2004年11月30日

シリーズ第4回『黒き氷の……』目次

 しまった、すっかり第2回のことにかまけて忘れてた。

 というわけで、11月27日『渡竜キャンペーン』第4回プレイ記録の目次です。

 その1:便利屋稼業!?
 その2:出稼ぎ帰りの人々。
 その3:野生の王国。
 その4:雪の如く白く冷たき汝が心
 その5:トンブルグの血戦
 その6:雪の進軍
 その7:黒き氷の……
 その8:エピローグ

 とまぁ、こんな感じです。
 どうぞよろしくおねがいいたしますー。
posted by たきのはら at 13:05| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート目次(渡竜) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第2回『ふぁみりあ・ふぁみりあ』目次

ネタばれ注意!このセッションはHJ出版のシナリオ集『A Seven-game Match』に掲載された『使い魔を探せ!』のテストプレイとして行われたものです

これからプレイする可能性のある方は、以下のリンク先(どれも多分にネタばれを含みます……)にはおいでにならないことを強くお勧めいたします。

プレイ内容目次:
その1:
その2:
その3:
その4:
その5:
その6:
その7:
その8:

感想とか余談とか

セッション感想(多分にネタ)
レベルアップ処理(アルテア)
テーマとヴァリエーション
posted by たきのはら at 12:56| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート目次(渡竜) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第2回公開しました

 えーと、以前、「遊んだんだけど訳あって今は公開できませんー」といっていた渡竜キャンペーン第2回プレイ記録、本日公開いたしました。

 というのも、この回のセッションはHJ出版のシナリオ集『A Seven-game Match』に掲載された『使い魔を探せ!』のテストプレイとして行われたものでして、で、本日『A Seven-game Match』が発売となりましたので公開OKとなった次第。

 内容がバレちゃよくないというので、題名も仮題でしたし(今は直してあります)、
一応目次アイテムも作成しますが、こちらも章立ては番号のみの記載としてあります。 ので、これからプレイする可能性のある方は、お読みにならないことをお勧めいたします。

 そんな感じで、どうぞよろしくお願いいたします。
posted by たきのはら at 12:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月29日

シリーズ第4回『黒き氷の……』その8:エピローグ

 ネタばれ注意!今回のセッションはDungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用しています。

 連れ去られた村人たちは、塔の脇の小部屋に押し込められていた。もう1日遅れていたら、氷原に連れ出されてなんだか作業をさせられることになっていたのだそうだ。そうしてここまでやってくる行程で死んだものはゾンビにされてしまったのだという。

 いやなに、もう連中は残らず片付けた、あとは安心して帰るだけだ。
 そう言って一同は凍え疲れた村人たちを励ました。

 もちろんウィチカとアルテアの目的のほうも果たされた。塔を削るのは大地から氷を切り出すよりずいぶん楽だったし、削るにも運ぶにも男衆の手を借りることができた……

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posted by たきのはら at 23:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第4回『黒き氷の……』その7:黒き氷の……

 ネタばれ注意!今回のセッションはDungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用しています。

 意外と近かったですね、とパオロが言った。
 あれは塔というんだろうな、とピョートルが言った。
 いや、神の前では正直でなければならん以上言うが、小屋だろうとマルチヌスが言った。

 雪の白さで目がだまされていたのか、地平線のかなたにようやく見えてきたと思った『塔』は、実は目の前のスロープを登ればすぐの場所にある、3階建ての建物だった。一応尖塔があるから塔と言っておいても罰はあたらないわよ、『土煙の塔』ってのもあるしとウィチカが塔に向かって言った。

 正面から突破するのはなかなか剣呑そうである。
 というわけで、まずはカミロが裏口を確かめに行った。どうやら鍵はないらしい。そう行って戻ってきたので、上から矢を射掛けられたときの用心に、一同頭に木の盾をかぶって裏口に集まった。
 鍵はかかっていなかったが、内側からしっかり閂がかかっていた。
 やれやれ、とため息ひとつ。しかたない、表玄関から正々堂々とお訪ねするしかあるまいよ。

 塔をぐるりと迂回していく。
 『黒き氷の塔』の名のとおり、塔はまっすぐに切り出した『黒い氷』を石組みのように組んで建ててあるのだった。マルチヌスが試しにたいまつの炎を近づけてみたが、『黒い氷』の表面にはわずかの変化もなかった。長い時間だけが『黒い氷』の組織を緩めるといわれているから、炎を近づけたところでどうしようもないと思うわとウィチカが言った。
 壁の一部に灰色のコケが張り付いていた。ピョートルが何の気なしに手を近づけると、手から体温がふっと吸い取られ、そうしてコケは急にふくらみ、目の前で壁を覆い始めたのだった。
 「危ない、なんだかわからんが……!」
 後ずさるピョートル。マルチヌスがたいまつの炎を押し付けると、たいまつのほうがかすかな軋みのような音を残して消え、その一瞬後にはすっかり霜に覆われている。
 「こいつは……下手をすれば火矢なんかよりももっと剣呑な城攻めの道具になりそうな」
 一同コケを迂回していく中で、ウィチカとアルテアの二人はそっとコケに近づき、それぞれ手に持ったガラス瓶にコケを詰め込み、ふたをする。
 「ビンの中で生きてるかどうかもわからないし、無事に持ち帰れるかどうかもわからないけれど」
 「まぁ、もって帰れば誰か喜ぶわよ。まずくなったら氷原に捨てていけばいいし」
 そう言葉を交わす二人を男衆は珍獣でも見るような目で眺めている。
 ……確かにこの二人は「私たちの用事」のついでに村人救出作戦にも参加しているという心積もりのようだ……

 用心して盾をかぶっていたものの、とうとう一本の矢も飛んでこないまま、一向は『塔』の正面玄関にたどり着いた。
 何、お迎えがないわけがない。
 手に手に武器を構え――扉に手をかける。
 
 あっさり開いた扉の向こうには、ゾンビが二体。ひとつはオーガの。もうひとつは変わり果てた村人の。

 戦端が切られた。
 次々と押し寄せてくるゾンビや雪ゴブリン、それになぜか飛び出してきた大イノシシを殴り飛ばし切り飛ばし破壊し床に流した魔法の油で足元を掬い……ようやく片付けた。ゴブリンは帰りの渡河の「渡り賃」用に生かしておくことにして、くくって転がしておき、さて、部屋の中を調べる。

 部屋の隅には、村人たちのものだったらしい服やブーツが積み重なっていた。狐尾のミクサの服もあったところをみると、長老も今は悩み多きこの世を旅立たれたのだろう。かりそめの命なんぞ押し付けられていなければいいがとマルチヌスが苦い声でつぶやく。そのほかにも銀引きのダガーやショートソードが見つかった。村人の誰かが持っていたのか、それとも連中が別のどこかから略奪してきたものか。

 カミロがもうひとつの扉に手をかけると、アルテアが黙ってその手を押さえた。
 「……魔狼だ。扉の向こうに、たぶん8頭。……相手するつもり?」
 冗談ではない。扉の下に入念に楔を打ち込み、この扉のことは忘れることにする。肉を噛み裂く音も聞こえたそうだが、人間の悲鳴は聞こえなかったのだから……そう、あの領主の言い草ではないが、この扉はもう手遅れだ。

 そのまま、塔の基部へと続く扉の前に立つ。扉の前にパオロが剣を構え、その後ろに鎖を構えたピョートル。……戸をひきあける。カミロが中を伺う。
 「……二人いる。扉の向こうで待ち構えているな。気をつけろ、奴らはあの『霜の目』を持っていやがるから」
 気配に、『霜の民』は扉の前へ動く。ちらりとその姿が見えた瞬間、ピョートルの鎖が飛んだ。同時にパオロが駆け込んでいく。
 
 狭い入り口から6人が次々に雪崩れ込んでいく。斬りたてられて、『霜の民』の一方が氷原を渡る風の声で一声叫んだ。答えるように壁に沿って上る階段の跳ね上げ戸からもう一人『霜の民』が顔を出す。飛んでくる冷気の塊。

