カスバートの神殿の礎石がある場所ではないか。



 このシーンの裏側。
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真夏の夜の夢(その2)


そのとき。
祭りと婚礼、ふたつの祝い事でごった返す人々の間に、
何やら風体の変わった者が混じっているのに私は気がついたのです。
小柄でボロを着たその男は、くしゃくしゃの顔に渦巻状の青い刺青をしており、
そうして祝い事にやってきた人たちにすがりつくようにして何かを訴えているのでした。

余りにも哀れっぽい様子に、私は思わずその男に近づきました。
何、婚礼の儀式の支度は全て済んだことだし、
あと、仕事といっては婚礼の儀式中にベネディクト師の後ろに立って、
師が祭文を読むのに滞ったら口添えをし、最後に花嫁花婿に祝福を与えるだけ。
それまではこの人の訴えを聞き、疲れているなら僧院で休ませてやってもよい。
そう思うほど、男は必死に何事かを訴えていたのです。

「もし」、と声をかけ、返ってきた言葉に私は随分戸惑いました。
必死に叫ぶ男の言葉は私の全く知らないものであったからです。

私のほかにも数人、男の様子に哀れを覚えたのか、近づいてきたものがありました。
一人はドワーフの技師風の男、一人はどこかの店の下働き風の男。
それに、何やら博識そうな男も中にはいたのですが、この中の誰一人として
必死の調子で何事か訴える男の言葉を聞き分けるものはなかったのです。

***



 というわけで、「訳のわからない言葉を話す乞食男」の周囲に集まったのは四人。すると乞食男は何やら四人に対して必死に拝むようにしていたのだが、急にガルツ(何しろ稼業が稼業だけあって、いちばんすばしっこそうに見えたのだ)の手を取って踊りだそうとする。いきなりのことにあっけに取られ、ステップをあわせるどころか足を絡ませ、すってんころりとひっくりかえるガルツ。がっくりと肩を落とす男。

 言葉がわからない分、態度で何か見えやしないか。クルトは懸命に男の様子に目を凝らす。男が何やら必死に訴えているのはわかる。そうして――どうやら、必死に何かを訴えつつ、しかし「助けを求めること」に、何か罪悪感のようなものを感じているらしい。これはいったい――
 そのときクルトの目にふと不思議なものが映る。男の喉首には何やら赤い染みがある。使い魔の烏が言うには、どうやらそれは傷跡のようなのだが……

 どうやらこの人は怪我をしておいでのようだが、とクルトがヴァレンティンに言いかけたとき、男は今度はヴァシュマルの手をとって踊りだしていた。こちらはとっさにステップをあわせる修行者ヴァシュマル。ひとしきり踊ると男は嬉しそうににっこり笑い、こくこくとうなづいた。いったい何のことだ、と四人が男に問おうとしたとき……


***

そのとき、夕べの鐘が鳴り出しました。
と、思うや、私たちの周囲の風景がぐらりと傾いだのです。
そして、あっと思うまもなく、見慣れた風景は姿を変え始めました。

町並みがゆらゆらと揺れたかと思うと、いつのまにかそこにあるのは
家々ではなく、年経りた大樹の茂る鬱蒼たる森となっていました。
軒先にともされた宵迎えのランタンは幻のように霞み、
明かりはまるで蛍のように――いえ、それは間違いなく蛍でした――
ちかちかと瞬きながら飛び去ってゆきました。
広場はいつの間にやわらかい草が一面に生い茂り、
そうして集まった人々はネズミやウサギに姿を変えて、
いっせいに森の木陰へと逃げ散っていったのです。

変わらないのはボロを着た男と――私たち四人だけでした。




このシーンの裏側。
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2005年05月01日

真夏の夜の夢(その1:プロローグ)