 だが、相手は3人。結局のところ二人はそのまま切り伏せられ、最後に顔を出した一人も駆け上がってきたフェランに足を掬われ、アルテアに掴み上げられたところをピョートルの鎖に頭を砕かれたのだった。
 「まだだ、まだ黒幕がいる。死んだ村人をゾンビにした奴だ。なんとしても探すぞ」
 パオロが叫ぶ。
 ふと見ると、塔の上のほうから縄梯子が垂れ、それがまだゆらゆらと揺れている。
 「逃がすか!!」
 叫ぶやパオロは手にした武器も盾も捨て、縄梯子に飛びついた。

 塔の上にいたのは『霜の民』の魔術師だった。どうやらこいつが今回の黒幕ということらしい。
 パオロは魔術師を突き落とそうとしたが失敗。助太刀を呼ぶ。魔術師もずいぶんと立ち回ったのだが、一本の縄梯子から次々と新手が現れるのにはかなわない。弓を捨て剣を抜いたカミロに追い回され、挙句ウィチカのマジックミサイルで敢え無く最期となったのだった。

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posted by たきのはら at 23:18| Comment(5) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第4回『黒き氷の……』その6:雪の進軍

 ネタばれ注意!今回のセッションはDungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用しています。

 1日も進まないうちに、一行の前に岩を噛んで滔々と流れる河が現れた。シルト質の砂を巻いて流れる水は、触れれば手が切れそうに冷たい。棒を差し込んで調べたが、浅瀬にしても膝まではある。そりはどうにもこの先には行きようがない。仕方なくトトとセセはトンブルグに帰してやり、こちらはこちらで河を渡る算段をする。

 まずピョートルが浅瀬を探して押し渡り、ロープを渡す。そうしてロープ伝いに一同が渡河した後、アルテアがロープをはずして最後に渡る。そう取り決めると、ピョートルは鎧を脱いで頭にくくりつけ、腰に綱を巻いて早速河に入った。時折はぐらりと足をよろめかせながらもどうやら中ほどまで来たとき、急に川面が泡立ち、泡の中から美しい娘が立ち上がってきた。
 「どうしてお前がそこにいるの。対価も払わずにそこにいるの。あたしは河の娘マリョーシカ、お前はあたしの河を、マリョーシカの河を渡ろうとしているのよ!対価も払わずに!!」
 「対価……?」
 「決まっているじゃないの、冷たい河の娘には暖かい血、命ひとつぶん暖かい血を払うのよ!」
 「……ふむぅ、先にこの河を渡っていった一団がいたはずだが、そいつらはどうやって通った?」
 「払ったわ、彼らは礼儀を知っていたからちゃんと払ったわ!!」
 河の娘が手を振り上げると、変わり果てた姿の村人が一瞬、川面に浮かび、そして沈んだ。
 「ううむ、マリョーシカ、取引をせんか?わしらは行きに払う血はないが、帰りには二倍の血を払い込んでやる。これでどうだ?」
 「信じない。帰ってくるという人たちをマリョーシカは信じないわ。通るときに、通る今、命ひとつ分。払って。払って」
 「わからないお嬢さんだなぁ。嘘はつかんぞ。だいたいあんな北のほうに行ききりになっていいわけがあるまいに」
 「それでも信じない。それだから余計信じない。北から南に渡ったひとたちはこの河に帰ってきたがらない。南から北に渡ったひとは……」
 そうしてマリョーシカはにっこりと笑った。
 「帰ってきたがるけど、そうそう帰ってこられない」
 やれやれ、道理だな、とピョートルは苦笑い。

 どうしたの、払うの、払わないのとマリョーシカはいらだったように言い、それから一同を見回してにっこり笑う。
 「いいのよ、払わないというのなら。あなたたちの誰かをこの腕で河に抱き寄せても」
 それに言葉で答える代わりに歌いだすカミロ。真の芸術の力の前には水妖姫といえども心静かに耳を傾けるはず……
 マリョーシカ、たちまち鼻の頭に小さくしわを寄せる。
 「『それ』で」あたしの心を動かすつもり?図々しい」
そうして冷ややかな笑みを口元にはりつけ、カミロに向かって手招きひとつ。カミロ、「あ、あんなところに温泉が」といいながらふらふらと河に入りそうになるのをウィチカがあわてて止め、仕方ない払い込める血をどこかから狩り出してこようといったん河から引き上げる。
 雪原を探し回ること小一時間。どうやらウサギを一羽見つけてくる。血の量があまりに少ないわとマリョーシカは不満そうだったが、そこはなんとか言いくるめて引っ込んでもらう。
 あとは当初の予定通り順調に渡河。最後のアルテアが足をすべらせ、なんだか嬉しそうに待ち構えるマリョーシカの姿が一瞬見えたりしたのだが、先に買い足してあった絹ロープのおかげでどうやら無事。

 その後は、北東へ向けてひたすら進む。何、道を間違う心配はない。一同の目の前には目が痛くなるほど(――いや、サングラスを買っておいたのは先見の明というやつである)晴れ渡った空と白く輝く雪原、そうしてそこにまっすぐそりの跡が続いているのだった。
 次の日は、何事もなく、ただ尾根を越えようとするとき、眼下の平原で魔狼が数頭がかりでマンモスの親子を襲っているのが見えた。見るうちに、怒り狂ったマンモスが前足を振り上げ、一足に1頭ずつ魔狼の背骨を踏み砕いていった。……狩るものがおり、狩られるものがいる。ただ、獲物を定める前にこれが自分に狩りうる相手かどうか見極める、そこから狩りは始まっている。それを見誤ったものに待っているのは無残な死。これが大自然の厳しい掟なのだった……。

 その次の日、ようやく平原のかなたに『黒き氷の塔』が姿を現した。
 白一色の大地はるかに小さく、確かに人の手になる建造物が聳えていた。マルドゥーングを出てからちょうど17日目のことだった。しかし、ようやく先が見えたとついた安堵の息をさらうように、雲がにわかに集まりだしたかと思うと、ちらほらと雪が舞い始め、あっと思うまもなく吹雪になった。

 「こりゃいかん、雪洞だ。雪洞を掘れ」
 北国育ちの男衆4人は慣れたもので、吹雪がひどくなりそうだと見るや、とっとと行軍を中止し、雪洞掘りにかかった。6人が雪洞の中に転がり込んだときには、もう外は自分の伸ばした手すらかすむほどの大吹雪になっていた。
 「……まぁ、あせらずに待つことだ。吹雪はいずれ止む。だが、今焦って外に出れば死ぬだけだぞ」
 そうマルチヌスが言った瞬間、狂ったようにフェランが吼え始めた。
 五つ首のヒドラが雪洞の入り口に立ちふさがり、「餌の群れ」に首をつきこもうとしていた。

 戦いは熾烈を極めた。
 つきこまれて来る首に矢を射掛け、マジックミサイルを撃ち込み、それでも下りてきた首はピョートルとアルテアが滅多打ちにする。フェランもがちがちと牙を鳴らして飛び掛る。
 どうやらすべての首が刈り取られたときには、アルテアは立っているのがやっと、フェランも虫の息といった有様だった。
 だが、生きてはいる。
 それで十分だった。
 ヒドラの首の切り口を炎で焼き払うと、一同はこんどこそ雪洞の中でゆっくりと休息したのだった。

 秋にジェラさんからもらった治癒の棒杖を惜しげもなく振るい、雪洞の中で一夜をすごすと、次の日、嘘のように吹雪が止んだ雪原にすっかり回復した一行は踏み出して行ったのだった。

 そりの跡はもう跡形もない。だが、目的地は迷いようもなく目の前にあった。
 ……そう、目の前に。




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posted by たきのはら at 22:10| Comment(7) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第4回『黒き氷の……』その5:トンブルグの血戦

 ネタばれ注意!今回のセッションはDungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用しています。

 馬車とソリでは積める荷物が随分と少なくなるので、とりあえず荷物を積み、人間は歩いてソリを引くロバの手綱を取ってゆく。ついでにここから先の雪原を歩くときの用心にと一同サングラスにかんじき、スキーを買い込んで、使っていない道具はこれもソリに積む。
 やれやれ、当分はカハウ=キンキでのんびりできるかと思ったのにと愚痴るトトをなだめながら1日の行程を済ませると、もうトンブルグの村の入り口が見えてきた。様子を伺うと、村にはまだ人がいるらしく、数軒の煙突からはほそく煙が立ち上っていた。やれやれまた師匠の白髪三千丈かとつぶやいたマルチヌスに、そうでもないぞとピョートルが言う。煙の出ていない家の出入り口は、すべて氷のブロックで押さえられ、出入りができないようになっているのが見て取れる。あの煙の出てる屋根の下にいるのは、略奪団御一行様かも知れんのだぞ。

 「まぁ、案じることはない。僕が見てきますよ」
 そう言い残して、カミロが村のほうへと消えていった。
 「あいつ吟遊詩人としか名乗らんが、実はこそ泥のほうが腕が上なんじゃないかと思うことがあってな」
 マルチヌスがぼそりと言った。
 「そういう人は多いですよね……それじゃ、あたしも探ってみるわ。チューチュー、行っておいで。気をつけてね」
 ウィチカの肩からすべりおりたイタチがちょろちょろと走り出していく。

 どうも村はほぼ「師匠の筆の通りに」なってしまっているようだった。往来をうろつきながら周囲に油断なく目を配っているのは、この地方に住む雪ゴブリン。それから魔狼が数頭、これも時折周囲の空気を嗅ぎながらうろつきまわっている。一方、煙が出ている家の窓にとりついたチューチューがウィチカに知らせて遣したのは「家の中にはおっきいのが16人、ちっちゃいのが10人いる」ということ。敵か味方か、人間かそうじゃないのかと聞いたがこれが要領を得ない。どうやらイタチには人間もゴブリンも似たもの同士にしか見えないらしい。

 「さて、様子を伺っていてもそう埒はあかないだろうよ。片付けるか」
 ピョートルの一言にうなずき交わすと、一同は隠れていた吹き溜まりから村の入り口へと堂々と姿を現したのだった。

 「まずは、わしの出番だ」
 にやり笑うとピョートル、腰の鎖束におもむろに手を伸ばす。
 「あんたらは下がってろ、ちょいと鎖が飛ぶんでな!」
 その言葉が終わらないうちに突っ込んできた雪ゴブリンがたちまち首を横殴りに吹き飛ばされた。刺付鎖をぶんぶんと頭上でふりまわすピョートル。これが鉄旋風というわけだ。
 
 そこへ道の向こうから魔狼が突っ込んできてピョートルに飛び掛る。かばうようにフェランが飛び込むが、一瞬、遅い。だがのど笛を食いきられて宙に舞ったのは魔狼のほうだった。
 ゴブリンどもはウィチカの魔法でころころと眠りこけ、そこへもってきてマルチヌスが崇め奉るところの太陽神の恩恵にあずかったピョートルとアルテアが滅多打ちにする。ふと気づくとどこからかカミロの歌声が響いてくる。ついでに矢も飛んできて援護してくれる。……とはいえ、当のカミロの姿は一向に見えないのだが。

 ようやく終わりが見えたかと思ったとき、扉が開いて男がひとり姿を現した。貧乏くさいゴブリンではない。すらりと背が高く、まっとうな武器を持っている。
 「もう大丈夫、助けに来たわよ!」
 しかしその男は、村人かと思って呼びかけるウィチカの声にこたえるどころか、「何をてこずっている、こんな連中を相手に」と言うや、一同に向き直った。その片目がぴかりと光ったかと思うと、瞬間、その場を骨まで凍らせるような冷気が覆った。
 「敵か!?……ひとでなし!!」
 アルテアの声が跳ね上がる。同時にウィチカのマジックミサイルが男を撃ちぬく。

 仲間が少なくなってから登場したのが悪かったか、そう暫くも持たないうちに男はばったり倒れ伏してしまった。

 結局のところ、男は人間ではなかった。白い髪、白い肌に薄あおい瞳を持つ『霜の民』。れっきとした怪物である。その瞳は悪神『氷河』に嘉されたものだとかで、冷気を撃ちだすことができるのだとか……
 男が出てきた家の中には、老人と女子供ばかりが閉じ込められていた。男たちはすべて略奪団に連れ去られたという。連中は男たちを何組かに分けて連れ去り、最初の一組が連れ去られたときにミクサは助けを求める手紙を書いてハロルドに持たせたものらしい。そのミクサももう連れ去られてしまったとか。

 村人たちの話を総合するに、ここに転がっている死体のほかに、略奪団には少なくとも魔狼があと8匹、雪ゴブリンが20匹、それに『霜の民』がもう一人はいるということのようだった。襲ってきたのは8日前。北東からやってきて北東へと去っていったのだとか。

 あとのことは死体に語らせるとしよう。
 とはいえ、死者と話すなどという便利な技術を持っているものは一人もいない。転がっている『霜の民』の死体から持ち物をはいで改めるしかない。武器や着衣(上等な毛皮でできていた)を剥ぎ、首にかけていた銀のネックレスをはずし、それから持ち物を改めると、帳面が一冊転がりだしてきた。

 それは謎の霜語……ではなく、ありがたいことに共通語で記されていた。
 どうやらここに転がっている死体は随分几帳面な男だったらしい。この村の人別(男40人、女47人、子供33人、ドワーフ8人、ノーム3人、エルフ1人――ここでカミロが安堵とも悲鳴ともつかない息を吐いた。なんでもカミロにはたった一人の妹がいて、カミロが村を出ている間、彼女はこの村ではたった一人のエルフだったはず。……ということは、妹は生きてはいるのだ。だが奴らに攫われたのだ――)、略奪品のリスト(毛皮にナイフ、斧、鍋といったところ)、そうして奴隷および飯炊き女として捕らえた者たちを『黒き氷の塔』に送ったというところで記述は終わっていた。

 ここまで分かって、連れ去られた人々を見捨てるわけにもいかない。俺たちは村人を助けに行く、だがあんたらには……
 「だから、私たちは私たちで『黒い氷』が必要。塔を削るってのはいい考えだわ。地面から切り出す必要もないし。……行きましょ?」
 アルテアはそう言って荷物を背負いなおした。

 『黒き氷の塔』は、物語に語られはするものの、まさか誰も実在するとは思ってはいない、そういう場所なのだった。ただ、村から北東の方角を見遥かすと、彼方に白くそびえる山脈の稜線が一箇所、黒い影のようになって天へとそびえている、その場所にあると言われてはいた。だが今まで誰一人として行った者もない……
 「何、連れ去られた連中は確かにそこに向かってるんです。僕たちが行けないってほうはないでしょう。……さて、急ぎましょうか」
 パオロがそういって、一同はまたソリを中心に北東へと進み始めたのだった。


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シリーズ第4回『黒き氷の……』その4:雪の如く白く冷たき汝が心

 ネタばれ注意!今回のセッションはDungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用しています。

 商人たちが「相変わらず」といいながら苦笑いしていた理由はすぐに知れた。
 カハウ=キンキの領主は前々から猜疑心の強い男としてあまり好かれてはいなかったのだが、最近ではそれがちと常軌をどうにかした程度まで悪化したらしい。カハウ=キンキほどの街ともなれば、近隣の小さな町や村を守るような立場に立つのが普通だというのに、領主様は「そんなことをしたら私の街が手薄になる」と言って一兵たりとも外には貸してやらないのだそうだ。もっともカハウ=キンキの護衛兵というのも山賊やヤクザに毛が生えたような程度なので、そんなもの遣してくれないほうがありがたいと自棄になって悪口のきわみを尽くすような向きもあったようだ。そうして、一行が目指すトンブルグでも、少しでいい兵隊を貸してくれと頼んで遣していたのだがすげなく断られたという話だった。