ネタばれ注意!今回のセッションはAtlas Games発行のシナリオ「The Last Dance」を使用し、舞台をグレイホークに移して遊んだものです。



***


 髭ある竜の背に家を建てよう
 家の守りは拳と棍棒


         ――キーオランドに伝わる古謡   
    


***



 いつの昔のことか、はるかな西でスエルとバクルーニーという二つの帝国が争い、互いに破滅をもたらした。スエルとバクルーニーの生き残りは、これを逃れて大山脈を越え、今日のフラネスに移り住んだ。けれども、これから起った民族大移動の主役はスエルでもバクルーニーでもない。両者に押し出された格好になった勇猛果敢な蛮族オアリディアン人である。オアリディアン人は気まぐれで暴力を好み、自己犠牲的で忠誠心が高く、その戦闘技術は卓越していた。彼らは東進して、フラン人の住んでいたこの地、フラネスに二つの大きな国を築いた。西には(その後スエル人との協力によって強盛となった)キーオランド、東には大王国(グレート・キングダム)を。



***


私の名は修道士ヴァレンティン。
聖カスバートの御心をこの世に知らせ広め、
この世が穏やかに恙無くゆくようにと日々勤めるものです。
聖カスバートは実践を重んずる神であるからして、
記された言葉をのみ云々する口先だけのともがらを喜ばれません。
真実は信仰心とその実践に宿るのであり、
いかようにも翻る言の葉よりは打ち下ろされる棍棒に宿るのです。
とはいえ、今年の夏のある日、私は知りました。
言の葉は棍棒に先立って真実を運ぶものであることを。
また、記された言葉は棍棒の後に真実を伝えることを。

よって私は、あの夏の一日の出来事をここに記すのです。
この世の誰もが解する言葉にて記す以上
私の手記は一層の真実を運び伝えるものとなりましょう。

聖カスバートの御名の下に

***



 「ガルツ! ガルツや」
 ある年の夏至の日の昼下がり。街外れの占いばあさんの家の一室でうとうとと昼寝を楽しんでいたまだ若いドワーフは、けたたましく呼び立てる声に眠い目をこすりながら起き上がった。
 「ええい、ガルツったら……いい若いもんが昼間っからなにをぐうたらしているんだい。まったくお前さんは怠け熊の生まれ変わりかね、自慢の髭の手入れ以外にすることはないのかい」
 「髭以外にもすることはあるさ、人聞きの悪い。旨い蜂蜜か蜂蜜酒が手に入るってんなら、ちったぁ気合も入れて働くさね。……で、なんだい?」
 ふぅ、とこの家の主、占い婆のエンディカばあさんは盛大に溜息をついてみせる。
 「ああ、あ、あたしゃ何の因果でこんな信用のならない使いを立てなきゃならんのかねえ。
 まぁいい、お聞き。こいつぁあたしの息子のエンディルが作った上等の蜂蜜酒だよ。こいつを街のパン屋のブトレルさんとこに届けておくれ。ブトレルさんは大変美味いパンを焼くんで、あたしゃ随分贔屓にしてるんだが、今日は一人娘の婚礼なんだそうだよ。だからね、このエンディカからのお祝いとして、一族の名誉にかけて、最高の蜂蜜酒を届けてあげたいのさ。こいつはエンディルが作った中でも最高の奴だよ。人間どもの作る水の親戚みたいなエールたぁ訳が違う。……それでね!」
 酒甕の口からほんのり漏れ出す甘い香りに、もう鼻をひくつかせているガルツを睨み、エンディカは声を張り上げた。
 「こいつは一族の名誉にかけて届けるもんだからね、言っておくがあんたがた男衆は届け物だろうが預かりものだろうが人目さえなきゃあすぐに甕の中身を喉ン中に攫いこんじまうが、いいかい、一族の名誉にかけて、一滴だって盗み呑みしたら承知しないよ!!」
 情けなさそうに首をすくめて唾を飲み込むガルツ。エンディカは忌々しそうに舌打ちし、遠縁の甥っ子の鼻をつまんで捻りあげる。
 「そうだよ、この鼻だ。この鼻がいけない……あたしがもうちょいと賢けりゃ、この鼻を永遠につまみあげておく魔法の指でも作り出したいところだよ。
 わかったかい、だったらお行き!」 