 やれやれ、これでは俺たちいっそう急いで村に帰らねばならんと男衆が話していると、急に窓の外で風音が強くなってきた。今夜は吹雪くな、と、店主がぽつりと言った。
 吹雪は三日三晩続いた。誰も一歩も外には出られなかった。

 四日目の朝、積もった雪を掻き分けて外に出ると、雪の中から突き出している凍りついた人間の手が見えた。あわてて雪を掘り返すと、それは旅姿の男で、吹雪の間ぴったりと閉ざされていた街の門に寄りかかるようにして息絶えていた。雪から突き出していた右手は門をたたくように高々と掲げられ、寒さで気が遠くなりながらも最期まで閉ざされた扉をたたき続けたのだろうと知れた。
 「……ハロルド……」
 宿屋に運び込まれたなきがらを見て、トンブルグの男たちは声をなくした。見間違うはずもない、村を出るときには「おい、ちゃんと稼いで、それからできれば雪が降り出す前には村に戻れよ」と笑って手を振っていた飲み仲間の一人、ハロルドの、それは変わり果てた姿だった。埋まっていた雪の深さからすると、吹雪きはじめてすぐの頃に門までやってきていたらしい。しかし、呼ぶ声も扉をたたく音も風の音に消され、誰も気がつかなかったのだろう。そうして、外敵を異様なまでに恐れる領主は、雪にまぎれてやってくる敵を恐れて、悪天候の間は街の門を閉ざすようにと命を下していたのだった。

 ハロルドの持ち物を改めると、村の長老(であり、マルチヌスの師匠でもある)『狐の尾』ミクサの封蝋が施された書簡が出てきた。表書きを見ると、どうやら領主あてらしい。訳はあとで話せばいい、と、とりあえず封を切ると、認められていたのは恐るべき――しかし充分に考えられる内容だった。

 トンブルグの街を略奪団が襲ったのだという。
 村人は一人残らず奴隷として連れ去られ、手向かって殺されたものはオオカミの餌にされた。また金目のものはことごとく持ち去られた。どうか兵隊を送って助けてくれ……

 一同顔をこわばらせる中、マルチヌスがかすれた声でつぶやく。おいおい師匠の奴、追い詰められてまた筆が滑ったな。人が一人残らず奴隷として連れ去られてたんなら、あんたはどこにいてどうやってこの手紙を書いて誰に届けさせたんだよ。

 領主はそもそも頼りにならん。俺たちで助けに行こう。……お嬢さんたちにはかかわりのない話で悪いが……
 ピョートルが言いかけると、ウィチカが笑って答えた。
 「関係ないことないわ。あたしたちはあたしたちの『どうしてもトンブルグにいかなきゃいけない』理由があるもの。さ、本当にお師匠様の言葉通りになっちゃわないうちに急ぎましょ」
 とはいえ、こう雪が深くては馬車の動きようがない。といってソリを買うだけの金もない。

 「……あのけち領主、兵隊はもとより出さないでしょうが、ソリの一台ぐらいも貸してくれないほどの冷血でもない……と思いたいですね」
 そうパオロが言い出し、一同ミクサの親書を携えて領主の館へ押し掛ける。ようやく領主の御前に進み出られたまではよかったものの、「師匠の筆の滑り」が災いしたか「哀れだとは思うがもう滅びたも同然の村に出す兵はない。その隙にこの街が襲われたらなんとする」と一向に耳を貸す様子もない。
 あまりの冷血ぶりにウィチカが憤慨し、「私はマルドゥーング魔法学園の者ですけど、トンブルグは魔法には欠かせない『黒い氷』の産地ではないですか。それを見捨てるなんてそんな酷い……いえ、そんな取引先を失うようなことをしていいんですか!?」と搦め手半分、脅迫半分で言い募ったのだが、これまた「何、そんなちっぽけな取引のためにこの街を危険にさらすわけにはいかん」と一顧だにしない。

 そこへカミロが進み出て、なに、たとえ黒い氷みたいな心だって真の芸術の前には溶け出すものですよとよほど脳味噌がとろけたようなことを言うや、涙まで浮かべて切々とトンブルグの窮状を歌い始めた。それをBGMにパオロが領主をかきくどき、一方でアルテアはというと領主の足元に取りすがって泣き出す始末。

 明らかに気味が悪くなったのだろう、領主はついに「ええい、わかったわかった」と叫ぶと、「ソリは出してやる。あとはもう知らん」と言いざま、取りすがるアルテアを振り払って奥へ逃げ込んでいった。
 引き出されてきたソリは、どうやらまぐさ運びにでも使われていたものらしい半分朽ちかけたシロモノで、とはいえあまりにあわてたためか荷を降ろす暇もなく運び出されてきたものらしく、新鮮なまぐさが詰め込まれたまま引き渡されたのは、これからまたソリを引いてもらうトトとセセのためには随分ありがたいもうけものだった。


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シリーズ第4回『黒き氷の……』その3:野生の王国。

 ネタばれ注意!今回のセッションはDungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用しています。

 ビラを貼ったとたん、後ろでなにやらざわざわと声がした。見ると……まぁ、このあたりではこの酒場に限って言えば多少見かけないこともない風体の男が3人。

 「トンブルグのこと、ご存知なんですか?」
 アルテアが問う。
 「ああ、実はわしら、その村の出身でな」
 「ひょっとして、今からそちらに帰ったりは……」
 ウィチカが言いかける。
 「いや、ちょうど帰るところだが、ひょっとして護衛として雇ってくれるとか?」
 「……うーん、えーと、そういうわけにも行かないんですよね。なので、同行者としてご一緒できる方を探してるんですけど……」
 「一応、馬車はありますよ?あと、多少金銭的な融通はできるかな、ぐらいな感じで」

 「ああ、そいつは助かる」
 ウィチカの台詞に答えるように、カミロが机の下から顔を出した。
 「ああ何、私はただあなた方がどういうお方か、ちょいとうかがわせていただいていただけで。何しろこのようなやくざな稼業をやっておりますと、何事にも用心が肝要でして……それでどういうお話で?」
 お前様子を伺ってたんじゃないのかというのはさておいて。

 とりあえず、北のほうに向かう割のいい雇われ口というのもなさそうだし、人数が増えればそれだけ安全にもなることだし、「同行」の話は損はないのではないか……というようなことになり、ウィチカ・アルテアに男たち4人の総勢6名で北を目指すことになったのだった。
 「ああ、わしは『鉄旋風』のピョートル、このお方は『聖』マルチヌス、徳高いお坊様だ。で、こちらがお小さいながらもれっきとした聖騎士のパオロ卿、あと……」
 「遍歴の吟遊詩人、カミロ・デ・ラ・トンブルグです」
 一礼してみせるカミロ。ただし、エルフだというのにその一礼はどうみたって優雅とは程遠かったのだが。
 「あ、あたしはウィチカ・ロックフィールド。ここの学生です。ピョートルさんにええと……聖マルチヌスさん?マルチヌスさんだけじゃ失礼にあたるのかしら?それと……」
 「サー・パオロってお呼びしたほうがいいのかな?それとカミロさん?よろしくお願いしますね。私アルテアです。あと、この子が私のツレのフェラン。ウィチカもチューチュー君紹介しておいたら?」
 いえいえ普通の呼び方で結構ですと合唱しかけて男性陣一同声が途中で止まった。
 「動物って……」
 「あー、フェランは無駄噛みはしませんよ?ほらちゃんとご挨拶して」
 がう、とのどの奥でうなってどうやら『機嫌よく挨拶したらしい』オオカミ君に、一同微妙に引き気味だったのだが。

 ともあれ、ウィチカが『黒い氷』を学園に届けるまでに2ヶ月と日が切られているというので、一行とっとと馬車に荷物を積み込み、出発した。通りなれた街道を北上。トルスッガ=スガまでの三日間は何事もなく過ぎた。もちろん途中で馬車引きのロバが口を利き始め、挙句カミロを随分と気に入ったようで道中調子っぱずれの合唱をし始めたことを除いての話だが。

 トルスッガ=スガでも「実家に顔出ししたほうがいい?」とアルテアが尋ねたのにウィチカが「『あの店』から一番遠い宿取って、食料とか買い込んだら速攻街を出る!!」と答えたの以外にはこともなく、一同は馬車を北に進めた。北上するにしたがってちらほらと雪が舞い始めていたのだが、いつの間にか道は白く覆われ、路面には馬車のわだちの跡がはっきりと残るようになっていた。

 そのとき。
 アルテアは思わず手綱をぐいと引いた。引くまでもなくロバたちは既に後ずさりを始めている。隣でフェランが低く唸っている。
 「前方に、群れが。……たぶんオオカミだ。10頭……もっといる」
 そうしてくるりと振り向き
 「囲まれちゃたまらない、逃げるよ?」
 男たち4人、言われるまでもなく弓を構えている。
 「それなりの距離になったら『眠らせる』わ。合図したら馬車を止めてね」
 ウィチカの言葉にうなずき、それから馬車を返す。
 「それじゃ、……行くよ!!」
 ぴしり、と手綱が鳴り……ごとごとと馬車は走り出す。
 「行くよったってねぇ、あたしゃ馬じゃないんで……」
 「しゃべらない、走る!オオカミに食われるよ!!」

 どうせ追いつかれるのは分かっている。だが、その前に少しでも数を減らしておこうという魂胆だ。牙は十数頭ぶん、対するこちらは6人と1頭。一気に飛び掛られたら命があっても大怪我は免れない。ってか、この雪原で頼みのロバを喰われたらえらいことだ。
 こちらの読みどおり、オオカミどもは楔形の狩の隊形をとって追ってくる。そこへ馬車の後ろに並んだ射手が矢を次々と射込む。呪文を飛ばし、矢を飛ばししながら逃げているうちに、どうやら「こいつらは俺たちの昼ゴハンにするにはちょっと歯が立たなさそうだ」と判断したらしいオオカミ一党、くるりと向きを変えて立ち去っていった。

 雪はいよいよ降り積もって、街道が横切る草原を真っ白に塗り替えてゆく。
 そうなってもこの地が動物たちの生きる大地であることにはかわりがないようだった。

 二日目の夕暮れ時、はるかな地平線を、野牛の群れがねぐらを求めて歩いてゆくのを見た。

 三日目の昼間、少し向こうの木立からはらぺこヒグマが顔を出したが、トトとカミロの見事な二重唱に「これを昼飯にしては惜しい」と思った……かどうかはしらないが、くるりと向きを変えてまた木立の中に姿を消した。

 四日目の明け方、朝食の茶を沸かしていたとき、雪がやんで切れた雲間から消え残りの月の光が差す中、見事な北方トラが身を翻したのが見えた。

 ……五日目は、カミロにいっそうの大声で雪原の麗しさと厳しさ、そうしてそこに生きる者たちの命の輝きについて歌い続けてもらったのがよかったのか、いかなる動物も見ることなく過ぎた。みなカミロの歌声に聞きほれて巣穴を出るのを忘れたのだろう。

 六日目に会ったのは商人たちの一行だった。カハウ=キンキの様子を聞いたら「あいもかわらず」というのが答だった。もっと北の村についての噂は何もないようだった。

 そうして七日目に、一行は無事カハウ=キンキに着いたのだった。

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posted by たきのはら at 16:28| Comment(9) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第4回『黒き氷の……』その2:出稼ぎ帰りの人々。

 ネタばれ注意!今回のセッションはDungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用しています。

 「では、この冬は村に帰ってやれそうだな」
 そう、ピョートルは言った。そういってエールをあおると、腰に下げた刺付の鎖の束がじゃらりと鳴る。
 「そうですよ、あの村はただでさえ冬は男手が減っちゃうんですからね。僕らが帰ってあげられれば随分喜ばれますよ……雪下ろしだって……」
 「雪下ろしじゃあんたは却って危ないじゃないか、パオロ。まぁ、教会でも頼みたい力仕事はいろいろとあるし、雪下ろし以外にも仕事はたんとある」
 ハーフリングのパオロに言ったのは『聖』マルチヌス。これは胸に下げた聖印からどうやらお坊様とわかるといった風体なのだが。
 「いや何、冬といったら一番喜ばれるのは僕でしょうよ、何しろ何の楽しみもない村だから、酒場で歌のひとつも歌ってやれば……」
 そう言い出したのは(一応吟遊詩人の)エルフのカミロだったのだが、これは言い終わる前にマルチヌスが足を蹴っ飛ばし、ピョートルがアタマを度突いたところを見ると歌の腕前は分かろうと言うもの。

 一行、見ての通りの冒険者。4人とも北東の湾に面した寒村、トンブルグの出身だった。この夏から秋にかけては随分と実入りがあったものだから、たまには冬の村にも顔を見せて、村の若者らしく振舞って村人にも喜ばれておこうという心積もりだった。とはいえ、ただ帰るだけというのも面白くない。せっかくの大都市エンドゥー=ガルダに来ているというのだから、行きがけの小遣い稼ぎになりそうな儲け話のひとつやふたつ転がっていないものか……
 そんなことを話していると、店の親父がいうには
 「まぁこの季節だから、北のほうへわざわざ行く仕事ってのはなかなかないやね。だが、学園のセンセイ方なら物好きだからそういう伝手があるかもしれん。学園街のほうの酒場に行ってみな……ああ、で、あっちには酒場が7つあるが、兄さんたちに向きそうな仕事がありそうなのは……『最後の待った』とかなんとかいう奴だ。あと、遠目からも薄気味の悪い雰囲気がただよってる家は、ありゃ死人帰りの巣だって噂だから近づかないほうがいいぜ」

 というわけで学園街のほうへ向かう。
 門をくぐるとそこはさすが魔法使いたちの学問所、なにやら真面目くさって七面倒な空気が漂い、街を行き交うしかつめらしい顔をしてぞろりとした揃いのローブを着込んだ連中は何やら小難しい言葉を交わしており、居心地の悪いことこの上ない。
 おい自分らはこんなとこにいていいのかというような気分になってきたとき、割れたチェス盤と飛び散る駒というなんとも心温まる看板をかけた酒場が目に付いた。『三度目の待った』亭、というから親父の言っていたのはおそらくこの店のことだろう。
 扉を開けてさらにほっとする。そう、これが人間が酒を飲む場所ってもんだ。店のあちこちは修繕のあと、出てくる食器はすべて金属製でどこか歪みや凹みができており、そうしてたむろしている連中はというとぞろりとしたローブ姿には違いがないものの、なんというか『人間らしい』顔をしている。まぁ、修繕の跡というのにやたらと焼け焦げが多いというのが多少気になるといえば気になる点ではあるのだが。

 ともあれ、店の一角に席を占めて、とりあえずうまい話を拾うにはどうするか、様子を見てみることにする。
 様子だけ見てみるのも詰まらん、ここは一曲歌って魔法使いの皆さんに気に入っていただくぞと立ち上がったカミロがいきなりウシガエルの発声練習のような声を出した。うわ、と一同青ざめた瞬間にカミロは机の下に逐電、一瞬殺気立った店内も、ジョッキを投げつける相手が見当たらないので「どうやら誰かがシャウトの呪文を失敗したらしいな」「……成功されてたまるかよ、この寒空に窓が割れてみろ」「誰だか知らんがちゃんと止めた奴偉いぞー」ということになったらしい。とりあえずマルチヌスが机の下のカミロを蹴っ飛ばす。