 というわけでガルツ、殺生な甘い香りを放つ荷物を担いで街中のパン屋の前までやってきた。

 花嫁はパン屋の娘。花婿は鍛冶屋の息子。
 夏至祭の宵に結ばれた婚礼は、祝福され、末永い幸せが約束されるという言い伝えがあるから、この宵に神殿の祭儀を許された花嫁花婿は随分の幸せ者。夏至祭に幸せな婚礼が結ばれればその年は祝福されるといわれているから、婚礼のある夏至祭は幸せな宵。

 というわけで、街は楽しげにごった返している。
 祭りの準備にいそしむ人、一張羅を着て街に繰り出す連中。そうして今日は店を閉じたパン屋の前では、まだ小さい花嫁の弟が「ねえちゃんが家に居らなくなるのは嫌だ」と泣いてはなだめられていたりする――


 というわけで、場所はグレイホークのキーオランド王国。ある年の夏至の日の話。登場人物は以下のとおり。

 ガルツ 
 くろがね森のはずれの田舎町から、「人間やエルフたちの建造した建物の構造について学ぶために」はるばるキーオランドの中心部までやってきたドワーフ青年。コレだけ言うと向学精神に燃える建築家志望みたいだが、実は彼の家は代々ダンジョン荒らしを専業とするローグの家系で、洞穴だけでなく建造物をも活躍の新天地として開拓すべくやってきたのだった!
 ただし、本人の関心の第一は自分の髯とハチミツであるのんびり者だとか。
 街で占い婆をやっている遠縁のエンディカばあさんの家に世話になっている。
 PL:なおなみ

 ヴァシュマル
 北方出身の司祭にして修行者。人間。
 泉の乙女ゲシュタイの司祭で、南方の緑豊かな土地を見るために旅に出たところ、途中の険しい山道で行き倒れ、そこを助けてくれた道士の薦めに従って修行した(何、お前はその弱い足でこの先を行こうというのか。それは死ににゆくのも同然だぞ。この先続くのは数え切れぬほどの万丈の山千尋の谷ばかり。なに、それでもゆく?気に入った、むざむざ死なすには惜しい、儂のもとで少々修行してゆけ。幸い見たところ、内功(【判】を言うらしい)の素質はあるようだ……)という漢。
 旅の途中に逗留したキーオランドで路銀が尽き、泊まっていた宿屋でそのまま下働き(手刀で薪を割ったりとか)をしているそうな。
 PL:T_N

 クルト
 ジェフ出身の青年。人間。
 圧政を敷く巨人たちに対してレジスタンス活動を行うウィザードだったが、とうとうそれも立ち行かなくなり、最後のレジスタンスは生き延びること、と仲間たちと誓い合ってジェフを後にして来た。
 ここキーオランドでは特に頼るべき人もなく、着いて日が浅い彼はまだ風来坊として日々を過ごしている。
 PL:D16

 ヴァレンティン 
 地元の聖カスバート神殿(帽子派)の修道士。人間。
 生真面目で笑顔がステキ(【魅】16)な好青年。神殿長ベネディクトの一番弟子として、神に仕え、人々に聖カスバートの教えを説く、ごく日常的な日々を送っている。
 PL:たきのはら

 システム:D&D3rd
 DM:でんこうじ


 
 ガルツが今日の花嫁の父たるパン屋の店主と話しこんでいる頃、ヴァシュマルは宿屋のオヤジから「今日はかきいれどきだから」と特に言いわたされていた。なんでもあちこちの国から夏至祭見物にやってくるものだから、それは多種多様な酔っ払いが量産されるのだそうな。ヴァレンティンは婚礼の儀式を執り行い、その後の宴会が滞りなく進むようにあれこれと準備をしていたし(両家は式のあと教会の前庭に設けられた宴席で楽しいひとときを過ごし、さらに杯を重ねるために外に流れ出していく手はずになってはいるのだが――おお、なんということだ!今日の宴席に連なるのはいつだって少々酒を過ごし気味で、その上に騒げば少々乱暴なことになり気味の鍛冶屋連中が半分ではないか)、クルトはというと初めて見る異国の夏至祭をものめずらしく眺めながら歩いていたのだった。



このシーンの裏側
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