 と、そのとき店の扉が開いて、巻いた紙を抱えた娘の二人連れが入ってきた。背の高いほっそりしたほうは、どうやら制服らしいローブをまとい、見るからにお嬢さん魔法使いといった風体。連れのいま少し小柄なほうは、そこそこ荒事慣れした体つきと身のこなしで、これはややこっちと人種が近い部類か。店主と何やら話していた二人がおもむろに壁に貼ったビラを見て、一同思わず腰を浮かした。

「トンブルグまでの同行者を募集いたします
 (途中まででも可です)

 所用あってカハウ=キンキの北東、『海際のトンブルグ』まで
 向かうことになりました。
 二人だけでは心もとないので、同方面に向かわれる方がいらっしゃいましたら
 声をかけていただければ助かります。

 ・馬車あり
 ・多少金銭的な融通はきかせます
 ・動物が同行しております。動物が苦手な方は申し訳ありませんがご遠慮下さい

 力術学科宿舎:ウィチカ・ロックフィールド
 植物園管理棟:アルテア・エヴォディア」

 ざわ、と立ち上がりかけた一同の気配に、二人の娘がこちらを向いて首をかしげた。そうして、貼りかけたビラを戻すと一同のテーブルに歩み寄ってくる。
 「ええと……トンブルグ、ご存知なんですか?」


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posted by たきのはら at 14:45| Comment(1) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シリーズ第4回『黒き氷の……』その1:便利屋稼業!?

 ネタばれ注意!今回のセッションはDungeon誌115号掲載のシナリオ『Raiders of the Black Ice』を使用しています。

 マンドラゴラ取り違え納入事件から2ヶ月。
 暦は秋の終わりだが、季節はもうすっかり冬である。雪こそ降らないものの、街はすっかり冬支度。学園の制服は厚地の冬服に変わり、街を行く人々は分厚いコートや毛皮に身を包むようになった。居酒屋ではビールではなく香辛料入りの暖かい飲み物が供されるようになっている。

 もちろん学園の冬を彩るのはそれだけではない。卒業試験をほぼ終え、そうして学園に残っての研究の日々を選択しなかった学生たちが、今後の身の振り方を決めようといっせいに忙しくし始めるのだ。
 帰って継ぐべき家業があるものは、その家業に必要な技術を最後に集中的に叩き込んでおくために特定の研究室に居続けをする。一方で様々な研究室を適当に回って、全般的なおさらいをしようとするものもいる。そうしてウィチカのように帰るあてもない(帰ってこいといわれたってごめんだわよ!どーーーせ小間使い同然にこき使われた挙句に嫌味の応酬の日々に決まってるのに!!)ものはというと、ついでに就職の伝手も頼みながらのかなり気合の入った研究室めぐりの日々をすごしているのだった。

 力術学科で『実習』の後片付けをした後、召還術学科で実験の前準備を整え、死霊術学科の研究生のオネエサマから「ちょっと資料集めを手伝ってくれない?ほんの手間仕事だから」と頼まれたのを、今体調があんまりよくないからと断った後、変成術学科にやってくると……

 「ああ君、パッチーニ商会の跡取り娘の」
 大ニコニコで戸をあけてくれたのは、変成術学科の学科長、オルドロン教授だった。
 「うわさは聞いてるよ、召還術学科のセガールを随分驚かせたって。ロー教授も大喜びだったそうじゃないか」
 ……えと。話が見えてないんですが。
 「お父上の代のときも随分無理を通させてもらったけど、君はそれ以上みたいだね。……で、頼みたいんだが、『黒い氷』の原石を持ってこれるだけお願いできないだろうか」
 ……だから話が見えないっつの(とは思うが口にも顔にももちろん出さない)。
 「ああ、『黒い氷』といってもわからないか。要するに「融けない氷」でね。普通の氷と違って黒い石みたいに見える。これがいい魔法実験にはどうしても必要なんだが、いくら融けないといったって長時間あれこれと使いまわしていけばだんだん小さくなって冷気も弱くなっていくのでね……なんとか年内いっぱいに頼めないだろうか」
 「……は、はぁ、わかりました(うあー、あたしに何をどうしろと。ってか何であたしに頼むんだよ……でもここで断って就活に支障が出ても困るし)。それでは、現物をちょっと見せてもらってかまわないでしょうか?」
 「ああ、これですよー」
 教授先生の後ろから学生が顔を覗かせ、手招きする。見ると、飲み物を冷やしているらしき箱の中の氷に、黒いかけらが点々と混じっている。
 「おい、君たち、それは日常に使用していいもんではないとあれほど」
 「だって教授、ここまで小さくなっちゃったら飲み物冷やす氷を水にしないために使うぐらいしかできないですよ」
 「ばか者、実験に使う氷が融けないようにするために使うのが本来だろうが……というか、口に入るものと実験用具を一緒にするんじゃない」
 そんなこといったら力術学科のアレとかアレとかアレとかハンス先生とかどうなっちゃうんだろうか、とかつい思うのだがまぁそれはそれとして。

 どうやら先日のマンドラゴラ騒動の際、ウィチカが期日どおりに新鮮なマンドラゴラを納入し、それどころか『ホンモノのマンドラゴラ』や『テンドリキュロス用の手綱』まで持ち帰ったもので、いつのまにやら学園内に「パッチーニ商会の跡取り娘は恐ろしく有能で頼んだら何でも持ってきてくれる」といううふうに噂が尾鰭背鰭胸鰭腹鰭まで盛大につけて泳ぎ回ったらしい。で、『黒い氷』が尽きてきたというのに頼みの納入もとから「当方、そのお品は現在扱い停止になっておりまして、おそらく再入荷はしないと存じますが」とやられてしまって困惑していたオルドロン教授がその噂に飛びついたということ。『氷』はありすぎて困ることはないし、精錬もしなければいけないので持てるだけ持ってきてほしいとのことだった。

 ちなみに、先日番頭から取り上げてきた取引台帳を見ると、『黒い氷』はカハウ=キンキのさらに北東、ここからおよそ馬車で3週間ばかりはかかろうという『黒き氷の大地』の産であるらしい。もっとも取引そのものは、その手前のトンブルグという小さな村に氷の切り出し職人が居るのでその職人と行っていたようだった。ただそれらが解ったのは、その情報の上には赤ペンで×印がつけられ、そのわきに番頭の字で「原価80%赤字確実・取扱停止」とでかでかと記載してあるのを見、怒りの余り罪もない枕を10回ばかり壁に投げつけてからだったが。

 ともあれ。
 カハウ=キンキといえばここから馬車で10日はかかる。その上トンブルグはカハウ=キンキからさほど遠くないはずとはいえ、地図にもろくに扱いがないような小さな村で、そこまでの道に何が起こるか知れたものではない。
 ……まさか、独りでなんて行きつけたものではない。

 というわけで、ウィチカは早速アルテアの部屋の戸をたたいた。
 『鬼婆』特性のミックススパイスを入れて作ったホットワインを飲みながらウィチカが話した顛末を聞くと、アルテアはすぐに奥から紙とペンを取ってきた。
 「トンブルグ?二人だって十二分に自殺行為ね、それ。私は北のほうはある程度知ってるけど……この時期は隊商もあんまり行かないし、ろくでもない生き物も随分出没するし。護衛か……できれば同行者という形で誰か一緒に来てくれるといいんだけれど」
 そうして、ウィチカにポスターを書けという。どうやらあまり字が得意ではないらしい。

 ポスターはまず力術学科専用の飲み屋に張り出すことにした。
 何故かあの飲み屋は力術学科の学生のみならず、街に流れてきた腕自慢も居て雇われ口を探していたりするのだった。
 「馬車で移動すること考えると、こないだのオルガさんみたいに女性のほうがいいけど……とにかく行く場所が場所だから、あんまりわがままも言えないわ」
 ということで、二人はポスターを抱えて酒場にやってきたのだった。

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posted by たきのはら at 11:58| Comment(6) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月28日

シリーズ第4回『黒き氷の……』前口上

 というわけで遊んできました渡竜第4回。
 今回はゲストキャラのおにーさんが4名参加で、ちょっと殴り合い多めのセッションでした。うちの娘っ子もなんか、いつもなら「1セッション1ぷち(激怒)」って感じなのに、今回は「1日1ぷち」だったしなぁ。

 ちなみに、ゲストキャラの方々はこんな感じ

 ハーフリングの聖騎士さま、パオロさん(PL神無月)
 徳高いお坊様、聖マルチヌスさん(PL松谷)
 スパイクトチェーン使いの戦士 『鉄旋風』ピョートルさん(PLでんこうじ)
 歌うと「ボエーーーー」となることが多め……かも知れない吟遊詩人(兼ごろつき……)の カミロ・デ・ラ・トンブルグさん(PLみつまつ)

 後ろのほうにいくほどロクデナシな感じ、ということらしいです。えーと、聖マルチヌス(『聖』はつけないといけないらしい)さんとピョートルさんの順番は逆じゃなくてよかったのかしらん。

 うーん、まぁ、殴り合いが多めだったほかは、いつもとあんまり変わらなかったような。ってか、ルールブック確認している間は慣れているみなさんにも待っててもらってましたし(……あ、すみません、自分が使うダイスの管理は以後しっかりやっておくことにします。こんなことで時間使っちゃアレですよね……)。フォローいろいろとありがとうございました。
 プレイ内容そのものは……やっぱり話が大きくなる分、血なまぐさいほうにシフトしちゃってたかも。あと、私の妄言が多かったです。これはあんまりよくありませんでした。やっぱりついつい甘えちゃってますね。思い返してみると結構まずかったなぁと。これも以後気をつけますです。

 あと……一番の反省点は……
 ごめんなさい。次回からはちゃんと体調整えてから行きます(<会場でちょっと喘息気味でして……たぶん風邪は治ってたと思うので、人に移してはいないと思うんですが、ほんとにご心配&ご迷惑かけました。もうしません。ごめんなさい)。

 ゲーム内容以外の反省点がまず出てくるのもどうかと思いますが、ともあれ。
 ゲームそのものはとっても楽しかったのです。どうもありがとうございました♪

 ……てなわけで、レポートは(SeeSaaがこれから24時間止まっちゃうらしいので)月曜日以降に更新いたしますね。


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posted by たきのはら at 11:31| Comment(3) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月26日

前日からが……

 というわけで、明日は渡竜キャンペーン第4回を遊んできます。
 明日は、二回目の3Lvということで、ゲストが4名入った状態で遊ぶことになります。楽しみなんだけど……でもたしかに「授業参観気分(Byなおなみさん)」かも(笑
 まぁ、授業参観はともかく、ひょっとしたら明日は初ダンジョンかもですよー♪

 とりあえずPHBとか、この間買い足した日本語版DMGに付箋貼ったりしてるんですが……でも、実のところ私が一番やっとくべき前日準備はとっとと寝てクリアなアタマで会場に向かえるようにすることかもしれなかったり(苦笑
posted by たきのはら at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 渡る世間は竜ばかり〜細腕繁盛記〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

冒険者への問い

 そろそろPCを固定して、正面から物語に取り組んでいきましょう、という姿勢が明確になったので、「問いに答える」形式でPCたちの紹介を行っています。
 「冒険者への問い」のカテゴリからでも行けるんですが、まぁせっかくですからリストアップも兼ねて目次をつくりました。

 冒険者への問い
 イリオスの答
 グンディグートの答
 ドンの答
 アルハンドラの答
 李二剛の答
 フレイの答
 ピーウィーの答
 クラーレの答
 サー・パラディグームの答
 美笛の答

 ……と、とりあえず現在はこんなところ……
posted by たきのはら at 12:12| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート目次(Aquilla) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Aquilla第二部(その1)

 続いて第二部。まだ途中までしか記事を作っていないので(その1)とかなっていますが。

 遊んだ時期は2001年9月23日〜2001年12月24日。
 ゲーム内時間は夏〜夏の終わり、のはず。どっかに暦があったんだけれど。

 皇帝の地下墳墓(その1)
 裏切りの村
 皇帝の地下墳墓(その2)
 勢力図
 オルシントン再び
 蠍達の街道
 夜の牙の塔にて

 んーと、どっかからまた何か公式シナリオ使ってた気がするんですが、このあたりは何がなんだか。私、シナリオのチェックってしてないし<この態度ってひょっとしてまずいのかしら……
 てなわけで、ネタばれ注意表示をするべきものがありましたら、コメントもしくはメールにてご指摘お願いいたします。
posted by たきのはら at 12:01| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート目次(Aquilla) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Aquilla第一部

 というわけで、Aquilla第一部の目次です。
 遊んだ時期は2001年4月7日〜2001年7月8日(or9月8日)
 ゲーム内時間は……ええっと、たぶん、後から確認された暦によるとどうやら初夏のころらしい。

 ともあれ。

 すべての始まり(その1)
 すべての始まり(その2)
 沙漠の街の騒がしい日々
 墓守の係累
 掃討する者たち

 となっています。
posted by たきのはら at 11:46| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート目次(Aquilla) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ちょっとひとやすみ。

 すみません、なんか最近更新止まっちゃってます。
 単純に仕事が暴発気味なのと、ちょっと舞台があるものでその稽古で忙殺(真面目に殺されそう……)されてるのとのせいなんですが。

 けっこうまとまって時間かかるようになって来ちゃったんですよね、もとのキャンペーン掲示板を読み解いて時系列と起こったことを整理するの。もうちょっと行けば、掲示板の情報量が増えてくるし、けっこう頻繁に状況整理をするようになってくるので記事も短時間で作れるようになるんですが。……Blogという形式の性格上「書きやすいところから先に記事作成しておく」ってのもかえって面倒だし、あと、プレイヤーの都合がちょっとバタバタして、Aquilla最終回はたぶん年明けになるし、私も年内いっぱいちょっと(どころじゃなく)忙しいので、Aquilla血風録更新再開は下手すると年明けとかになるかも……うむぅ、とりあえず目次アイテムだけでも作っておかないといけないですね。

 あと、明日は流れてしまったAquillaの代わりに渡竜キャンペーン第4回が走ったりするので、次の更新は渡竜の記事になります。

 ところでもうひとつ。
 なんか、SeeSaaの回線の増強工事が入るとかで、28日(日)の正午から翌29日正午まで、このBlogは閲覧等が一切できなくなるようです。……それはそれで記憶の鮮度が勝負の私もけっこう辛かったりするのですが、ちゃんと29日午後からは更新・閲覧再開いたしますので、どうぞご了承くださいませm(_ _)m
posted by たきのはら at 10:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月14日

冒険者への問い――美笛の答

Aquilla市街の道端にて。

んっと、何か御用?
だからさあ、さっきのは、ちゃんと、ホントに、この刀を抜いたの。
イカサマじゃないってばさ。なんだったらもっかいやってもいいよ。
河岸変えてからだけど……ついて来たけりゃどーぞって……え?違う?
聞きたいことって……ま、いいや。お捻り集めちゃってからね。もうちょい待ってて。

……で、なあに?

>あなたはAquillaのことをどう思いますか
 どうもこうも。来たばっかりだもん。
 でもま、見たとこ、賑やかで、ちょいと不穏で……なんか話聞いてると
 ちょいとどころじゃなさそうだけどさ……まぁそんな感じ?
 居心地はわるくはなさそうね。「どっちにしろ」、稼ぎ口はあるし。
 ま、稼いでばっかりでもまずいんだけどさ。
  

>あなたはなぜこの街にきたのですか
  ……ええとその、探し物があってね。噂を追っかけてるうちに、
 ここに来ちゃったってわけ。
 ここで見つかれば持って帰るし、ないことが判ればここを出てく。
 そんだけかな。 
 
>あなたの仕事は何ですか
 旅芸人。
 ……信じてないよねえ。
 うん、この刀、引っこ抜くだけじゃなくて、ついでになんかを
 叩っ斬ったりもする……ね。
 ……それだけじゃないでしょうって?
 ええと困ったな。あー、でも思わせぶりなこと云ったの、あたしかぁ。
 扶桑って、知ってる?……うん。そう。その、天皇陛下の……
 まぁずーーーーーっと下のつかいっぱ、かな?そういう仕事。

 で、今言い付かってるのが、探し物なの。とある刀を、ね。 

>あなたはなぜその仕事をしているのですか
 そういう家に生まれたんだもの。
 それで、任務をこなすだけのものを身につけられたから。
 他に理由なんて要るの?

>その仕事で大事なことは何ですか
 御下命を成し遂げることかな。
 成し遂げられないなら、せめてその達成を妨げないこと。 

>あなたの主は誰ですか
 陛下だよ、もちろん。
 まぁ、あたしじゃ、まだ、御主と申し上げるのも畏れ多いくらいだけどね。 

>日頃心がけていることはありますか
 みなさんにかーいらしい旅芸人のお嬢ちゃんだと思い込んでてもらうこと。
 そのほうが動きやすいしね。
 だもんで、芸人と殺伐としたお仕事と兼業してても誰も怪しまない街って
 居心地よくってねえ。
 
 あとは……そうねえ、抜いたらお捻りいただくか斬るか、どっちかは
 ちゃんとやらないとね。 

>これだけは許せないと思うことはありますか
 許せないこと、ねえ。
 ま、人にはあれこれ思惑があるもんだし、
 性急な判断はしないことにしてるから……
 ああでもときどき、自分の間抜けっぷりが許せない気分になるかね。

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posted by たきのはら at 20:39| Comment(0) | TrackBack(0) | Aquilla血風録――冒険者への問い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夜の牙の塔にて――2001年12月24日

 「山形」の酒場にて。
 いつもの面々がいつものように管を巻いている。

 「いつもの」といっても、随分と顔触れは増えている。カセツァート公の触れ以来、この宿はすっかり冒険者たちのたまり場となっているのだ。
 中でも騒がしいのはやたらとトゲトゲの鎧を着込んだ一団。最近随分と潜り続けているようで、えらく威勢がいい。

 と、ドアが開いて、見なれない人影が入ってきた。
 見なれない上に、場違いもいいところ。顔立ちと真っ直ぐな黒髪を見ると東方人であることはすぐわかる。が。どう見ても「可愛らしい女の子」が旅姿に身を固め、背中にゆるやかな曲線を帯びた剣を背負っているのは、これは新手の大道芸人か何かだろうか。

 「おい、嬢ちゃん」
 トゲトゲ鎧の一人が早速脅すように怒鳴りつけた。
 「ここはお子様の来るとこじゃないぜ。おおかたさっきのキャラバンで一緒に着いた芸人だろうが、この酒場は腕ききしか足を踏み入れちゃいけないことになってるんだ、その可愛いお顔に怪我しないうちにとっとと消えるんだな」
 それをなんだか珍妙なイキモノでも見るような目で一瞥すると、娘はまっすぐ親父の陣取っているカウンターに歩み寄った。

 「東のほうから来たの。前の街からここまで随分と遠くてくたびれちゃった。……何か、軽いものいただける?あと、部屋が空いてると嬉しいな。
 それと……ええとここ、腕利きが集まる、のよね?腕なら覚えがあるの。誰か組めそうな人たち、紹介してほしいんだけど。あ、あっちの(といって黒いトゲトゲをちらりと見遣った)失礼な人以外で」
 「そりゃいいが……腕利きってあんた」
 まぁ、人間なら子供ぐらいの体つきでも実は立派に一人前という種族もこの街にはいるにはいるが、目の前にいるのはどう見ても人間で、その上そうだとすると……同じやくざな商売というなら、どっちかというと芸妓の見習いにようやく出されるほうが適当なぐらいの娘である。
 「ん、腕に覚えはあるよ。えーと、うん、信じてないよね?だったらいいよ、言われたもの、何でもたたっ切るから」
 言うに事欠いてなんということを。

 とはいえ、人は見かけに寄らないのは親父だって散々承知していること。
 「それじゃ、あの机は斬れるか?店内改装したら要らなくなるんで、もう薪にしちまおうかと思っていたんだが」
 荒くれ男どもがその上で取っ組み合いをはじめたところでびくともしない頑丈な机を示す。娘は無邪気に笑った。
 「それだけでいいの?」

 珍妙なやりとりに、机を前にした娘の回りに人垣ができる。あのちっこい小娘にあんな剣が抜けるもんかと誰かが言う。芸人にしてもここで芸をやろうたぁたいしたもんだと言う声もする。賭けるかと誰かが言う。せっかくだからと乗り出してきたイリオスが景気よく音楽をおっぱじめる。

 娘は回りを見まわしてくすりともう一度笑うと。
 斬った。

 抜いた瞬間は見えなかったが、首を傾げて「どう?」と言った娘の右手には剣が鞘から抜き放たれて握られており、その前で、机が真っ二つになって、崩れた。

 「あーーーー」
 しばらく親父は顎を外した後、ちょうど二階から降りてきた二剛の顔を見ると、言った。
 「アルカン、この娘さんなんだがね、仲間にどうかと」

 娘はミテキと名乗った。東方人だが二剛とは郷里は別だと言った。アルカンは素手でなんでも殴り倒してのけるし、あんたはそんなにちっちゃいのにそんな刃物を振りまわすとは、東方ってのは無茶なところだなと誰かが言うと、二剛とミテキはそれぞれに複雑な笑いを浮かべた。

 ともあれ、そこにいた一行で「夜の牙の塔」を目指した。
 ここもまた墓と似たような者なのか、出てくるのは骸骨に木乃伊と屍どもの大盤振る舞いだった。
 新しい仲間は、実によく斬った。とにかく扉を開けた瞬間に無造作に部屋に踏み込み、気がつくと目の前の敵が二つになっているのだから、これはこの小娘が斬ったに相違ないのだった。敵どころか、「なにやらこの壁に妖しい仕掛けがある」と誰かが言った瞬間に、「そう、じゃ、斬る?」と小首を傾げ、そうして壁を斬ってのけた。

 心強い仲間、と嬉しそうな一行。
 だが、ひとり二剛だけは何やら渋い顔なのだった……


 
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冒険者への問い――サー・パラディグームの答


 身どもの名はパラディグームと申すが、今はサー・パラディグームと名乗っており申す。というのも、あるとき東の沙漠の町で子供を助けたところ、その子が身どものことを騎士さまと呼んだからでござる。
 おお、身どもに何ぞ問い質したきことがおありか。誠心誠意お答え申そう。と申すのも、よき問いには必ずよき答えが伴うものであるからじゃ。

>あなたはAquillaのことをどう思いますか
 なんとよき町であろうか。澄んだカナートの水、美味なる饅頭と濁り酒、甘い果物に、美しい女達。しかもこの地に住む方々は、みな誠実なすばらしき人々ばかりじゃ。

>あなたはなぜこの街にきたのですか
 騎士の暮しは一所不住、放浪が習いでござれば。

>あなたの仕事は何ですか
 善をなし、弱くよるべなき人々を助けることでござる。

>あなたはなぜその仕事をしているのですか
 (間)おお、考えたこともあり申さぬ。

>その仕事で大事なことは何ですか
 己一人の力にては何事も成り申さぬ。万事に協力こそ肝要のことと存ずる。

>あなたの主は誰ですか
 力なき婦女子こそ身どもの主でござる。

>日頃心がけていることはありますか
 一度なした約定を決して破らぬことでござる。

>これだけは許せないと思うことはありますか
 これまで、かようなことを述べて来申したが、身どもはしばしば、心中に騎士たるものにふさわしからぬ、どす黒い考えの渦巻くことがござる。そのたびに身どもは、己を許せぬと思い申す。許し給う神あらば、身どもを許し給え。しかあれかし。

posted by たきのはら at 18:58| Comment(0) | TrackBack(0) | Aquilla血風録――冒険者への問い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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